慢性腎臓病ってご存じですか?
腎臓とはどういう臓器でしょうか?腰の辺りに左右1個ずつある握りこぶし程度の大きさの臓器です。血液をろ過して、必要なものを再吸収し、不要なものを尿として排せつする臓器です。
それ以外にも、赤血球を作るホルモンや血圧を調整するホルモンを作ります。慢性腎臓病とは、腎臓が何らかの原因によりダメージを受け、血液をろ過する能力が落ちてしまう病気です。
初期に症状は何も無いため、検査を受けなければ分かりません。「ちょっと血圧が高いけど、まあいいや」「コレステロールが高いけど、何も症状が無いので、様子を見よう」などと、生活習慣病を長年見過ごすことにより、腎臓にダメージが蓄積して発症してしまいます。
このように、わが国の慢性腎臓病は、生活習慣の変化や高齢化を背景にして年々増加し、成人の8人に1人が慢性腎臓病と報告され、日本透析医学会の報告では、令和2年末で34万7千人の透析患者さんがいるそうです。※1
また、この慢性腎臓病は、心筋梗塞や脳卒中といった心血管病や認知機能障害とも深く関わっており、健康寿命を脅かす新たな国民病と呼ばれています。 慢性腎臓病は、血液検査や尿検査を行うことで診断できます。
血液検査で、血清クレアチニン値をもとにした推算GFR(eGFR)と呼ばれる検査値が59以下の場合、慢性腎臓病を疑います。それ以外には、高血圧や高脂血症などの疾患に伴いタンパク尿が出ている場合です。
まさか、ちょっと血圧が高いけど、放置しただけで知らないうちに腎臓が悪くなるなんて…しゃれになりませんよね。最悪の場合、高血圧を放置→慢性腎臓病→腎機能の悪化→慢性腎不全→透析という流れもあり得ます。
これを知っていれば、たかが高血圧とは、いえませんよね。 検診を受けていない人は、ちゃんと検診を受ける。検診結果で、生活習慣病に関わる数値が気になるのであれば再検査を受けるなど、症状が無くても自己判断で放置しないように気を付けましょう。
※1日本透析医学会誌54(12):611-657,2021
目元を清潔に若々しく!
マスクをするようになって、アイメイクに力を入れるようになった方は多いかもしれません。しかし、目元は、大変デリケートな部分なので行き過ぎたアイメイクやお手入れは禁物です。
①目の下の皮膚は、厚さ0.5㍉位と極めて薄く、ゆで卵の薄皮程度しかないのでくまができやすいです。睡眠不足・日焼け・クレンジングによる摩擦・マッサージや加齢によるたるみなどがくまの原因となります。
もしくまができると、見た目年齢が上がってしまいます。加齢によるたるみは仕方ないとしても、若い頃から濃いメイクを落とすために、クレンジングでこすったり、目の周りをマッサージするのは、どんどんくまを作る行為です。
できてしまったくまは、市販化粧品よりは有効成分の濃度がずっと濃い医療機関専売の薬用化粧品などでたるみや色素沈着が目立たなくなる場合もあります。
②まつげにのりで付けるエクステは、洗うと取れるので、まつげを洗わなくなり、とても不衛生です。また、濃いアイメイクやマスカラをきれいに洗えていない方もとても多いです。こういう方の目元には「まつげダニ」が、発生することもあり、眼科の診察で見つけることができます。
アイシャドーやマスカラは、使い捨てではなく、長期間使うので雑菌が繁殖しやすく、目元の炎症(マイボーム腺炎・麦粒腫)を引き起こす場合があります。眼科を受診し、アイシャンプーなどで清潔に保つ方法を指導してもらいましょう。
《美しい目元になるために》アイメイクは控える→目の周りの皮膚をきれいに保つ→エクステや濃いマスカラはやめて、自分のまつげが艶やかに健康的に生えるようにする→泡洗顔だけで清潔にする→摩擦が減り、目元の皮膚のたるみ・色素沈着が防げる→近くで見られても人工的ではない自然で清潔感がある目元こそが若々しさの秘訣です。
口腔乾燥症
最近口の中が渇くな、と思ったことはないでしょうか?
近年8020運動(年齢を重ねても歯を残しましょうという運動)の他に、口腔機能の衰えに関するオーラルフレイルや口腔機能低下症といったものが注目されるようになってきました。その中の一つに口腔乾燥症があります。
口腔乾燥症は、その名の通り口の中が渇く症状を表しています。夜眠っている間に口の中が渇き目覚めてしまう、食事をするときに唾が出ないため咀嚼がうまくいかない、口の中が乾いてヒリヒリする、食事のたびに口の粘膜が染みて痛いなど、多様な症状を呈します。
唾液は、耳下腺・顎下腺・舌下腺といった大きな器官の他に、口腔内に無数に散らばる小唾液腺といわれる器官から作られています。何らかの影響で、これらの器官が機能低下を起こしたとき、唾液量が減少し口腔乾燥症を発症します。この原因にはさまざまなものがあり、その原因に対応することで口腔乾燥症が改善することがあります。
例えば、加齢などに伴い唾液腺の機能が低下している場合には、機能を回復させるリハビリが必要であり、有名なものに唾液腺マッサージなどがあります。その他にも、薬で唾液腺の機能を回復させる方法などもあります。
また、薬の副作用の可能性もあります。高血圧、睡眠薬、抗アレルギー薬などさまざまな薬の副作用として口腔乾燥があります。それらの薬を内服されている方で口渇感がある方は、主治医の先生に相談することをお勧めします。
そのほか、口腔カンジタ症、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や、口を開けて眠るなどの習癖、ストレスなど多岐にわたります。 正しい原因の把握、治療、ケアなどで症状が改善することも多くあります。
気になる方は当院歯科口腔外科にも口の痛み・違和感外来がありますので、お気軽に相談していただければと思います。
進学・就職の時期になると・・・先天性色覚異常について
進学・就職の時期になるとよく相談を受けるのが、先天性色覚異常かどうか?という質問です。
先天性色覚異常は、男性の5%(20人に一人)、女性でも0.2%に見られます。
「色覚異常は一つの個性であって、色弱や色盲という言葉が差別やいじめを生む」という理由などから、健康診断で行われていた色覚検査が一時期廃止になり、就職時の検査でも一部の職種を除いてほとんど行われなくなりました。
さて、実際色覚異常の方はどんな見え方をしているのでしょうか? 網膜には赤・緑・青それぞれの光を感じる網膜細胞があって、その感じる力が弱い場合に色覚異常になります。
特に赤と緑の場合が多く、例えば、緑の葉っぱの中にある赤いきれいなツツジの花があっても、どこに花があるかが分からない、と言うことが起こります。 小学校で緑色の黒板に赤いチョークで文字を書かれると、よく読めなかったり、図工の時間に写生をするときに花や消防車の絵を描くこともあると思います。
家族・親戚に色覚異常があるお子さんの場合、小学校に上がる前に色覚検査を受けておいて、入学時に先生に相談しておくのが良いと思います。 眼科医をしていても、色覚異常の方がどう見えているとか、生活上どのような注意をしたら良いとかは実際分からないことばかりです。
そこで、当クリニックに来院された患者さんには参考になる本を紹介しています。
小さなお子さんには、「色弱の子供がわかる本 コミックQ&A」、就職を前にしている方には、「20人にひとりの遺伝子 色弱の子を持つすべての人へ」、の2冊です。ご家族はもちろん、ぜひ、学校の先生や会社の方にも読んでいただきたい本だと思っています。
脇の悩み
脇の悩みには脇の多汗症とわきが(腋臭症)の2種類があります。脇の臭いは、わきがだと思って来院される方が多いため、脇の多汗症とわきがの違いを説明する必要があります。
脇の多汗症は汗が過剰に出てしまう状態で、特に臭いはありませんが、時間がたつことで雑菌が繁殖して臭いを放つ場合があります。わきがは遺伝的な要素が強く、汗をかかなくても脇から独特の臭いが発生します。
脇の多汗症とわきがで悩んでいる方は、臭いや黄ばみ、汗の量、人に言われたことによって気になり出すというのがほとんどです。この悩みが症状にかかわらず、日常生活に支障を生じさせます。
治療方法は異なりますので、専門医(形成外科専門医・皮膚科専門医)を受診して、脇の多汗症かわきがかの診断が必要です。自分が考えていた症状名と診断にギャップが生じることがあります。 脇の悩みの治療方法は、自費治療と保険治療があります。
自費治療には、注射、手術、超音波、レーザーなどがありますが、最近は保険で多汗症の塗布治療を行う方法もあります。この方法は、脇の汗を出す指令をブロックする薬を脇に塗り、汗を抑えます。
一方、わきがの治療は、原因となるアポクリン汗腺のある皮膚を切除縫合する方法と皮下を削り取る皮弁法がありますが、入院が必要です。
治療の効果、安全性、治療期間、有効期間、費用など自分のライフスタイルに合った治療を選びましょう。脇の悩みは他人にはあまり言えませんが、軽症でも多汗症やわきがで非常に困っている方が多いので十分専門医と相談して納得した治療を受けて下さい。
片頭痛の新しい治療薬
今でも社会には「頭痛ごときで仕事や学校を休むなんて」という空気があると思います。そのために我慢を強いられている方も少なくないでしょう。
片頭痛は慢性頭痛の代表で、日常生活に支障をきたす厄介な病気です。しかし、トリプタン製剤の発売後、片頭痛の治療は随分改善されました。予防薬が3種類ほどあり、選択肢の幅も増えています(新薬ではありませんが、健康保険上の適用が拡大されています)。
ただし、トリプタン製剤は、それまでの頭痛薬に比べ、有効性の高い薬ですが、服用のタイミングを選ぶ(頭痛の早い段階で飲むのが良いとされている)こと、全ての患者さんに有効ではない上に、使いすぎると薬物乱用による難治性の頭痛を起こすことがあります。
予防薬も、万能ではない上に、痛みのない日も毎日服用しなければなりません。
最近、新薬がいくつか発表されました。発作予防のための注射薬は、国内で3製品が出ています。月1回の注射で済みます。
さらに、頭痛発作時の内服薬も新たに出ました。これは従来のトリプタン製剤と異なり、服薬のタイミングを選ばないのが特徴で、痛み始めでも、痛みが強くなってからでも効果があるといいます。
片頭痛のメカニズムはだいぶん解明されてきましたが、根本原因はいまだ不明です。
今の治療は、対症療法的で、完全には発作を予防できませんし、全ての患者さんの痛みをゼロにするには至っていませんが、治療の選択肢が増えたことは、患者さんやわれわれ医師にとって、大変うれしいニュースです。
これまで、頭痛を我慢していた方、従来の薬で満足できずに治療を諦めてしまっていた方は、改めて医療機関で相談することをお勧めします。
内視鏡とAI
最近AI(エーアイ)という単語を耳にする機会が増えています。AIとは「人工知能」の略称でコンピューターが人間に代わって思考や判断をするもので、多様な分野でその応用が始まっています。
将棋の名人とAIの対局なども話題になりましたが、医療分野も例外ではありません。AIはすでにレントゲンやCTなどの画像を的確に診断できるようになっており、レントゲンではすでに製品化され導入している医療機関もあります。
そして今、胃や大腸の内視鏡検査の世界にもAI導入の波が来ています。 内視鏡検査では進行がんのような大きな病変はあまり診断に苦労しませんが、早期がんの場合はサイズが小さい上に一つ一つ顔つきも違い、さらに周囲の正常部分との境界が分かりずらいことも珍しくないため、専門医でも発見や診断が困難な場合があります。
それは例えるなら複雑な模様が描かれた絵の中から特別な形を見つけ出す作業であり、長年の経験が必要となります。 人間では膨大な時間を要する多数の症例の画像をAIは効率よく短時間で学習し、診断能力を身につけます。そして検査の時にはモニター画面の画像をAIが分析し医師の診断を補完します。
具体的には1.異常病変の発見、2.発見した病変が良性か悪性かの判定、3.病変の範囲の判定、をリアルタイムに支援することでより早く正確な診断が可能となるため、結果的には患者さんの負担軽減につながっていきます。
学術の世界でも内視鏡検査におけるAIの有用性を報告する論文がすでに多数出ており、その評価は高まってきています。大腸の内視鏡ではすでに製品化が始まっており、胃の製品などは間もなく実現する見通しです。
今後内視鏡のAIが普及していけば、よりすばやく的確にがんを発見・診断できるようになるものと期待されます。
急性内斜視(スマホ斜視)
近年、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末などのデジタルデバイスの普及により私たちの生活は便利なものになりました。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、外出が制限され、自宅での時間が増えたことでこれらのデバイスの使用がより身近なものになったと思います。
このスマホやタブレットの長時間の使用により問題となっているのが「急性内斜視」です。内斜視とは黒目が内側によっている状態で、先天性のものや調節性(遠視や輻輳[寄り目]の異常)など原因は様々ですが、急性内斜視は突然発症する原因不明の内斜視です。
目は近いものを見るとき、目は、ピントを合わせる調節と黒目を内側に寄せる輻輳の2つの働きを行います。15〜20cm位の非常に近い距離でスマホを長時間見ていると輻輳の作用を強く受け、スマホを目から離しても目が内側に寄ったまま元の位置に戻らず、急性内斜視との関連が指摘されています。
急性内斜視が疑われた場合、両目で物を見たときに二重に見える(複視)、寄り目・斜視になるという症状で気づかれることが多いです。
スマホ使用を控えることで改善することもありますが、改善に乏しい場合は複視を矯正するためのプリズム眼鏡の使用を、それでも改善しない場合は手術やボトックス注射などの治療が必要になってきます。 「30cm未満の距離」、「4ヶ月以上に渡る1日4時間以上の使用」で急性内斜視が発症したという報告があります。
スマホによる急性内斜視発症の予防としては長時間のスマホやタブレットの使用を控えることが一番です。スマホの連続・長時間の使用を控え、使用途中には遠くを見て目を休ませるようにしてあげましょう。
爪水虫の内服治療には、抵抗がありますか?
爪水虫の内服薬で肝機能障害が起きることがあることを多くの方がご存じのようで、外用薬での治療を選択される方が圧倒的に多いのですが、果たしてそれでよいのでしょうか。 爪水虫が外用薬で治るかどうかは、爪水虫の程度、毎日きちんと塗れるか、そして爪の伸びる速度がかかわります。
症状が軽度であれば治る確率は高いのですが、重症なものではなかなか難しく、数年外用してもほとんど変化がない方もいらっしゃいます。そして毎日の外用は、塗る爪の本数が多くなったり、また高齢で腰が曲がらなくなると難しくなっていきます。特に爪が厚くなっている場合は、薬が浸透するように爪を薄く削るというひと手間も加わります。
爪の伸び方は個人差がありますが、やはりご高齢の方ほど爪の伸びが遅く、治りが遅い傾向があります。 水虫の原因は真菌(かび)で、爪の下に多くいます。内服薬だと爪と接する皮膚から薬が浸透しますので効果が高いのですが、外用薬の場合は、爪の状態により薬が下まで届かないこともあり効果が不安定です。
もし内服薬で肝機能障害が起きたとしても、軽症が多く、ほとんどが内服薬の中止により回復していきます。最近は3か月だけ内服し、内服薬終了後も爪に薬が留まるため、内服終了後は2か月に一度程度の診察だけで経過をみていく薬もあります。
爪水虫は以前よりも治る疾患になりましたが、内服薬と比較すると外用薬の効果は遅く完治する可能性も低く、そして塗る手間や通院回数を考えると、内服治療を最初から除外するのではなく、どちらが自分の生活に合っているかで検討してみてもよいのではないでしょうか。どうしても内服薬に抵抗があるという方は、最初は外用薬から開始して、効果がなければ内服薬に切り替えるという方法もあります。
足がむくむようになったら
足のむくみは、食事で摂った水分や塩分の一部が尿として排出されず下半身にたまってしまう状態です。
原因のひとつは腎臓からの塩分排泄の低下です。塩分は体内で水と一緒に移動します。塩分排泄が低下すると腎臓で作られる尿の量も減少してむくみます。
それに下肢の筋力低下が加わり足のむくみになります。ふくらはぎは第2の心臓とも言われ下半身の血液循環を担います。筋力低下により下半身の水分を上半身へ押し上げることができないので足がむくむのです。
足がむくむようになったら行うべき対処法
塩分の排泄が低下しているので、塩分の摂取を少なくすることでむくみの改善が期待されます。1日食塩量は成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満、高血圧や腎臓病など持病のある方では、6g未満が推奨されています。調味料や食品に表示されている「食塩相当量」を確認する習慣をつけて適正な制限を目指しましょう。
下肢の血液循環を良くするために踵を上げ下げする体操(カーフレイズ)もおすすめです。朝から夕方までまめに行うようにするとむくみが解消することがあります。弾性ストッキングを起床時から夕方まで装着したり、夕食前に下肢を挙上して30分くらい横になるのも効果的ですが、持病によっては禁止されることもあるので、かかりつけ医へ相談しましょう。
足がむくむようになったら注意すること
動脈硬化が潜んでいるかもしれません。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞、狭心症、腎臓病の原因となることがあります。動脈硬化以外の病気でむくみが生じることもあります。日中に尿が作られない分だけ夜間の尿量が増えて夜間頻尿になることも。
むくみや夜間頻尿が続いている方は、かかりつけ医などへの相談が必要です。