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食道がんの基礎知識

2013/01/28

 最近では、指揮者、歌手、役者など食道がんを患ったことが公表されています。
食道がんは、男性では40歳代後半から増え始め、50歳代で急増し、60歳代に多く発生します。

 日本では、年間1万人以上がこのがんになるといわれており、生涯で食道がんにかかるリスクは、男性で52人に1人、食道がんで死亡するリスクは、84人に1人とされています。
食道がんは、同じ消化器の胃がんや大腸がんなどに比べると、手ごわいがんといわざるを得ません。

 食道は、長さ25cmほどの薄い管で、食道の周りには、肺や心臓など重要な臓器が隣接し、すぐ前には気管や気管支があり、後ろには大動脈が走っています。
そのため、早い時期からリンパ節に転移を起こしやすく、また周囲の臓器にがんが食い込んでいく(浸潤)ことが多いのです。
さらに、声を出したり、食べ物を飲み込んだりすることをつかさどる反回神経も近くにあります。
このように傷つけては大変な臓器や血管、神経がひしめく中で神経の周りにあるリンパ節の切除まで同時に行うので、食道がんの手術は、高度な技術を要する手術です。

 また、粘膜下層にとどまる早期のがんでも、胃がんならば90~95%が治るといわれていますが、食道がんの場合は、5年生存率は70~80%にとどまっているといわれています。
そのため食道がんは、早期発見が非常に重要ながんのひとつといわれています。
初期では自覚症状はほとんどなく、食道の粘膜に傷がつくと食べ物を飲み込んだ時チクチクしたり、熱いものがしみたりする程度です。
しかし、こうした違和感も、がんが少し大きくなると消えてしまうことがほとんどです。
そのため、自然と放置してしまうことが多いのです。
さらにがんが大きくなると、のどがつまる、声がかすれるといった自覚症状が出てきます。

 この段階で見つかった場合、ほとんどが、がんはかなり進行しています。
早期の食道がんは、検診の胃バリウム検査で発見されることは、ほとんどありません。
定期的な胃カメラ検査は、胃がんの発見はもちろん食道がんの発見にも役立っています。


Text by 鈴木内科外科クリニック 大原 眞理子( 2013年1月28日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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