血液透析治療と水との関係
最近コンビニエンスストアやスーパーマーケット等で、多種多様なミネラルウォーターが販売されているのを目にし、水に対する関心の高さがうかがえます。私たちが行っている血液透析治療も水がとても重要な役割をはたしていることをご存知でしょうか。
血液透析というのは、腎臓の働きが悪くなってしまった時に、腎臓の役目を果たす治療法ですが、具体的には、老廃物のたまった血液を身体の外に取り出し、透析器(ダイアライザー)の中できれいにして、再び身体に戻すという治療です。この老廃物を血液から取り除くために、ダイアライザーという小さな孔がたくさんあいた特殊な膜を介して血液と水(透析液)が逆方向に流れることによって、色々な老廃物を血液から取り除いて血液をきれいにします。そのため、透析治療では透析液がたくさん必要となります。
透析液は、各透析施設の中で、水道水を原料として作られていますが、浄化をする前は、鉄分やカルシウム・マグネシウムなどのミネラル、塩素、また細菌や細菌が壊れてバラバラになる際に出てくる毒素(エンドトキシンと呼ばれています)なども入っています。これらの不純物を取り除いて、きれいな透析液を作ることが必要となります。最近は特に透析液の水質が注目されています。なぜなら、透析液と血液とは直接まざりあうわけではないのですが、本来の目的の血液から透析液へ老廃物が移行するだけではなく、逆に透析液からエンドトキシンなどが血液に移行してしまうこともあるからです。
エンドトキシンが含まれていないきれいな透析液で透析をすると短期的には貧血を改善したり、血圧の低下や発熱などが少なくなり、シャント(手術によって動脈と静脈をつなぎ、動脈から直接静脈に血液を流すこと)の閉塞が減るなどの報告もされていますし、長期的には動脈硬化や透析アミロイドーシスなどの合併症の発症に対しての抑制効果が期待できます。もちろん、透析液の水質管理以外にも、透析治療には必要なことがたくさんありますが、きれいな水(透析液)が、「より良い透析ライフ」に直結していくものと考えています。