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妄想のケア

脳神経外科2011/03/17

ある英国の作家が「若いとは、お金がないことを気にしないことだ」と言いました。
では「老いとは、お金が無くなることが心配になること」でしょうか。
時々、物盗られ妄想の相談を受けますが、身近な介護者に向かう攻撃的な物盗られ妄想に家族は弱ります。
精神科の外来治療だけでは、薬に頼った結果、副作用で事態が悪化することもあります。
今回は、具体的な対処方法ではなく、本から得た妄想への対応の原則を紹介します。
認知症の初期は、記憶障害が中心ですが、妄想などの周辺症状も出てきます。
この妄想の根源は「喪失感」にあるといわれます。
妄想は段階的に出るのではなく、何かしらの出来事をキッカケに急に生じます。
人生には、親しい人との別れや生活環境の変化、病気や怪我はつきものです。
「人の世話はするが、されるのは苦手な」人は、別れや環境変化、体の不調などを喪失感に結びつけがちです。
共通するのは、老いや病気、助けを借りることを上手く受け入れられないことです。
それまでのように、困難を自力で乗り切れず、面倒を見られるという予想外の現実に、不安や恐怖を感じた結果、物盗られ妄想という表現に
なると考えられます。
妄想は誰にでも生じうるもので、このような性格の人達だけの問題ではありません。
周辺症状は、認知症患者さんの生き方とその人が置かれた状況が絡み合って生じます。
つまり、家庭環境や、老いを排除し、病気になって人の手を借りる、病んだ人に手を貸すことが当たり前ではない社会の姿も背景にあります。認知症のケアでは、妄想の元である喪失感を埋めるため、その人が「出来なくなったこと」は要求せず、「出来ること」を積極的にやってもらうことが有効だといいます。
また、攻撃性を家族が受け止めるのは難しいので、第3者のケアスタッフが間に入る方がいいでしょう。
病気の介護や、生活の援助に、他人が介入することに抵抗感があるものですが、介護サービスの利用にはこういう意味もあります。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税( 2011年3月 「」掲載)

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