内視鏡による胃がん検診
日本では年間4万8千人が胃がんで死亡しており、悪性腫瘍による死亡率の臓器別で第2位を占めています。
全てのがんに共通ですが、医療がこれほど進歩した現在においても、がんで命を落とさないためには早期発見・早期治療が最も重要です。
日本では昭和57年度から胃バリウム検診が広く行われてきましたが、ここにきて変革のきざしが見えてきました。
昨年9月に厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」が「従来の胃バリウム検査に加え、胃内視鏡検査(胃カメラ)による胃がん検診を新たに推奨する」との報告書を出しました。
バリウム検査に比べて内視鏡検査の方がより早期のがんを発見しやすいことは臨床現場の消化器科医なら昔から肌で感じていたことですが、内視鏡検査による胃がんの死亡率減少効果を証明した最近の研究結果を根拠の一つとして今回の提言となりました。
今後これを基に検診のガイドラインが改正され、それに従って各市区町村が検診方法を見直していくことになります。
もともとバリウム検査には放射線被ばくの問題もあるため、今後は内視鏡検診への移行を目指す自治体が増えるものと予想されます。
ただし内視鏡検査は費用の問題、検査を実施する医師の確保、検査に伴う合併症に対応できる体制作り、など検診を適切に実施するための課題を解決する必要があるため、早い自治体でも来年度からの実施となりそうです。
当面は胃バリウム検査もこれまで通り行われるため、胃内視鏡検査と両方の実施体制が整う自治体では、受診者がどちらかを選べるようになるかもしれません。
がん検診をお勧めすると「症状がないから」とか「自分は大丈夫」と言って検診に消極的な方を時々お見かけしますが、がんは症状が出るころにはある程度進行していることが多いのです。
今後検診方法が変わっても、日頃からの生活習慣の管理と適切ながん検診の受診が大切であることに変わりはありません。