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胃潰瘍にはヘリコバクターピロリ菌を!

消化器内科2008/08/13

今回は4月に厚生労働省の研究班によって作成された胃潰瘍診療のガイドラインについてお話しします。

このガイドラインは多数の論文を検討して得られた結果をもとに、胃潰瘍に対する最 も理にかなった治療の手順を示したものです。このガイドラインの大きな特徴はヘリ コバクターピロリ(以下HP)の除菌療法(抗生物質を2種類とプロトンポンプ阻害剤 という胃酸の分泌を抑える薬の計3種類を1週間内服する)を治療の柱として位置づ けていることです。HPは胃の中に住むことのできる唯一の細菌で、胃潰瘍の重要な原 因のひとつとされ、これまでは、特に潰瘍の再発の予防という観点から、通常の治療 に加えて行われ、その効果が評価されてきました。

しかしこのガイドラインではHP陽性の胃潰瘍患者に対してはHPの除菌療法が第一選択 となっており、除菌療法のみで治癒が可能としています。ということは例えば「胃の あたりががまんできないほど痛くて、検査したら大きな胃潰瘍があった、HPを調べた ら陽性だった、除菌療法をした、その後症状は改善しそれ以後も潰瘍は再発しなかっ た」というような経過が標準的ということになります。使った薬は除菌療法の1週間 分だけなので、非常に効率の良い治療経過です。

HP陰性の場合については次の機会にお話しするとして、HP除菌が今のご時世の「医療 費抑制」に十分貢献できるであろうことは容易に想像できますが、これにはやや不安 を感じる専門医も多いと思われます。除菌療法自体にも下痢その他の副作用があり、 潰瘍の急性期で痛みの強い時期にも除菌療法のみというのは問題があるように思われ るのです。あくまでも除菌療法を主体とする事に異論はありませんが、症状や全身状 態をみながら柔軟に対処したいものです。

最後に、この除菌療法に際し不可欠なことは、まず内視鏡検査(胃バリウムでもよ い)によって胃潰瘍を確実に診断し、あわせてHPをチェックすることです。当院では 鎮静剤を用いて苦痛のないように内視鏡検査を行い、胃潰瘍が認められた場合には、 尿素呼吸法という最も確実なHPチェック法を行い、陽性の場合はほぼ全例に除菌療法 を行っています。


Text by 黒田消化器科外科クリニック 黒田 豪(  「」掲載)

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