スポーツに多い捻挫(ねんざ)と肉離れ
走り回ることが多いスポーツ。「スポーツによる外傷、障害」の部位を見ると、一般的にはコンタクト・スポーツ(サッカー、ラグビーなど)では、膝、腰、肩が多く、テニスなどのスポーツでは、肘、足、手関節が多い。
走る時に生じるケガの多くは、捻挫(ねんざ)や肉離れ。
安易に考えてスポーツを継続すると、選手の将来に暗雲が立ち上る。緩(ゆる)みを生じた関節には、関節軟骨の障害と炎症が発生し、運動時に常に痛みや腫れが生じ、運動能力が大きく阻害される。
子供を一流の選手に育てようとするトレーナーは、「この10年で選手生命を終えたいのか、あと10年やりたいのか、休む勇気も大切」と説く。
肉離れの多くは、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と内転筋(ないてんきん)。小さな肉離れの放置は、次には血腫(けっしゅ)と筋断裂を伴う重大な肉離れや、靭帯(じんたい)損傷を伴う捻挫を生じ、悪くすると選手生命が失われる。
ウォーミング・アップでは、充分なストレッチを行い柔軟な筋肉を保持し、「ケガをしない、ケガをしても軽く済むよう」心掛けたい。
1時間の練習には1時間のウォーミング・アップとの認識が大切とされる。
肝斑(かんぱん)
頬に生じるシミには肝斑、雀卵斑(そばかす)、日光性黒子(ほくろ)、脂漏性角化症、色素沈着型皮膚炎などがありますが、今回は肝斑についてお話します。
肝斑は今まで30~40歳代の女性の頬に好発する茶褐色のシミで、女性ホルモン、紫外線、経口避妊薬などが原因であると言われていました。
しかし、最近では顔のマッサージやダブル洗顔など極度な皮膚の機械的刺激によって生じる炎症性のシミが肝斑になっていくと言われるようになってきました。
治療は従来、トラネキサム酸、ビタミンCなどの内服薬処方でしたが、症状によっては、ビタミンC誘導体によるビタミン導入(イオントフォレーシス)、Qスイッチレーザーによるレーザートーニングなどを行います(※保険が適用されない場合がございますので病院にてご確認ください)。
そして日常の顔のマッサージはやさしく、洗顔は泡洗顔でこすらないように心掛けてください。
メタボリックシンドローム・・・あなたのウエストは何センチですか?
日本人の三大死因として、がん・心疾患・脳血管疾患という三つの疾患が挙げられます。
これらの疾患は、毎日の食事や睡眠、運動不足などの生活習慣の積み重ねによって起こります。なかでも心疾患と脳血管疾患は、全体の三分の一を占め動脈硬化が原因といっても過言ではありません。
メタボリックシンドローム(以下 Mets)とは、内臓脂肪肥満(りんご型肥満)を背景にして、複数の生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧などの動脈硬化危険因子)が合併している状態を言い、動脈硬化や日本でも急増している糖尿病と深く関係しています。ウエストが男性で85cm、女性で90cm以上であることに加え、次の三項目のうち二つ以上が該当する場合がMetsとされます。
- 収縮期血圧が130mmHg以上か拡張期血圧が85mmHg以上
- 空腹時の血糖値が110mg/dl以上
- 中性脂肪が150mg/dl以上かHDLコレステロール(善玉コレステロール)が、40mg/dl未満(糖尿病、高血圧、高脂血症などで治療薬を服用しているときは、それぞれ一項目に該当)
―このようにMetsでは一つ一つの症状は深刻でなくとも重複して持つと動脈硬化性疾患のリスクを有している事になり、3~4個重なれば心血管の病気の発症頻度が30倍にもなるという報告もあります。メジャーを用意しウエストを測ってみてください。
次に血圧を計りましょう。
最後に最近お受けになった健康診断や病院からもらった血液検査の結果を見直してみましょう。いかがですか? あなたはMetsの範疇に入りますか? Metsに該当する場合は、まずは生活習慣の見直しをかけて、ウエスト周囲径を一cmでも減らす事が重要です。
- まずは過食や運動不足などの悪い生活習慣を改め、肥満を解消しましょう
- 食事は健康の要。適切な摂取エネルギーの範囲内でバランスよく栄養をとり、一日三食、規則正しく食べることが基本です。またタバコはやめましょう
- 有酸素運動は体力の維持増進のほか、肥満防止、内臓機能の活性化、ストレス解消にも効果大です。
病気になってから治すのではなく、病気にならないよう生活習慣に気をつけましょう。
成長期のスポーツ障害について
成長期、特に10〜15歳位までの数年間は骨格や筋肉の発達の目覚ましい時期です。
この時期の子供の骨には「骨端線」という部分があり、主として軟骨細胞で構成されています。
「骨端線」は関節の近くにあり骨の成長を担っています。
構造的に弱い為に、スポーツによる障害を受けやすく、その結果、機能障害を残してしまうこともあります。
それではスポーツ障害の中で頻度の高いものを分かり易く説明していきます。
少年野球における「野球肘」はスポーツ障害の代表的なものと言えます。
「野球肘」には上腕骨小頭の壊死を生じる「外側型」と、上腕骨内上顆の骨端線離開を生じる「内側型」があります。
両型とも投球時の肘関節痛が初期の症状です。
進行すると肘関節の屈曲、伸展が制限され後遺症として関節の変形を残すこともあります。
最悪の場合、手術が必要となる場合もあります。
障害を残さない為には早期診断が大切で、治療の遅れは選手生命を損なう可能性もあります。
ランニングやジャンプを伴うスポーツでは「オスグット病」という膝関節の下部にある頸骨粗面の骨端線が腫れて痛みを生じます。
特にサッカー選手に多いようです。
急性期には安静が必要ですが、軽傷例では専用サポーターを使用し、経過をみていきます。
成長期の腰痛の原因の一つに、「腰椎分離症」があります。
腰椎後方の椎間関節の一部に疲労骨折が起こり、分離症に進行すると言われています。
特にバレーボール、バスケットボール、柔道の選手に多く見られます。
分離症の腰痛は後屈時に強くなることが大きな特徴です。
放置されると分離部の骨癒合は困難になるので、早期の診断、特にCT検査が必要です。
以上、「成長期のスポーツ障害」の早期診断の為には、まず周囲の大人が症状に気付いてあげる事が大切で、そこから治療の第一歩が始まると言っても過言ではありません。
中学生のピロリ検診はとても重要
胃がんの主な原因はピロリ菌です。胃がんの99%はピロリ菌の感染者または既感染者から発生しており、未感染者の胃がん発生は非常に低率です。2014年にWHO(世界保健機構)は、胃がん予防策としてピロリ菌除菌を世界に向けて推奨しました。わが国では胃がん予防として胃がん検診が行われています。胃がんの早期発見・早期治療で胃がん死亡者を減らすことができても、胃がんの発症は防げません。
胃がんの発症を防ぐには、原因であるピロリ菌を除去することが必要です。13年にピロリ感染胃炎に対して除菌治療の保険適用が拡大され、医療機関でピロリ除菌を受ける方が急増しました。しかし、ピロリ胃炎が進行していると、除菌で胃がんリスクを半分以下にしても、胃がん発症を完全に抑えることはできません。ピロリ胃炎が進行する前にピロリ除菌を受けることが重要です。
函館市では16年から中学2年生を対象に若い世代のピロリ菌検査事業が行われています。この事業では尿でピロリ感染を調べて、陽性者は指定の医療機関にて二次検査として呼気で本当の陽性者を調べます。函館消化器病懇談会でこの2年間の調査をしたところ、残念なことに、ピロリ検査を受けた生徒は半分にとどまり、本当の陽性者のうち除菌治療を受けた生徒は40%にとどまっています。この時期に除菌することは個人の胃がん発症を予防するだけではなく、生徒たちの子供へのピロリ菌感染を防ぐことができます。
最近、若くして胃がんで亡くなった有名人の報道が続いていますが、40歳以下の若年者胃がんを予防するのは、この時期に除菌するのが有効です。函館市が胃がんで将来苦しむ市民を減らそうとして始めた事業です。この機会を逃さないで、すべての中学生にピロリ検査を受けてもらい、感染者と分かった場合はできるだけ早く除菌治療を受けるようにご理解をお願いします。
血液内科にご相談を
血液に関する病気と言えば、白血病など重篤な病気を思い浮かべるかもしれませんが、貧血、あざや内出血、鼻血など身近な症状も血液内科の専門分野です。
血液の中にはさまざまな成分が含まれており、そのひとつに赤血球があり、その中のヘモグロビンが体内に酸素を運ぶ重要な働きをしています。
ヘモグロビンの合成には鉄が必要です。鉄の欠乏は、供給量と需要量のバランスが負に傾くことによって生じます。
鉄が不足するとヘモグロビンが産生できず鉄欠乏性貧血になります。
貧血の90%以上がこの鉄欠乏性貧血です。
鉄は体内で生成することはできないので、食事で効率よく摂取しなければなりませんが、非常に吸収率が悪く、過剰摂取は良くないと体が分かっているので少しずつしか吸収できないようになっています。
鉄分のサプリメントもありますが、食材から摂取する方が吸収効率はよいです。
ほうれん草や小松菜、レバーなどの鉄分を多く含む食材を取り入れながら、バランスの良い食事を毎日心がけていれば、自然と必要な鉄分が摂取でき、貧血予防・改善が図れます。
よく、めまいや立ちくらみが貧血の代表的な症状のように言われますが、実は貧血の主な症状は「息切れ」です。
酸素不足になると、もっと呼吸をして酸素を取り込もうとして息切れしやすくなるのです。
日常的に息切れを自覚されている方は貧血を疑った方がいいかもしれません。
息切れ以外の症状としては、爪が割れる、口内炎ができやすい、肩こり、冷え性、頭痛、むくみなどが貧血のサインと言えます。
普通に生活をしていて、「血液がおかしい」と思われる方は少ないと思いますが、息切れなど気になる症状がある場合は、血液が危険信号を発信しているサインなのかもしれません。
一度、血液内科で相談または、診てもらった方が安心です。
増え続ける大腸がん
食生活の欧米化とともに増加した病気に【大腸がん】があります。
近い将来、消化器がんの中では最も多いと考えられています。初期には他のがんと同様にほとんど症状はありませんが、進行すると、下痢・便秘等の排便異常や血便が出現し、更に大きくなると、腸閉塞(へいそく)になることもあります。初期の症状が出現しづらいため、大腸がんの転移した肺がんや肝臓がんが、原因となった大腸がんよりも先に発見されることもあります。
診断は、最近では「大腸カメラ」で発見されることが非常に多くなりました。以前は、おしりからバリウムを注入しながらレントゲンを撮る「注腸バリウム検査」で診断しましたが、便とポリープの区別が難しく、また早期の大腸がんの発見が困難なため次第に大腸の検査は「大腸カメラ」に取って代わりつつあります。「大腸カメラ」の普及は、検査手技の技術の向上とも関係していて、以前は全大腸を短時間でかつ苦痛なく検査するにはかなりの熟練が必要でしたが、現在では下剤の内服後、短時間(二十分程度)で苦痛の少ない検査が十分可能になったことも大きく影響しています。
治療は、早期がんのうちに発見できれば「大腸カメラ」でがんの存在する粘膜を切除するだけで治癒可能です。ある程度進行すると、手術が必要になります。とはいっても以前のように大きな傷から腸を切除する手術の頻度は減少し、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使用した手術が多くなっています。腹腔鏡の手術はお腹に開けた数個の小さい傷からカメラ等を挿入し手術をする方法で、以前と比較すると術後の痛みも軽減し、回復も早いことが特徴です。もし肝臓や肺に転移していても手術によって治癒する可能性もあります。
いずれにしても、体に負担のかからない治療を受けるためには、早期発見がとても重要です。血便は痔が原因と誤解して放置している方、下痢の方、便秘の方、また無症状でも五十歳以上の方は恥ずかしがらずに、是非一度は「大腸カメラ検査」を受けてみることをお勧め致します。
コロナウイルスワクチン接種について
いよいよ65歳以上の方のワクチン接種がはじまりました。ここで、現在使用されているワクチンについておさらいしましょう。まず、接種間隔は、3週間が基本です。2回目を打ちそびれた場合はできるだけ早く打ちましょう。1回目の接種と2回目の接種では、副反応の発生頻度に差があります。先行接種の全年齢集計では①37.5度以上の発熱について、1回目3.3%2回目38.4%(中には38度以上の方もいます)と高率でした。発熱する場合は、翌日が一番多く3日目にはほぼ解熱しています。②接種部位の痛みについて、1回目2回目ともに90%程度と高率です。これも接種翌日が、最も多く3日目には改善してきます。③疲労感・倦怠感については、2回目で全体で7割。④頭痛は、2回目で5割の頻度となります。若年・女性に頻度が多くみられました。65歳以上の2回目接種時は、副反応は発熱9%・頭痛20%・全身倦怠感38%となりました。
これらの副反応はワクチンが免疫をつけるための反応といわれています。発熱については、当日から翌日にかけて上がり通常数日以内で治ります。一人暮らしで心配な方は、発熱・疼痛に備えてかかりつけの先生や薬局で熱冷ましや痛み止めを処方・購入し、食欲低下等に備えレトルトパックの食材やスポーツ飲料等をあらかじめ購入しておき脱水を予防しましょう。
医療機関もがんばっています。通常外来・発熱外来・ワクチン接種は、院内で15分待機・病院内を混まないよう等努力していますので、接種予定がまだの方も今しばらくお待ちいただくようお願いします。
原稿を書いている5月15日現在、最新の話題は、横浜市立大学医学部の発表で、このワクチンは、現時点での変異ウイルス英国型・南アフリカ型・ブラジル型・インド型に対しても中和抗体ができるそうです。期待して待ちましょう。
タコとウオノメについて
歩く度に足の裏に痛みを感じることはありませんか?今回はタコとウオノメのお話です。 タコもウオノメも皮膚が硬くなってしまう状態です。
医学用語ではタコは胼胝腫(べんちしゅ)、ウオノメは鶏眼(けいがん)といいます。
わたしたちの皮膚は繰り返し圧力がかかると厚くなっていきます。
これは刺激から皮膚やその下の組織を守るための正常な反応です。
たとえばいつもペンや鉛筆を持っていると利き手の中指などが厚く硬くなります。
この状態がタコで通常痛みは伴いません。
ところが、足の裏の皮膚が硬くなってしまうと、歩くたびに押されるため、次第に奥に入り込んでしまい、痛みが出てくるのです。
表面から見ると芯の部分が丸く見えるためウオノメ(魚の目)という名前がついています。 1度ウオノメができると、歩行の度に押されて奥に入ってしまい、次第に強い圧力がかかるようになるため、自然にはなかなか良くなりません。
さらに痛みのある側の足をかばって歩くうちに腰まで痛くなってしまうこともあります。 ウオノメの治療は硬く入り込んでしまった皮膚を専用のハサミで取り除いていく方法です。
一見痛そうですが、通常、ウオノメ自体には神経は来ていないため、治療時の痛みはありません。
ウオノメを柔らかくする絆創膏も市販されていますが、奥の方にはまり込んだ芯は取れにくいですし、ご自分でハサミやナイフなどで削っている方もいらっしゃるようですが、足の裏側というのは意外と手が届きにくく、かえって刃物で怪我をしてしまう恐れもあります。
またウオノメやタコと思っていても実はウィルス性のイボである場合もあり、これは治療法も異なりますので、医療機関で1度御相談されることをおすすめします。
子宮頚癌(しきゅうけいがん)
先日癌検診の受診率が下がっているとの記事が、新聞に載っていました。実際に子宮頚癌もその罹患(りかん)率、死亡数が、最近上昇傾向にあります。
子宮頚癌の最大の特徴は、予防可能な癌であるということです。異形成「子宮癌になる前の病変」の状態で見つけることができるためで、定期的に子宮癌検診を受けることで、異形性の段階で発見して、癌の発症を未然に防ぐことができるからです。
また最近、性器に感染する、ヒトパピローマウイルスが子宮頚癌の発生に深く関与していることが、わかってきています。 ヒトパピローマウイルス感染は最も頻度の高い性感染で、20歳前後の女性の40~60%が感染しているといわれています。性器感染を起こすパピローマウイルスには40程度の型があり、尖圭(せんけい)コンジローマや若年性喉頭乳頭腫の原因となる、ローリスクタイプと子宮頚癌に関連するハイリスクタイプがあります。
このウイルスによる性器感染は、ほとんどが自然に消失し、ごく一部のハイリスクタイプが感染を持続し癌を発症します。
欧米では従来の子宮癌検診にパピローマウイルスの検査を組み合わせておこなっています。どんな検査でも100%完全なものはなく、異常細胞の見落としはどうしてもおきます。この見落としをパピローマウイルス検査と組み合わせることで減らすことができます。同じような異型細胞が見つかっても、ウイルスが陽性であれば、陰性のヒトよりも悪性に進行するヒトが約20倍にもなることが分かってきています。
2006年6月に米国でワクチンが認可されました。このことにより子宮頚癌を予防することが現実となってきました。
米国のある州では11~12歳の少女全員にワクチンを接種。オーストラリアでは11歳から26歳の全少女、女性に無料で接種することが決まりました。
日本ではパピローマウイルス検査はまだ保険適応になっていません。またワクチンも認可されていません。
早く適応され、認可されればと思いますが、それでも定期的な癌検診を受けることで自分自身を守ることはできます。20代後半以上の女性はぜひ検診を受けて下さい。









