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アトピー性皮膚炎とステロイドについてText by やなせ皮フ科クリニック 梁瀬 義範
アトピー性皮膚炎を代表とする、皮膚疾患の治療において、切っても切り離せない薬に「ステロイド」があります。ステロイドは悪の代名詞のように言われ、その治療を拒否する方も少なくありません。ステロイドは副腎皮質ホルモンと呼ばれる物質の一種で、血液によって常に体内を循環し、さまざまな臓器や細胞に働きかけ、身体にいろいろなストレスが加わった時に体調を整える重要なホルモンです。このステロイドには炎症や免疫を抑える強い働きがあります。1952年にステロイドが皮膚疾患にも効果のあることが明らかになり、アメリカで外用剤が開発されました。アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用療法の位置づけは、専門医がきちんと治療すれば副作用を最小限に抑えて最大の効果を発揮できる治療と言えます。しかし根本治療ではなく、あくまでも炎症を抑える対症療法です。ステロイド外用剤に対する患者さんの最大の不安はその副作用でしょう。ステロイドの内服や注射を全身に長期にわたり大量に使用すると、副腎機能が低下する、糖尿病を悪化させる、骨がもろくなる、風邪などの感染症にかかりやすくなるといった副作用が生じることがあります。このステロイドの内服や注射による全身的な副作用と外用剤による局所的副作用が混同されているようです。ステロイド外用剤による皮膚における副作用は大きく分けて2つに分かれます。1つはホルモンとして直接皮膚に影響する副作用で、もう1つは炎症や免疫を抑えるために起こる感染症の副作用です。例を挙げると、(1)毛が増えて多毛になる。
(2)皮膚が赤くなる。 (3)毛細血管が拡張する。 (4)皮膚が萎縮して薄くなる。 (5)ニキビが発生する。 (6)ヘルペスウィルス感染症、水イボが発生する。 (7)水虫やすでにある細菌感染症が悪化する。 などがあります。但し、これらの局所的副作用はステロイド外用剤を塗ると必ず起こるわけではありません。大量に長期間使用した際に起こる事があるものです。ではなぜ「ステロイドは怖い」のでしょうか?以前「ステロイドの何が怖いのか?」という趣旨のアンケートが行われました。その回答はリバウンド、病状が悪化する、効果がなくなる、皮膚の色が黒くなる、ステロイドなしではいられなくなる、子供がアトピーになる、副腎機能が低下する、体に蓄積される、奇形児が生まれる、ムーンフェイスになる、白内障になるなどでした。しかしこれらの回答は患者さんの誤った思い込みなのです。治療目標を達成するためにステロイド外用剤のもつ意義は小さくありません。しかしステロイドはアトピー性皮膚炎を治す特効薬ではありません。あくまでも皮膚の炎症を抑える薬です。うまく薬を使用しながら、症状をコントロールしていく必要があるのです。 |
貧血といわれたらText by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男
健康診断などで貧血の診断を受けたことがある方もいらっしゃると思います。貧血とは、血液中の赤血球の中にある、酸素を運ぶ役割のヘモグロビンの濃度が低下した状態を指します。症状としては目まい、立ちくらみ、息切れ、疲れやすい、などがありますが、症状が出るのはかなり進行してからになります。ただしここにあげた症状は貧血でなくてもしばしば起こりうるので、「貧血をおこした」と患者さんが診察室で表現しても実際には本当の貧血はなかった、ということはよくあります。貧血の原因はいろいろありますが、大きくは①血液そのものの病気(白血病など)、②慢性疾患(腎臓病や肝臓病など)や加齢に伴うもの、③鉄やビタミンなどの血液(赤血球)を作るための原料不足によるもの、に分けられます。その中で最も多いのは鉄不足による貧血、いわゆる鉄欠乏性貧血で、貧血全体の約60〜80%を占めるといわれています。鉄不足は偏食による栄養不足や胃切除後の吸収不良などでも起こりますが、これらの特別な事情がなければ、現代の日本で普通の食事をしている限り鉄の摂取不足になることは少ないと考えられます。むしろ多いのは何らかの出血によって赤血球が減り、その結果赤血球に含まれていた鉄分が体内から失われたケースで、例えば鼻出血、歯茎の出血、痔出血、月経なども原因となります。特に問題となるのは消化管(胃や腸)からの出血です。目に見える程の出血(吐血・下血)があればすぐに気付いて病院を受診すると思いますが、肉眼では分からない程度の出血がじわじわと続いた結果貧血となり、それがきっかけで進行した胃がんや大腸がんが見つかるケースは決して珍しくありません。貧血と診断されたら放置せず、一度胃カメラや便潜血検査(大腸がんの検査)を受けることが大切です。
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危機を乗り越えてText by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税
いつもいろいろな方たちに病気の予防の話をするとき、防災に例えてお話をすることがありますが、このたびの大地震にはただただ驚くばかりです。しかし困難な状況、先の見えない暗闇に光明を見る思いがしています。「災害に遭おうとも驚かず、艱難(かんなん)に向かうとも悲しまず」。陸別町の開拓に貢献した幕末の医師、関寛斎(せきかんさい)の言葉の一部です。立派な言葉ですがなかなか実践は難しいでしょう。そもそも生きることは、いつも新しい事態に対処していくことに他なりません。誰でも「やりたいこと」「こうありたいと願う姿」などを持っていますが、現実に「できること」とはズレがあります。人は絶えず自分自身または環境を変えたりしてそのズレを調整したり、身の丈に合わせて「できること」の範囲で生活する術を身につけていきます。しかし老いるということ、病むということは新たな事態に対処する力が衰えるということです。報道される被災地のご高齢の方たちの姿に、胸が痛みます。このような出来事をキッカケに健康を害することは想像しやすいことですが、感染症など環境要因によるものだけでなく精神的な影響による大きな喪失感はさまざまな病気を引き起こします。しかし困ったときに人の手を借りる、困っている人に手を貸すことが自然に行われる社会では、心のケアがよりやさしくなると想像します。昨今老いることや病むことを忌むべきこととして、それらに目を背けるような気配が世の中にあるように思われていましたが、大変な苦労をされている被災地で大きな混乱もなく互いに助け合う様子を伝え聞くとこの国はまだまだ捨てたものではないと思い直すのです。この度は、東北地方を中心とした大地震災害に遭われた方々、ご遺族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。最後に、エイブラハム・リンカーンの言葉を送ります。「あなたが倒れてしまったことはもうどうでもいいのです。私はあなたが立ち直ることに関心があるのです。」
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糖尿病の気がある、と言われていませんか?Text by はら内科クリニック 原 信彦
日本人は、欧米人に比べインスリン分泌が弱く糖尿病になりやすいといわれ、今や40歳以上の5人に1人は糖尿病かその予備軍であるといわれています。背景としては、ここ10年くらいの総カロリー摂取量は変わらずに、自動車の保有台数と脂肪の摂取量が増えています。つまり、食事量ではなく食事の質が変化し、かつ歩かなくなったことが一因といえます。糖尿病はどんな病気でしょうか?血糖値が高くなる病気なのですが、全身の細い血管を壊していく病気と思って下さい。長い年月をかけ、あまり症状を出さずに、徐々に血管を傷害していきます。脳に起れば脳梗塞、心臓に起れば狭心症・心筋梗塞、眼に起れば眼底出血のため視力低下し、腎臓に起れば腎不全となり透析が必要になります。これが、サイレントキラーと呼ばれるゆえんです。
それでは、どうすれば糖尿病を早期に発見できるのでしょうか?糖尿病の初期には自覚症状はありませんので、まず採血して調べることです。その採血にもコツがあります。糖尿病の初期の段階では、空腹時には正常で、食後の血糖値だけが高くなることが多いのです。その為、糖尿病が心配で受診される際は、食後1~2時間後の血糖値を調べてもらって下さい。そこで少し高いようならば、改めて糖尿病の精密検査を受けましょう。糖尿病の精密検査は、糖負荷試験と呼ばれ、空腹で行う検査です。空腹で受診し、空腹時に血糖値を取り、その後甘いブドウ糖液を飲んでもらい、30分後、1時間後、2時間後にそれぞれ血糖値を測定する検査です。合計4回採血され2時間かかる検査ですが、これで糖尿病かどうか診断します。境界型と呼ばれる糖尿病と正常者の間に位置する人=糖尿病予備軍であれば、体重を5%程度低下させ、1日30分運動すると糖尿病になるリスクを減らすことができます。最近太り気味で糖尿病が心配な方は、まずは食後血糖から調べてみませんか? |
百日咳(ひゃくにちぜき)の予防は大切ですText by かみいそこどもクリニック 渋谷 好孝
今年、子供たちにとって、ワクチン接種で2度新しいことが起きました。ひとつは、口から飲んでいた生ポリオワクチンが不活化ワクチンになり注射になったこと。もう一つは、不活化ポリオワクチンと従来の三種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア)ワクチンが一緒になって、四種混合ワクチンができたことです。不活化ポリオワクチンは子供たちから生ワクチンによるポリオ関連麻痺の恐怖を取り去ってくれました。四種混合ワクチンは三種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンを混ぜたワクチンですが、接種の痛みが一回減るという福音を与えてくれました。二つのワクチンは順調に供給され、滞りなく接種が進むはずでしたが、四種混合ワクチンは11月の開始早々に、不活化ポリオワクチンは11月の中旬から入手が困難なケースが発生しました。このような状態で一番恐れるのは、三種混合ワクチンの接種すらも控えられ、百日咳が流行するのではないかということです。百日咳は最近では国内で2008年頃に爆発的に流行したあとその後も年間五千件程度の報告があり、2008年には1名が百日咳により亡くなっています。2000年台に入ってから大人の百日咳の報告が増えています。大人の流行の状態から考えれば、百日咳の感染の機会は決して減っているということではなく、むしろ増えていると言っても過言ではないでしょう。赤ちゃんは生まれるときに、お母さんから多くの免疫を受け継いで来ますが、百日咳の免疫はお母さんから受け継ぐことができません。ワクチンをすることによってのみ、百日咳からあなたのお子さんを守ることができるのです。四種混合ワクチンや不活化ポリオワクチンの供給が不足していても、従来の三種混合ワクチンは潤沢に供給されています。四種混合ワクチンにこだわらずに、百日咳の流行を起こさないためにも、生後三ケ月からの三種混合ワクチンの接種と、単独の不活化ポリオワクチンの接種が望ましいといえます。
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