『NASH』(ナッシュ)という用語を聞いたことはありますか? 〜脂肪肝との違いは?

「NASH」という用語を聞いたことはおありでしょうか。
「非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steato hepatitis:頭文字でNASH)」のことで、これはアルコールによらない脂肪肝が肝炎に進展した状態です。
これまで、普通の肥満や糖尿病などのメタボリック症候群で起こる単純な脂肪肝は、それ以上進行しないとされていましたが、その中で10人に1〜2人はナッシュを引き起こし、さらには肝硬変・肝がんへと進行する例があることが分かってきました。
単純な脂肪肝では肝臓の細胞に中性脂肪が貯まっているだけで、肝細胞の壊死や炎症、線維化は見られず、原因が無くなれば改善し元に戻ります。
一方ナッシュではアルコール性肝炎と同様の肝炎が起き、一部は肝硬変・肝がんへ進行する例も出てくるわけです。
単純な脂肪肝の1〜2割が、どういう場合にナッシュに進展するのか、まだはっきりとは分かっていませんが、脂肪の沈着に続き内蔵脂肪細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれる因子や肝細胞での活性酸素の発生、さらに鉄蓄積などが加わった場合に発症するのではないかと推測されています。
診療において具体的に単純性脂肪肝からナッシュへの進展を疑うのは、肝機能のAST/ALT比の上昇(AST優位)に加え血小板の減少やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲンなどの線維化マーカーの上昇があります。
さらに専門的には、超音波により肝臓の硬さ・線維化を測定するエラストグラフィー(硬度画像診断)も開発されています。
治療としてはインスリン抵抗性改善薬や肝庇護剤、坑酸化作用のあるビタミンE、高脂血症治療薬などが試みられています。
日常的には適正体重の維持、メタボリック症候群の是正が重要です。
腸内細菌叢〈そう〉(腸内フローラ)とプロバイオティクス

最近「腸内細菌叢(腸内フローラ)」や「プロバイオティクス」などの話題が、健康との関わりからメディアなどでよく取り上げられるようになりました。
医療の世界でも、腸内細菌叢と炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)や大腸がん、さらに脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)などとの関わりが明らかにされつつあり、プロバイオティクスの有用性が報告されています。
ヒトの腸内には約1000種類、100兆個の実に多くの細菌が生息しているとされ、これらは植物が群生している様子に例えられ、腸内フローラ(植物群、叢〈そう〉)とも言われます。
これらの腸内細菌のうち、善玉菌と呼ばれる乳酸菌とビフィズス菌は、乳酸や酢酸などを作り腸の働きを整えます。
さらにビタミン類を作ったり、免疫細胞を活性・協調化させアレルギーを軽減する作用も知られています。
一方、悪玉菌と呼ばれる大腸菌やウェルシュ菌は腐敗物質を産生し、さらに発がん性を有する胆汁酸やニトロソアミンを作り出します。
さて「プロバイオティクス」とはなんでしょうか。プロバイオティクスとはアンチバイオティクス(抗生物質)の反対の用語で、“共に”(pro-)“生きる”(-biosis)、つまり「共生」という意味からきています。
定義としては「腸内細菌叢のバランスを改善し、人体に良い影響を与える微生物またはそれらを含む食品」のことです。
具体的には動物の乳を発酵させる「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などがあり、その食品がヨーグルト、乳酸菌飲料などです。
さらに植物性乳酸菌が作る漬け物、納豆(納豆菌)などもプロバイオティクス食品とされます。
また、食事では善玉の腸内細菌の栄養になる食物繊維(水溶性および不溶性)や、果物などに含まれるオリゴ糖(小糖類、プレバイオティクス)を摂取して、腸内細菌叢のバランスを整えることが健康にとって大切です。
健康診断の結果を確認していますか?
健康診断などで、血液検査や尿検査を行うと、普段あまり見慣れない検査項目の羅列で、見どころが分からない、と思ったことはありませんか?
腎臓の病気は、比較的ゆっくりと経過する場合があり、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、検査をして初めて発見されることもあります。
検査方法は腎臓病の種類によっても異なりますが、一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査は、慢性腎臓病(CKD)の早期発見のきっかけになり、隠れている腎臓病を見つけることができます。
尿検査では主に尿中にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを検査します。
通常、正常な腎臓であれば、尿中にタンパク質が出ることはありませんが、腎臓に何らかの障害があると、体に必要な成分であるタンパク質が尿中に排泄されてしまいます。
また尿中に血液が混ざっている場合、腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)などに何らかの病気があることが疑われます。
運動等でたんぱく尿や血尿が誘発されることがありますので、再検査が必要です。
血液検査では、「血清クレアチニン」をみます。「血清クレアチニン」は、血液の中にある老廃物の一種です。本来であれば、尿中に排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排泄されずに血液中にたまっていきます。そのため「血清クレアチニン」の値が高いということは、腎臓がうまく働いていないと判断できます。
この「血清クレアチニン」の値を年齢と性別で補正した値がeGFR(推定糸球体濾過量)です。
eGFRは腎臓が体に必要ない老廃物を尿中へ排泄する能力を示していて、このeGFR値が低いほど腎臓が悪いということになります。
尿検査でタンパク質や血液がみられたり、血液検査でクレアチニン値やeGFR値に異常を認めるような場合は、症状はなくとも腎臓の病気が隠れている可能性がありますので、最寄の医療機関にご相談ください。
オシッコの我慢は、とても優れた膀胱健康法

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おしっこが近い。
夜中に何度も起きてしまう。
トイレのことが心配で外へ出歩けない。
歳のせいとあきらめる前に膀胱訓練を試してみましょう。膀胱訓練とは、トイレに行きたくなっても我慢をする訓練のことです。おしっこの我慢は膀胱炎になるとか腎臓に悪いといわれた時代もありました。しかし現在は、さまざまな医学的研究から、排尿の我慢で病気にはならないことが確認されています。我慢を続ける時間は特に決まっていませんが、数分程度の我慢から始めて無理のない範囲で時間を延ばしていきましょう。毎日繰り返すことで徐々に排尿の間隔が開いていきトイレの回数が減少します。ただし膀胱炎や尿路感染症の方は膀胱訓練が禁止されています。明らかな排尿痛や下腹部痛、肉眼的血尿を自覚される方は、膀胱訓練を開始する前に必ず泌尿器科へ相談してください。
我慢しようとするけどすぐに漏れてしまう。
漏れるのが心配で膀胱訓練ができない。
頻尿症状が進むと、ほんのわずかな時間でもトイレの我慢ができなくなります。そのような場合には、一時的におむつを利用して我慢をする、または濡れても大丈夫なようにあらかじめトイレで排尿の準備をした状態で我慢をするのも良いでしょう。肛門を強く締めるようにすると我慢しやすくなります。
困ったときには、気軽に泌尿器科を受診しましょう。
どうしても膀胱訓練ができない場合や症状が強い時には、膀胱訓練に合わせて薬を飲んだ方が良い場合があります。また、頻尿の原因はさまざまであり中には排尿障害や膀胱がんなど重大な病気が原因となっていることもあります。膀胱訓練を続けても症状が改善しない時や、排尿困難や残尿感、痛みや出血など頻尿以外の症状がある場合には、泌尿器科を受診しましょう。問診と超音波検査などの簡単な検査により診断、治療が可能です。お困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
歯磨き粉の選び方について


薬局に並ぶ多くの歯磨き粉から自分に合った物を選ぶのは迷うものです。
今回は、歯磨き粉の選び方について書かせていただきます。
歯磨き粉には大きく分けて、歯磨き類(化粧品)と薬用歯磨き粉(医薬部外品)の2種類があります。
前者の歯磨き類は、基本成分のみの物で比較的安価です。
後者の薬用歯磨き類は、基本成分にプラスして薬用成分配合ですので予防や症状改善が期待できます。
少し高価にはなります。
また、
(1)虫歯が気になる方はフッ素濃度が高い歯磨き粉とフッ素のジェルとの併用
(2)歯周病が気になる方は殺菌・消炎・血行促進作用のある物
(3)白い歯にしたい方は、清掃剤・研磨剤・ステイン除去剤がある物など、ニーズに合わせて選択するのも良いと思います。
しかし、(4)口臭が気になる方は、特化した物はないので(1)か(2)プラス洗口剤の使用をお勧めいたします。
自分の現在の口腔内で注意しなければいけないことをかかりつけの歯科医院でお聞きになり、自分に合った物を使用することをお勧めいたします。
思春期の貧血
思春期のお子さんが慢性的な疲労や集中力低下を起こしていることはないでしょうか。
また中学に進学してから学力が伸び悩んでといったことも・・・。
その場合は貧血が隠れている可能性も考えなくてはなりません。
思春期は心も体も大きく成長する時期です。
そのため、酸素を全身に供給するために血液もこれまで以上に増やさなくてはなりません。
ところが女の子は月経も始まりますから出血により鉄分を失ってしまいます。
しかも不適切なダイエットなどをすると更に貧血も進行してしまいます。
思春期の女性のおよそ10%が治療を必要とする貧血、注意が必要な予備軍は20〜30%にものぼると考えられています。
思春期の貧血は意外と多いのです。
鉄分はもともと体内に吸収されにくい栄養素です。
鉄分は2種類あり、肉類や魚介類に含まれているヘム鉄と野菜類に含まれている非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は吸収力がよく食べた量の15〜25%が吸収されます。
非ヘム鉄は吸収率は5%と低いのですが、ビタミンCと一緒にとると吸収されやすくなります。
ほうれん草などの青菜類やブロッコリーなどは鉄とビタミンCを両方多く含むのでお勧めです。
また思春期の貧血では「スポーツ貧血」というものがあります。
これは運動によって何度も繰り返し激しい衝撃が加えられることで、赤血球が破壊されて起きる溶血性貧血という状態です。
何度も足の裏に強力な衝撃が加えられるスポーツと言えば長距離走や剣道、バスケットボールやバレーボールなどです。
思春期にある中高生は部活動での運動も活発になるためにスポーツ貧血も考慮しなくてはなりませんし、その場合は運動の休止をすることが貧血の改善につながることがあります。
運動を休みたくないという気持ちもあるかもしれませんが、貧血を改善することで結果としてスポーツの記録向上につながるかもしれません。
気をつけて!! 簡単に買えてしまう、おしゃれなカラーコンタクト!!
近年、おしゃれ目的の度無しカラーコンタクトレンズ(以下:おしゃれカラコン)が雑貨屋、洋服店、ディスカウントストア、薬局などで販売されており、コンタクトの使い方を知らないまま、手軽にそのカラコンを初めてのコンタクトレンズとして装用している若者が増えています。
しかも、それらのおしゃれカラコンによる目の障害が増加し続けていることは本人達にはあまり知られておらず、本当に目が痛くなって初めて眼科に来て、カラコンの障害の恐ろしさに気づくようです。
本来コンタクトレンズは、眼科で検査を受けて自分の目の形に合ったレンズを選んでもらい、使い方の指導を受けてから装用を開始するべき高度管理医療機器です。
では、眼科以外で販売されているおしゃれカラコンは何がまずいのでしょうか?
①眼科受診をせずに店で簡単に購入し、目に入れてしまうので形が自分の目の形に合っていない場合がある。
②コンタクトレンズは高度管理医療機器なので必ず厚生大臣の承認が必要なのに、おしゃれカラコンは未承認の物が多い(承認と書いてあっても実は嘘であることが多い)。
③角膜への酸素供給が極めて少ない昔の安い素材で作られている。
④レンズが厚く、さらに着色部分の凹凸で角膜に傷をつけてしまう。
⑤着色部分の色素(金属)が溶け出して角膜に傷をつける。
以上のような色々な原因が重なって、本当に目が痛くなってからやっと眼科を受診してくるのです。
2014年の国民生活センターのおしゃれカラコンユーザー1000人へのアンケート調査では、約24%が最近1年間に目の調子が悪くなったと回答しています。
ソフトコンタクトレンズは自覚症状が出にくく、重症になって初めて痛みを感じることもあるので、痛みが無くても異物感や充血を感じたら早めに眼科を受診してください。
角膜障害を放置すると傷から細菌感染を起こし、視力が低下し、最悪の場合は失明になるほどの炎症がおきてしまうこともあるのです。
今では医療用のカラコンも種類が豊富です。
危険なおしゃれカラコンではなく、眼科で安全なカラコンを作りましょう。
口腔清掃不良の意外な落とし穴
歯に付いている白いもの、つまりプラーク(歯垢)。
これは主に口腔内細菌と食べ物の残りかすからできています。
この中にはミュータンス菌(Streptococcus mutans)と呼ばれる虫歯を引き起こす細菌が含まれています。
ミュータンス菌は非水溶性グルカン(歯面にくっつく接着剤のようなもの)を産生し、歯面に強く付着する能力を持ち、虫歯を発生させます。
その他にコラーゲン結合タンパクも保有し、血流に乗って心臓まで到達した後に心臓軟組織に付着して、感染性心内膜炎を起こす起炎菌としても知られています。
最近の研究報告では、ミュータンス菌がこのコラーゲン結合タンパクを保有することで、お口から入ったミュータンス菌が脳血管の傷ついたところにくっつき、局所的な炎症を起こし、また出血を止める役割である血小板の凝集阻害を起こして、脳出血を起こすのではないかと考えられています。
歯周病菌細菌が動脈硬化や糖尿病などと関連があるのは以前お伝えしてきましたが、歯周病に罹患していなくとも、口腔清掃を怠るとこういった虫歯菌は増えていくことになります。
このような細菌が重大疾病に関連があるのは驚くべきことです。
私たちは毎日ブラッシングを行い、また歯間ブラシやフロスなどの補助清掃器具を細かく上手に歯面に当て、お口の健康を保っています。
また、歯間ブラシやフロスなどの補助清掃器具を細かく上手に歯面に当て、お口の健康を保っています。
また、萌出したての乳歯や永久歯をもつ子どもにはフッ化物を用いることが有効となります。
しかし、歯科医院へ来院し、口腔清掃やフッ化物塗布などをしなくとも虫歯に罹患せず、いわゆる「歯医者いらず」の方もいらっしゃいます。
虫歯の罹患しやすさは歯質の強さや食習慣など個人差があります。
このような虫歯になりにくい方でも、ご自身で清掃できなかった部分を歯科医院でキレイにしてもらうことは、健康の維持に有益であると思われます。
歯並びは変化し続けています

不正咬合(悪い歯並び、かみ合わせ)は、治療する必要があるのでしょうか?
放っておいてはいけないのでしょうか?
不正咬合は、つぎのような問題を引き起こすキッカケとなります。
①虫歯や歯周病、②口臭、③顎関節症(あごの病気)、④歯ぐき・粘膜・舌を傷つける、⑤発音不明瞭、⑥肩こり、腰痛、頭痛⑦コンプレックス、など・・・。
一方、歯並び、かみ合わせは悪いが虫歯もないし、今のところ不便は感じていないmという方もおられます。
しかし、油断は禁物です。
歯並びも人間の体の一部、一生を通じて変化しています。
お子さんの時期は成長、そして大人になると老化という変化が生じます。
不正咬合は不安定で、年齢を重ねていくうちにさらに崩れていく傾向にあります。
中高年以降は歯周病にもかかりやすくなり、不正咬合の悪化が歯周病を悪化させるという悪循環におちいり、体調不良や全身の病気の引き金となったりもします。
また、不正咬合がヒドイとしっかりした歯科治療が受けられないことも多く、歯の寿命を短くしてしまう可能性が増すので注意が必要です。
若い頃はあまり気にならない不正咬合でも、年齢とともに悪化し、虫歯や歯周病など、お口の中の病気だけではなく、全身の病気のキッカケとなりうることも知っておく必要があります。
「生活の質」を向上させ、健康で快適な人生を送るためには、整った“歯並び”、バランスの取れた”かみ合わせ”であるということは非常に重要なことです。
健康には気を付けている方でも、正しい知識をもって、歯やお口の中の健康増進に取り組んでいない方がおられると思われます。
今現在、歯並びやかみ合わせがあまりきにならない方でも、お口の中に関心を払い、できれば歯科医院へ定期的に通院し、虫歯・歯周病予防に努め、歯並び、かみ合わせの維持に努めることが望ましいです。
歯並び、かみ合わせに不安や疑問を抱いている方は、1度、矯正歯科医にご相談されることをお勧めします。
トイレが近いのは年のせいかと思っていました

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「治療前はトイレが心配でバスにも乗れませんでした。今では買い物中にしたくなっても家に帰るまで我慢ができます」
これは当院を受診されたある女性の言葉ですが、トイレに困って泌尿器科外来を受診された多くの方が同じような治療体験をされています。
急に尿意をもよおすからトイレのない場所へは行けない。
間に合わなくて時々漏らしてしまうことがある。
夜間何度もトイレに行くから眠れない。
年のせいとあきらめないで、また恥ずかしいとためらわないでぜひ1度泌尿器科へ相談してください。
頻尿や尿失禁の原因にはさまざまなものがありますが、細かな症状の確認と超音波検査などの簡単な検査で正しく診断することができます。
現在は原因に応じた治療方法も確立しているため多くの方が治療によって症状が改善しています。
「トイレの心配がなくなったから旅行に出かけられるようになりました」
「台所で見ずに触れても我慢ができるようになりました」
「夜あまり起きなくなったのでよく眠れるようになりました」
ただし治療効果が出るのに時間がかかる場合や薬だけでは良くならないこともあります。
「前に泌尿器科にかかって1カ月薬を飲んだけれど全然良くならないからやめました」
ときどきこのような話を耳にします。原因によっては効果が出るのに数カ月以上かかることもあります。
また、薬の治療以外にもトイレを我慢する膀胱訓練や、いくつかの運動療法、睡眠時間を適正にするなど生活習慣の改善を同時に行うことで初めて効果が得られる場合もあります。
過去に治療をしてうまくゆかなかった方も、あらためて泌尿器科を受診して治療がうまくゆかなかった原因を調べてみることをおすすめします。