高血圧の薬はやめられる?
診察室でしばしば聞かれる質問です。あるいは、「高血圧の薬は飲み始めたらやめられないから飲みたくない」と言われます。どうでしょうか?
高血圧の治療の目的を思い出してもらうと良いです。
最終の目的は脳梗塞や心筋梗塞にならないように、つまり動脈硬化した血管が詰まって、臓器に血液が流れなくなることがないようにすることです。
血圧が高いと血管が詰まり易くなるので、血圧を低く保つようにします。
それで体重を適切に保ったり塩分を少なくしたり、生活習慣の改善を勧めます。血圧が160/95でも、「明日脳梗塞になる」わけではありません。
でも10年後までには100人のうち8人が心筋梗塞を起こしたり、脳梗塞で半身まひになったりするのです。
では生活習慣病の改善を試みても血圧が下がらない場合にどうするか?
薬を飲んで血圧を下げてもらうことになります。
「薬をやめた人がいないか?」と聞かれると、少ない人数ですがいます。
①急に太った後に血圧が高くなったのですが、「薬を飲み始めたのがショックだった」そうで、体重を減らして数種類必要だった降圧薬がゼロになりました。
少し経過を見ましたが、もう血圧が上がってこなかったので自己管理することにした人がいます。
②最初から軽症の高血圧で減塩食にしてもらうと、次第に血圧が下がり薬をやめることができた人もいます。減塩でも上の血圧が10くらいは下がります。
③診察の時には緊張するために血圧が高くなりますが、家庭で自己測定してみると正常血圧であった人も薬は飲みません。
ひじで測る血圧計の場合には、正しい測定法であれば診察室の血圧より家庭血圧を参考にします。
「160/95前後の高血圧なら20%の人で薬をやめられる」そうですが、血圧が高くなればなるほど中止は難しくなります。
長い間高血圧を放置すると血管も硬くなるので、治療しても血圧が下がりにくくなります。
血圧をただ下げるのではなく脳梗塞などの大病を防ぐのが最終目標だと理解してください。
そうすることで将来の寝たきりや認知症になる可能性を少なくすることができるのです。