新鮮な魚ほど危険?寄生虫アニサキス
アニサキスの幼虫は、体長は2~3cmの半透明の糸ミミズのような体形をしており、アニサキスの幼虫が付着した生の魚介類を食べたとき、ほとんどがそのまま排せつされますが、まれに人の胃や腸壁に侵入し、食後2~8時間後に激しい腹痛や嘔気(おうけ)・嘔吐(おうと)・アレルギー症状を引き起こします。
胃粘膜に進入する「胃アニサキス症」は、一番頻度が高く、胃・十二指腸潰瘍の症状と酷似しています。
腸の粘膜に進入する「腸アニサキス症」は、急性虫垂炎の症状と酷似し、まれに腸穿孔(せんこう)や腸閉塞(へいそく)を併発すると開腹手術となることもあり注意が必要です。
「アニサキスアレルギー」では、じんましんや血圧低下、呼吸不全などアナフィラキシー症状を来した症例も報告されています。
主に寄生しやすい魚は、サバ、サケ、ニシン、スルメイカ、イワシ、サンマ、ホッケ、タラ、マスで、養殖魚にはほとんど認められていません。
これらの魚の内臓に寄生しているアニサキス幼虫が、漁獲後に筋肉に移動します。
予防方法は、
①60℃で1分以上加熱する(70℃以上では瞬時に死滅します)
②マイナス20℃で24時間以上冷凍する
③内臓は生では食べず、魚を丸体で購入する際は、新鮮なうちに内臓を取り除く
④冷凍魚ではなく新鮮な魚を生で食べる場合は、調理の際、目視で確認し、除去する。
また、料理で使う程度の量や濃度の醤油、ワサビ、ショウガ、ニンニク、酢では、死滅しないので、注意が必要です。
経過と症状から、胃アニサキス症が疑われる場合は、胃内視鏡を行い、アニサキス幼虫を鉗子(かんし)でつまみ、取り除くことで、速やかに症状は改善します。
アニサキス症は、昔は漁村などに発生する風土病と言われていましたが、生の食材が新鮮な状態で提供されるようになった現在、アニサキス症は増加傾向にあります。
今や、年間7000件以上の報告があり、もはや人ごとではありません。
魚介類を生で調理、食べるときは十分注意し、また、アニサキス症が疑われるときは、できるだけ胃を空っぽにして、緊急で胃カメラができる状態で専門医を受診する事が大切です。