どっさり・スッキリが基本です
理想の排便は体外に排出すべき便を十分量かつ快適に排便できる状態と定義されています。
腹部膨満感や腹痛を訴え来院された方を診察した時「便秘はありません」と話されていたのに診察で大量のガスや便が腸内に貯留していることは少なくありません。 数日に1度もしくは毎日でもそれなりに排便があると便秘と自覚されてはいないようです。
排便の量が少なかったり残便感がある、コロコロ便、力まないと排便できないのは普通ではありません。
便秘や下痢が継続すると「過敏性腸症候群」を疑います。
運動不足やストレスにより腸の運動・機能障害をおこしお腹が張ったりゴロゴロしたり、また腸の粘膜が過敏となり痛みを伴うこともあります。 長期化するコロナ禍で発生頻度が増えている病気の1つです。
十分な睡眠、規則正しい食生活やストレスの解消の他、脂質やカフェイン、香辛料や飲酒を控えることはもちろんですが、最新の研究では「小腸で吸収されにくい糖質(FODMAP)の制限」も注目されています。 小麦、牛乳、玉ねぎ、りんご、大豆、ヨーグルト、とうもろこし、蜂蜜などです。
これらの食品は小腸で分解・吸収されにくく大腸で異常発酵しガスを発生させることで過敏性腸症候群の症状を悪化させる可能性があります。一般的にお腹に良いとされている食品も含まれていますが、意外にも自分の体質に合わないこともありこれらを食べ過ぎた時に調子が悪くなることがあれば摂取量を控えて様子を見ることも大切です。 便秘や下痢になる命にかかわる病気はやはり大腸がんです。
女性が亡くなる最も多いがんは大腸がんです。
恥ずかしかったり苦痛を伴う不安から大腸カメラを避けている方も多いですが、自宅で下剤を飲むことができたり検査着の改良、鎮静・鎮痛剤の使用、女性医師による検査も増えており以前より苦痛は改善されています。 早期に発見されれば内視鏡の治療で完治できますので40歳を過ぎたら大腸がんの検査(便潜血検査・大腸カメラ)をお勧めします。
急な下肢の腫れ
函館も気温が上がってきて晴れた日には屋外で過ごしたり、作業したりすることが増えると思います。そこで注意したいのが急な下肢の腫れです。 下肢が腫れる病気は沢山ありますが、今回のキーワードは2つです。まず長時間の同じ姿勢です。例えば家庭菜園でしゃがんだままの作業やほとんど歩かないままで立ちっぱなしの場合です。長距離の車の運転も当てはまります。
次は脱水です。何時間も水分補給していない場合や屋内外を問わず気温が高い時です。このような状態の後に急に発症することがあるのが下肢静脈血栓症です。 静脈という血管の中で血液がうっ滞して血栓(血の塊)で出来る病気です。血液が下肢から心臓に戻りにくくなることで急に下肢が腫れるのです。
特徴は3つあります。第一は急に起こること、第二に片方の下肢の腫れ、そして第三は痛みです。大抵発症は急で、何日の何時頃からと言えます。何週間も前からということはありません。また両下肢が同時に腫れることは稀で、他の人に後ろからふくらはぎを見てもらうと左右差がはっきりわかります。
血栓の出来た範囲によっては大腿部まで腫れてきます。そして痛みはふくらはぎに多く感じられ、正座するように膝を曲げると違和感や痛みが増します。 この病気の合併症には生命に関わる肺血栓塞栓症があり、エコノミークラス症候群とも言われます。
まず正確に診断することが重要で、専門科は心臓血管外科や循環器内科です。
もし整形外科を受診する場合は下肢が腫れるまでの経過をしっかり説明しましょう。
まぶたの劣化は老化のバロメーター
マスク時代の今、第一印象は「目」で決まりますから、まぶたの劣化で老けた印象になってしまいます。以下の①~④がまぶたの劣化の主なものになります。
上まぶたには、目を開く役割があり、持ち上げる腱膜や筋肉が伸びてしまうと①眼瞼下垂になり目が開き切らない状態になる。②上まぶたの(痩せ)くぼみは、目の周りのハリを保つ皮下脂肪・コラーゲン・エラスチンの減少と筋肉の衰えによるもので、三重や四重にもなることもある。③下まぶたの目袋のむくみ・たるみは眼輪筋を下がらないように押さえているスジのような「リガメント」が緩むことにより、緩んだ分だけ下に外にたるみが大きくなり、まるで雪崩の様に、どんどん目袋は膨らみ下にたれる。④目の下のプヨプヨは眼球を保護するクッションの役割をするための脂肪の塊が前側に出てきてしまったことにより、元には戻らない。
①~④の症状は、もちろん加齢が原因なのですが、特に若い頃から美容に関心があり、目の周りもグリグリとマッサージなどを習慣的に行ってきた方に多くみられます。一生懸命お手入れすることが、かえって劣化の原因になってしまうなんて悲しいですが、顔は必要以上に触らないことです!顔の表情筋は幅広の平ゴムと思って下さい。パッティングやマッサージで伸びきったゴムは縮むことができなくなる➡皮膚を持ち上げることができなくなる➡たるんで下がりブルドッグ顔になる、という結果になってしまいます。特に目の周りの皮膚は全身で一番薄い皮膚です。目の周りのマッサージを続けていると、瞼の皮膚も伸びきって目が開きづらく①眼瞼下垂になり視界を邪魔する場合は手術が必要になることもあり眼科にご相談ください。②③④対策で劣化をなるべく遅らせるには、マッサージの習慣をやめましょう!
甘くないけど甘いもの 糖質とり過ぎていませんか?
GWも終わり、体重は増えていませんか?血糖値が気になる方はいませんか?甘くないけど甘いもの~たくさん食べてはいませんか?
まずは、主食のごはん茶碗1杯150gなら糖質は55g、角砂糖(4g)換算で13個分です。ラーメンの麺1人前200gとして糖質は55gとなり同じく角砂糖13個分です。そば・うどんでは1人前、角砂糖11個分位になります。じゃあ、ラーメン+ライスは?糖質を合わせると、角砂糖26個分になっています。紅茶に、角砂糖26個入れて飲んだりできませんよね?でもラーメン+ライスなら簡単に食べれますよね?(僕だけでしょうか?)おにぎり1個であれば、角砂糖10個分です。餃子であれば6個で皮だけで角砂糖5個分です。
このように、ラーメン+ライス・そばやうどんに、おにぎりをつけるなど、主食が重なるセットメニューは、糖尿病・血糖値の気になる方には、お勧めできないメニューです。このように、甘くなくても血糖値を上げる食事に気を付けましょう。糖質を少なくすると、食事量が減り、満足感がなくなるようであれば、お肉・お魚・大豆製品・葉物野菜を多めに食べてください。ラーメンであれば、ライスを頼まず野菜マシマシにしてもらう。そばなら、焼き鳥(塩)・お刺身・冷ややっこなどがおすすめです。食事の開始は、ベジタブルファースト。野菜サラダやおひたしなどをゆっくり5分以上かけて食べるように心がけましょう。5分以上時間をかけて食べるのはなかなか難しいですが、早食いは高血糖のもとになります。野菜をゆっくりよく噛んで食べると、食物繊維がその後の血糖値の上昇をおだやかにしてくれます。食後のデザートが食べたい方?今日は、身体を動かしましたか?動かしてなければ、デザートの量は少し考えましょう。
基本的に、糖尿病で食べてはいけないものはありません。無理は禁物、まずは、自分の食事~とくに糖質量について気を配る、その気づきが大切です。
胃カメラのお話
皆さんは胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査を受けたことがありますか?“苦しかった、こんな検査もう受けたくない”と思った方はいませんか?
実は近年の技術の進歩により”胃カメラ“は大きく変わってきています。胃カメラは経鼻内視鏡(直径5.4ミリ)と経口内視鏡(直径9.9
ミリ)があります。以前は経鼻内視鏡の画質が悪いといった欠点がありましたが、今は経口内視鏡と変わりません。咽頭反射が起きにくく、内視鏡が細いことからより楽に検査を受けられます。したがって鎮静をしないで(咽頭の局所麻酔だけ行い、起きた状態で)検査を受ける場合は「経鼻内視鏡」をお勧めします。
起きた状態での検査が怖い方は、鎮静下で(麻酔薬を用いて、眠った状態で)の検査がいいでしょう。その際は拡大観察機能や送水機能がついている利点があることから「経口内視鏡」をお勧めします。
平均5分間の検査ですが、検査の質は施行医の腕によって大きく変わります。ここからはとっておきのお話です。
僕は質の高い胃カメラ検査とは①患者さんに楽に検査を受けていただくこと、②胃がんを発見することのみではなく、そのリスク因子となる背景胃粘膜(ピロリ菌胃炎、自己免疫性胃炎、好酸球性胃炎など)を適切に診断することの2点であると考えています。特に②が施行医により”違いがでる“ところです。各部位の写真を撮影しながら、ピロリ菌感染状態(現感染、既感染、未感染)を評価し、胃がんの発生リスクが高いと判断した場合は通常光観察に加え、画像強調観察を併用して入念に観察する必要があります。一連の作業を短時間で行うためには高い知識と技術が要求されることから”違いがでる“ことがおわかりいただけたと思います。
当院で質の高い胃カメラ検査をご希望の際はいつでもご相談ください。
遠近両用コンタクトレンズと老眼
眼科の診療は、ほとんどが顕微鏡を覗きながらの診察になりますが、涙目の検査をする時など、肉眼で患者さんにすごく近づいて行うことがあります。
50歳を超えると、そのように近づいて検査する時、患者さんの目を見るのが辛くなってきてしまいました。老眼のはじまりです。
近視用のコンタクトをしている方で老眼になってくると面倒くさくなってきてやめてしまう方も多く見受けられます。
しかし、最近では「遠近両用コンタクトレンズ(以下CL)」という物があり、遠くから近くまではっきり見ることが出来るようになってきました。
はたして遠近両用CLの仕組みはどうなっているのでしょうか?
遠近両用CLはあの小さいコンタクレンズの中に、遠くが見える度数と近くが見える度数が同心円状に並んでいます。そして、遠くにピントのあう光と近くにピントのあう光の二つの光が常時目に入ってくるのですが、遠くを見ようと思った時・近くを見ようと思った時、それぞれに目的の光情報を頭の中でピックアップして、いらない光情報を半分カットしています。それ故逆にピントの合っていない光情報も、常に目の中に入っているためちょっとにじんだ様に感じられてしまいます。ですからレンズの大きな普通の眼鏡に比べて全てがすっきりというわけにも行かないのが実情です。それでも数日するとその見え方にも慣れてきて違和感が次第に消えていきます。
自分も初めて遠近両用CLに替えてみたときには、近くの文字がぐっと見やすくなり、診察の時も患者さんの目がよく見えるようになりました。
最近は「ゴルフをするのにスコアカードが見えない」、「老眼鏡をかけるのはファッション的にかっこわるい」ので遠近両用CLを希望しますというような、50歳になってCLを初めて使う方も増えてきます。
睡眠と疲労
疲労は疲れを自分で「疲れた」と認識した状態です。体の不調、したくない無気力感などのいろいろな自覚症状で感覚―認知という脳の高次機能中枢いわゆる「メインコントローラー」による訴えで、発熱、痛みとともに「体の3大アラーム」のひとつです。このアラームをそのままにすると死んでしまうこともあります。
疲労についての調査で、15歳から65歳までの回答者の6割が「今疲れている」と答えています。このような疲労を「睡眠」という休息方法でリセットして、体や脳が再び活発に活動できるようにすることができます。
「睡眠」というリセットをしなければ重大な様々な症状が生じます。運動によってある程度疲労はリセットできますが、疲れ果てた脳は「睡眠」「眠ること」で初めて休息、そして脳をはじめ様々な臓器をリセットする機会を得ることができます。そして、「強く眠りたい」と欲する本能的欲求である眠気の時は疲労における警報です。この状態は眠たいにもかかわらず、かえって眠りが浅く不快感が生じたり、胃腸の調子も悪くなり食べられない状態が生じたりします。この時は分子量が小さく消化に良いアミノ酸(BCAA)とビタミンB群をとることを勧めます。
また、睡眠中は呼吸や心拍など自律神経をコントロールする脳以外はほとんどの脳の機能は低下し、この積極的機能低下、機能遮断が疲労回復にはとってもたいせつです。
「時は金なり」いう言葉がありましたが…。速さ(迅速性、効率性)を優先することによって最終的に犠牲になるのが「睡眠」です。速さと利益が重要視される時代の犠牲者です。
そして、今は糖分や脂質の取り過ぎに神経を払い過ぎ、また、ダイエットもし過ぎて、逆に欠乏状態になる方も多く、多彩ですが、バランスの良い食事をとり、寝る時の携帯を見る欲望や欲求を抑えて、充分な睡眠を取ることがとっても大事です。
こむら返り
「こむら返り」は皆さんご存知でしょう。俗に「足が攣(つ)る」とか「足が攣(つ)った」とかと言いますね。脹脛の筋肉が硬く収縮して痛みを感じます。或いは足のユビが攣(つ)ることも有ります。
なぜ、こんなことが起こるのか、理由は分かっていないようで、色々な教科書を調べてみても、どんな病気の時に見られるかということは書いてありますが、メカニズムの説明は見つけられませんでした。ですから、これから説明する内容は、筆者の個人的考えであって、正解ではないかもしれないことを初めにお断りしておきます。しかし、当たらずとも遠からずと思っています。
患者さんから「足が攣(つ)る」と聞いた場合、血管が専門の医師は下腿静脈瘤を疑います。脹脛に青黒くトグロを巻いたように見える血管の塊りです。スポーツ選手の足が攣(つ)って、チームメートが脹脛を伸ばしてあげる姿を見かけます。この場合は、筋肉に「疲労物質」が溜まって起こると考えます。下腿静脈瘤の場合は、これと同じようなことが起きていると考えられます。つまり、静脈瘤のせいで、足に「血が溜まり気味」になり、運動したのと同じように「疲労物質」が溜まって、攣(つ)るのでしょう。
神経が専門の医師は、「足が攣(つ)る」と聞くと、腰の病気を疑います。「脊柱管狭窄症」などの病気があると、足を動かす神経が腰で障害され、脳のコントロールが効かなくなり、筋肉を収縮させるせいで「こむら返り」が起こると考えます。
「こむら返り」がしょっちゅう、特に夜寝ているときに起こる場合、こういう病気が原因のことがあります。下腿静脈瘤は、超音波エコー検査などで確認できますし、腰の病気はMRI検査で診断できます。いずれの場合にも、有効な治療方法がありますので、心当たりがある方は、医師に相談してみましょう。
世界緑内障週間
疾患に関連した啓発活動としてはピンクリボン運動が有名だが、眼科領域にも実は世界緑内障週間なるものがあり今年は3月6日(日)~12日(土)に設定されている。
緑内障では視野が影響を受けるが、端の方からひっそりと進行するため発見が遅れがちで、いざ視野欠損を自覚するほどにもなると余生へのインパクトが大きく、かつ今のところ根治療法がない(※進行を抑制する治療法はある)。だからこそ早期発見が重要で、「働き盛りのあなたも、症状がないあなたも頭の片隅に置いておきましょう」という啓発週間に一人でも多くの方へ訴えかける手段として2015年よりライトアップinグリーン運動が始まった。緑内障なだけにもちろん色は緑(グリーン)である。公式ウェブサイトの情報によると道内の主な施設ではさっぽろテレビ塔、札幌市時計台、五稜郭タワー、そして当院を含め7軒の眼科がライトアップを予定している。
ところでなぜ緑内障に「緑」という字が含まれるのか?緑内障という日本語名称は古代ギリシャに提唱された疾患概念であるGlaukosに由来し、この語が緑や青白色という意味をもつから「緑」という色があてられたらしい。緑内障の発作時に眼球の外観が青みがかりその色が病名に反映されたという説が一般的のようだが、私の知る限り発作が起きても青みがかることはないので合点がいかない。なお、現代における緑内障の疾患概念は大雑把に言えば「眼圧が原因と考えられる視神経線維の進行性萎縮とそれに伴う視野障害をきたした状態」であり、外観からわかるような眼球の色調変化を伴うものではなく、Glaukosの語源についても欧米の専門誌でも論争が繰り広げられるほどで、実のところ定説はない。まあ語源はさておき視神経や視野を評価する術のなかった時代に命名されたものが今日も生きている点は誠に興味深い。
コロナ禍におけるがん検診とこれから
新型コロナウイルス感染症は今だに終息のきざしが見えません。その影響をうける医療上の問題は救急患者の受け入れ制限や待機的手術の延期などにも波及しますが、もう一つ懸念されているのはコロナ感染症への不安からがん検診を控えることによる発見の遅れです。
がんは初期段階では症状がないことが多いことが特徴です。がん検診を定期的に受診し、早期発見・早期治療することにより、多くの方は助かることが分かっています。しかし、コロナを理由に受診を見送り次の受診までの期間が空いてしまうと、早い段階で発見できたはずのがんが進行した状態で見つかる可能性が高くなります。がんはコロナの収束を待ってはくれませんので、コロナ禍であってもがん検診は定期的に受診することが推奨されます。
現在国として推奨し各自治体で実施されているがん検診は胃・大腸・肺・子宮・乳腺の5つになりますが、それぞれの対象臓器によって検診方法は異なります。胃がんのように最初から内視鏡やバリウムのような苦しい検査を必要とするがんもあり、他のがんでも検診で陽性に出た場合はさらに追加で様々な検査を受ける必要があります。そのような中、2014年から国立がん研究センターを中心に研究が始められているマイクロRNA測定に期待が寄せられています。この方法では1滴の血液から13種類のがんを早期の段階から発見可能で、さらにその発見精度も95%以上というまさに夢のような検査手法です。現段階では数年以内の実用化を目指して有効性を検証する作業が急ピッチで進められています。この手法が医療現場に登場した場合はがん検診が一変する可能性を秘めており期待されるところですが、それが実現するまでの間は、命を守るためにコロナ禍であってもきちんとがん検診をうけておくことが大切です。