不活化(ふかつか)ポリオワクチン
みなさんはポリオワクチンにも口から飲む生ワクチンと注射でする不活化ワクチンの2種類があるのをご存知ですか? 現在、日本のすべての自治体で行われているポリオワクチンの接種にはポリオウイルスから強い毒性をなくし弱毒化した生ワクチンを6週間以上間をあけて2回飲んでもらうという方法がとられています。 昭和35年から36年にかけてのポリオの大流行の時は旧ソ連からポリオワクチンを緊急輸入して流行を防いだという実績のあるワクチンのおかげで、昭和55年以降野生のポリオウイルスでのポリオの発生がなくなりました。
しかし、一方でワクチンに由来するポリオの発生が平成19年度には4例、平成 20年度には7例発症するなど、ワクチン由来のポリオの発生が問題となるようになりました。 平成22年には、ワクチン由来でのポリオの発生がない不活化ワクチンに早期に切り替えをするよう小児科学会から要望書が出され、ワクチンメーカーでの臨床試験が進んではいますが、製品化され多くの子供達がその恩恵を受けるためにはあと数年の時間が必要です。 小児科医の有志たちは、この要望に応えるべく、独自に不活化ポリオワクチンを輸入して接種を始めるという行動をとっています。
世界中で認められているワクチンですから、安全性に問題はありませんが、国の承認を受けていないために、万が一事故が起こった場合の補償が限られること、接種方法が筋肉注射なので、1歳前のお子さんであれば、太ももに注射しなければならないことなどは知っておくべきでしょう。 一般的にはポリオの生ワクチンは安全性、効果ともに問題はないのですが、どうしても心配な保護者の選択肢を増やしてあげたいという思いが、小児科医の心を動かしているものと思われます。
現在、私の知る限りでは道南地区では接種を行えるところが1ケ所、準備が整いあとはワクチンが届くのを待っているところが1ケ所あります。
不活化ポリオワクチンを受けさせたいと思われるのであれば、ご自身でもよく勉強され気持ちを決めてご相談ください。
迅速かつ的確な初期診断に定評 在宅医療にも努める信頼のかかりつけ医
1973年の開業以来、37年の歴史を持つ「ごとう内科胃腸科」。
地域に根差したかかりつけ医として、プライマリーケア(初期診断)医療に力を入れ、後藤琢院長の専門である消化器疾患を中心に、内科全般にわたって的確な診断に定評がある。また糖尿病専門医である後藤曄理事長を頼りに訪れる糖尿病患者も数多く、長年にわたり信頼を得ている。診断には胃内視鏡はもとより経鼻内視鏡、超音波エコーなどを完備。
さらに地域連携にも積極的で、総合病院など診療科の枠を越えた医療ネットワークシステム「道南メディカ」に参加し、CTやMRIなど高度医療機器による画像連携なども可能な体制を整えている。
「患者さんに最善で良質な医療を提供するためにも、地域医療ネットワークによる万全の体制づくりはもちろん、その医療システムを生かすためには迅速かつ的確な初期診断は重要で、当医院は今後ともその役割を担っていく考えです」(後藤院長)また、同医院は在宅療養支援診療所に登録され、往診による在宅医療に力を入れているのも大きな特徴だ。
がんのターミナルケアから、通院が困難な人、足腰の悪い高齢者、冬場に雪の影響で来られない人などを対象に、訪問看護師と連携して取り組み、地域の頼れる存在となっている。
40歳を過ぎたら、眼底検査を!!
「目を見ればその人が分かる」と言いますが、これは本当で、目は体の中で血管を直接観察できる唯一の臓器です。身体がメタボならば、目にも高血圧・高脂血症・糖尿病による合併症が出現する可能性があるのです。 イギリスの若者対象の調査によれば、肺がんや脳卒中よりも失明が一番恐怖という結果が出たそうです。瞳孔を広げる点眼薬をつけて眼底検査を行えば、目の重要な病気を早めに見つけることができます。
また、40歳以上の日本人の5%は緑内障で、疑いの人を含めると100人中13人もいることが分かっています。緑内障は進行性で日本の失明原因1位の病気ですが、早めに発見し眼圧を下げる治療を行えば、進行を遅くすることができ、老後も身の回りのことができる視野を保てます。緑内障も眼底検査と視野検査・眼圧測定で見つけることができます。早期発見のために気軽に眼科を受診しましょう。
C型肝炎が、飲み薬で治る可能性があるって本当ですか?
はい、本当です。
今年の9月より、ダクラタスビル、アスナプレビルという2種類の薬が発売されました。
それぞれC型肝炎ウイルスに直接働き、ウイルスの複製・増殖を阻止する薬剤です。
この2種類を併用し24週飲むことで80~90%(※1)の方がウイルス学的に治癒しているという画期的な薬剤です。
しかしながらC型肝炎の患者さん全員にはまだ使えません。
使用できるのは、ウイルスのタイプがセログループ1(ジェノタイプ1)型で、C型慢性肝炎・C型肝硬変(代償期)の患者さんだけです。
そのなかで対象者は、
①インターフェロン治療ができない人(貧血・血小板減少症・うつ病・高齢など)
②インターフェロン治療を行ったが副作用で治療を中止した人
③インターフェロン治療を行ったけど効果不十分でウイルスが消えなかった人です。
副作用については、使用した患者さんは、インターフェロン治療より非常に楽だったと話されています(風邪症状、頭痛、肝機能異常、発熱等がありますが、インターフェロン治療よりはるかに副作用は少なく弱いものです)。
また、87%(※1)の患者さんが治療を中止することなく完遂できています。
ただし、弱点もあります。
治療前のC型肝炎ウイルスに変異があると効果が半減することが分かっています。また、インターフェロン治療と同様に高価な治療であるため、国からの補助があります(ウイルス肝炎インターフェロンフリー治療の申請が通れば、1か月の治療費の総額が1~2万円で収まります)。
また、今後さらに新しい薬の開発も行われており、期待されております。
ただし、現状肝機能障害が進行している患者さんで今回の条件に合わない方は、現在のインターフェロン・リバビリン・シメプレビルの3剤併用療法で90%(※1)近い効果がありますので、やみくもに新薬を待つのではなく、インターフェロン治療を受けることをお勧めします。
(※1)日本肝臓学会2014年9月ガイドラインより抜粋
医療被曝(ひばく)について
先日、日本では診断用X線によってガンが3・2%増える可能性があるという論文が発表され、様々なメディアで報道されました。要するに、被曝するとガンが増える。これは広島、長崎、チェルノブイリなどからも明らかで、日本ではX線やCTスキャンでの検査数が世界でも飛び抜けて多いので、ガンが増えるでしょう、ということのようです。我が国ではメディア報道に過剰な反応をすることがしばしばあるので、もし患者さんが治療方針決定に必要なX線検査にまで同意してもらえなかったらどうしよう、と思っていましたが、特にそのようなことはありませんでした。
放射線の影響には、ある線量以上照射されなければ起きないもの(確定的影響と言い、皮膚炎、不妊、白内障などがあります)と、照射される線量に比例して発生確率が増すもの(確率的影響と言い、放射線誘発ガンがあります)があり、確定的影響についてはわかっていて、最も軽い初期紅斑(皮膚がほんのり紅くなること)でも胸のレントゲン写真で連続六千回以上、CTでも連続百回以上とらなければ起こりません(おそらく機械が先に壊れるでしょう)。最初にあげた論文は確率的影響について研究されたもので、それについては残念ながら詳細はわかっていません。しかし、皆さんが受けられるX線検査は病気の早期発見と適切な治療のために必要なもので、例えば1センチの肺ガンはX線検査でなければ発見不可能で、打診聴診触診ではまずわかりません。このように被曝というリスクを払っても治療のために得られる利益が多いという判断のもとに検査は行われているのです。ですが、いくら利益が勝るからといって、被曝線量軽減への努力は怠ってはならず、医療機関のみならず医療機器メーカーも一体となって、質を落とさず線量を落とす工夫をしています。
皆さん、どうぞ主治医の先生を信じて今後もX線検査を受けていただきたいと思います。
眼瞼下垂(がんけんかすい)
眼瞼下垂の治療は、一般には局所麻酔で瞼を上げる筋肉(眼瞼挙筋)を短縮して、瞼(まぶた)のたるんで余っている皮膚を取る手術です。
この治療によって、視野も広くなり、夜間も見えやすくなります。
手術時間は両側約90分、外来手術が可能です。
また、この手術で眼精疲労が軽減し、後頭部の血行がよくなり、肩こりや頭痛が改善することがあります。
目は二重瞼や奥二重になり、外観的には黒目の露出が高くなるため元気そうに見えます。
自分に眼瞼下垂があるか判定する簡単な方法は、数年前の写真と現在の写真を比較することです。
眼瞼下垂の原因は先天的(生まれながらの眼瞼下垂)、後天的(外傷、病気、加齢など)によって起こります。
最近話題になっている原因として、コンタクトを長年装用していたことによると思われる眼瞼下垂も認められます。
また、顔面神経麻痺や非常にまれですが、重症筋無力症の初期症状のこともありますので専門医に診て頂くことが大切です。
アレルギー性結膜炎の原因(アレルゲン)を調べてみませんか?
アレルギーは、通年性と季節性のものがあります。
通常、通年性アレルギーはハウスダストなど年間を通じて空気中にある物質により起こり、鼻炎症状が強く、目の症状は軽いことが多いです。
一方、季節性のアレルギーは一定の時期に出現する花粉などが原因で起こるアレルギーであり、皮膚のかゆみ・鼻水・くしゃみ・涙目・目の充血など、目にも症状が強く出ることがあります。
季節性アレルギーはいわゆる花粉症ですが、地方によって植物の種類や、花粉の飛ぶ時期が違います。
北海道地方ではスギ花粉の飛散がきわめて少なく、シラカンバやテンサイが花粉症の原因物質(アレルゲン)として見られます。
しかし、ここ道南地方は唯一スギ花粉の飛散が見られる土地で、すでにスギ花粉の飛散が始まっています。
花粉症のアレルゲンとして4〜6月はスギ・シラカンバ・ハンノキ・ヒノキ・イネ、7〜9月はイネ・ヨモギ・ブタクサ・テンサイなどの花粉の飛散が多いとされています。
しかし、温暖化により今までは東北地方の花粉アレルゲンだったアカマツ・りんごなどが道南地方では4〜6月に飛散するようになってきています。
また、口腔アレルギー症候群といって、(左下の)花粉症がある方が、(右下の)果物、野菜などを食べた時に、花粉症と同じ症状になるのに加え、口腔内にピリピリ感が発症することがあります。
口に入った途端にのどの腫れや痒みで気づくのですが、蕁麻疹や喘息など重症化しやすいので注意が必要です。
よって、重症化を回避するためにもアレルギー性結膜炎になったことのある方は、1度自分のアレルギーの原因をちゃんと血液検査で調べておくことをおすすめいたします。
シラカンバ → りんご・もも・さくらんぼ
イネ科 → トマト・メロン・スイカ・オレンジ
よもぎ・ブタクサ → メロン・スイカ・りんご・セロリ
危ない不整脈の症状
正常の脈拍とは、1分間に50~100回打つ規則正しい心拍ですが、これ以外をすべて不整脈と言います。
症状もなく無害な不整脈から突然死んでしまう不整脈まで、いろいろな種類があります。
ドキドキして気持ちの悪くなる不整脈は、命の危険がなくても治療すると生活の質が保たれるように治療をします。
「失神する」「目の前が暗くなる/白くなる」「引きずり込まれるようなめまい」を自覚するときは心臓から頭に血液が送れなくなるような状態で、命にかかわる重症な不整脈の存在を疑わせます。
不整脈が発作のように一時的に出ても時期を逃すと証拠がなくなるため、想像で危険な不整脈かどうか考えなくてはならない場合も多いのです。
正確に診断して危険な不整脈を見つけるためには、「心電図」や、1日中体に電極を貼り付けて心電図を記録する「ホルター心電図」(普段どおりの生活をしながら記録します。
入浴中の心電図をとれる機械もあります)、運動中の心電図をとる「トレッドミル運動負荷心電図」などがあります。
どんな不整脈が出ていたか想像するのに1番助けになるのが、動悸の自覚症状です。
普通は、心臓が動いているのには気がつきませんが、思春期に異性に「好きです」と言うときに感じたようなドキドキ感が速かったり、リズムが狂ってしまったりしたのが動悸です。
「ぽっくり病」と言われていましたが、夜、寝ている間に不整脈のために突然死するブルガダ症候群は30~40歳代の男性に多く、特徴的な心電図変化があることがわかってきました。
初回の発作で死亡することが多いので、不整脈としては非常に危険な不整脈に分類されています。
「動悸がして変だな」と思ったら、「1度きりで繰り返さないし」と自分を納得せずに、まず、病院で病状を話し、心電図を撮ってみて下さい。
1番大事なのは危険な不整脈を予防するように治療を受けることです。
まさかの時は蘇生術を周囲の市民が施行してくれ、AED(除細動器)で電気ショックを用いて心拍を再開させるのを期待することになります。
大腸がんで死なないために
がんは決して人ごとではありません。今は2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。
わが国で罹患(りかん)が多いがんは、男性で胃(16・4%)、前立腺(15・8%)、大腸(15・8%)、肺(14・8%)の順で、女性では乳房(22・1%)、大腸(16・0%)、胃(9・8%)、肺(9・7%)、子宮(6・6%)です。
男女合わせて多いがんの順位は①大腸②胃③肺でした。
北海道のがん患者数は全国4位で男女とも高水準にあります。
また、わが国の大腸がん死者数は上昇を続け、今では年間5万人を超し、2・5倍の人口を有する米国の大腸がん死者数を上回ったことは衝撃です。
中でも函館市は大腸がん死亡が飛び抜けて高いのです。標準化死亡比は全国平均を100として、各地域のがん死の割合を示しますが、函館市の大腸がんの標準化死亡比は137・8です。函館市では大腸がんで死亡する人が全国平均より約40%位多いということになります。
大腸がん死を防ぐには、便潜血検査による大腸がん検診を毎年受けること、大腸内視鏡で大腸ポリープをすべて切除することです。
便潜血検査による大腸がん検診が大腸がん死を約60~80%減らし、大腸内視鏡で大腸ポリープをすべて切除することで大腸がん死を約50%減らすことが明らかとなっています。大腸がん患者のうち大腸がんで死ぬ割合は37%です。このことは大腸がんを早期に発見して治療すれば、完治できることを示しています。
自覚症状がなくても40歳になれば、毎年大腸がん検診を受けることが重要で、便潜血陽性の場合には大腸内視鏡を必ず受けて、発見された大腸ポリープはすべて切除してもらってください。大腸内視鏡機器の改良と挿入技術の進歩で、ほとんど苦痛なく検査が受けれるようになりました。不安感が強い人や開腹術の既往がある人などには、鎮静薬で眠らせて検査することもできます。
大腸がん死を防ぐことは自分でできることを知っていただきたいです。
よくある良性皮膚腫瘍 ~石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)と眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)
■石灰化上皮腫皮膚の下に石灰のような硬いものができる良性の皮下腫瘍です。
毛母腫ともいわれ毛根から発生してくる腫瘍です。
比較的若い人に多く、小児の眼の周囲、腕、頚などによく見られます。
通常は特に症状はなく、皮膚の下にコリコリとした硬いものが触れるだけです。
時に炎症を起こすこともあり、そうなると痛みが出てきます。
この腫瘍は良性で、ゆっくりと大きくなってきますが、自然に治ることはありません。
また、軟膏や内服薬で治ることもありません。
細菌が入って化膿すれば腫れてきます。
治療法は、手術による切除が普通です。
年齢と腫瘍の大きさによりますが、小学生低学年以下では全身麻酔が必要なこともあります。
それ以上でしたら局所麻酔でも可能です。■眼瞼黄色腫まぶたにできる黄色い皮膚腫瘍です。
上のまぶたの内側に出ることが多く、中年以降の年齢に多く見られます。
高脂血症、抗コレステロール血症の方に出やすいといわれています。
炎症を起こしたりすることもないので、痛みなどの症状は特にありませんが、徐々に腫瘍が大きくなってきます。
この腫瘍も良性ですが、薬での治療はできません。
治療は手術による切除です。
まぶたという場所ですのであまりに大きいものはそのまま縫合できなくなり、植皮などが必要になることもあります。
また、良性ですが、再発の多い腫瘍ではあります。









