男性の性(29)
前3回は、勃起機能改善薬であるバイアグラ・レビトラ・シアリスといったいわゆるPDE5阻害薬について、使用方法や注意点などを中心にお話しました。
これらの薬はひじょうに有効性が高く、また副作用もほとんどなくとても良い薬で、医師の注意事項をきちんと守れば重大な合併症を引き起こすことはほとんどないと言えますが、中にはこれらの薬が無効であったり、狭心症や心筋梗塞の既往があり硝酸薬や類似の薬を投与されていて、これらの薬が使えない患者さんもいます。
また、現在、硝酸薬や類似薬を投与されていなくても、狭心症や心筋梗塞の既往があると今後投与される可能性が高いため、これらの薬を使うことをためらう患者さんもいます。
また他にも、重度の高血圧・低血圧、重度肝障害、網膜色素変性など、これらの薬が使えない患者さんもいます。
そういう患者さんには、海綿体注射という治療法があります。
1982年に塩酸パパべリンという薬を陰茎海綿体に注射することによって勃起が誘発されることが報告され実際にも使われましたが、これは海綿体が線維化したり持続勃起症の頻度が高かったりで使いにくい薬でした。
その3年後、プロスタクランジンE1という薬が勃起誘発に有効なことが日本人(東邦大学医学部泌尿器科前教授石井先生)により、世界で最初に報告され、副作用も少なく勃起の誘発も確実なことから、PDE5阻害薬無効例や禁忌例に世界各国で使用されています。
陰茎海綿体に、つまりペニスに直接注射をする、というとかなり痛くて危険と思われるかもしれませんが、実際はとても細く短い針で一瞬で注射が終わるようなキットがありますので、ほとんど痛みもなく医師の指導通りに行えば危険もほとんどないのですが、現在日本では医師がEDの検査のために行う以外は承認されていません。
海外では自己注射が一般的で、患者さんは性交の15分くらい前に自分で陰茎海綿体に薬を注射しています。
特定の病院(大学病院など)では、研究として病院の倫理委員会を通して、医師と患者さんの自己責任という形で、この治療を行っています。
日本性機能学会ではもう2001年からこの治療を認可してもらうよう厚労省と折衝していますが、残念ながら日本人が発見した治療薬が日本ではまだ承認されていない状況が続いています。