聴診器と心雑音
病院で診察を受けるとき、まずは、聴診器を胸に当てられます。心臓の動く音を聴いたり、呼吸音を聞いたりします。心音で言うと、心臓の中を血液が通り抜けるときに、心臓の弁に狭い所があると、雑音が聞こえるようになります。川に水門があるとザーッと音がするのと同じです。弁の閉じが悪いと逆流する音が聞こえます。
弁は、肺からきれいな血液が全身に流れていくように付いている心臓の水門のようなものです。年齢を重ねると動脈硬化のように弁も厚くなって開きが悪くなったり、閉じが悪くなったりします。小さい雑音や騒がしい場所では心雑音を聞き逃すことが多くなります。心エコー(魚群探知機の小型版)では、心臓の形や動き、弁の形を見ることができます。血液の流れに色を付けて見ることもできるので、聴診器で聴きにくい雑音も逃すことはありません。音波を当てるだけなので、体に害はありませんから繰り返し行え、動いているところを観察するので、心臓の働きが非常に良く解ります。
このような方法で見つけられる心臓の弁に異常がある状態を弁膜症と呼びます。当初は自覚症状がありませんが、次第に、階段などで息切れがしやすくなったり、疲れやすくなったり、夜、おしっこに起きるようになります。不整脈も出やすくなります。心肥大が起これば心室性の不整脈が、他に、脳卒中の原因になる心房細動も出やすくなります。足がむくむ、座ると楽だが寝ると苦しい心不全になると入院が必要な場合もあります。薬で良くならないほど心不全が悪ければ、適切な時期に弁を取り替える手術が必要な種類の病気です。
アメリカで心不全による死亡を防ぐ薬を試験しています。一年間で10%前後の死者がでましたが、同様の調査を日本で行うと、もとの病気の違いのためかもしれませんが、1%程度の死者で、かなり良く治療できていました。アメリカでは二~三カ月ごとに診察をしますが、日本では二~四週間ごとに診察をします。
「注意深い観察と細やかな治療が心不全の治療には必要です」というお話でした。