歯科における院内感染対策
最近、歯科での院内感染拡大を懸念する報道がありました。
「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針」(厚生労働省)を基に衛生管理のチェック項目を考えてみました。
1.患者さんごとにグローブを交換していたか?(スタッフを含む)
2.患者さんごとに治療用イスを清掃していたか?
3.患者さんごとに口腔(こうくう)内に入る器具を滅菌していたか?
4.滅菌できない物、コップやエプロンなどは使い捨ての物を使用していたか?
歯科は血液や唾液に触れる機会が多く、院内感染のリスクが高いと言われ、特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルスなどの感染が危惧されます。
衛生管理は患者さんから見えづらいですが、医療の根幹とも言うべき重要な仕事の一つです。
何か疑問点などがあれば、先生やスタッフに尋ねるなど、安心して治療を受けることをお勧めします。
デイサービス、デイケアの違いについて
デイサービスはデイサービスセンターや特別養護老人ホームなどに通って、入浴、食事、機能訓練、レクリエーションを行います。
特に家にこもりがちな方は、他の利用者との交流により、気分転換を図ることができますし、家で介護されているご家族にとっても日中に自由な時間を作ることができます。
デイケアは介護老人保健施設や病院などに通って、主治医の指示を受けた専門スタッフが理学療法、作業療法、言語聴覚療法などのリハビリテーションを行います。
心身機能の維持回復、排せつや入浴をはじめとする日常生活をできるだけ自分で行えるようにするためであり、機能訓練が必要な方に適しています。
ただし、最近では入浴や食事のないリハビリに特化したデイサービスもありますので、利用される方は担当のケアマネージャーとよく相談をしてご利用ください。
より苦痛の少ない胃カメラへ
私が医師になった30年ほど前の胃カメラは口から入れるタイプ(経口内視鏡)しかなかったので、検査中ゲーゲーするのが当たり前の光景でした。
時代は変わり、近年は鼻から入れる細い内視鏡、いわゆる経鼻内視鏡が広く行われ楽に検査できるようになりました。
口から入れるのが当然と思われていた胃カメラを鼻から入れようと最初に考えた人は誰だったのでしょうか?
経鼻内視鏡が登場する前から耳鼻科ではのどの奥をみる内視鏡(喉頭鏡)、呼吸器内科では気管支をみる内視鏡(気管支鏡)が使われていました。
それらは当時の胃カメラに比べると細いものでしたが、その分長さも短くて機能的な制限も数多くありました。
1983年のある日、耳鼻科医が気管支鏡を使って鼻から食道まで入れて観察したのが経鼻内視鏡の始まりと言われています。
93年には当時最も細く小児の口からも挿入できる胃カメラが発売され、それを大人の鼻から入れて胃の検査に使う医師が現われました。
いよいよ本格的な経鼻内視鏡の始まりでしたが、当初はまだ画質も粗く、レンズを洗浄する機能がないなどまだまだ経口内視鏡には劣る状況でした。
その後の技術革新とともに機器の改良が進み、現在では昔の胃カメラと遜色なく検査できるまでになっています。
経鼻内視鏡は鼻炎などの病気を持っているとせまくて挿入できなかったり、通過時に痛かったり、検査後に鼻血が出る場合もありますので経鼻内視鏡がすべてに優れているわけではありませんが、最大の利点は挿入時に舌の付け根に触れることなく挿入できるため嘔吐(おうと)反射(ゲーゲーすること)がほとんど起こらないということです。
検査後、患者さんに尋ねると、ほとんどの方が経口内視鏡に比べて検査が楽だったと答えています。
私自身も実際に経鼻内視鏡で検査を受けてみて、「これで胃がんで命を失わずに済むなら我慢できる範囲」の苦痛だと感じました。今後ますます楽にできる方向へと発展していくことでしょう。
ロービジョンケアについて
皆さんは「ロービジョン」という言葉をご存知でしょうか?
さまざまな原因で通常のメガネやコンタクトレンズによる矯正、手術などの治療を行っても見え方の改善が難しい状態を言います。
私たちの眼は、視力や視野などのさまざまな視機能で物を見ています。
先天的あるいは後天的に角膜や水晶体、網膜、視神経から脳に至るどの部分が障害されても物が見えにくくなり、日常生活に不自由を生じてしまいます。
具体的には角膜疾患や白内障、糖尿病網膜などによりまぶしくて歩きにくい、かすんで字が読めない、テレビが見にくい、人の顔が判別出来ないなどの症状があります。
また加齢黄斑変性などの網膜中心部の疾患では視野の中心が暗い、ゆがむなどにより読み書きができにくくなります。
緑内障や網膜色素変性などでは視野が狭くなり歩きにくい、物を探せない、人や物にぶつかるなどの症状で生活しづらくなります。
このような治療の困難なつらい症状をさまざまな方法で少しでも緩和させる事を「ロービジョンケア」といいます。
まぶしさには遮光眼鏡、字の読みにくさにはルーペや拡大読書器、視野の狭さにはアイムーブメントトレーニングなど患者さん一人一人のニーズに合わせてケアを行います。
これらは全て健康保険で受けることが出来ます。
また、さらに視覚障害の強い患者さんに対するケア方法として音声時計、音声パソコン、音声図書などの音声を使ったケアもあります。
場合によっては見えにくい眼を酷使し疲弊するよりも音声を使う方が良い事もあります。
今後日本は超高齢化社会を迎え、医療の進歩によって見えやすくなる患者さんばかりではなく、残念ながら「ロービジョンの方」も増加すると言われています。
既に前記の症状などでご本人やご家族にお困りの方がいらっしゃいましたらぜひ「ロービジョンケア」を受けて下さい。
日常生活の改善や諦めていた趣味や生きがいが再び見つかるかもしれません。
発熱~生体防御の大事な武器~
以前は発熱したら薬で下げるというのが一般的でしたが、最近では安易に熱を下げない方が良いとされています。
なぜなら発熱自体が体を守る大事な武器だからです。
人間の体にウイルスや細菌が侵入すると免疫細胞が発熱を促す物質を出して発熱が起こります。
体温を高くすることで病原体の活動を弱め、免疫を担当する細胞が活発に活動できるようになります。
ここで、薬で熱を下げすぎてしまうと防御反応がうまく働かなくなりますので感染症が長びく結果を招くことになります。
体温計の数値で機械的に熱を下げることは最も良くない方法です。
熱冷ましは患者さんの状態を見てぎりぎりまで使わないのが賢い方法です。
比較的元気な方の発熱は高熱であっても心配要りません。
ただし、発熱時は脱水状態になりがちですので小まめに水分補給をするように心掛けて下さい。
加齢性白内障だけでは、失明しません!
水晶体が白く濁る白内障になると、視力が低下してきます。
先天性白内障(風疹など)・外傷性白内障・糖尿病白内障・アトピー白内障・併発白内障(ぶどう膜炎など)・その他(放射線やステロイド薬剤)などいろいろな原因で白内障になりますが、最も多いのは加齢によるものであり、60歳を過ぎると少しずつ加齢性白内障が出てくるようになります。
症状は
①かすんで見える
②まぶしくなる
③暗くなると見えにくい
④二重・三重に見える
⑤老眼鏡なしで近くが見えやすくなる、などです。
水晶体には神経や血管がないので、痛みや充血はおきません。
加齢性白内障は病気ではなく、初期は進行予防の点眼薬で様子をみて、症状が強くなったら手術をして視力を取り戻すことができます。
加齢性白内障ですぐに失明はしないので安心して眼科を受診して下さい。
ただし、進み過ぎてからでは手術ができなくなることもあるので、定期的に眼科で進行度合いを検査することをお勧めします。
寒くなると涙目? 乾き目?
冬場は空気が乾燥してきますが、それに加え暖房を入れるとなおさら室内の空気が乾燥してきます。
そうすると目が乾く、ショボショボするという患者さんが急に増えてきます。
乾き目=ドライアイの患者さんには2種類あります。
涙が根本的に少ないタイプと、涙の量は正常なのに乾き目になってしまうタイプです。
前者はシェーグレン症候群と呼ばれ、涙の他に唾液も少なくなって口も渇く病気です。
後者は結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)といって白目の表面の皮=結膜がだぶついたり、瞼の縁にある脂肪の分泌腺から脂肪が出て来にくくなってしまうことによって、涙が目の表面で安定しなくなり蒸発しやすくなってしまうという病気です。
ドライアイの治療には、点眼薬治療と、手術療法があります。
涙は油層・涙液層・ムチン層の3つの層から成り立っています。
そのため、点眼薬としては、涙を安定させる働きのヒアルロン酸や、涙とほぼ同じ成分の水分を補給する人工涙液、ムチンの分泌促進の点眼薬があります。
手術療法としては、目頭にある涙の下水の入り口=涙点(るいてん)にプラグという詰め物をして少しでも涙が目にたまるようにしたり、だぶついた結膜を引っ張って伸ばして縫い付ける手術をします。
EYES CURE®(アイズキュアー)というドライアイ用のメガネも有効です。
スキーのゴーグルのようにレンズ・フレームと顔の隙間を埋めるパッドがあり涙の蒸発を防いでくれます。
また、加湿器の役目をする水タンクが付いてタンクから蒸発した水蒸気が目を潤してくれます。
ドライアイにはいろいろな原因がありますので、その原因によって使う目薬も治療法も変わってきます。
乾き目を感じた時には、どのような治療方法が自分に適しているのかを、まず専門医に相談してみてはいかがでしょうか。
インフルエンザ、重症化を防ぐために
インフルエンザはワクチンで予防する事が大切ですが、罹患しても適切な時期に診断され治療を開始すれば早期に治癒する病気となりました。
しかし中には脳炎や肺炎など重症化するケースがあるのも事実です。
最近の研究でインフルエンザの重症化を防ぐ物として色々な方法が徐々に見いだされてきました。
ご存じの通りワクチンはインフルエンザにかからないことを保証する物ではなく重症化を防ぐ物として接種しています。
現在日本では鶏卵を使用してワクチンを製造していますが、ここに一つワクチンの効果が落ちる理由が隠されています。
この対策として鶏卵を使わない新しい方法でワクチンを製造する方法が数年の間に始まる事になっています。
さて実際インフルエンザに罹患してしまった場合、抗インフルエンザ薬を処方して貰うと思います。
薬を飲めば数日の間に解熱し快復に向かいますが、実は抗インフルエンザ薬を使用すると獲得免疫が非常に出来にくくなると言われています。
ところがクラリスロマイシンという抗生物質を一緒に内服すると抗体産生に強い味方となる事が分かってきました。
抗生物質としての効能以外の効果です。
インフルエンザは形が変わりやすいとは言え抗体が出来るメリットの方が大きいので最近はインフルエンザ薬と一緒に処方されることが増えてきています。
また既存の高脂血症治療薬の一部に脳症や脳炎の予防効果が見つかったり、栄養ドリンクに配合されているDADA(ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン)がウイルス量を減少させる可能性があることが実験で分かってきています。
実際にはその効果がまだ人で確かめられたわけではなく実験段階ですが、今後インフルエンザの治療において重要な役割を果たす可能性があります。
インフルエンザに罹患してしまったら薬だけでは無く食事を取ることが非常に重要です。
水分だけでは重症化を防ぐことが出来ませんので解熱剤をうまく使用しましょう。
歯列矯正を受ける時期はいつがいいのか?
歯列矯正は、乳歯と永久歯が混在している時期(1期治療・小児矯正)と永久歯がほぼそろった時期(2期治療・本格矯正)の二つの時期が主な治療のタイミングとなります。
しかし、乳歯列でも治療を開始した方がよい場合もあり、治療のタイミングは症状や諸条件によって異なります。
お子さんの歯列矯正の場合、永久歯が全部生えそろった時点で、きちんとした歯並び・かみ合わせにするために、今何をすべきかと考え、治療方針を決定する必要があります。
目先のことだけ考えて治療にあたっていては対応できません。
そして、歯並び・骨格の状態だけではなく、お口の衛生状態、ご家庭のご事情、親御さんや治療を受けられるご本人のお気持ちなどを総合的に考え、治療のタイミングや装置の選択を行います。
1期治療(あごの成長や歯の生え変わりが盛んな時期の歯列矯正)は、不確定な要素が多く、ある面、大人より診断、治療が難しい時期ともいえます。
しかし、その変化に富んだ時期だからこそ可能になることも数多くあります。
あごの成長を利用した治療が可能であったり、歯の動きが早かったり、かみしめた際の歯の痛み・違和感が少なかったり、歯を抜かないで済んだり、歯や歯ぐきへの悪影響を回避できたり、数多くのメリットが挙げられます。
お子さんの歯並び・かみ合せが気になるようでしたら、お早目に矯正歯科医にご相談されることをお勧めします。
また、問題がないと思われる場合でも、できれば小学校低学年までに一度、矯正歯科医や小児歯科医に診ていただくことをお勧めします。
気づかない問題が潜んでいる場合もあります。
また、歯ぐきがしっかりしていて、健康な方であれば、50代、60代以降の大人の方でも歯列矯正は可能です。
最近では、装置が目立たず、歯の痛み違和感が少ない、その上、衛生管理もしやすいワイヤーを極力使用しないマウスピースを利用した矯正治療法もあり、人の目を気にせず、快適な日常生活を送りながら歯並びが治せる時代となっております。
(治療は保険適用外となりますので、費用に関しては歯科医へご相談ください)
乳房再建について
現在の乳がんの手術は、乳房温存術(乳房部分切除)が第一選択ですが、大きい乳がんや広範囲に拡がった乳がんでは乳房切除が行われています。
乳房を全摘出した方の中には、やはり、どうしても左右のバランス、乳房の喪失に伴う見た目の問題で悩んでいる人も少なくありません。
温泉などの公共の場から足が遠のいてしまうこともあると思います。
『乳房再建』という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
乳がんで失われた乳房を再び取り戻す手術を乳房再建と言います。
再建する方法には、人工乳房を用いる方法(インプラント)と自家組織を用いる方法があります。
以前は、人工乳房を用いる方法は保険適用外であり、乳房再建を希望する人は自費で行っておりましたが、2013年7月から、人工乳房を用いた乳房再建手術が保険適用となり、乳房再建を希望される方がさらに増えることが予想されます。
保険適用ではなかった時期は、約80~100万円程度の自費負担でありましたが、現在は、保険適用と高額療養制度を用いると、10万円ほどで乳房再建が可能になってきております。
実際、乳がんの手術自体も以前に行われていたような無理な温存手術が減り、安全に乳房全摘出した後に乳房再建を行うという選択肢が増えてきています。
実際の再建までの流れを、乳がんで乳房切除を行っている人を例にとってみます。
まずは、人工乳房を入れる部分に、皮膚拡張器(ティッシュエキスパンダー:簡単に言うと水の袋)を挿入し、数カ月かけて徐々に水を増やしながら皮膚を拡張させていきます。
その後、永久的な人工乳房(インプラント)に入れ替えを行います。
乳房再建は主に形成外科医が中心になって行いますが、乳腺専門医との協力が非常に重要です。
それぞれの資格を持った病院・医師にご相談してください。
しかし、これらの乳房再建は、美容の目的や予防のための乳房切除(遺伝性乳がんなど)には、保険適用がありません。
今後、乳房再建手術は、乳房切除をされた方の生活の質の向上に役立つ一つの選択肢になってくると思われます。