脳を鍛える
入試が終わり、新たな学生生活に希望を膨らませている方、再度挑戦しようという方、さまざまな決意の方々がいらっしゃるでしょう。さて、学生でなくても、最近は衰えがちな「脳力」を何とか維持しようと、大勢の方が「脳を鍛える」ことに関心を抱いておられます。
はたして「脳を鍛える」とはどういうことでしょうか?
リハビリテーション(以下、リハビリと言います)の観点から脳を鍛えるということを考えてみます。事故や病気の後遺症で、手足の運動機能などには問題がなくても、記憶力が低下したため仕事ができないとか、感情の抑制が出来なくて他人とうまく付き合えない方たちがいます。このような状態(高次脳機能障害といいます)に対する記憶のリハビリの要点を紹介します。
- 環境を整える : 記憶には高い集中力が必要で、多くの人には静かな環境が大切です。一部の人では、音楽などが聞こえたほうが集中できることもあります。
- いろいろな方法を使う : 記憶を助けるためには、言って聞かせるだけではなく、書いたものを持たせる、本人に復唱させる、自分でメモを書き取らせる、あるいはレコーダーなどで声による指示が聞けるようにします。
- 繰り返し伝える : このような色々な方法を使った上に、それらを繰り返すことが重要です。
- 簡単なものから始める : 初めから難しいことに挑戦せず、簡単なことをできるように努力します。
- 複雑な仕事も、手順を分けて一つずつ進める : 一連の仕事を一気にさせるのではなく、段階を一つずつ踏んでいきます。
これらをご覧になって何か気がつきませんか?
当たり前のことだと思われたでしょうか?
これらは勉強や楽器の練習、スポーツのトレーニングなどと全く同じだということに気がついたでしょうか?
勉強もスポーツも、環境を整え、簡単な課題から難しい課題へと進み、色々な方法を用いながら、繰り返すことで身についていきます。結局、現代までの人類の歴史の中で当たり前と思われる、これらの方法以外に「脳を鍛える」方法は見出されなかったのです。