蓄膿(ちくのう)症は治りにくいと聞きました。本当なのでしょうか?
専門医による正しい治療により約1カ月で治ります。
10日以内に鼻汁を止めることで予防も可能に 蓄膿症は、一般的に難治性の病気だと思われがちですが、正しい殺菌・除菌処置と、専門医の処方する薬を継続して飲むことで、ほぼ1カ月くらいで治ります。
具体的には、最初に除菌のために殺菌性の抗生物質を1週間使用し、その後、マクロライド系の抗生物質を少量・長期投与を行うのが蓄膿症治療のスタンダードです。 よく小さな子どもで蓄膿症ではないかと心配される親御さんがいますが、そもそも副鼻腔は骨格が固まる2歳後半から出来るものなので、それ以前の子どもでは副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症はまずありえません。
そのため鼻汁が続くなど、蓄膿症が疑われるような症状については、単純に鼻の構造が小さくて詰まりやすい、また自分で鼻汁をかまないために長引いているだけで、まず心配はありません。 一般的に蓄膿症とは、副鼻腔炎のことで、基本的に鼻の中の空洞部分である副鼻腔といわれる交通路が構造的に小さかったり、狭くなった状態に、いわゆる鼻汁が続くことで換気が悪くなって炎症を起こしてしまい発症する症状をいいます。
基本的には長く続く鼻汁を、遅くても10日以内で止め、蓄膿症へと移行しないように処置することが重要です。
基本的な治療は小児も大人も同じで、抗生物質を使ったスタンダードの治療で、症状によっては2、3カ月投与する場合もあります。
ただし、それでも治らない場合、特に大人では手術療法を考えます。小児で手術に至るケースはほぼありません。 手術は、従来、歯茎を切開して空洞を開けて中の悪いものを粘膜から根こそぎ取ってしまう方法が行われましたが、現在は基本的な考え方が変わり、内視鏡を使った鼻内手術によって、蓄膿症の原因となる副鼻腔という鼻の交通が狭い状態から通りの良い状態に広げる、いわゆる形成手術を行っています。
それによって、その後、薬を使って治癒を促すためのきっかけを作ることが蓄膿症手術の目的となっています。
手術は両鼻でも、全身麻酔下で2時間くらい。
1週間程度の入院は必要ですが、術後の負担や痛みも少なく、その日から普通に食事もできます。 蓄膿症は、鼻の真ん中にある鼻中隔という仕切りが曲がっている人でなりやすく日本人には多いといわれています。
また鼻の状態を悪くする慢性的な病気としてアレルギー性鼻炎や喘息のある方も注意が必要です。
まずは蓄膿症を予防するためにも、風邪の初期治療は大切で、耳鼻科の立場からは10日以内に鼻汁を止めることが第一となりますので、気になる場合には、早めの受診をお勧めします。