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胃アニサキス症に注意しましょう

内科2018/08/27

 魚の生食にまぎれて人間の口から入り込み、主に胃で悪さをするアニサキスという名前の寄生虫がいます。

 胃アニサキス症の症状は食品を摂取して数時間後の激烈な胃痛が典型的ですが、吐き気やじんましんを伴うこともあります。
これらの症状はアニサキス症に特異的なものではありませんが、食事内容の問診と典型的な症状から疑う病気の一つになります。
そして緊急で胃カメラを行うと、白くて細長い2cmほどの虫体が頭を胃の壁に突っ込んでにょろにょろもがいているのを観察できます。
確認されたら引き続き内視鏡を通じて鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入し、つまんで除去します。
その後速やかに痛みは引けていき治療は完了です。

 アニサキスはもともとクジラやイルカが宿主(寄生する先の生き物)であり、人間は宿主ではありません。
クジラやイルカに食べられる前のイカやサバなどの魚の体内で幼虫の状態になっており、人間に悪さをするのは実はこの幼虫なのです。
ですから人間の口からうまい具合に入り込んだものの、人間の胃はアニサキスにとって好適な環境ではなく、成虫にもなれずに迷走の末、胃の壁から出ようとしているのかもしれません。
もがいているうちに数日で自然に死んでしまい、吸収されたり便とともに排せつされたりして排除されます。

 アニサキスは食品の70℃以上の加熱か、マイナス20℃以下で24時間の冷凍で死滅します。
なので確実な予防策としては加熱か冷凍を、ということになりますが、新鮮な刺身のおいしさは日本人にとって何物にも代え難いものであり悩ましいところです。
他の予防策として、食物に付着した虫体が肉眼で見える場合は除去したり、アニサキスは虫体が損傷すると動かなくなるため、よくかんで食べることで発症を防げる場合もあるだろうと想定されています。
 新鮮な魚はアニサキスの寄生に注意しながら食べましょう。


Text by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男( 2018年8月27日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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