その症状、白内障かも!!
人間の目はカメラに似ていて、レンズにあたるのが水晶体です。
水晶体は加齢とともに濁ってきて、それが『老人性白内障』です。
50歳を過ぎると5人に1人くらい、80歳ではほぼ全員が白内障になります。
以下のいずれかの症状がある時は、白内障の可能性があります。
①遠くも近くも、かすんで見える
②明るい所でギラギラしたり、物が見づらい
③今まで老眼鏡が必要だったのに、急に近くが見やすくなる
④物がだぶって見える
最近はアトピー性皮膚炎や糖尿病との合併による50歳以下の若い年齢での白内障も増えてきています。
白内障は、進行を遅くする点眼薬がありますが、この点眼で水晶体の濁りをなくすことはできません。
あくまでも進行を少しゆっくりするだけなので、いずれは手術で濁った水晶体を取り除き、かわりに人工水晶体を入れることになります。
濁っている部分や程度は個人差があります。
ひとりひとり手術するべき時期は違うので、眼科医とよく相談して治療方法のアドバイスを受けて下さい。
不整脈が原因の脳卒中
脈が乱れる不整脈の中でも、発作性心房細動という不整脈では、心臓から血の塊(血栓)が飛んで脳動脈に詰まり、脳卒中を引き起こします。長嶋監督が、これで脳梗塞になり、リハビリをしていますが、比較的多い病気です。
正常な心臓は、時計のように規則正しく、トクトク打ちます。安静にしている時、一分間に五十から百回、規則正しく打つのが整脈の状態です。これ以外でリズムが狂うのは不整脈で、そのうち最も多いのが、心房細動です。心房は細かくふるえて動いて、脈をとると、モールス信号のように不規則に脈が触れます。こうなると、心房の中で血液が固まりやすい状態になります。固まった血が心房の壁から全身に向かって心臓を飛び出すと、五十%は脳動脈に詰まって脳梗塞を発症します。
発作性心房細動は、時々心房細動になり、短期間で正常の脈に戻る不整脈です。慢性的な心房細動と同じように、心房の中に血栓を作りますが、それには二日かかります。早くに普通の脈に戻れば大丈夫ですが、二日以上心房細動が続くと、正常の脈に戻るとき、心房の壁にハタキをかけたように、血栓が飛ぶことになります。
心房細動の人は、千人中に六から九人いると言われています。ところが、六十歳以上の人では急に増えて、二十人に一人が心房細動になります。
心房細動の原因には、弁膜症、高血圧・糖尿病から来る心肥大、心筋梗塞などの心臓病がありますが、特に原因無く細動になることが多いようです。疲れて帰った夜、風呂に入って「フーッ」とため息をついたら、急にドキドキしてきた――
今のところ、不整脈の薬を飲むのがいいのか、脳梗塞にならないように血をサラサラにするだけの治療がいいのか、結論は出ていません。不整脈の薬よりは、脳梗塞の予防をしたほうが良い、と言う報告も出ています。脈が速い心房細動では、心臓の働きが悪くなり心不全になる人もいるので、不自由なく安全に暮らせるようになるような治療は、一人一人を良く診て、決めることのようです。
胃がん予防のためにピロリ菌検査を
わが国のがん死亡数(2014年)で、胃がんは男性第2位で女性第3位です。
胃がんの年齢調整死亡率は減少をしていますが、胃がん死亡数は年間約5万人で横ばい状態です。
特に70歳以上の高齢者における胃がん死亡数が急増しています。
胃がんの99%はピロリ菌感染者から発生しており、未感染者における胃がん発生は非常に低率です。
従って、ピロリ菌は胃がんの原因で、胃がんはピロリ菌感染症と称される由縁です。
胃がんは胃の粘膜に発生して胃の外へ向かって浸潤します。
この浸潤の深さによって早期胃がんと進行胃がんに分けられます。
また、組織像の違いから分化型と未分化型に分けられ、未分化型の方が早く進行します。
早期胃がんの中には、深達度、大きさ、組織型によっては内視鏡によって切除できるものがあります。
それ以外の早期胃がんや進行胃がんは外科切除となり、他臓器への浸潤があると切除ではなく抗がん剤治療となります。
早期胃がんの予後は非常に良好ですが、進行胃がんの5年生存率はリンパ節転移があると50%、他臓器転移があると5%です。
胃がんは早期に発見すれば予後が良好なことから、わが国では胃がんの二次予防(早期発見早期治療)としてバリウム検査や内視鏡による検診が行われています。
近年、ピロリ菌の除菌治療が胃がん発生を抑制することが明らかとなり、胃がんの一次予防(原因除去)としてのピロリ除菌が注目されています。
わが国では2013年にピロリ菌感染胃炎に対する除菌治療が保険適用となり、感染者は全員が除菌治療を受けることができるようになりました。
ただ、除菌治療だけでは胃がんを完全には予防できません。
従って、ピロリ菌を調べて、陽性であれば除菌治療を行い、その後定期的な内視鏡検査で胃がんの早期発見を行うことが胃がん予防の最善策です。
ご自分のピロリ菌感染の有無を調べることが胃がん予防の第一歩です。
インフルエンザ、重症化を防ぐために
インフルエンザはワクチンで予防する事が大切ですが、罹患しても適切な時期に診断され治療を開始すれば早期に治癒する病気となりました。
しかし中には脳炎や肺炎など重症化するケースがあるのも事実です。
最近の研究でインフルエンザの重症化を防ぐ物として色々な方法が徐々に見いだされてきました。
ご存じの通りワクチンはインフルエンザにかからないことを保証する物ではなく重症化を防ぐ物として接種しています。
現在日本では鶏卵を使用してワクチンを製造していますが、ここに一つワクチンの効果が落ちる理由が隠されています。
この対策として鶏卵を使わない新しい方法でワクチンを製造する方法が数年の間に始まる事になっています。
さて実際インフルエンザに罹患してしまった場合、抗インフルエンザ薬を処方して貰うと思います。
薬を飲めば数日の間に解熱し快復に向かいますが、実は抗インフルエンザ薬を使用すると獲得免疫が非常に出来にくくなると言われています。
ところがクラリスロマイシンという抗生物質を一緒に内服すると抗体産生に強い味方となる事が分かってきました。
抗生物質としての効能以外の効果です。
インフルエンザは形が変わりやすいとは言え抗体が出来るメリットの方が大きいので最近はインフルエンザ薬と一緒に処方されることが増えてきています。
また既存の高脂血症治療薬の一部に脳症や脳炎の予防効果が見つかったり、栄養ドリンクに配合されているDADA(ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン)がウイルス量を減少させる可能性があることが実験で分かってきています。
実際にはその効果がまだ人で確かめられたわけではなく実験段階ですが、今後インフルエンザの治療において重要な役割を果たす可能性があります。
インフルエンザに罹患してしまったら薬だけでは無く食事を取ることが非常に重要です。
水分だけでは重症化を防ぐことが出来ませんので解熱剤をうまく使用しましょう。
たかが便秘、されど便秘!
便秘とは、3日以上排便がなくお腹が張ってつらくなる状態です。たとえ毎日排便がなくても、バナナ状の形の便が気持ちよく出ていて残便感がなければ心配いりません。便秘が続くと、お腹が張るばかりではなく肌荒れ、口臭、イライラや肩こり、不眠まで引き起こすこともあります。
1日3食、特に朝食はきちんと摂りましょう。朝、胃に食べ物が入ると腸が刺激されて動き出します。朝起きがけに、コップ1杯のお水を飲むことも腸を刺激してくれます。もちろん野菜や果物をたっぷり摂ることも大切です。また、適量の油の摂取も、腸での潤滑油となり便を出しやすくしてくれます。トイレは我慢せず、朝食後にトイレに行く習慣をつけましょう。そして適度な運動を心がけ、睡眠はたっぷりとってストレスをためないようにしましょう。
生活習慣と食事を改善しても便秘が解消しない時、軟らかい細い便しか出ない時、下痢が続く時、便に血が混じる時、それは腸炎、あるいは、ひそかに大腸がんが進行していることもあります。自己判断で下剤を常用する前に、消化器専門医にご相談下さい。
その検査MRI?
CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)の検査を受けられたことがありますか?
これらの検査は機械の進歩や普及によって、だいぶ気軽に受けられるようになりました。ですが、患者さんにお聞きすると、それがCTだったのかMRIだったのかわからない、とおっしゃる方が少なからずおられます。過去にどのような検査を受けたか、ということは日常診療上、時に重要な情報となり得ますので、CT、MRIの簡単な区別の仕方をお話ししましょう。 機械の外見は、経験のある方はだいたい「大きな釜のような機械」と表現されます。正面から見ると両手を広げたくらいの大きな機械の中心に丸い穴があって、ここに患者さんが入っていきます。ドーナツの中に入っていくような感じがしたらCTです。ちくわの中に入っていく感じだったらMRIです。MRIのなかにはサンドイッチの中身になったような感じになる機械もあります。
また、検査中、トントントン、ドガガガガガ、ブィーン、ブィーンと言ったような、工事現場にいるような大きな音がしたらMRIです。耳栓やヘッドホンなどで、音をやわらげるようにしているのですが、やはり聞こえます。CTではモーターの音と、X線がでるときにピピピピという音がするくらいで、耳栓の必要性はありません。このところの技術革新で、音がかなり小さくなったMRIが出現しましたが、これはまだそれほど普及していません。
他にもいろいろ区別の方法があるのですが、紙幅の関係上全てを紹介できません。それでもこの外見と音で大部分は区別できると思います。
蛇足ですが、MRI検査では金属、磁気カードなどを検査室に持っていってはいけません。時計は狂い、クレジットカードは使用不能になります。当然、ペースメーカーの患者さんは検査自体が受けられません。
妊娠・出産
最近の妊婦さんを診ていると、妊婦・出産・育児の情報誌やインターネットから得た知識で、へたな産科医より最新の情報を持っている方から、常識と思われることさえ知らない妊婦さんと様々です。
今回は妊娠・出産のことを簡単に書いてみます。 まず妊娠しようと考えたら、月経周期が28日の人は、月経開始日より10日目から15日目の間が妊娠しやすい時期です。次の生理が来るまでは、日常の生活・食事・飲酒・運動・薬剤の使用には気をつけ、1週間以上生理が遅れたら産科を受診しましょう。 妊娠したことがわかったら、出産までどう過ごすのか。
食事は、運動は、お産は自然か、陣痛誘発は、無痛分娩は、帝王切開は、産後の母乳は、ミルクを使うのか、母児同室は、病院・医院により違いがあり、医師・助産師に相談して下さい。 お産を軽くする。赤ちゃんをストレスが少なく、元気に生む一番の方法は食事と運動です。妊娠すると赤ちゃんのためといって食べれ食べれといわれますが、それは昔の食べるもののない時代の話で、現代の飽食の時代では、太りすぎにより中毒症になったり、難産の原因になります。10kg前後の増え方で、70kg以上の方は、5kg程度で充分です。 運動は肥満の予防、気分転換、体調の維持、持久力の獲得に適しています。妊娠中のスポーツは全身運動で、水泳や散歩が適していて、瞬発力や全身の深い屈伸のいるものは避けて下さい。
糖尿病とこれからの季節
「日本人の糖尿病は、お盆の時期とお正月の時期に悪くなる」という有名な報告をしたお医者さんがいます。
これから、忘年会・クリスマス・お正月を迎えます。食事療法をしなければいけない糖尿病の患者さんにはつらい季節がやってきます。
誰もが、おいしいごちそうを目の前にして挫折するものです。
そんな時どうしていますか?
「あ~あ、昨日食べ過ぎちゃったから、今日は食事を抜こう~」なんてしてませんよね?
内服治療やインスリン治療中の患者さんは、このようなことをしてはだめですよ!
食事を抜いたり、極端なカロリー制限をすると低血糖になったり、朝はいいのですが、昼や夕食時間に非常に空腹感が強くなってまた食べ過ぎてしまいます。それを繰り返すと、どんどん食生活がうまくいかなくなり、糖尿病が悪化します。
また、特に治療中の人はアルコールにも気を付けましょう。
糖尿病の治療中にアルコールを多量に飲んで低血糖になる―というのは、非常に危険です。意識を失い、生死をさまようことだってあります。
また、果物の摂りすぎにも気を付けましょう。
こたつでミカンなんて、気がついたら一日に五~六個食べてしまいますが、糖尿病の食事療法では、果物は一日一単位~ミカンなら中くらいの物を二個、リンゴやナシは、一日半分。ブドウは、皮と種を含んで一八〇グラムです。
糖尿病の食事療法で食品交換表がありますので、これを見て、食べ過ぎに注意し、自分の摂取カロリーに気を配る癖を付けたいものです。
この季節は、食べ過ぎた日のことは水に流して、翌日からは主治医に教えてもらった食事量を思い出してきちんと定められたカロリー通り摂りましょう。
目の病気の回復について
今回は、目の病気がどこまで回復するのか4つほど紹介します。
○先天色覚異常
いくつか区別しにくい色がありますが、決して色が分からないのではありません。
そのため、日常生活で不自由を感じることはほとんどないでしょう。
ただし、本人や家族、学校関係者が自覚しておくことは大切です。
残念ながら、有効な治療法はありません。
○白内障
治す薬はありませんが、手術により落ちた視力を元に回復させることが可能です。
○緑内障
視野が狭くなる病気です。
失った視野を戻すことはできませんが、進行を抑えることが可能です。
そのため早期からの治療が望まれます。
○翼状片
黒目(角膜)上に白目の結膜組織が侵入してくる病気です。
手術で取り除くことができますが、角膜に不整な場所が残るため、視力に影響が出る前に治療する必要があります。
心不全パンデミック
「心不全パンデミック」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?新型コロナウイルスの影響で「パンデミック」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃると思います。「パンデミック」とは、世界的に病気が流行することをいいます。
「心不全パンデミック」とは、文字通り心不全の流行が危惧されるということです。医療の発展に伴い、高齢化社会に突入している昨今、日本は世界でもトップを走る超高齢化社会であります。心不全の患者数は毎年約1万人ずつ増加しており、2030年には130万人になるのではないかと推計されております。
心不全パンデミック状態になると、入院を必要とする高齢心不全患者さんで病院があふれ、治療が必要な患者さんに対して受け入れ困難となる事態が予想されます。また、入院に伴い莫大な医療費がかかることや介護などの社会的問題が生じる可能性があります。ですから、常日頃から心不全を予防することが重要であると考えます。心不全は病気の名前ではありません。「病態」です。ですから心不全の原因となる疾患があります。心不全の原因で多いものとして、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、次に高血圧症が有名です。そのため前述の疾患を適切に管理することが重要です。さらに心不全を予防するために、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの治療を適切に行い、喫煙者には禁煙を指導することが重要であると考えます。また慢性心不全の患者さんは、繰り返しの入院を回避できるように管理することが重要となります。心不全の初期の自覚症状として、息切れやむくみがあります。また、心不全悪化の指標として体重増加があります。このような症状が気になった場合には、医師に相談することをお勧めします。









