高齢者の『てんかん』その2
前回、高齢発症の「てんかん」患者さんが、認知症として治療されることがあるということを書きました。
今回は、最近、老年医学や認知症診療の専門家の間で話題になっている、もっと分かりづらい、本人はもちろん、そばで見ている家族にも分からない「発作」について書きます。
「一過性てんかん性健忘」と呼ばれているものです。
主に初老期以降に発症し、短時間から数日にわたって、繰り返し記憶の抜け落ちを示す病気です。
この記憶が途切れている期間、患者さんは正常な行動をします。
例えば、友人と普通にゴルフをしたのに、後日、その記憶が抜けていることに気付くというものです。
しばしば「今日は何曜日?」というような質問を繰り返します。
発作が持続する(非けいれん性発作重積と言います)と、記憶のない期間は数日に及ぶこともあります。
正常な時と、発作の時とのギャップや、目覚めの頃に発作を起こすことが多いことから、睡眠時に行動異常を起こすことがあるレビー小体型認知症に間違われる恐れがありますが、MRIなどの画像検査や、通常の認知機能検査(記憶力の検査など)では、異常が見られません。
そのため、認知症の前段階(MCIと呼んだりします)とされることもあります。
脳波検査で側頭葉に異常な波を見つけることが診断の決定打になります。
治療は、他の高齢者の「てんかん」と同じように、抗てんかん薬が有効とされています。
途切れた記憶が戻ることはありませんが、発作が抑えられれば、記憶が抜けてしまうことは避けられます。
ちょっと変わった「てんかん」について書きましたが、アルツハイマー病などの認知症に、「てんかん」が合併することもあります。
認知症を疑ったら、認知機能検査やMRIなどの画像検査だけでなく、脳波検査も必要です。