咳(せき)について
「気管支炎ですね」「咳喘息(ぜんそく)ですね」「鼻炎が原因ですね」「気管支喘息の気がありますね」
「咳がなかなか止まらない」と話すとこのようにさまざまな返答が先生方から返ってくるものです。
しかし、薬を飲んでも一向に症状が良くならず、咳に悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
「精神的なものだ」「もう高齢だから仕方ない」そう言われて半ば諦めつつ、暮らしている方もいらっしゃいます。
なぜそうなってしまうのか…。
理由の一つとして、咳の原因を特定しにくいということがあげられます。
下気道(気管・気管支)や肺だけでなく、上気道(鼻腔など)や食道などさまざまな臓器や器官が咳に関係します。
また、外来では気管や気管支、さらには肺の奥を直接目で見て観察することもできないため、どれくらいの炎症が起きている(荒れている)のかを視覚的に把握することが困難です。
日常的に吸っている空気が澄んでいるのかよどんでいるのか、花粉やほこりが多いのか多くないのかなど患者さんを取り巻く環境を目で見て確認することが難しいことも要因です。
「症状の程度」も「治るまでの期間」も患者さんそれぞれで千差万別です。
百日咳なんていう何とも咳が止まらなそうな名前の感染症もあったりします。
長年患っていた咳の原因が、胃酸の逆流(逆流性食道炎)だったということもよく聞く話しです。
後鼻漏と言って、鼻水が鼻の後ろから喉に流れ落ちることが原因の咳もあります。
治療をしていく過程でじっくりお話しを聞くと、ご自宅をリフォーム(壁紙の貼り替えなど)してから咳が出始めたことが分かり、調べるとハウスダストアレルギーをもっていたということもあります。
これからの季節は、花粉やPM2・5、黄砂なども咳の原因となります。
副流煙を含めた喫煙ももちろんのことです。
こうした物質が含まれた空気を吸い込むことで気管や気管支の粘膜が刺激を受け、むくみ、空気の通り道が狭くなることで、咳や痰(たん)が出てしまいます。
いくら治療をしたとしても、刺激を受け続けることで症状が完全に治まらないこともあります。
繰り返しになりますが、咳の原因はさまざまです。
何のきっかけもなく咳が出始めたり、咳が長引くようなときには、周囲の環境を見返してみるのも一つです。