なぜ、たばこをやめるのは大変か?
4月から禁煙指導に健康保険が適用になり、禁煙希望で受診される方も増えていますが、なぜ、たばこをやめるのがそんなに大変なのかご存知でしょうか?
「たばこは大人の嗜好(しこう)品」などと言われていますが、同じ嗜好品のお酒と比べても、朝起きてすぐお酒を飲む人は滅多にいないでしょうし、仮にいれば「アルコール中毒」と言われます。でも喫煙者は「朝起きてまず一服」という方が沢山いるのです。
そうなんです。喫煙者は「ニコチン中毒」なので禁煙が難しいのです。ニコチン中毒の人が自力で禁煙しようとする時に、最も犯しやすい間違いが「いっぺんにはやめられないから少しずつ減らす」という方法です。 効率よく禁煙するためには禁煙指導をしている医療機関にご相談ください。
ちなみに「たばこは嗜好品」ではなく「たばこは死向品」なんですよ。
運動の秋、食欲の秋
味覚が楽しめる秋、自然にご飯がすすむ。昭和30年代の食事に戻ると、肥満や糖尿病は1/3に減少するという。青味の魚や繊維質の多い野菜など、正しい食事が健康の基礎。
運動すると血中の脂肪や糖分を消費されるだけでなく、筋肉が鍛えられ、肺や心臓や自律神経の機能も強まり、メタボリックシンドロームなどが改善され健康が守られる。
シュークリーム1個と約40分のウォーキングのエネルギー量はほぼ同等。誠に運動に分の悪い話だが、しかし、肥満などの改善に運動は欠かす事はできない。運動によるエネルギー消費は、運動時だけでなく、安静時のカロリー消費も増加する。筋肉量が増すと安静時の基礎代謝が増加して、脂肪がよく燃え、締まった体がつくられる。
運動は「両刃の剣」。メタボリックシンドロームの方は、危険回避のため運動の「種類や量」を主治医やスポーツドクターに必ず相談してから始めてください。
貧血に注意しましょう
病院にはかかったことがなくても、年一回保健所などで健診を受ける方が増えているようですね。ご自分の健康に気を使われる方が増えているということだと思います。
健診でも必ずチェックされる項目に貧血があります。赤血球の下にヘモグロビンという項目があります。このヘモグロビンが男性で十四mg/デシリットル、女性で十二mg/デシリットル未満に下がった状態を貧血といいます。血液がうすくなった状態と考えていただけば分かりやすいでしょう。普通は貧血が進むと息切れや倦怠感(けんたいかん)、さらに動悸、胸痛などが出てくるといわれますが、実際にはヘモグロビンが七mg/デシリットル台でも症状が全くない方もいらっしゃいます。臓器に酸素を運ぶのはすべて赤血球(ヘモグロビンを含む)が行っていますから、貧血になるとすべての臓器の働きに支障がでる可能性があるというわけです。
貧血の原因は多岐にわたりますが、日常よくみられるのは鉄欠乏性貧血です。鉄が足りなくなるために起こる貧血です。女性に多く、鉄分を補えば改善が見込めます。ただし鉄剤は吸収をよくするために空腹時に服用するのが原則ですが、おなかの不快感を訴える方も少なくありませんので注意が必要です。さらにお薬が飲めない方には注射剤もありますが、漫然と注射しつづけると鉄過剰になり肝臓の病気になってしまうこともあります。そうならないためにも常に体内鉄量の目安である血清フェリチンを計測してもらうようにすると良いでしょう。
また鉄剤を服用すると便が黒くなります。黒くなっても心配はないのですが、あらたな胃潰瘍による出血などを見落としかねない(胃の出血があると便が黒くなる)こともあり注意しておきたいところです。
鉄欠乏性貧血以外にも慢性炎症や悪性腫瘍にともなう貧血、さらに白血病を含む血液疾患にともなう貧血などもあり、貧血からたどっていく病気がたくさんあるのです。
健康診断の結果をケースにしまいこんだままの方は是非もう一度見直してみてはいかがでしょうか?
冬は運動不足の季節です
高血圧症、高脂血症、糖尿病は生活習慣を改善することで、より高いQOL(生活の質)が得られるので、生活習慣病とよばれています。昔は成人病といわれ、年をとると避けて通れない宿命の病気と考えられていました。
生活習慣の改善と言っても、そう簡単にはいきません。たとえば、運動について考えてみましょう。
生活習慣病をお持ちの方には、1日30分以上の歩行を週3回以上続けるのが良いといわれていますが、この寒い北海道で本当にできるのでしょうか・・・。室内での歩行にも限界があります。
そこで私は、家の階段を利用した運動や、高齢者でも簡単にできる運動を考え、患者様に実践していただいています。
糖尿病をコントロールするうえで一番困るのが、冬場の体重増加と運動不足といわれています。工夫をしながらこの冬を乗り切りたいですね。
大腸がん ― 治すために早期発見
近年、大腸がんが増加しています。平成15年がん死亡統計では、肺がん、胃がんに次ぎ第3位で、男性では4位、女性で1位となっています。
大腸がんの増加は高脂肪食を多く食べる機会が増えた事に一因があります。
大腸は約1.7mの結腸と直腸に分かれていますが、がん発生率は6対4で結腸に多く、また特に下部のS状結腸に多く見られます。
初期は無症状ですが、進行すると腹痛、便秘、下痢、下血、腸閉塞(へいそく)などの症状が見られます。肛門出血の多くは痔核(じかく)ですが、12%に悪性腫瘍(しゅよう)などが見られます。
がんは「早期発見が大切である」と皆さんはご存知かと思います。
大腸がんは手術で治る率が非常に高いがんです。肛門出血があった時は「痔」と思わず、積極的に診察、検査を受ける事をお勧めします。また早期発見のため、年一回は医療機関などで検診する事もお勧めします。
死者が急増! 高齢者の肺炎
「肺炎」は、日本人の死因の第4位ですが、最近、患者さんが急増しています。
原因には、これまで肺炎に効くといわれていた抗生物質が効かなくなってきていること、また、高齢者を中心に食べ物を飲み込んだ時に、誤って気管から肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)が急増しているためと言われています。時には、胃の中の食べ物や胃酸が逆流しないように閉じているはずの食道と胃のつなぎ目の締まりが、いつの間にか緩くなることにより、胃の内容物が逆流して肺に入ってしまい肺炎を起こすこともあります。
胸焼け・すっぱい物が込み上げる・のどの違和感つかえ感・慢性の咳(せき)・声のかれ等の症状のある方は、胃カメラでの検査が必要です。
予防には、うがい・歯みがき・手洗いは基本ですが、感染による肺炎の原因の約30%を占める肺炎球菌のワクチンの予防接種が有効です。1回の接種で5年程度有効で、予防効果は80%と言われています。肺炎になる前に、検査やワクチンで肺炎を予防しましょう。
薬の上手なつかい方
病院や調剤薬局で処方してもらう薬には、同じような成分で値段の高いお薬と安いお薬があるのをご存知でしたか?
高いお薬は、「新薬」と呼ばれ、その薬を開発するためにかかった費用も上乗せされるため、値段が高く設定されています。
一方、新薬の特許期間(20~25年)が過ぎた後に製造・販売されるお薬は、「ジェネリック医薬品」(後発医薬品)と呼ばれ、開発費用の大幅な削減が可能なため値段は安く設定されています。お薬によって差はありますが、新薬の約半額程度になるものもあります。
しかし、新薬と同じ成分・同じ効き目といっても全く同じ薬ではありません。
ひとつの新薬に対し、沢山の製薬会社がジェネリック医薬品を製造しており、錠剤の形やコーティング・粒子の大きさなど、会社によってバラバラです。それによって、多少効果や副作用に違いが出てくることもあります。 お薬は、より安く、またそれ以上により安全でなくてはいけません。
いま処方されているお薬の内容を、今一度主治医の先生と再確認してみてはいかがでしょうか?
増え続ける大腸がん
食生活の欧米化とともに増加した病気に【大腸がん】があります。
近い将来、消化器がんの中では最も多いと考えられています。初期には他のがんと同様にほとんど症状はありませんが、進行すると、下痢・便秘等の排便異常や血便が出現し、更に大きくなると、腸閉塞(へいそく)になることもあります。初期の症状が出現しづらいため、大腸がんの転移した肺がんや肝臓がんが、原因となった大腸がんよりも先に発見されることもあります。
診断は、最近では「大腸カメラ」で発見されることが非常に多くなりました。以前は、おしりからバリウムを注入しながらレントゲンを撮る「注腸バリウム検査」で診断しましたが、便とポリープの区別が難しく、また早期の大腸がんの発見が困難なため次第に大腸の検査は「大腸カメラ」に取って代わりつつあります。「大腸カメラ」の普及は、検査手技の技術の向上とも関係していて、以前は全大腸を短時間でかつ苦痛なく検査するにはかなりの熟練が必要でしたが、現在では下剤の内服後、短時間(二十分程度)で苦痛の少ない検査が十分可能になったことも大きく影響しています。
治療は、早期がんのうちに発見できれば「大腸カメラ」でがんの存在する粘膜を切除するだけで治癒可能です。ある程度進行すると、手術が必要になります。とはいっても以前のように大きな傷から腸を切除する手術の頻度は減少し、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使用した手術が多くなっています。腹腔鏡の手術はお腹に開けた数個の小さい傷からカメラ等を挿入し手術をする方法で、以前と比較すると術後の痛みも軽減し、回復も早いことが特徴です。もし肝臓や肺に転移していても手術によって治癒する可能性もあります。
いずれにしても、体に負担のかからない治療を受けるためには、早期発見がとても重要です。血便は痔が原因と誤解して放置している方、下痢の方、便秘の方、また無症状でも五十歳以上の方は恥ずかしがらずに、是非一度は「大腸カメラ検査」を受けてみることをお勧め致します。
欧米で増加する『下部食道腺(せん)ガン』
日本において最も多いと言われてきた胃がんは、近年発生率が低下しています。代わって増加しているのが、乳がん・大腸がん・肺がんです。これらのがんの特徴は、欧米に多かったがんが、少し遅れて日本でも増加してきたことです。
最近、欧米で増加し、注目されているのが、胃に近い食道の下部にできる、『下部食道腺がん』です。
がんにはいろいろな種類がありますが、消化器のがんは大きく分けると、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんと腺がんの二つに分類されます。
扁平上皮がんとは、皮膚や口腔・食道などを被う粘膜である扁平上皮組織から発生するがんであり、特に食道がんでは、日本人の約九割を占めると言われています。
一方、腺がんは、胃がん・大腸がんに多く、食道がんには少ないと言われてきました。しかし、現在、欧米では食道がんの約半数を腺がんが占めると言われている程、増加しています。食道腺がんの特徴は、国際医学会では、白人・インテリ・高い生活水準の人が多いとされています。日本の生活様式の欧米化のため、下部食道腺がんは、今後日本でも増加する可能性があり、注意しなければなりません。
では、どのような事に気をつけるとよいのでしょうか?
食道腺がんは、逆流性食道炎の一部から発生してくるのではないかとも言われています。逆流性食道炎の症状である、胸焼け・げっぷ・食べ物のつかえ感・すっぱいものが上がってくる・声枯れ・長く続くのどの痛み・せき・胸痛などの症状がある方は、是非専門医による胃カメラ検査をお勧めします。
現在、胸焼けを抑えるお薬(逆流性食道炎)で症状が改善している方も安心はできません。 他のがんと同様に、下部食道腺がんの早期発見・早期治療に勝るものはありません。
最近では、胃カメラ検査も苦痛なく受けられるように技術が徐々に進歩してきています。定期的な胃カメラ検査こそが食道がんの早期発見につながります。
美味しく食べていますか?
(1)食べ物がつかえる
(2)酸っぱい物がこみ上げてくる
(3)胸やけがする
(4)胸が痛んだり、苦しくなる
(5)咳が続く
(6)声がかすれる
などの症状に悩まされた事はありませんか?
これらは逆流性食道炎の症状です。特に甘い物を食べた後に起こりやすく、胃酸が食道へ逆流することにより起こる病気です。胸痛があるのに心臓は異常がないと言われていたり、喘息がなかなか治らない方に、この病気を合併している場合が多いと言われます。偏食でストレスの多い方、肥満気味の方や高齢者によく見られます。
逆流性食道炎をそのままにしておくと、いずれ食道がんに移行したり、高齢者の肺炎も起こりやすくなります。これは胃カメラで診断しますが、検診などで行うバリウム検査ではほとんどわかりません。治療は胃酸を抑える薬の内服や、腹腔鏡での簡単な手術で症状は著明に改善されます。他の病気の早期発見も含めて、専門医での胃カメラ検査をお勧め致します。