自分の血圧を知ろう
高血圧症は高齢者では最高140mmHg/最低90mmHg以上、若年者や中年者については最高130mmHg/最低85mmHg以上とされ、40歳頃から増加する日本でも最も多い病気のひとつです。
高血圧症が恐ろしいのは、その状態が続くと、脳梗塞、心筋梗塞、腎臓病、大動脈瘤などの重大な原因となる事です。
その予防には、生活習慣の是正が大切で
- 食塩摂取は1日6g未満
- 野菜や果物を積極的に摂取
- 適正体重を維持する[体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で25を超えない]
- 積極的に運動する
- アルコール摂取を制限する
- 禁煙を遵守する、等の複合的な修正を行う事がより効果的です。
血圧管理の大切さを理解し、時には専門医と協力しながら規則的で健全な生活習慣を続ける事が、高血圧症やそれに伴う重篤な疾患予防には最も重要なのです。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)に対する新しい治療
眼科では最近、加齢黄斑変性に対する新しい治療が始まっています。
加齢黄斑変性とは加齢が原因で眼のフイルムの働きをする網膜に変性が起こることで、「歪んで見える」「中心が暗い」などの症状を引き起こします。これまで光線力学的療法というレーザー治療が行われてきましたが、今年の3月より日本でも加齢黄斑変性治療薬であるラニビズマブの硝子体注射による治療が始まりました。
ラニビズマブは大多数の患者さんで視力の維持だけでなく視力の回復が証明された初めての薬剤で大いに期待されています。治療は通院にて月1回ラニビズマブを白眼の部分から眼の中心の硝子体という場所に注射し、これを3カ月間繰り返します。その後は、検査結果や症状をみながら必要に応じて注射することになります。
気になる症状がありましたら眼科医へ相談してみて下さい。
新型インフルエンザ
現在、函館市内近郊では新型インフルエンザが流行しています。
学級閉鎖や学校閉鎖、幼稚園閉鎖など、子供が学校や幼稚園、保育園に行くことを前提にして生活をしている多くの大人にも、さまざまなストレスを与えていると思います。
これまで多くの新型インフルエンザにかかった子供達をみていると、ほとんどは季節性のインフルエンザの症状と強さも期間も変わらない印象です。
ただ、中には嘔吐(おうと)が強く出るなど、消化器症状が強く出るお子さんがいて、他のお子さんに移さないようにして治療をするのは非常に困難です。
多くの医療機関ではインフルエンザを検査するキットが不足しています。
「インフルエンザにかかった人」と、「インフルエンザでないことを確認するために検査を強く希望した人」が一時的に増え、キットが大量に消費されたためです。
それに輪をかけているのが、「検査をしてきてください」という学校、園関係者の一言です。
インフルエンザかどうかははもともと患者さんの状態と地域の流行状態で判断するものであって、検査キットはそれを補うものでしかありません。
検査で陰性で「インフルエンザである」と判断することは実はとても重要で、これまでに検査が陰性でも重症化して死亡や後遺症が残る状態になることが多く報告されています。
状況によっては検査をせずに治療を開始することが子供にとって最良の選択であるということもしばしばです。
「検査キットで陽性でないからインフルエンザでない」などと誤解されてしまうと、治療のためでなく、検査を受けるために受診、その結果で一喜一憂するという間違った行動パターンが形成されることになってしまいます。
この点についてはぜひ御理解ください。
新型インフルエンザに対するワクチンは十一月から基礎疾患(子供の場合はほとんどが喘息)のある人から優先して始まる予定です。
十二月からは一歳から小学校低学年のお子さんへの接種が始まる予定ですが、細目はまだ完全に決まっていません。
現在、季節性インフルエンザワクチン接種の最中だと思いますが、二回目の接種の直前にでも、かかりつけ医療機関にお問い合わせください。
パニック障害について
身体的には問題が無いのに、呼吸が苦しくなる、息苦しくなる、窒息感、身体のふるえ、発汗、動悸(どうき)、しびれなどが発作的に起こり、不安、恐怖感を伴う、と言うのがパニック障害です。
これには大まかに二つのタイプがあります。
一つはパニック発作があるが、その時以外はほとんど問題がないタイプ、もう一つは発作が起こることに対する恐怖、不安から外出が困難になるというタイプです。
パニック障害はどちらかと言うと治療効果が得られ易い方ではありますが、一般的に後者の方が治療的には難しくなります。
原因としては大脳辺縁系などの脳内における神経伝達の異常が考えられています。
治療には薬物療法と心理療法があります。
薬物療法ではある種の抗うつ剤や精神安定剤が効果的です。
心理療法としては認知行動療法などの治療法がありますが、例えば次のような考え方、対処の仕方が効果的です。
発作の前後、及び発作中には様々な考えが浮かび否定的な言葉を自分自身に語りかけているということが多いものです。
例えば、「また苦しくなるだろう」、「どんどん悪くなって、倒れてしまうだろう」、「倒れたりしたら大変だ」、「死んでしまう」、「やっぱり具合悪くなった」などです。そのような話しかけにより身体の感覚に対する注意が集中して発作が起こり易くなり、悪循環ができることになります。
パニック発作というのは循環器や呼吸器の病気ではなく、身体の感覚、不安の問題ですから(発汗など一部の自律神経異常が実際に生じますが)、生命に関わるようなことはありません。
ですから、「発作が起こるとは限らない」、「苦しくなっても死んだりすることは無い」、「良くなってきた」、「発作が起こってもコントロールできる」、「発作が起こるとは限らない」などの肯定的な言葉を自分に語りかけたり、楽なイメージを浮かべたりすることが効果的なのです。
「ロコモティブシンドローム」とは?
「ロコモティブシンドローム」は「ロコモ」と略し、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念です。
日本語にすると「運動器症候群」となります。
具体的には、骨・関節・筋肉といった運動器の機能が衰えることにより、日常生活の自立度が低下し、介護が必要となる状態のことです。
「ロコモ」になっているかどうかのチェックポイントが3つあります。
- 15分以上続けて歩けない。
- 階段で手すりが必要。
- 片脚立ちが30秒以下。
このうち一つでも当てはまれば要注意です。
「ロコモ」の予防には、体幹筋力・下肢筋力・バランス機能の保持が大切です。
そのためのリハビリテーションでは、一人ひとりの原因疾患・基礎体力・骨粗鬆症の状態・その他の合併症の有無などを考慮して、慎重に行うことが必要です。
逃げるが勝ち
皆さんは「率先避難者」という言葉をご存知でしょうか。
災害時などに住民に避難してもらうには、役場の係員がスピーカーで呼びかけるだけでは効果がないそうです。
人は隣近所の様子を見てから行動することが多いからです。
ある海岸の町では、地震直後の津波警報の呼び掛けに避難したのは住民の二割だったそうです。
子供が両親に「逃げよう」と言っても、大人達は近所の様子見を決め込み、動かなかったのです。
この状況を変えるため、地域に「率先避難者」という係を置こうとしているそうです。
この人達は、避難を呼びかけたら誰よりも先に自ら避難することを任務とします。
この人達の逃げる姿を見た人達は、我も我もと逃げるようになったといいます。
また、避難後に津波が来なくても「逃げなくてもよかった」と後悔することはなくて、「何もなくてよかった」と思うそうです。
病気予防に当てはめてみます。
生活習慣病を持った人や、自分の健康状態に不安を持っている人は大勢います。
この人達は生活習慣を変えなきゃいけない、健康診断も受けてみたいとは思っています。
でも、なかなか実行しません。そんな人達に「スピーカーで避難を呼びかけている」のが、保健や医療の仕事をしている人達、夫や子供の体を心配している奥さん、お母さん達です(多くの男性患者さんは、自分の意志よりも奥さんに言われてシブシブ健診を受けています)。
この状況を変える為、奥さんお母さん達が「率先避難者」になってはどうでしょう。
家族や隣人に生活改善を注意するより、まずは自分の健康維持に努める姿を見せるのです。
先の津波避難の例では、現在、子供たちへの指導は、両親に「一緒に逃げよう」というのではなく、まず自分が逃げ出すことを勧めているそうです。
逃げる子供を一人にしておけませんから、大人も避難することになります。
この夏初めて、人間ドックを受けました。
医師も、自らの健康に気をつけなくてはと思ったからです。
幸い、やや太めである以外はほぼ異常なしという結果で安心しました。
新時代に入ったリウマチ治療
関節リウマチは、手足の関節が腫れて痛み、進行すると関節の機能障害をきたす原因不明の疾患です。
これまでは治療しても十分な改善が得られず、関節破壊を食い止められないこともしばしばでした。
しかし、ここ数年の間に治療効果の高い画期的な薬が次々と開発され、状況が一変しました。
これらは「生物学的製剤」と呼ばれるもので、現在4種類の薬が使われています。
有効率は約80%と、従来の薬に比べてはるかに高く、日常生活に不自由がない程度まで改善することもあります。
また、関節破壊を抑える効果も高いことがわかっています。
ただし、問題点がないわけではありません。
免疫を抑える働きが強いので感染症のリスクが高まること、非常に高価であることなどです。
有効性・安全性・経済性を十分考えて上手に使用すれば、患者さんにとって大きな福音となるでしょう。
血圧測定の方法と歴史も
現在の日本では、全国の約3,800万人が高血圧と考えられます。
高血圧は動脈硬化を進める一番の要因です。
硬くなった血管の流れが悪くなった結果、血が回らなくなって、脳梗塞で半身麻痺したり、心筋梗塞で突然死したりする性質の悪い病気の入り口と言えます。
ところで、「血圧ってなんだろう」と改めて考えるとあいまいなところがありませんか?
つまり、測定の仕方、時間、測定の前に歩いていたか安静にしていたか、前日の夜によく眠れたか、そんなことでいつも違う数値がでる。
「家にある血圧計で測っても、いつも違う値が出て信用できない」と思ったことはないでしょうか?
エジプト時代の人は血圧なんて言葉は知りませんでした。
そもそも、心臓から血液が押し出されて全身を循環して流れて行くのは、解剖しているうちに心臓が止まってしまうのだから、見た人はいないはずです。
最初に気がついた人は偉いのですが、なかなか信じてもらえなかっただろうと思います。
世界で初めて血圧を測定したのは1733年のイギリス人生理学者です。
馬の首の動脈にガラス管を突っ込んで、血液が高く管の中を上がっていく高さを測定したのが血圧の始まりです。
1896年にイタリアで水銀血圧計が作られ、1906年にロシアのコロトコフが聴診法を発見しました。
今と同じ測り方です。
160年かかって血圧が痛い思いをせずに測れるようになりました。
さらに110年経った今、家庭用の血圧計はさまざまなタイプが店に並んでいます(家庭用の器械は日本人が作りました)。
でも注意してください。
血圧は血管をつぶす力を測って、動脈の中の圧力を間接的に予想しているのです。
血管を刺して測った値より少し低い、だいたいの値なのです。
上腕で測って、やっとその程度の正確さなので、手首や指先で正確に測定するのは無理です。
だから、血圧計は上腕で測定するものを使ってください。
多少の幅のなかで正確な血圧が測れると思います。
「130/80以下に出ることが多い」なら、だいたい良いなと思って結構です。
シミのいろいろ
ひとくちにシミといってもいろいろな種類があります。
代表的なものでは、老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)、肝斑(かんばん)、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)、遅発性太田母斑(ちはつせいおおたぼはん)などがあります。
老人性色素斑は、老人性という名前がついていますが、日光が原因で出てくるシミです。
平坦で境界のはっきりした比較的濃い色をしています。
形は円形のことが多いようです。
出やすい部位は日光に当たりやすい顔や手の甲です。
これはQスイッチレーザーが効きやすいシミです。
肝斑は、女性ホルモンの影響で出てくるシミです。妊娠や出産後に出てくることが多く、頬部や鼻の下に左右対称性に出てきます。色は薄い茶色で、境界ははっきりせず、形は不正形をしています。
これはレーザーが効きません。
治療は内服や漂白剤のクリームなどで行います。
脂漏性角化症は、紫外線による皮膚の老化で出てくるイボのようなものです。
濃い色をしていることが多く、大きさはさまざまで、表面は盛り上がっています。
治療には電気メスや炭酸ガスレーザーなどで焼いて取る方法が用いられます。
遅発性太田母斑は、シミというよりアザに近いものです。
二十歳代頃から左右対称に出てくる事が多く茶褐色をしています。
これはシミよりも深いところにあるため、レーザーが効きにくいため、数回要することもあります。
代表的なものは以上ですが、シミのタイプが混在している事も多く、いろいろな治療法を組み合わせなくてはならないこともあります。
いつも目が赤い
よくじょうへんという病気をご存知でしょうか?
漢字では翼状片と書きます。白目の表面を覆っている結膜が、黒目に進行してくる病気です。血管を豊富に含んでいるため、常に充血していたり、ごろごろとした異物感を感じたりします。翼状片の組織自体は悪性のものではありませんが、放置すると黒目の中心に向かってゆっくり進み、徐々に乱視が強くなり、最後に瞳孔に達すると、視力が低下します。
原因として紫外線が関係しているといわれていますが、仕事柄、日光を避けることが困難な方も大勢いらっしゃるでしょう。初期の段階では点眼薬を使用することもありますが、充血をやわらげたり、異物感をやわらげる作用はあっても、翼状片を退縮させるほどの効果は期待できません。根本的な治療には、手術により切除することが必要です。