トラウマ(心的外傷)について
精神的に大きなショックを受けた場合、時間が過ぎてもその影響が残ることがあります。そういうショックのことを「トラウマ(心的な外傷)」と言います。ショックによって様々な身体的、精神的な問題が引き起こされるということです。
比較的単純で分かりやすいのは地震などの災害や事故にあった時、犯罪の被害者など、命にかかわるような体験をした場合です。その後に不眠、悪夢、イライラなどが生じたり、急にその時の様子が生き生きと思い出されたりすることがあります。
しかし、家庭内暴力など嫌な体験、ショックが長い期間にわたってくり返されると、上に述べた症状だけではなくて、もっと多くの症状が現れ、それが長く続くことになります。あまりにも以前の状態と変わってしまうので、「身体の状態も心の状態も(自分というそのものが)、以前とはすっかり違ってしまった」というような体験になることがあります。多くのものが失われてしまったと感じられる場合もあります。
さらに、身体的暴力、性的な虐待のほか、情緒的な虐待、不適切な養育(最近は虐待を少し広く考える傾向にあります)などによるショックが幼い頃にくり返し体験される場合、その将来に大きな影響を残すことになります。子供の発育に影響し、人格形成そのものに対しても障害になります。さらには、多くの精神、神経科的な問題の発生にも関与します。様々な身体的不調、抑うつ、不安、恐怖、自傷、自殺、不眠、過食、対人関係の問題、薬物依存、アルコール依存、さらには精神病状態(周囲の状況が良くわからないというような状態や妄想などです)にも関係する可能性があります。将来的にこのような様々な問題が生じる可能性があるということです。
このような場合には、薬物療法や一般的な精神療法のほかに、特殊な治療が必要とされることがあります。