MR(麻しん風疹混合)ワクチン2期は早めに打ちましょう
2015年に日本はWHOから麻しん排除宣言を受けました。
これは、MRワクチンが2回、接種率95%以上がお父さんお母さんの努力の結果でなされたためです。
しかし、国内からの麻しんの発生はほとんどなくなりましたが、海外から持ち込まれる麻しんの流行が相次いでおります。
昨年8月に関西空港から広がった麻しんの流行は関西空港関係者で33名の感染者を出しました。
平成28年では最終的に161名の麻しんの報告がありました。
持ち込まれた麻しん発端者の渡航先は東南アジアがほとんどで、2回の麻しんワクチン(MRワクチンを含む)を接種して発症した人は15%程度だということが分かっております。
今年になっても5月28日までの段階で165名の麻しんが報告されております。
現在は流行が続いている所はありませんが、これまでに10以上の報告がみられる都府県は、山形、東京、三重、広島となっております。
昨年の流行時にはMRワクチンの入荷が一時的に制限され、1歳台でのワクチンを優先させざるを得ませんでした。
MRワクチン2期は、来年小学校に入学するお子さん、つまり年長さんに行うとされており、6歳になってから行うというものではありません。
まだ、接種を行っていない年長さんは、出来るだけ早期にワクチンを受けるようにしてください。
日本脳炎のワクチンの連絡がきているお子さんはMRワクチンとの同時接種も可能ですので、併せて行ってください。
今年の夏休みに東南アジア方面に旅行を計画されている大人の方も、麻しんに罹ったことが明らかか、麻しんワクチンを2回接種している人以外は、渡航前に麻しんワクチン単独か、MRワクチンを打つことをお勧めしております。
ひとりひとりの方が、麻しんに対して強い警戒感を持っていないと、1000人に一人といわれる麻しんでの死亡を防ぐことができません。
小さな命を守るためにも、格段の注意が必要です。
機能性ディスペプシアという病気をご存知ですか?
心窩(しんか)部痛(みぞおちの痛み)、上腹部不快感(みぞおちの気持ち悪さや重苦しい感じ)、胃もたれ感(食べ物がいつまでも胃の中に残っている感じ)、早期飽満感(食べている途中で満腹感が出て食べられない感じ)はディスペプシア症状と呼ばれます。
ディスペプシアを訴える方は少なくなく、胃潰瘍や胃癌ではないかと心配して来院します。
しかし、ディスペプシアが長く続いていても、内視鏡検査で胃癌、胃・十二指腸潰瘍と診断される方は少数派です。
ピロリ菌による慢性胃炎と診断される方も半数以下です。
内視鏡検査や腹部エコーやCT検査を行っても、ディスペプシアの原因となる器質的疾患を認めない場合には、消化管の機能障害に伴って起こる症状、機能性ディスペプシアと診断します。
機能障害とは例えば、食べたときに胃のふくらみが悪い(胃拡張障害)と、早期飽満感と関連します。
胃の内容物が胃から排出されないで長く胃に残る(胃排出障害)と、胃もたれが起こります。
これらは、心理社会的ストレスが原因になります。
非常に悲しいあるいは緊張する出来事があると、一時的に食欲の低下や胃が痛くなる経験があると思います。
機能性ディスペプシアはそのような状態が慢性的に続いている状態と考えるとわかりやすいと思います。
機能性ディスペプシアの治療には、環境を変えてストレスを和らげることが重要ですが、治療に難渋し時間がかかることもあります。
症状を緩和させるのに複数の作用機序の違う薬剤を試みます。
私が北大で開発した飲水超音波検査は、水を飲みながら胃の運動を見ることで、胃拡張、胃排出、胃知覚の異常を評価します。
その結果によって障害を認めた胃機能に適した薬剤を選択することができます。
不妊治療における人工授精(AIH)の位置づけ
不妊検査→タイミング法(+排卵誘発)→人工授精(AIH)→体外受精(IVF)というのが現在の不妊治療の一般的な流れだと思います。
AIHは費用、手技の面でタイミング法とIVFの中間的な位置にありますが、運動精子を子宮に入れるだけでその後は自然妊娠と変わりないので、対象を選んで行わないと無意味な治療になってしまいます。
当院ではAIHの対象を
①頸管粘液の性状不良
②精液所見不良(重症例除く)
③ヒューナーテスト(性交後試験)不良かつ抗精子抗体陰性
④性交障害に限定し、原因不明不妊にはAIHより腹腔鏡による原因検索を優先します。
IVFでは卵は卵巣→体外(受精)→子宮と腹腔内を通らず着床に向かうことができるので、卵管因子、子宮内膜症など腹腔内の不妊原因や抗精子抗体の他、顕微授精を併用し重症の男性因子にも対応できます。
妊娠に至らなくても受精の有無がわかるので、受精障害の診断としても有用です。
前立腺がんについて
皆さんの周りで「隣の旦那さんが前立腺がんになったんだよ」「前立腺がんの検査に引っかかってしまったよ」という言葉を聞きませんか?前立腺がんってなに?そもそも前立腺ってなに?何の機能を果たしているの?
前立腺は精液の一部を作る臓器で生殖に非常に大切な臓器です。しかし、生命を維持する臓器ではありません。じゃあ、命に関わる臓器でないのならほっといてもいいのでは?と思う方もいらっしゃると思いますが、前立腺がんが原因で亡くなる方のほとんどが転移(リンパ節、他の臓器、骨の転移)によるものです。
世界を見渡すと前立腺がんは、欧米諸国では男性がんの中で大変多いがんとして知られており、アメリカでは男性がんの中で罹患率(病気にかかる比率)は1位、死亡率は肺がんに次いで2位というがんです。
近年、日本でも急激に増加してきています。1975年の前立腺がん患者は2000人程度でしたが、2000年には約23000人と急速に増加し、2020年には78000人以上となり、肺がんに次いで罹患数の第2位になると予測されています。平成17年度の厚生労働省の調査時点で、男性がんの中で患者数はすでに第1位となっておりました。前立腺がん死亡数も増え続
けており、2008年時点では約1万人、2020年には2000年の約3倍になると予測されています。
前立腺がんの検診には採血(PSA:前立腺特異抗原)が行われています。高いからといってがんが確定した訳ではありませんので、専門医に相談下さい。近年前立腺がんの治療も進歩しております。手術、放射線治療、薬物療法に大別されますが、より低侵襲、よりがんが確実にコントロールできるようになっております。早期発見が前提での選択肢の幅なので、まず50歳を過ぎたら一度は前立腺検診を受けられることをおすすめします。
息苦しさについて
階段を登ったとき、坂道を歩いたとき、平坦な道を歩いている時に息が切れていませんか?もし皆さんの中に、息切れで同年代の人と同じように歩けない方がいたら、病気が隠れているのかもしれません。今回は肺が原因の息切れの中で最も多い「慢性閉塞性肺疾患」についてお話しします。
「肺気腫」と「慢性気管支炎」を合わせて慢性閉塞性肺疾患と言います。「気管支ぜんそく」も含みますが、病態が少し違うので一般的には区別されています。慢性閉塞性肺疾患では、息吸った後「吐く」ことが上手くできず、吐き始めの吐く量が正常な人と比べ少ないのが特徴です。息が吐けないと、肺の中に空気がたっぷり存在していても、とても苦しいのです。試しに、息を吸ったところで止めてみて下さい。そのまま少しだけ吐いて、また吸う。ずっとそのまま小さな呼吸でいると、とても苦しいですよね。その状態で坂を登ろうにも、苦しくて登れないと思います。こ
れが慢性閉塞性肺疾患の方の呼吸状態のイメージです。実際には肺自体の機能も低下していて痰もあるので、もっと苦しいと思います。
慢性閉塞性肺疾患の肺では、両肺あわせて3億あるともいわれる直径0.2ミリ程の「肺胞」という臓器の一部が破壊されています。また、肺胞に空気を送り込んでいる気管支(空気が通るホース)の内側表面の粘膜に、常に炎症が起こり、粘膜が腫れて分泌物が出ますので、痰が発生し、気管支内腔径が細くなります。
日本には40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者さんが存在すると推定され、死亡原因の9位、男性に限ると7位を占めています。 主たる原因は長期にわたる喫煙であり、喫煙者の15〜
20%が慢性閉塞性肺疾患を発症します。治療によっても元に戻ることはありませんが、呼吸苦を軽減する薬剤が開発されており、年々改良されています。
ゴールデンウイークで やっちゃった人へ
春の健康診断の時期ですね。お花見・ジンギスカン・ゴールデンウイークの旅行!大丈夫でしたか?
体重は増えませんでしたか?
どきっとしたそんなあなた!生活習慣セルフ チェックをしてみませんか?
以下の8項目で自分の生活に合うものがあったらチェックしてみましょう。
①あまり食べていないつもりなのに太ってしまう。
②料理は大皿に盛りつける。
③1日1食もしくは2食になることが多い。
④夕食を食べ終えてから寝るまでの時間は2時間以内である。
⑤暇があると何かを食べている。
⑥果物やお菓子がいつもそばにある。
⑦お酒を毎日飲む
⑧お酒を飲み過ぎてしまうことが多い。何個当てはまりましたか?
①②にチェックの入った方は、食事の量・バランスに問題があります。
食事量の適量が分かるランチョンマット法がお勧めです。
ランチョンマットに、主食1、主菜1、副菜2、果物/乳製品1で茶碗やお皿を並べて食べてみましょう。
この時に主菜・副菜で油の量や栄養配分、今食べているのは糖質なのか?タンパク質なのか? 油脂なのか? を考えます。
例えば、ごはん1膳、副菜に肉じゃがとコーンサラダ。これって、ごはんが糖分、肉じゃがのジャガイモもコーンサラダのコーンも糖分です。
結局、糖分しか摂っていないことになりますね! このように食材を考えるきっかけになります。
③④にチェックが入った方は、食事時間に問題があります。
食事の間隔が8時間以上空くと基礎代謝が低下します。
ご飯を食べると少し汗をかきますね。
これは、体から熱が出る反応です。(カロリーを消費する反応)朝の時間に多く、夕方には反応が少なくなります。
ですから、朝はちゃんと食べて、夕食を少なめにすべきですね。
⑤⑥にチェックの入った方は、間食習慣に問題があります。
空腹感に対して肯定的な考えを持つ・衝動を何かに置き換える・何かにそらす、といった心理的なアプローチが必要です。
⑦⑧にチェックの入った方は、言わずもがな、お酒との付き合いを考えましょう。
休肝日をつくるか、毎日飲むなら適量(日本酒1合、ビール中ビン1本、焼酎0・6合)を守りましょう。
さあ、これからがんばりましょう!
白内障手術により、よく見える快適な生活を!!
人間の目はカメラに似ていて、レンズにあたるのが水晶体です。
水晶体は加齢とともに濁ってきます。
それが『老人性白内障』です。50歳を過ぎると5人に1人くらい、80歳ではほぼ全員が白内障になります。
以下のいずれかの症状がある時は、白内障の可能性があります。
①遠くも近くも、かすんで見える
②明るい所でギラギラして、物が見づらい
③今まで老眼鏡が必要だったのに、急に近くが見やすくなる
④物がだぶって見える
最近はアトピー性皮膚炎や糖尿病との合併による50歳以下の若い年齢での白内障も増えてきています。白内障には、進行を遅くする点眼薬がありますが、この点眼で水晶体の濁りをなくすことはできません。あくまでも進行を少しゆっくりするだけなので、いずれは手術で濁った水晶体を取り除き、かわりに人工水晶体を入れることになります。しかし、濁っている部分や程度は個人差があり、ひとりひとり手術するべき時期は違います。
近年TVなどで、日帰り白内障手術が取り上げられ、白内障手術は、誰にとっても楽な手術と思う方も多いと思います。しかし、ある程度までの白内障ならば、現在主流の超音波乳化吸引術により10分程度で行えますが、白内障が進むと、とても硬くなることがあり、超音波乳化吸引術が困難になり、傷を大きく広げる手術に変更しなければならなくなります。「白内障はかなり進んでからじゃないと手術はできない」と思うのは間違いで、ご自分が不便を感じた時が手術の時期と考えてよいと思います。白内障は、失明するような病気ではないので、見えづらいと感じたら手術をすればよいのです。あまりに硬く、濃い茶色に濁るまで放置すると手術の危険性が増してしまいますので、硬くなりすぎる前に受けることをお勧めします。
手術を受けた方は、「こんなに見えるようになるのならば、もっと早くに受けていればよかった」と、おっしゃる方が多数です。
よく見える快適な生活を手に入れるために、お気軽に眼科医にご相談下さい。
ゴホンといえば・・・
みなさんは咳が続いて心配になったことはありませんか。咳は、持続期間によって3つに分類されています。3週間未満の急性咳嗽(がいそう)、3週間以上8週間未満の遷延(せんえん)性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽です。
また、痰を吐く喀痰(かくたん)を伴うか否かによっても2つに分類されており、喀痰を伴うものを湿性咳嗽、喀痰が少量もしくは全く伴わないものを乾性咳嗽といいます。一般に持続期間が短いほど風邪症候群や気管支炎、肺炎などの急性感染症よるものが多く、感染の終息とともに自然に改善します。
一方、持続期間が長いほど感染症以外の疾患の可能性が高くなります。ここでは3週間以上咳が続いている場合について、病院ではどのような疾患を心配し、どんな検査が必要であるかをご紹介します。
最初に施行するのは、胸部レントゲン検査と胸部の聴診です。これは咳嗽診療の原則で、胸部レントゲンを施行する事によって、肺炎や肺癌、肺結核、気管支拡張症、重度の肺気腫、間質性肺炎などの疾患を除外することができます。また聴診では胸と背中の呼吸音を聞くことで、気管支喘息発作や間質性肺炎などを見つけることできます。
これらの検査で問題ない場合は喀痰検査を施行し細胞成分や細菌感染の有無を調べたり、呼吸機能検査や血液検査が必要なときもあります。
咳の症状において季節や1日の中で変動があるか、温度変化などの影響があるか、アレルギー体質かどうかなどの情報もとても大事です。咳が続いて心配な方は、是非一度病院を受診して下さい。症状は一見同じように見えても急性、慢性によっていろいろな原因ありますので 適切な治療をうけることをお勧め致します。
皮膚のしこり:粉瘤(ふんりゅう)
顔面、頚部、肩、背中などに日常よくできるできものとして粉瘤という皮膚の病気があります。
触ると少し弾力性のある皮膚の下のしこりで、大きさは直径0.5~5cmとさまざまです。
強く押すと粥(かゆ)状の臭い内容物が出てきます。
原因は毛穴がふさがって皮脂腺が袋状に膨らみ皮脂や角質などが詰まったためです。
炎症が起こって赤く腫れ上がった時には、まず腫れ上がった中心部をメスで切って排膿させ、痛みを治め、抗菌剤、消炎鎮痛剤を内服し、小さくして、しこりの部分を切り取ります。
炎症が生じてからでは治療に時間がかかりますから、しこりが炎症を起こす前に外科的にきれいに取り除きます。傷跡も目立ちません。
半端に中止すると、再発したときにより大きなしこりが出現することがありますので、特に顔面などでは炎症がないしこりの状態で治療を受けましょう。
乳がんについて
1995年には日本人女性の3万1174人が乳がんになっていました。
その頃、それまで日本人女性がなる第1位だった胃がんを越え、現在まで20年近くその座は揺るぎません。
2015年には8万9400人が乳がんになっています。
激増している理由としては、食生活の欧米化、出産数の低下、月経回数の増加(初経が早くなり、閉経が遅くなったため)などが考えられています。
一方、女性のがんのできる部位ごとの死亡率では乳がんは胃・大腸・肺のがんよりも低く、その予後は他のがんに比べれば一般的に良好と言われています。
しかし、乳がんの死亡率はいまだに増加傾向であり、2015年の日本人女性の乳がんによる死亡者数は1万3800人であります。
乳がん患者の死亡率を低下させるためには早期発見、早期治療が重要であることは言うまでもありません。
そして、早期発見には検診が欠かせません。
検診には、自分で見たり触ったりして行う自己検診と医療機関で行う乳がん検診があります。
乳がんは、身体の表面近くにできるため、自分で見たり触ったりすることで発見しやすい数少ないがんです。
20歳以上の女性は月1回の自己検診が勧められています。
閉経前の女性では、月経開始から数日の乳房の柔らかい時期に行うと、しこりが見つけやすいと言われています。
自己検診でしこりを見つけた人はもちろん、早期のしこりのない乳がんは自己検診で見たり触ったりしても発見が難しいため、医療機関で行う乳がん検診でマンモグラフィ検査や超音波検査を受けることが大切です。
日本乳癌学会では月に1度の自己検診と、自己検診で異常がなくても40歳以上の方は1~2年に1回の定期的な乳がん検診を受診することも推奨しています。
乳がんは20歳過ぎから認められ、30歳代ではさらに増え、40歳代から50歳代がピークです。
若い女性にとっても、乳がんは決して他人事ではありません。
乳がん検診を受けたことのない方はぜひ1度、受けたことのある方は、受けたことのない方を誘って乳がん検診を受けることをお勧めします。