目の周りの美容法・・・眼科医の立場から
よく患者さんから、
①目の周りの皮膚がカサカサなので市販軟膏を塗っていますが、いいですか?
②顔用の軟膏を塗っても目の周りが真っ赤になりますが、続けて使っていいですか?
③疲れ目なので目の周りのツボを押していますが、いいですか?
④目の周りがたるんできたので一生懸命アイクリームを塗ってマッサージしていますが、効果ありますか?
⑤眼球をグルグル動かして疲れ目をとる体操をしていますが、いいですか?
などの質問をされます。
いずれの答えも「NO!」です。
①②→目の周りの皮膚は身体中で1番薄い皮膚です。
普通ならばゴシゴシ洗う必要のない部位なのですが、最近はアイメイクを落とすためにクレンジング剤を使用してコットンなどで強くふき取ってしまうので、細かな傷がつき、その傷から感染をおこし、皮膚炎になっていることが多いのです。
まつ毛のエクステやつけまつ毛の接着剤による皮膚炎も増加してきています。
このような時は、眼科の抗菌点眼や抗菌軟膏で治療すると治ってきます。
③④⑤→目の皮膚の下には目の開閉を行う眼輪筋という薄い筋肉がありますが、「ツボ押し」や「マッサージ」などで強い力が加わると、筋肉が伸びてしまい、かえって瞼がたれ下がったり、皮膚の弾力繊維が壊されて目の周りのシワが増えたりすることになります。
「マッサージ」をすればするほど、目の周りは垂れてくると思って下さい。
むやみに「グルグル目を動かす体操」をすると、網膜に穴が開きやすい所があった人にとっては、穴が開くきっかけになることもあります。
以上のように、目の周りをいつまでも美しく保ちたいならば「目の周りはそっと洗い、マッサージなどしない、自己判断の軟膏はつけない、むやみに眼球運動をしないこと!」です。
もし、目の周りに何か起きた場合には、必ず眼科を受診して下さい。
おしっこの悩み、歳のせいだとあきらめていませんか?
おしっこをしても、またすぐにトイレに行きたくなる。
急に尿意をもよおして我慢ができない。
夜中たびたびトイレに起きる。
このような症状でお困りの方は、原因を正しく調べることで症状を改善させることができます。
泌尿器科ではどんな検査が行われるのか不安な方も心配はいりません。
問診と腹部超音波など苦痛の少ない検査で簡単に診断することができます。
また、これらの検査とは別に排尿日記をつけてもらい、頻尿の種類を分類して、それぞれの場合にあった治療方法が選択できるような工夫もしています。
また当院ではこれまでに治療を受けていただいた方々の治療結果分析を行って、その分析結果を提供しています。
おしっこのことが気になって乗り物に乗れない、買い物の途中でしたくなったらどうしよう、夜中何度もトイレに起きるので昼間眠くてたまらないなど、頻尿は日常生活に大きな支障をきたします。
そして夜間の頻尿は体の健康状態にも悪影響を与えることが知られています。
現在は原因や症状に合わせた様々な薬が使えるようになりました。
また薬以外にも普段の排尿習慣を少し変えてみたり、むくみを抑える靴下を使うことで症状をやわらげることもできます。
おしっこでお悩みの方は、歳のせいだとあきらめないで、気軽に専門医にご相談ください。
爪水虫の塗り薬
これまで、爪水虫に対して効果的な塗り薬がなかったため、もっぱら内服薬が使用されてきました。
しかし内服薬は、まれにではありますが、肝機能障害が出ることがあるため、高齢者や多数の薬を内服している方には処方しにくい薬でした。
先月発売された新しい塗り薬は、爪への透過性が良く、爪の中や下にまで浸透して効果を発揮するため、これまでの塗り薬よりも効果が期待でき、主な副作用も、塗った部分の皮膚炎、刺激感などで、内服よりも手軽に使用できます。
また、ハケと一体型の容器なので、塗りやすいと好評です。
使用前に爪水虫と診断することが必要ですので、爪を少し削って、顕微鏡で水虫(カビ)の有無を確認します。
外用期間は約1年間と内服よりも長いので、内服と外用のどちらがご自身に合っているのか、医師と相談するのが良いと思います。
腎臓の働き
前回は腎臓の働きを長持ちさせるには? という話題でしたが、今回は腎臓の働きそのものについて重要なことを説明します。
腎臓には心臓が送り出す血液の20%という大量の血液が流れ込み、からだに必要な物質を捨てず、不要な水分および老廃物を捨てるという、ろ過をします。
そのため、腎臓機能が悪くなると水分がたまってむくみがでたり、老廃物がたまって吐き気や疲れやすさ、全身倦怠(けんたい)感などの症状がでます。
また、腎臓は赤血球を作るために必要なエリスロポエチンというホルモンや、骨を守るために必要なビタミンDを作ります。
そのため、腎機能が悪くなると、貧血が進んだり、骨がもろくなったりという症状がでます。
単におしっこをつくるというだけでなく、多くの大事な働きがある腎臓ですが、機能が悪くなっても初期には、ほとんど症状がでないものです。
健康診断など定期検診が重要ですから、忘れずにお願いいたします。
高血圧の基準値の変更に伴う混乱
今年の4月に、高血圧の基準値の変更に関して二つの学会からそれぞれの発表がありました。一つは日本高血圧学会、もう一つは日本人間ドック学会からでしたが、この二つの学会が示す基準値の意味には大きな相違がありました。ところが、一部のマスメディアがこの相違を説明することなく「血圧はもっと高くでも大丈夫だ」と思わせるような報道をしたため、高血圧治療中の患者さん達に大変な混乱を引き起こしてしまいました。
日本高血圧学会が新しく改訂した高血圧治療ガイドラインで変更した点は、主に若年・中年者(65歳未満)と後期高齢者(75歳以上)の降圧目標値でした。これまでの降圧目標値は、若年・中年者は130/85mmHg未満でしたが、新ガイドラインでは140/90mmHg未満へ緩和されました。また後期高齢者は140/90mmHg未満でしたが150/90mmHg未満へ緩和され、降圧による悪影響が無い場合には140/90mmHg未満を目指すこととなりました。
一方、人間ドック学会が発表した「健康者の血圧の上限は147mmHg」という値は、2011年にドック健診を受けた人の中から、その時点で健康な人(約1万5千人)の血圧の分布範囲の上限値が147mmHgであったという事実を示したにすぎない数値でした。つまり、ここまで下げれば将来の脳卒中や心筋梗塞などの発症を減らせるという数値ではありませんでした。
高血圧の治療の目的は将来起こる疾患を予防することですので、「今は健康である」という人の血圧の上限値は降圧目標値にはなり得ません。日本高血圧学会のガイドラインの基準値は、世界や日本で行われてきた一般住民の科学的な長期的追跡調査の結果から導き出された最新のものですので、その降圧目標値の信頼性は高いものと考えて良いでしょう。
乗り物酔い
行楽シーズンになりましたね。
旅行に出かける方も多いのではないでしょうか。
でも、乗り物酔いになってしまうとせっかくの旅行も台無しですね。
古代ローマ帝国の皇帝シーザーや映画「アラビアのロレンス」のモデルとなったトーマス・エドワード・ロレンスも乗り物酔いに悩まされていたそうです。
では、乗り物酔いはどうして起こるのでしょうか。
私たちは普段の動作やさまざまな乗り物からの感覚情報を経験として脳に記憶しています。
乗り物に乗ったとき、入ってくる感覚情報がこれまでの経験や記憶のパターンから予測される感覚情報と一致しないと情報処理に混乱が起こり乗り物酔いが引き起こされると考えられています。
従って経験パターンが豊富なほど乗り物酔いが起こりにくくなると言えます。
普段からできるだけ多彩な身体の回転運動や振動運動を体験し、感覚情報のパターンを記憶させておくことが乗り物酔いの予防につながります。
しかし、すべての乗り物に適応できる運動や訓練を行うことは難しいので具体的には以下の様な予防対策をしていただくとよいと思います。
出発前:
①前日に十分な睡眠をとる。
②軽く食事をとり空腹を避ける。脂肪分の多い食事を控える。
③乗る前に排便を済ませる。
④体を圧迫する様な衣服を避け、ネクタイやベルトをゆるめる。
⑤酔いやすい人は乗車30分前に酔い止めを服用する。
移動中:
①揺れの少ない座席を選ぶ。
②後ろ向きの座席を避けて進行方向が見える前の方の座席に座る。
③遠くの景色を眺めるようにする。
④読書やスマートフォンの操作を避ける。
⑤寝るように心掛ける。
歯周病とは
歯周病とは歯自体ではなく、歯にとって大切な土台になる歯茎や顎の骨に炎症を起こしたりすることによって、周りの組織を破壊する病気のことをいいます。
歯周病は成人を過ぎると8割くらいの方が該当するくらいあり、今までに虫歯に縁が無かった人でも調べてみると歯周病になっている方もたびたび認められます。
症状としては歯茎のみの炎症である歯肉炎と歯茎以外にまで炎症が進行する歯周炎があります。
歯肉炎とは歯茎が炎症を起こしている状態で周りの歯茎よりも赤くなって腫れている為歯ブラシなどが当たったりする刺激で出血しやすくなっていますが、痛みに対しての自覚症状が無い場合が多いです。
歯茎の周辺の歯の根元に歯垢がたくさんたまっていますが、歯科医院で歯垢除去をおこなったり食事をした後に丁寧なブラッシングをすることによって改善されていきます。
しかし歯周炎にまで進行すると歯茎のみの炎症で済んでいた炎症が歯を支えてる歯根膜や顎の骨、歯の根元まで炎症が広がります。
歯周ポケットが深くなり根元が露出し今までよりも歯が長くなったように感じます。
さらに進行すると歯を固定する力が弱くなってしまう為に歯が動いてきたり、歯垢、歯石がつきやすいために細菌が増殖し歯肉の突然の腫れや痛みが出ることがあります。
歯周病は生活習慣病として位置づけられ食習慣、歯磨き習慣、喫煙なども関連があるので歯科医院の治療のみでなく個人の生活習慣の改善も大きく関与します。
歯や口は消化器官の一部の役割と同時に体全体とも繋がっているため、長期間慢性化することによって病原性を持った細菌が血液中に入ったり、また飲み込まれた口から心臓や肺などに病気を起こす可能性もあります。
歯周病を予防することは歯や口の健康を守るのみならず、全身の健康を守ることに繋がるため、歯周病が進行する前に歯科医院にて確認してもらうことをお勧めします。
ユマニチュード
最近、注目されている、認知症患者さんのお世話の仕方に「ユマニチュード」というのがあります。
テレビでも紹介されましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
基本的には、看護や介護を仕事とする方たちのための「技術」ですが、考え方の基本は、誰にでも役に立つと思います。
柱となるのは、「見る」「触れる」「話す」「立つ」の四つですが、紙面の関係で「見る」「触れる」についてお話します。
まず、「見る」とは、互いの視線を合わせて、存在を認め合うということです。
世話をする人が患者さんの存在を認めているというメッセージを送ることです。
具体的には、患者さんの正面に回ることが基本です。
こちらを向いていないときには、声を掛けて振り向かせたり、壁を向いて寝ている人にはベッドを動かしたり、座っている人にはひざまずいて目線の高さを合わせるなどして、とにかく視線を合わせます。
お世話を始める最初の段階です。
次に患者さんに「触れる」ときは、赤ちゃんに触れるように、広い面積で、ゆっくり、優しく触れます。
いきなり顔や手に触れないように、上腕や背中といった鈍感な所から始めます。
「つかまない」ように、親指を閉じて手のひらで触れます。
使う力は、せいぜい小学校低学年の子供程度です。
このユマニチュードの方法論から、馬の世話の話を思い出しました。
馬の世話をする時には、必ず声を掛けて、こちらに気付かせてから近づき、体に触る時、最初からデリケートな場所には触れず、離れたところから、徐々に目的の部位を触れます。
さもないと蹴飛ばされるそうです。
馬は臆病なので、安心させるためにこういう注意が必要だといいます。
認知症患者さんも、不安の中、警戒心が強くなっています。
スムーズなお世話には安心、信頼が大切です。
動物と人を一緒に語ることに批判的な方もいるでしょうが、近年、動物と人間には共通点が多いことから、動物と人間の病気を一緒に見るという考え方があります。
これについては別の機会にお話しましょう。
妊娠期の口腔ケア
妊娠すると体の変化が起こりますが、そのうちの1つに酸っぱいものが欲しくなるなど、嗜好に偏りが生じることがあります。
これはホルモンバランスや唾液の量の変化が影響を及ぼしているといわれています。
また、つわりはほとんど症状の無い方から、吐くことが多くて脱水症状になり、点滴を受ける方まで個人差があるようです。
つわりがひどければ、歯ブラシを口の中に入れるのが大変困難になります。
妊婦さんの歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)からは、増加するエストロゲン(卵胞ホルモン)を好む歯周病原細菌が多く検出されます。
また、プロゲステロン(黄体ホルモン)も増加することで炎症が起こりやすくなります。
これらは歯肉炎を起こし、妊娠性歯肉炎といわれています。
このような歯肉炎を防ぐために、歯科医院でのメンテナンスを行っていきたいところですが、つわりがひどい場合はなかなか歯科医院まで来院されるのが困難です。
その場合はご自身でのセルフケアが必要になりますが、まずは安静にして体調が良い時間帯に歯磨きをするのがいいでしょう。
歯ブラシは小さめの物を選んで小さく動かし、歯ブラシが舌に当たるのを避け、嘔吐感を少なくします。
歯磨き粉は臭いと味の刺激の少ないものを使い、顔を下に向けて歯磨きし、歯磨きの後はぶくぶくうがいをします。
メンテナンスが十分でなければ、歯肉炎だけでなく虫歯も悪化しがちです。
妊娠していない方に通常処方される痛み止めのお薬は、妊娠中の服用は避ける必要がある場合があります。
痛みが生じて痛み止めのお薬が必要な場合は、歯科医院でご相談の上、処方していただいた方がいいでしょう。
過敏性肺臓炎という病気をご存知ですか?
一般的な肺炎は細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染することによって引き起こされる炎症ですが、過敏性肺臓炎はそれ自体病原性や毒性を持たないカビや、動物性蛋白質などの有機物・あるいは化学物質などを繰り返し吸い込んでいるうちに肺が過剰反応を示すようになり、アレルギー性の炎症が生じて引き起こされます。
過敏性肺臓炎の症状は発熱や咳・呼吸困難感・だるさなどです。喘鳴(呼吸のたびにぜいぜいする)を伴う方も多く、レントゲン写真上は淡い炎症像を認めます。
抗原の多くは患者さんの自宅や職場に潜んでいるため、その環境から離れると症状が軽快・消失し、再びその環境に戻ると悪化します。
このような状態が続くと肺に繊維化と呼ばれる不可逆的な変化が生じ、慢性的な咳や呼吸困難感で悩まされることになります。
日本でよくみられる過敏性肺臓炎には以下のものがあります。
①夏型過敏性肺炎:高温多湿になる夏季に発症しやすく、冬季にはみられません。湿気の多い古い家屋を好むトリコスポロンというカビが抗原です。
②農夫肺:北海道や岩手県などの酪農家にみられ、干し草のなかの好熱性放線菌というカビが抗原です。
③換気装置肺炎(空調肺、加湿器肺):清掃を怠ったエアコン(空調)や加湿器に生じたカビ類を吸い込むことによって発症します。
④鳥飼病:鳩やインコなどの鳥類を飼育している人、あるいはその周囲で暮らしている人に発症します。抗原は鳥類の排泄物にふくまれる蛋白質といわれています。
⑤職業性の過敏性肺炎:キノコ栽培業者がキノコの胞子を吸入して生じる過敏性肺炎やポリウレタンの原料であるイソシアネートを吸入して生じる過敏性肺炎などが知られています。
北海道では農夫肺・キノコ栽培者の肺炎が多いです。
治療法は抗原からの回避とステロイドホルモン剤です。
頻度の高い疾患ではありませんが熱や咳などの症状が繰り返される方は過敏性肺臓炎を起こしていることがあります。