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眼底検査と散瞳Text by 江口眼科病院 佐々木 功
眼底(がんてい)は眼球の内部、それも表面からみて最も奥まったエリアを指す用語です。眼球は文字通りボールのような形状をしており、表面から2.5mmほど入ったところには瞳孔という名の円形の窓があります。外界の光はこの窓から奥の部屋に進入します。窓の奥の部屋はカメラの暗箱と類似していますが、眼球においては空洞ではなく光を極めて通しやすい組織(その名は硝子体(しょうしたい))で満たされています。そして、この部屋の内側にはカメラのフィルムに相当する網膜が壁紙の如く貼りついており、入ってきた光はここで電気信号に変換されて脳へ伝送されます。カメラのフィルムが暗箱の壁の中央にのみ平面状に配置されているのに対し、眼球の網膜は部屋の中央のみならず端まで眼球の曲面に沿って連続しており、視野や収差などの面で優れた光学的特性に貢献しています。さて、網膜やその土台として重要な網膜色素上皮層には種々の病変が生じますが、それらを検出・評価するための手段のひとつが眼底検査です。眼底検査では直径2.5cmほどの眼球の内部を直径数mmの窓(瞳孔)から覗き込みますが、詳細に観察する上ではやはり覗き窓が大きい方が有利です。しかし、眼球には光が入ると自動的に虹彩が絞られ瞳孔が小さくなる性質があります(瞳孔が縮小するので縮瞳(しゅくどう))。これにより観察用の光でも縮瞳が生じ、内部の隅々までの詳細な観察に支障をきたすことがあります。このジレンマの打開策こそが瞳孔を点眼薬で強制的に拡げる方法(瞳孔が散大するので散瞳(さんどう))であり、状況や疾患によっては必要性が高くなります。このように散瞳は眼科において重要な意味をもちますが、あいにく作用持続時間の短い散瞳薬が存在しないため、散瞳に伴う眩しさやぼやけが数時間続き自動車の運転などに支障をきたしてしまうことにご留意ください。
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糖尿病の兆しがありませんか? ~糖負荷試験のすすめText by はら内科クリニック 原 信彦
春の健康診断の時期ですね!お花見・ジンギスカン・ゴールデンウイークの旅行など忙しかったあなた!健康診断は、いかがでしたか?特に糖尿病の血糖値やHbA1cにチェックのついている方はいませんか?糖尿病の兆しがあると曖昧にせず、この際、はっきり白黒つけた方が、今後の心構えや対処に役立ちます。糖尿病・予備軍の方と、正常な方では、高血圧やコレステロールの治療の基準値が異なってきます。また、糖尿病の場合使いにくいお薬もあります。そんな方におすすめなのは、ブドウ糖負荷試験です。この検査で糖尿病なのか境界型糖尿病(予備軍)なのか、正常なのかを確認してみましょう。検査は、内科であればどこでもできる簡単な検査です。早朝空腹で採血・尿検査を行い、その後75gのブドウ糖の入った甘い水を飲みます。飲んでから、30分、1時間、2時間後にそれぞれ採血を行います。正常な方は、飲んで30分すると血糖値が上がってくるのですが、30分~1時間をピークに、2時間たつと血糖値は、140mg/㎗以下に低下してきます。糖尿病初期の方は、空腹の時の血糖値は、正常なことが多いのですが、血糖値を下げるインスリンというホルモンが不足したり、その働きが悪くなっているため血糖値は下がりにくくなります。そのため、30分・1時間と、血糖値が上がり続け、2時間後には200mg/㎗を超えてしまいます。予備軍の方はその中間で、一度上がった血糖値が、上がり続けないものの、下がりきれない状態になります。このように、糖分を負荷した血糖値の反応をみて①糖尿病②予備軍③正常だけど糖尿病になりそうな状態④正常者―を判定します。特に家族に糖尿病がいる方、血圧やコレステロールの高い方で、血糖値やHbA1cが基準値を超えたときは、確認してみてはいかがですか?
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浅い褥瘡(じょくそう)と深い褥瘡(じょくそう)Text by すどうスキンクリニック 須藤 聡
褥瘡というのは「床ずれ」のことです。これは、寝たきりや、それに近い状態の患者さんに起こります。体が骨など人の体の硬い部分と寝具などの間に皮膚、脂肪、筋肉がはさまれて血液が流れなくなり、体の組織が死んでしまうことによってできてきます。
健康な人の場合は寝返りしたりするのでこのようなことは起こりません。 そして、組織のダメージの度合いによって褥瘡は深くなっていきます。浅い褥瘡というのは、皮膚が赤くなっているだけのものや、水疱(すいほう)になっているもの、表皮だけが剥けた状態のものです。 このような褥瘡であれば、圧迫を避け、きちんと治療をすることで時間がかからずに治すことができます。 ただし、できたばかりの褥瘡は、赤くなっているだけのように見えても、実は深い褥瘡であるということもあり注意が必要です。 これは皮膚、脂肪、筋肉など組織の種類によってダメージに対する強さが違うために起こってくると考えられます。 圧迫によるダメージに一番弱いのは皮膚であり、次に筋肉、一番強いのが脂肪です。 圧迫されてすぐにダメージを受けるのは皮膚です。 でもそこで圧迫がなくなると、ダメージを負うのは皮膚だけで浅い褥瘡ですみます。 しかし、さらに圧迫が続くと次にダメージを負うのはもっとも深いところにある筋肉です。 その場合、はじめは外から見ると赤くなっているだけで浅い褥瘡のように見えます。 でも、2~3週間してくると皮膚は黒くなり褥瘡はさらに深くなってきます。 はじめは浅い褥瘡のように見えて、実は深い褥瘡であった、ということが起こります。寝たきりやそれに近い患者さんの場合は、褥瘡のできやすい部位に注意をしてあげて、赤くなっていたりしたら、まずは圧迫を避けるなどの処置が必要になってきます。 |
良い塩梅の塩加減Text by 榊原循環器科内科クリニック 榊原亨
脳、心臓や腎臓に重大な障害をもたらす悪い病気としては、特に高血圧が良くないのですが、血圧を上げる原因の1つに食塩の取りすぎがあります。高血圧が毎日の食事と関連する生活習慣病と言われるゆえんです。「和食はとても健康的な食事だ」と言われています。実際その通りなのですが、塩分の取り方が多い食事でもあります。冷蔵庫がない高度成長期の以前には、食品の保存に塩が防腐剤の役割をしていたのです。漬物、みそ、しょうゆは明らかにしょっぱいですが、かまぼこもつなぎに塩を使っています。冷蔵庫が三種の神器として各家庭に普及した後も、1日20g以上の塩を取る生活が続いていました。塩分の取りすぎから高血圧になり、血圧が高いために脳内の血管が破れたり詰まったりして、脳卒中を発病することが非常に多かったのです。だから昭和の中期(’60年)までは、脳卒中が死亡原因の1番で、平均寿命は65歳程度でした。その後の減塩運動が奏功したり、高血圧の治療が普及したりして、脳卒中の死亡は急激に減り、日本の平均寿命は大きく伸びました。減塩した食事では、下の血圧(拡張期血圧)が特に下がりやすくなります。日本人の塩分平均摂取量は’85年頃には1日13gが平均でしたが、最近は10.5gに減っています。ただし、北海道は塩の取り方が多い方の地域になります。1日の塩分は6~7gが理想的と政界保健機構では勧めますが、日本では、まだ遠い目標と思われます。梅干し1個1g、カレーライスには3g、ラーメン・とんかつ定食には4g、そば・すき焼き定食には6gの塩が入っています。だから、そばを汁まで飲んでしまうと1日分の塩を取ることになるので、汁は飲まないようにすることが必要になります。一般的に外食では塩分が多くなると思って間違いありません。コンビニ弁当も付いている調味料を使わないようにして1食の塩が4g位になります。レモンや酢を調味料に多く使うと、また、昆布でだしを濃くとると塩の量を減らすことができます。いろいろと工夫して減塩するように気を付けてください。
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痛みやシビレとの付き合い方についてText by 函館西部脳神経クリニック 院長 小保内 主税
この原稿を書いているとき、丁度、東京パラリンピックが閉会しました。日本での開催なので、時差がないため、色々な種目をテレビ観戦できて、大変感動しました。“失われたものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ。”これは、パラリンピックの創始者とされるグットマン博士の言葉ですが、今まで、この言葉は知りませんでしたが、神経の病気で機能を失った患者さん達を診てきた私も、同様の言葉を患者さん達に掛けてきました。さて、手足が麻痺して動かせないことだけでなく、痛みやシビレがあることも、機能の喪失と考えられます。つまり、患者さん達は「痛みやシビレのために、○○が出来ない」と訴えます。治療に関わる人間は、様々な方法で、その痛みやシビレを取ろうとしますが、残念ながら、完全に痛みやシビレを取り除けることは多くありません。先日、ある鎮痛薬のパンフレットの言葉に目が留まりました。「痛みがなくなることを治療の目標にせず、痛みはあるけれど、○○ができることを目標にしましょう」というものでした。患者さん達の痛みを無くして欲しいという気持ちはよく分かります。でも、完全に症状が無くなることを目標にすると、得てして不満だけが残り、病気が悪化しているような気になってきます。私は最近、患者さん達に、「痛みやシビレがある」今の状況から、「痛みやシビレはあるけど、○○が出来るようになる」ことを目標にするようにお勧めしています。これはまさしくグットマン博士の言葉と相通ずるものがあるでしょう。病気で出来なくなった状態を嘆き悲しんでばかりいるのではなく、病気の症状を抱えたままでも、出来ることを増やす努力をしていくことが、充実した生活を送るのに役立つと考えるのですが、どうでしょうか。
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