こどもにみられる精神的問題について
こどもは大人とは違い、常に心身の発達を続けている特殊な存在であり、両親との関係を中心とする家庭内での対人関係や、学校などの環境の影響にも大人とは異なる特殊性があるので、大人の精神科とは違った見方が必要になります。
こどもの精神症状の現れ方には大人とは違った特徴があります。具体的には
(1) |
感情を言葉で表現する力が未発達なので、行動の障害やからだの症状で表すことが多い。 |
(2) |
心身ともに発達の途上にあるので、精神症状がその後の正常な発達に影響を及ぼす可能性がある。 |
(3) |
両親、とくに母親あるいは母親の役割を負っている人との影響を受けやすい。 |
などがあげられます。
こどもにみられる精神科的な問題で代表的なものとしては、小児自閉症(しょうにじへいしょう)をはじめとした、広汎性(こうはんせい)発達障害、注意欠陥多動障害、分離不安障害、チック、摂食(せっしょく)障害などがあります。
その他、頻度としては低いですが、統合失調症(とうごうしっちょうしょう)、気分障害などの、大人にもみられる疾患が起こることもあります。不登校の児童の中には、まれにこれらの精神疾患が隠れていることがあります。
こどもは言語発達が未熟なゆえに、ご本人から症状や自分の体験を聞くことは困難なことが多いので、診察の際は親、とくに母親や日常の世話を主に行っている方に同伴していただき、その方から得られる情報が重要になってきます。治療には親子関係をはじめとした、その子をとりまく環境の調整が必要になることが多く、環境調整だけで症状が落ち着くことも少なくありません。チックや多動などで症状が強い場合、友達関係の悪化や学校生活への不適応などといった二次的な弊害(へいがい)を避けるため、薬を使用した方が良い場合もあります。
いずれにしろ、まずはその子についての十分な情報を得ることが必要になってきますので、こどもの精神科診療では、時間を取ってゆっくりとお話を聞くことから始めることになります。