体外受精児は自然妊娠児となんら変わりはありません
本年度から、国は少子化に対する歯止めのひとつの策として、赤ちゃんを望み体外受精を行っている方々に、特定不妊治療費助成事業を実施することになりました。これは費用の多くかかる体外受精を行う患者さんにとっては非常に助かることでしょうし、これから、体外受精へと進んでいく患者さんが増加していくことが予想できるでしょう。しかし、体外受精に対する知識を得る場が多くはないため、多くの方々の体外受精に対する理解は不十分であると思われます。特に、体外受精で生まれる赤ちゃんは奇形が多いのではないかと考えている方は少なくありません。
体外受精は、簡単に言うと、妻の卵巣から卵子を体外にとり出し、培養液の中で夫の精子と受精させ、その受精卵を妻の子宮に戻し妊娠を試みる方法です。この過程は、体内で行われる自然受精・妊娠と変わりありません。ただ、受精と受精卵の最初の発育が体外で行われるため、体外受精と呼ばれます。
昔はこの受精卵を試験管内で培養したため、この方法で誕生した赤ちゃんは「試験管ベビー」と言われました。1978年イギリスで初めて体外受精が成功して以来、この技術は、一般的な治療法として世界的に普及しています。日本では1983年に体外受精第1号の赤ちゃんが誕生しました。 現在、全国で年間5万組以上のカップルがこれによる治療を受けており、1年に1万人程の赤ちゃん(新生児の約1%)が誕生しています。日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会による生殖医療に関する報告において、平成7~9年の統計では体外受精児の奇形発生率は自然妊娠児と差はありません。更に、6~13歳までの追跡調査を行った研究でも、児の予後に一般の児と差がないことが明らかになっています。イギリス等の諸外国でも同様の研究結果が出ています。
体外受精を現在、またこれから行う予定のある方々へ、「体外受精で誕生した赤ちゃんは自然妊娠児となんら変わりありません」ということを提言したいと思います。