体外受精における凍結胚移植(はいいしょく)
体外受精・顕微授精(以下、体外受精と略します)は、体外で受精させた受精卵を子宮内に戻して妊娠を待つ治療法ですが、子宮内に受精卵を戻すことを「胚移植」といいます。胚移植には採卵(卵巣から卵子を取り出すこと)した周期に胚移植する「新鮮胚移植」と、受精卵をいったん凍結保存して、時間をおいてから子宮に戻す「凍結胚移植」があります。
最近は、凍結胚移植による妊娠成功率が高くなる傾向にあり、背景には、「ガラス化法」といって、受精卵の質を高く保つ凍結技術があります。ガラス化法は多くのメリットがあると同時に、女性の体に優しい治療法といえます。女性の体に優しい治療である理由■採卵回数が少なくなる
胚移植する受精卵は原則1個、多くても2個です(日本産科婦人科学会会告)。
このため、余剰胚といって受精卵が余ることがあり、凍結保存を行います。そのお蔭で卵巣刺激と採卵という身体的な負担が軽減できます。■条件のよい時を選んで胚移植できる
胚移植は、子宮内膜の厚さが10㎜以上ある時に行うのが理想的ですが、凍結胚移植では超音波検査で厚みを測り、条件のよい時を選べます。特にクロミフフェン(排卵促進剤)を使うと子宮内膜が薄くなる傾向があり、凍結受精卵があると、子宮内膜を厚くする治療を行ってから胚移植することができます。■ガン治療を受ける女性に朗報
精子や卵子も凍結できます。
精子の凍結は以前から行われていましたが、受精前の卵子の凍結は技術的に難しく、大きな課題でした。
しかし、ガラス化法の登場でガンなどの治療の影響で卵巣機能が低下する前に、卵子を採取・凍結保存できます。将来の妊娠・出産が可能になり、未婚女性には大きな朗報です。以上の他に、多嚢胞性卵巣症候群による卵巣過剰刺激症候群の予防など、凍結胚移植には多くのメリットがあります。