病は気から?天気から?
「先生、お天気が悪いと、頭痛や目まいや肩凝りを感じるのは私の思い込みのせいでしょうか…」と、高血圧で通院しているAさんが聞いてきました。
どうやら長年の経験で、天気が崩れ始めると体調も悪くなるとのことでした。
天気の変化で体調を崩す病態は気象病と呼ばれ古くから研究されています。
気象病は自律神経系の調節が乱れることで発症します。
人間は大気圧という圧力で常に体全体を押しつけられていますが、天候が崩れ気圧の低下が始まると、押す圧力が緩み自律神経のバランスは交感神経から副交感神経優位へと変化します。
気圧の低下が大きいと、血管やリンパへの圧力が弱まり血行が悪くなり、またヒスタミンなどの過剰分泌も起こります。
これら一連の変化は、頭痛、目まい、肩凝り、古傷の痛み、眠気、倦怠(けんたい)感、鼻炎、ぜんそく、アトピーなどの悪化を引き起こします。
また、脳卒中などの重篤な疾患も気象と関連しています。
2016年のイスラエルの研究報告では、2日前の低気圧が深部脳出血の発症と関連していました。
また2012年9月の函館市の脳卒中患者を調べた研究(平成29年道南医学会報告)では、脳卒中の発症は
①発症3日前の午後から前日の朝までの高い気温
②前々日と前日の高い家庭心拍数
③前日と当日の低い気圧
④前日から翌日にかけての気温急降下と家庭血圧急上昇
―などと関連していました。
つまり、先に高い気温による脱水状態、次に気圧低下による副交感神経優位状態、そこで気温が急降下し交感神経優位状態へ急転換と血圧急上昇、この一連の気象と体の変化が脳卒中を発症させやすくしたと考えられます。
Aさんが感じていたように、天気の変化は気持ちの浮き沈みだけでなく自律神経系を変動させさまざまな病態を引き起こし、時に脳卒中のような重篤な疾患の発症にも関わることがあるのです。
近年は異常気象が多発し気温や気圧の変動が激しいので、気象の変化に細やかに気を配り対処して生活することが大事になります。