■ご訪問者数:28168773
在宅クリニック函館日吉  カワムラ歯科クリニック  たからまち総合診療クリニック 

コラムを読む

『制御性Tリンパ球(Treg)について』(2026年2月 ハコラク掲載)

内科2026/02/03

 2025年のノーベル医学・生理学賞を、大阪大学・坂口志文教授(ほか2人)が受賞されたことは、大変喜ばしいことでした。坂口先生の業績は、人体の免疫応答をつかさどる、抑制性Tリンパ球(Treg)の存在を提唱し、それを証明したことです。

 血液には、赤血球、白血球、血小板があり、白血球は好中球、リンパ球、単核球、好酸球、好塩基球に分類され、病態に応じてその出現が異なります。リンパ球は生体の免疫応答に重要な役割を果たしますが、主にBリンパ球、Tリンパ球、NKリンパ球に分類されます。Bリンパ球は、主に抗原刺激に対して形質細胞を動員し特異的抗体を作り、生体の防御に関与する一方、Tリンパ球は、ヘルパーTリンパ球(免疫を亢進させる働き)、キラーTリンパ球(免疫を抑制する働き、ほぼTregを意味します)があり、病態に応じてバランスよく働きます。マウスの実験でリンパ球が多く存在する胸腺を取り除くと、1型糖尿病や関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患を発症し、さらには各種のがんを引き起こすことが判明しており、Tリンパ球が免疫に深く関与していることが推測されています(がん細胞はTregを利用して、生体の免疫による攻撃から逃れるように働くので今後、がん治療への応用も期待されます)。

 Tリンパ球の中でもTregは免疫応答のブレーキ役として、過剰な免疫を抑制し免疫のバランスを保ち、先述した自己免疫疾患を防ぐ重要な細胞であることが判明しており、今後の治療への応用が期待されます。

 坂口先生はTリンパ球の特異的分子マーカーであるFoxp3が、Tregの活性化に重要な役割を果たすことを証明し、ノーベル賞の受賞につながりました。

 6年前、マウイ島での日米がん合同会議に参加した際、坂口先生の特別講演を拝聴する機会を得ました。そのころ、まだあまり認知されていなかったTregでしたが、先生の情熱的な講演を聴いて、素晴らしいお仕事だと感心したことを思い出します。

 今後、Tregがますます注目されることが期待されます。


Text by 平田博己内科クリニック  理事長・院長 平田 博己( 2026年2月 「ハコラク」掲載)