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高血圧の基準値の変更に伴う混乱

内科2014/10/06

 今年の4月に、高血圧の基準値の変更に関して二つの学会からそれぞれの発表がありました。一つは日本高血圧学会、もう一つは日本人間ドック学会からでしたが、この二つの学会が示す基準値の意味には大きな相違がありました。ところが、一部のマスメディアがこの相違を説明することなく「血圧はもっと高くでも大丈夫だ」と思わせるような報道をしたため、高血圧治療中の患者さん達に大変な混乱を引き起こしてしまいました。

 日本高血圧学会が新しく改訂した高血圧治療ガイドラインで変更した点は、主に若年・中年者(65歳未満)と後期高齢者(75歳以上)の降圧目標値でした。これまでの降圧目標値は、若年・中年者は130/85mmHg未満でしたが、新ガイドラインでは140/90mmHg未満へ緩和されました。また後期高齢者は140/90mmHg未満でしたが150/90mmHg未満へ緩和され、降圧による悪影響が無い場合には140/90mmHg未満を目指すこととなりました。

 一方、人間ドック学会が発表した「健康者の血圧の上限は147mmHg」という値は、2011年にドック健診を受けた人の中から、その時点で健康な人(約1万5千人)の血圧の分布範囲の上限値が147mmHgであったという事実を示したにすぎない数値でした。つまり、ここまで下げれば将来の脳卒中や心筋梗塞などの発症を減らせるという数値ではありませんでした。

 高血圧の治療の目的は将来起こる疾患を予防することですので、「今は健康である」という人の血圧の上限値は降圧目標値にはなり得ません。日本高血圧学会のガイドラインの基準値は、世界や日本で行われてきた一般住民の科学的な長期的追跡調査の結果から導き出された最新のものですので、その降圧目標値の信頼性は高いものと考えて良いでしょう。


Text by 関口内科 関口 洋平(  「函楽」掲載)

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