高齢者の家庭血圧降圧目標値
「先生、いったい血圧はどのくらいまで下がれば安心なのですか?」と、高血圧で通院中の80才のAさんはとても不安な顔をして聞いてきました。
どうやら、家庭血圧計を買って家族で測ってみたら、息子や嫁よりいつも高いので心配になったとのことでした。
血圧を何処まで下げるべきか…とは、高血圧の治療において最も重要なテーマです。
脳卒中や心臓疾患などを予防できて健康的な生活を送るために丁度良い血圧値を知ることは患者さんにとってもとても大事なことです。
日本高血圧学会は過去から現在までの様々な高血圧研究を十分に解析検討し、「高血圧治療ガイドライン」としてまとめ、5年毎に改訂しています。
今年の4月にも、改訂された新しいガイドラインが発表される予定です。
今回の改訂案では、高齢者の家庭血圧降圧目標値にも大きな変更があります。
①前期高齢者(65~74歳)は今までと同様に135/85mmHg未満ですが、②後期高齢者(75歳以上)は145/85mmHg未満に緩和され、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に135/85mmHg未満を目指すこととなります。
また、糖尿病や慢性腎臓病(蛋白尿陽性)のある高齢者は、まずは上述の値①②を第1目標とし、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に125/75mmHg未満を目指すこととなります。
しかしながら、高齢者はひとり一人が様々な病態を呈していますので、とくに持病を多くもった虚弱高齢者や85歳以上の超高齢者などは、主治医が個別に判断して降圧目標値を慎重に設定しなければならない場合もあります。
一方、65才未満の中年若年者にも変更があります。今までは125/80mmHg未満でしたが、新ガイドラインでは135/85mmHg未満(前期高齢者と同値)へ緩和されます。
このように、家庭血圧降圧目標値は一様ではなく年齢や個々の病態によって違いがありますので、Aさんのように若い人達と比べて不安に思わずにもう一度主治医から説明を受けてみることがよいでしょう。