夏休みのあとに
毎年、夏が終わり9月になると、若い未婚の患者さんが少し増えます。中学生、高校生もです。
訴えは二つです。
一つはおりものの異常で、もう一つは、望まぬ妊娠です。
夏の冒険のお土産です。今年の夏は暑くなりそうもないので、どうなることでしょう。 性への好奇心と、夏の開放感の結果です。 性交渉には必ず「妊娠」と「性感染症」がついてくることを忘れないでください。 その場の雰囲気、勢いに流されることなく、男性は義務として、女性は自分の身を守る為に、必ず予防をする。
予防させることを心がけてください。 何回か、このページで避妊法、性感染症について書いてきました。 難しいことでも、面倒なことでもなく、最初からコンドームをつける。
ただそれだけのことです。 先日も激しい下腹痛と、発熱を訴えてきた若い女性が開腹すると淋菌による腹膜炎でした。
両側の卵管を取らねばならず、このあと妊娠は体外受精でしかできなくなりました。 又ここ2ヶ月で母親に付き添われて妊娠の診察に来た中学生、高校生も何人かいました。
好奇心のみで、またその場の雰囲気に流されることのないように…。
AIDS エイズの話(2)
前回AIDS感染者が、未だに増加しており年間500万人以上の新しい感染者が、300万人のエイズによる死者が出ていて、その95%以上がサハラ砂漠以南のアフリカと東南アジア、東アジアで、先進国では唯一日本のみが増加していると書きました。 先日、新聞に日本でのエイズウイルス感染者「エイズウイルスを持っているが、未だ症状が出ていない人」、エイズ患者「エイズの症状の出ている人」が2001年末で12,500人と出ていました。 感染の原因はSEXとはっきりしているのに感染が拡がっているのは何故? 日本ではエイズ患者が発症前に感染していることを知っていた人は、異性間の性交渉では6人に1人。
同性間の性交渉により感染した人では4人に1人です。
エイズは感染してから症状が出るまで10年から15年あり、その間にどれくらいの感染者を増やしているのか? 欧米では、性交渉の相手が多い人ほどコンドームを使っていますが、日本でのアンケートでは、相手が多い人ほど、コンドームを使っていないという結果です。 最近の日本での10代、20代の性感染症の増加をみていると、いかに無防備なSEXをしているか恐ろしくなります。
まもなく日本でもエイズの大流行が、と言われてます。
現在、治療薬はいろいろ開発され、治すことは未だ出来ませんが、発症を遅らせることは出来ます。
良く知らない相手との、無防備なSEXはしない。
したときには検査を受ける。どこの医療機関でも受け付けると思います。
AIDS エイズの話(1)
日本でも、AIDS「後天性免疫不全症候群」が増えてきています。
欧米先進国では減少してきており、増えているのは、ケニア、ザイールなどサハラ砂漠以南のアフリカが圧倒的に多く、次いでタイ、最近はインド、ミャンマー、カンボジア、ウズベキスタン、中国、など、東南アジア、東アジアにも感染が拡がってきています。
教育、啓蒙の不足。対応策の不備など、まだまだ感染者は増加するといわれています。
先進国で、まだ感染者が前年より増えているのは日本だけです。
2000年末で生存しているAIDS患者、および感染者は3,610万人で2,180万人がすでに死亡しており、年間500万人以上が感染し、300万人が死亡しています。
アフリカでは死因の1位で、平均寿命も下がってきています。
感染者が人口の30%を越える国もあります。
世界でも死因の4位となっています。 感染は、性行為「異性間、同性間」、血液、血液製剤、母子感染の3ルートです。 日本では血液製剤により血友病の患者さん5,000人のうち2000人がAIDSに感染した薬害エイズの問題が大きくクローズアップされていますが、最近は異性間の性行為による感染に関しては、あまり取り上げられていませんが着実に増えてきており、今では女性のAIDS患者の方が男性より多くなっています。
また女性では10代後半から20代が多く、今後母子感染が問題になってきそうです。
予防はコンドームを使うことです。
産科医のひとりごと
この20年で、産科学は非常に進歩を遂げました。でもまだわからない事も沢山有ります。一つはいつ陣痛が始まるのか、ということです。
よく妊婦検診で10ヶ月に入った妊婦さんにいつ頃生まれますか?と聞かれる事がありますが、診察で、子宮口が開いている。
柔らかくなっている、赤ちゃんが下がっている、等を診て判断しますが、正確にいつという事は解りません。
陣痛が、なぜ、どのように始まるのかが解らないのです。
解れば、ご主人の休みを何時にとるか、お産の手伝いのためお母さんに何時に来てもらうか、予定が立てやすいのですが。もう一つは赤ちゃんの事です。
お母さんのおなかにいるうちに、できるだけ正確に赤ちゃんの事を知りたいということです。突如お腹のなかで死ぬ赤ちゃんがいます。
妊娠中も、お産の時も何も異常がなかったのにハンデキャップを持って生まれてくる赤ちゃんもいます。
超音波による発育の確認、形のチェック、胎児の心拍のモニタリングによるチェックなどで、情報を少しでも多く集め、出来るだけ正確に赤ちゃんの状態をつかもうとしていますが、まだ解らない事、出来ない事があります。今後新しい検査器械の開発。新たな研究により、より正確に子宮内の胎児の状態がわかるようになる事を願っています。
頼んだことは何でもしてもらえるの?
訪問介護ヘルパーは、介護保険制度の目的に沿って、本人が少しでも自立した生活を送る事ができるように、また状態が悪化しないように知識と技術、思いやりの心をもってサービスを提供する人です。
担当ケアマネジャーが本人や家族と相談して立てた介護サービス計画に沿ってサービスを提供します。
介護保険制度では、ヘルパーの仕事は、本人の日常生活上での介護という事で規定されています。
したがって、家族の分の食事作り、訪問車でのお買物、来客の接待、大掃除、雪かき、洗車、花や庭木の手入れ、犬の散歩などは禁止されています。
つまりヘルパーは「お手伝いさん」ではないということです。
利用する際は、担当ケアマネジャーにサービスの内容等について相談してみると良いでしょう。
妊娠中毒症 2
前回は浮腫(むくみ)のお話をしました。
今回は高血圧と蛋白尿、その予防法についてのお話です。
妊娠中は胎盤から黄体ホルモンと卵胞ホルモンが大量に作られ、分泌されます。
この二つのホルモンは腎臓や肝臓を介して血管のれん縮(血管の内腔を縮めて細くする)を起こす物質を刺激し、血圧を高める作用があります。
一方、血管壁にはこの血管のれん縮に対抗して血管をやわらかくして、血管壁を弛緩させ、血管の内腔を広くして、血液の流れを速く良くする物質を出す働きがあります。
そのどちらの働きが優位かにより高血圧になったりならなかったりします。
妊娠中毒症で高血圧になる方は、後者の物質の分泌が少ないのです。
血管がれん縮して細くなっていると、子宮内の胎児への血流も少なくなって胎児の発育も悪くなります。
妊婦検診ではおしっこの検査をして、蛋白が出ているか調べます。
これも妊娠中毒症のチェックです。
1mlあたり30mgまでは正常です。
200mg以上になれば入院が必要になります。
妊娠中毒症は妊娠によって大きくなった子宮により起きる病態なので、その発症を100%防止することはできませんが、発症の確率を減らすことはできます。
体重の増えすぎに注意しましょう。
8kg前後の増加に、65kg以上の方は、体重をそれ以上にしないよう努力。
そして、適度な運動をしましょう。
散歩や水泳等20分以上、毎日続けること。
急激に体を動かすものは避ける。
安静の時間を作ること。
安産のため、元気な赤ちゃんを産むためには、妊婦さんの努力も必要です。
妊娠中毒症
前回、妊娠中に食べ過ぎると「妊娠中毒になりやすい」と話しました。
妊娠時に高血圧・蛋白尿・浮腫(むくみ)のどれか、あるいは全部が出てきたものを妊娠中毒症といいます。
では、この状態になると何故いけないのでしょう。
この病気になると、赤ちゃんが大きくなれません。
また、重症妊娠中毒症になると、赤ちゃんがお腹の中で死んだり、お母さんも痙攣発作を起こし、そのまま昏睡状態になり、死亡。
助かっても、腎不全になり透析を受けなければならなかったりします。
原因は、妊娠のために大きくなった子宮がお腹の血管を圧迫し、その為に血液の流れが悪くなり、高血圧・むくみ・蛋白尿が出てくると言われています。
今回は、一番多い浮腫についてです。
浮腫は血液中の水分が血管壁から皮下組織にしみでてきて、そこに貯まった状態をいいます。
人間は立っていることが多いので、下股(膝から下)に出てきます。妊娠後期になると、血液量がたくさん必要になり、血液中の水分が増えるので、血管壁より漏れる分も増え、むくみやすくなります。
浮腫だけで、蛋白尿も高血圧も無ければ心配ありません。
夜になると足に浮腫があっても朝になると消えているようなら何の心配もありません。
1週間に体重が500g以上増えると、むくみが出やすくなります。カロリーを抑え、水分を取り、塩分を抑え、十分な休養と適度な運動を心がけましょう。
利尿剤は血液中の水分もおしっこにして出してしまうため、血液が濃縮し流れずらくなり、血圧を上げ、また胎盤を通って赤ちゃんにも作用し、脱水状態にし大きくなれません。
だから利尿剤は妊娠中は使えなくなりました。
浮腫も重症になると全身にひろがり、肺に貯まると肺水腫になり、お母さんの生命も左右しかねなくなります。
直ぐ医師の診察を受けなければなりません。
妊娠中の食事
妊娠中は赤ちゃんの分と二人分たべなければ。赤ちゃんのために栄養を沢山とらなければ。などと親御や周りの人に言われたことのある妊婦さんは多いことと思われます。
たしかに、食事を十分にとることが難しかった時代には、栄養不足を心配することも必要でした。
でも現在は栄養(カロリー)のとりすぎや、栄養のかたよりの方が問題になっています。
栄養をとりすぎた妊婦さん、すなわち太りすぎた方の妊娠経過、分娩はリスクが高くなります。
妊娠中毒症になりやすい巨大児・低出生体重児。また難産(微弱陣痛・吸引分娩・帝王切開・出血が多い)が多くなります。
では妊娠中に必要なエネルギーは赤ちゃんの発育に要する分と、母体の基礎代謝が上昇する分合わせて1日あたり350Kcal程度です。
ご飯だと軽く茶碗二杯分です。
20才代の女性の1日に必要なエネルギー量は1800から1900Kcalですから、妊娠中に必要なエネルギー量は2200Kcal前後で十分ということです。
妊娠中の体重はどのくらい増えるのがよいでしょう。
10ヶ月の妊婦さんの体重は、赤ちゃんの体重・胎盤・羊水で約4Kg。
血液量の増加、子宮の増大。乳房組織の発育などで約3Kg。
脂肪の蓄積分が約3Kgで合わせて10Kgです。
だからこの10Kg増えていればよいのですが、妊娠前の体重が40Kgの人と70Kgの人では違ってきます。
やせている方は特に体重の増加に制限はありません。普通の体重の方は10Kg以内に抑えてください。
太り気味の方は5Kg以下に。
肥満の方は、妊娠前の体重を維持するように心がけてください。
この体重管理がお産をスムーズに、赤ちゃんを元気に産む一番の方法です。
続・妊娠いろいろ
今回は流産の話です。妊娠22週までの流産は10%から15%と言われています。
そのうちの70%以上が妊娠12週までにおきす。
流産は何故おきるのでしょう。
昔は出血を繰り返しているうちに栄養が赤ちゃんにいかなくなり流産すると考えられていました。
だから妊娠中に出血すると、流産を起こしかけている入院が必要、薬を飲みましょうと言われました。
現在では、流産は赤ちゃんに主な原因があると考えられています。
それは流産した胎児の大部分に染色体の異常が認められ、受精前後の細胞分裂期に偶発的に発生する染色体の不分離によると考えられています。
だから一度早期流産をしても次の妊娠では、80%から90%の方はなにごともなく分娩します。
しかし一部の女性では流早産。死産を連続して繰り返します。
これは不育症といいます。
原因は
- 子宮の形態異常
- ホルモンの異常
- 自己免疫異常
- 夫婦の染色体異常
- 血液型不適合妊娠
- 免疫学的因子
- 原因の不明なもの等
です。
子宮の形態異常とは双角子宮「子宮の中にしきりがあり二つにわかれている。」等の子宮の奇形。
分娩、流産後の子宮内処置後の子宮腔癒着症等です。
ホルモンの異常は、妊娠に必要な黄体ホルモンの産生能、分泌の低下。甲状腺ホルモンの異常等です。
最近、これまで流産を繰り返す原因が分からなかった人達のなかに免疫学的異常が原因である女性が多数いることがわかってきました。
本来人の身体は異物が進入してくると、それを排除するようにできています。
それなのに胎児胎盤組織は母体に受け入れられるのは複雑な免疫内分泌学的機構がはたらいているからです。
そのどこかにうまくいかない部分があるために流産を繰り返すと考えられており、その診断のための検査。
その治療法も進んできています。
妊娠中のマイナートラブル
妊婦さんの身体は、妊娠週数が進むにつれて変化していきます。
- ホルモンの変化
- 体重の増加
- 脊柱の湾曲の増強
- 骨盤への重心の移動
- 間接のゆるみ
- 循環血液量
- 心拍出量
- 肺換気率の増加
- 子宮の増大によう圧迫
が原因です。そのため妊娠の時期により、いろいろな不快な症状がでてきます。
初期から16週くらいまでは、
- むねやけ
- 吐き気
- 嘔吐
- 便秘
- 頭痛
- 頭重感
- 立ちくらみ
- めまい
- ねむけ
- おしっこが近くなる
- 出血
- 腹部の痛み
- 不快感
などがあらわれます。
16週から28週までは、比較的に落ち着いている時期ですが、
- 便秘
- 頭痛
- 腰痛
- 腹部の不快感
- 全身の掻痒感
- 毛深くなる
- 頭髪の脱毛
- 手足のしびれ
- 下肢のけいれん
- 鼻血
- 歯ぎん出血
などがあります。
29週以降には、
- むねやけ
- 便秘
- 痔
- 頭痛
- 背部痛
- 腹部のはり
- 痛み
- 静脈瘤
- 下肢の軽いむくみ
- 膀胱の刺激症状
- 息切れ
- 動悸
- 手足のしびれ
- 下肢のけいれん
- 立ちくらみ
- めまい
- 仰臥位低血圧症候群「上向きで寝ていると子宮の圧迫で血圧が下がることによりおきる症状」
- 不眠
- おりものの増加
等です。
妊娠中に、以上述べてきた色々な症状が出てきますが、勿論これらが妊婦さんすべてに出るわけではなく、出る人、出ない人、これは有ったが、あれはなかったとさまざまです。
但しすべて妊娠のせいと思っていると、他の病気が隠れていることもありますので必ず、医師・助産師・看護婦に話すことが大事です。