飛蚊(ひぶん)症・光視症
☆こんな症状、ありませんか?
糸くずや虫のような影が飛んで見える、稲妻が光って見える。
・見え方は人それぞれ違う
眼球の内部にシミやしわができることで、突然、糸くずや虫のようなものが浮かんで見えることがあります。
シミの形や大きさ、数も人によってまちまちです。
また、キラキラと光を感じたり、墨をまいたようなものが見えたりすることもあります。
・放っておいていいものか、自分では分からない
加齢の変化により生じてくるもので放っておいても大丈夫なものもあれば、眼底出血や炎症、網膜に穴が開くことなどでも見えることがあり、徐々に悪化し視力低下を来すものもあります。
診察を受けなければ良しあしは分からず、自分では判断できません。
「虫のような影が飛んで見える」などの症状が気になる方は、一度、眼科医にご相談ください。
目元を洗う新習慣! リッドハイジーン!
「ハイジーン」とは「清潔にする」という意味であり、「リッドハイジーン」は「目元を洗う=眼瞼清拭」のことです。皆さん髪の毛を洗う習慣はありますが、毎日まつ毛は洗っていますか? 実は目の周り、まつ毛の根元も意外に汚れているのです。
目の縁のまつ毛の根元にマイボーム腺という脂肪の分泌腺があり、涙に油分を与えて涙の蒸発予防や、涙の安定を保つ働きをしています。ここに汚れがたまるとマイボーム腺の働きが悪くなり、目のゴロゴロ感・痒み・かすみ・ものもらい・ドライアイ症状などさまざまなトラブルを引き起こします。女性の場合はエクステ・つけまつ毛・マスカラ・アイラインなどで不衛生になりますし、男性も不衛生な状態からマイボーム腺が機能しなくなることもあります。そして不衛生になったマイボーム腺付近には0.4mm以下のまつ毛ダニがすみつくことも多くなります。実際、日本人の5人に1人にまつ毛ダニがいると言われております。まつ毛ダニがいると目の縁が赤く腫れて痒くなったり、まつ毛が抜けたり、切れたりもします。
このように、まつ毛の生え際周囲が不潔になると、色々な不調を引き起こすので目の周りを清潔にするリッドハイジーンが大変重要です。
目の周りの皮膚は身体の中で1番薄い皮膚で、大変傷つきやすいので、オイルクレンジングなどでゴシゴシこするのは禁物です。女性はなるべく濃いアイシャドウ・アイライン・マスカラ・つけまつ毛・エクステなど控えて、自分のまつ毛が傷まないような手入れをして、近づいて見られても、いつも美しい目の周りの健康を保っていくのがよいと思います。
そのためのリッドハイジーンの専用アイテムもあります。目の周りの病気のみならず、美容の面からも大切なリッドハイジーンの正しいやり方などについては、専門医にご相談ください。
現在のリウマチ治療
関節リウマチは喫煙や歯周病などの生活環境や加齢に伴うホルモンの変化、あるいは遺伝的要因により関節内に炎症が起こることが最近の研究で明らかになっています。
具体的には体を構成しているタンパク質がいろいろな作用により異常なタンパク質に変わり、免疫は排除しようとして炎症が起こります。
関節は関節包で覆われていますが、内部には滑膜と呼ばれ関節液を作る薄い膜があり、正常では関節液を作って軟骨の滑りをよくしています。
関節リウマチでは滑膜に炎症が起こり、関節包が厚くなり関節液をたくさん作るため関節が腫れ、炎症が持続すると軟骨や関節内の骨は壊れ、変形してしまいます。
関節炎は例えると「火事」で、消火活動をしなければ建物は壊れてしまいます。
つまり関節炎を「消火」する治療、すなわち薬を使わなければなりません。
薬には痛みを抑える鎮痛剤、少量のステロイドなどありますが、関節炎を「消火」するわけではありません。
疾患修飾抗リウマチ剤と呼ばれ、関節炎を起こしている異常な免疫に作用して関節炎を抑える薬の使用が必要となります。
従来から免疫調整剤、抑制剤があり、代表的なのがメトトレキサートという薬です。
リウマチ治療のガイドラインでは関節リウマチの診断がつけば、メトトレキサートの使用が推奨されています。
さらに近年、分子標的薬と呼ばれ、免疫細胞間の刺激を伝達するサイトカインの働きを抑える、あるいは細胞内に入った刺激が遺伝子に働くのを抑える抗リウマチ剤が相次いで登場しました。
現時点で7種類の抗体製剤と2種の化合物質があり、治療により関節炎が消失し「寛解」と言われる、いわゆる治ったに近い状態を達成することが可能となりました。
ガイドラインではメトトレキサートが十分な効果が得られない場合に使用が薦められていますが、治療費用が高額で希望すれば誰でも受けられる治療とは言えません。
しかし、高額な治療費を支払わなくても済む国や地方の支援制度がありますので、治療を希望される方は医師に相談されると良いでしょう。
高齢者の『てんかん』その2
前回、高齢発症の「てんかん」患者さんが、認知症として治療されることがあるということを書きました。
今回は、最近、老年医学や認知症診療の専門家の間で話題になっている、もっと分かりづらい、本人はもちろん、そばで見ている家族にも分からない「発作」について書きます。
「一過性てんかん性健忘」と呼ばれているものです。
主に初老期以降に発症し、短時間から数日にわたって、繰り返し記憶の抜け落ちを示す病気です。
この記憶が途切れている期間、患者さんは正常な行動をします。
例えば、友人と普通にゴルフをしたのに、後日、その記憶が抜けていることに気付くというものです。
しばしば「今日は何曜日?」というような質問を繰り返します。
発作が持続する(非けいれん性発作重積と言います)と、記憶のない期間は数日に及ぶこともあります。
正常な時と、発作の時とのギャップや、目覚めの頃に発作を起こすことが多いことから、睡眠時に行動異常を起こすことがあるレビー小体型認知症に間違われる恐れがありますが、MRIなどの画像検査や、通常の認知機能検査(記憶力の検査など)では、異常が見られません。
そのため、認知症の前段階(MCIと呼んだりします)とされることもあります。
脳波検査で側頭葉に異常な波を見つけることが診断の決定打になります。
治療は、他の高齢者の「てんかん」と同じように、抗てんかん薬が有効とされています。
途切れた記憶が戻ることはありませんが、発作が抑えられれば、記憶が抜けてしまうことは避けられます。
ちょっと変わった「てんかん」について書きましたが、アルツハイマー病などの認知症に、「てんかん」が合併することもあります。
認知症を疑ったら、認知機能検査やMRIなどの画像検査だけでなく、脳波検査も必要です。
口臭ケアをされている方へ
人とのコミュニケーションを取る方法には様々なものがあります。欧州の国には挨拶代わりにキスを交わすほど、人との距離感が近い国がある一方、日本人はコミュニケーションの際にそれより一定の距離を維持する傾向があります。そのためでしょうか、そういった距離感が近い文化がある国の人は、口臭ケアに敏感であるという話を耳にします。
そうはいっても、近年我々日本人もやはり口臭ケアをされている方は多くなっています。口臭対策として市販の洗口液(例:コンクールF、リステリン®、モンダミン等)を使用されるケースが多いようです。洗口液に含まれることがある塩化亜鉛や二酸化塩素、カテキンは、口臭の主成分である揮発性硫黄化合物に作用し、口臭の減少が期待されます。また、同じく洗口液に含まれることがあるグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)やセチルビリジニウム塩化物(CPC)は、口臭の主成分を産生する口腔細菌への殺菌作用のため、口臭の元を断つ効果が期待されます。しかし、洗口液を使っても効果が実感できなく、やめてしまった方もいらっしゃると思います。
前回のコラムで掲載しましたが、口臭を根本的に減らすには歯科医院で原因を診断し、それが歯周病や虫歯等であれば治療し、口腔清掃が不良である場合は歯に付いた汚れを歯ブラシ等で除去し、舌の上にある舌苔を舌ブラシ等で除去する必要があります。
洗口液の効果が期待できるのは、プラークコントロールができている状態で使うことです。一番効果的なのは歯科医院で専門的口腔清掃を行った後に、洗口液を使い続けることです。
口臭対策を希望する方のほか、虫歯になりやすい方や歯周病対策が必要な方、お口が渇きやすいという感覚をお持ちの方など、様々なケースがございます。洗口液をお使いいただく場合、歯科医院でご自身にどの洗口液が合っているかをご相談されるのもよろしいかと思われます。
帯状疱疹は、早期治療と予防が大切です
帯状疱疹(ほうしん)は、体の抵抗力が落ちると、自分の体の中に残っている水ぼうそうのウイルスが神経を通って、左右どちらかの皮膚に痛みや水疱(すいほう)が出現する疾患です。
今年の夏は寒暖差が激しく、体調を崩されたためか、帯状疱疹で受診される人が多くなっています。
現在の帯状疱疹の内服薬はウイルスの増殖量を抑える効果が期待できますが、早期に治療を行わないと効果が出づらく、神経痛が残ってしまうことや、水ぼうそうにかかっていない人に水ぼうそうとしてうつしてしまうことがあります。
もし、左右どちらかの皮膚に帯状に痛みや水疱が出てきたら、早目に皮膚科を受診してください。
また50歳以上の方は帯状疱疹の予防に水ぼうそうのワクチンが接種できるようになりました。
こちらは自費であり、行っていない病院もありますので、受診前に電話でご確認ください。
胃アニサキス症に注意しましょう
魚の生食にまぎれて人間の口から入り込み、主に胃で悪さをするアニサキスという名前の寄生虫がいます。
胃アニサキス症の症状は食品を摂取して数時間後の激烈な胃痛が典型的ですが、吐き気やじんましんを伴うこともあります。
これらの症状はアニサキス症に特異的なものではありませんが、食事内容の問診と典型的な症状から疑う病気の一つになります。
そして緊急で胃カメラを行うと、白くて細長い2cmほどの虫体が頭を胃の壁に突っ込んでにょろにょろもがいているのを観察できます。
確認されたら引き続き内視鏡を通じて鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入し、つまんで除去します。
その後速やかに痛みは引けていき治療は完了です。
アニサキスはもともとクジラやイルカが宿主(寄生する先の生き物)であり、人間は宿主ではありません。
クジラやイルカに食べられる前のイカやサバなどの魚の体内で幼虫の状態になっており、人間に悪さをするのは実はこの幼虫なのです。
ですから人間の口からうまい具合に入り込んだものの、人間の胃はアニサキスにとって好適な環境ではなく、成虫にもなれずに迷走の末、胃の壁から出ようとしているのかもしれません。
もがいているうちに数日で自然に死んでしまい、吸収されたり便とともに排せつされたりして排除されます。
アニサキスは食品の70℃以上の加熱か、マイナス20℃以下で24時間の冷凍で死滅します。
なので確実な予防策としては加熱か冷凍を、ということになりますが、新鮮な刺身のおいしさは日本人にとって何物にも代え難いものであり悩ましいところです。
他の予防策として、食物に付着した虫体が肉眼で見える場合は除去したり、アニサキスは虫体が損傷すると動かなくなるため、よくかんで食べることで発症を防げる場合もあるだろうと想定されています。
新鮮な魚はアニサキスの寄生に注意しながら食べましょう。
糖尿病網膜症診療の現況
現在、糖尿病とそれを強く疑う患者さんは1000万人を超えるといわれています。
糖尿病になると網膜血管の細胞が高血糖になって障害され、糖尿病網膜症になります。
糖尿病網膜症は糖尿病の最も怖い合併症の一つで、糖尿病患者の15~30%に生じます。
初期には自覚症状がなくじわじわ進行し、網膜症が起こるのは糖尿病発症後平均7~8年です。
1992年に糖尿病網膜症は視覚障害の原因の1位でしたが、2017年には3位となっています。
これはこの25年で内科の先生による血糖コントロールがより良好に行われるようになったことと、早期に糖尿病網膜症の診断・治療がされるようになったこと、そして眼科診療の進歩によると思われます。
糖尿病網膜症に対する病態の把握はこれまでの眼底検査や眼底造影検査に加えて、光干渉断層計(OCT)や広角眼底検査によってより正確にされるようになりました。
また、糖尿病網膜症の治療は網膜レーザー光凝固や硝子体(しょうしたい)手術の普及により失明に至る患者さんは減少しました。
重度の視力障害になる患者さんは減少しましたが、現在糖尿病黄斑浮腫による視機能の低下が問題になっています。
黄斑浮腫の治療はこれまでの網膜レーザー光凝固、硝子体手術に加えて、ステロイドの眼局所投与、VEGF阻害剤硝子体投与が行われています。
以前より視機能の改善が期待できるようになりましたが、まだまだ限界があります。
さらに最近ではOCT Angiography という造影剤を使わない検査やパターンスキャンレーザー、小切開硝子体手術のような低侵襲の治療が行われています。
診療はより進歩していますが、早期発見、早期治療が重要です。血糖検査を行い、糖尿病と診断されたら眼科を定期的に受診することをお勧めします。
眼科の検査
眼底検査を受けたことはありますか?
瞳孔の奥にある網膜の血管や視神経の状態を診る検査です。
それにより糖尿病網膜症、網膜剥離や緑内障、動脈硬化などさまざまな異常を発見できます。
当院での眼底検査の流れは散瞳剤(瞳孔を開く薬剤)を点眼してから30分お待ちいただきます。
瞳孔が開いたら眼底カメラや検眼鏡を使い診察で詳しく診ます。
検査は30分程で終わりますが、薬の効果でピントが合わせにくくなり、まぶしく感じます。
効果がきれるまで4~5時間かかるので車の運転は控えていただくくようにしていますが、遠方から運転の方や公共の交通手段がない場合は院内でお休みしてからお帰りいただいています。
眼の検査といえば視力検査や眼圧検査を思い浮かべる方も多いと思いますが、眼底検査も大事な検査です。
病気の早期発見、早期治療につなげるためにも一度、眼の検診を受けてみてはいかがでしょうか?
成人の8人に1人が慢性腎臓病!? 身近に潜むサイレントキラー(沈黙の殺し屋)
ある日の泌尿器科外来
「どこも痛くないし具合が悪いわけでもないのに私の腎臓が悪いって本当ですか?」
夜間、トイレに起きるようになってきたため泌尿器科へ受診された患者さんです。
超音波検査で腎臓を見ると少し小さい。
念のため検査をしてみると腎臓機能低下が判明しました。
腎臓機能が徐々に低下してくる慢性腎臓病。
多くの場合は本人が自覚するような症状がありません。
それゆえ病気が分かった時にはすでに末期腎不全ということもあり慢性腎臓病はサイレントキラー(沈黙の殺し屋)とも呼ばれます。
そんな病気が実は身近に多く潜んでいることが分かっています。
日本では成人の8人に1人が慢性腎臓病と報告されています。
さらに高血圧症や糖尿病、脂質異常症などメタボリック症候群の人では、その頻度は更に上昇すると言われます。
「私の腎臓、治るのですか?」
慢性腎臓病は、いったん腎機能低下が進むと元に戻すことができません。
しかし発見が早ければ病気の進行を抑えることが可能で末期腎不全の危険を回避することができます。
「私、どうして腎臓病になったのかしら?」
慢性腎臓病はメタボリック症候群以外にもリウマチなどの膠原(こうげん)病、排尿障害、喫煙習慣、あるいは遺伝が関係している場合もあり原因は多種多様です。
それゆえ多くの人が腎臓病になる可能性があるのです。
慢性腎臓病は早期発見がとても大切です。
定期的な検査が重要なのです。
自覚症状のない早い段階でも健康診断などで採血や採尿検査、血圧検査をすることで診断することができます。
また次のような症状には注意が必要です。
夜トイレに起きるようになった、手の指や足がむくんで指輪や靴がきつく感じるようになった、以前にくらべて疲れやすく体がだるい、時々立ちくらみがある。
慢性腎臓病も腎機能低下が進んでくると自覚症状が出てくることがあります。
このような症状に気が付いたら医療機関にご相談下さい。
成人の8人に1人が慢性腎臓病なのです。