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認知症の方との付き合い方

脳神経外科2014/03/24

 認知症の家族への接し方をよく聞かれます。
明快なお答えが出来ませんが、認知症の人が特別なのではないと考えるよう勧めています。

 たとえば、徘徊と聞くと、やみくもに歩き回る姿を思い浮かべがちです。
ご本人が言葉で説明できないことも多いのですが、出かけた後をつけて行くと、その目的が分かることがあります。
また、「徘徊」しているところを警察に保護された時、その発見場所にヒントがあることもあります。
かつての職場を目指していたり、子供時代を過ごした、今はない実家を探していることがあります。
認知症では、過去から切り離され、未来への見通しもつかない全くの暗闇の中、足元を照らす光だけが残っている状態です。
「今」がとても不安なために、安心できた過去に戻ろうとして家を飛び出すことも多いといわれます。
ただ、途中で道が分からなくなり、「徘徊」という姿になってしまいます。

 排泄に失敗したとき、「私はやっていない」と言い張り、汚れた下着を箪笥の奥に隠し、介護者を驚かせます。
これらは「身内に格好悪いところを見られたくない」という、誰にでもある当たり前の気持ちから出たと考えられます。

 一見、理解しがたい行動も、よく観察すると理由があることが分かります。
また、患者さん自身が語った言葉に対して、「ゆっくり話してください」、「何を話したかより、どのように話したかということが大事です」というのがあります。
患者さんは、早口で幾つもの事柄を話されると付いていけません。
同じ言葉でも、喋り方、声の調子、顔の表情などで受ける印象が変わります。
この聞いた時の気持ちは記憶に残るようです。
したがって叱るような話し方ばかりしていると、患者さんとの関係が壊れ、後々のお世話が困難になるという悪循環に陥ります。

 どんな時でも人と話す時には、相手を傷つけない話し方、態度というものがあると思います。
認知症だからと「構える」のではなく、自分と同じ一人の人間として、ちょっと相手のことを大切に思って接することをお勧めしています。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税( 2014年3月24日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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