老衰の躍進
厚生労働省が今年6月に発表した2018年の人口動態統計の結果、死因の1位、2位はこれまで同様がんと心疾患でしたが、老衰が脳血管疾患を抜いて初の3位となりました。死亡診断書上の死因として老衰は、ここ10年ほど右肩上がりで上昇し続けています。
この上昇については、近年策定された肺炎診療ガイドラインの影響で、加齢による衰弱状態で誤嚥性肺炎などをおこして死亡した場合の死因を肺炎ではなく老衰とする医師が増加していることも一因とみられています。とはいえ、特別な病気で死亡するのではなく生物学的な寿命ともいえる老衰で人生を終える方が増えているのは間違いないでしょう。
「天寿を全うする」とか「大往生」などと例えられることが多い老衰死は、生の終わり方としては望ましい形と言えます。意外なことに、時代をさかのぼると戦前の方がむしろ老衰による死亡率は高かったようです。これは平均寿命が短かかったからに他ならず、がんや心疾患などを発症して直接死因として亡くなる前に老衰で亡くなってしまう人が多かったということです。寿命の延長とともに今度は高齢者に多く発症する致死的な病気が増加してきたわけですが、今後の医療の進歩とともに病死が減っていけば老衰死の比率はより一層高まっていくことになります。
今や世界に冠たる長寿大国である日本ですが、明治時代の平均寿命は男性42.8歳、女性は44.3歳でした。内閣府公表の高齢社会白書「平均寿命の将来推計」によると平均寿命は今後も延びると予想され、2060年には男性は84.19歳に、女性は90.93歳になるとされています。また昨年の集計では100歳以上の高齢者の方は国内に約7万人もいらっしゃいます。人間は一体何歳まで生きれるようになるのか? タイムマシンがあるなら遠い未来まで確かめに行きたいところです。