予防と早期発見
病気は予防することができればそれに越したことはありません。高血圧や糖尿病など生活習慣病と呼ばれる疾患(しっかん)の多くは食事療法や適度な運動を行うことによって予防したり発症を遅らせたりすることができます。また最近増えている慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)や肺がんは禁煙することにより予防することができます。
ガンについては食生活の欧米化に伴い乳ガン、大腸ガンが増えています。日本食にすればこれらのガンは予防することが可能かもしれませんが、逆に胃ガンが増えるとも言われています。
大切なことは40歳を過ぎたら定期的にガン検診を受けることです。生活習慣病にしてもガンにしても早期発見、早期治療により生活の質を落とすことなく楽しい生活を送ることができますので、ご自分のかかりつけ医を決めて気軽に健康についての相談をしましょう。
なかなか治らないニキビ ピーリング&レーザーピーリング
ニキビ治療では抗菌剤含有のローション、ジェル、クリーム、時には少量のステロイド含有の軟膏を皮膚に塗り、抗菌剤、ビタミン剤を内服することが一般的に行われています。20歳以上の方のなかなか治らないニキビ、特に顎や首に局所的に発生するニキビの多くは、ダイエット時の偏食などによる貧血や女性ホルモン異常、ストレスに原因があります。
ピーリング治療は、一般的治療でなかなか治らない方やニキビ治療時から美白を考えている方への治療で、できるだけニキビ跡が生じないようにするのに有効です。
また、レーザーピーリングやメソローラーによる治療は、ニキビによって黒ずんだり陥没してしまった部分を軟化させて、黒ずみや陥没を改善し、化粧のむらを解消させるのに効果的な美白治療です。
ニキビ治療には保険治療から自費治療までいろいろあります。カウンセリングの時に、治療後の経過のことや注意事項をお聞きになった上で、生活様式に合った治療方法をお選びください。
毛穴、ニキビ跡の治療
ニキビ跡の治療としてケミカルピーリングがよく行われるようになりました。
美白的な効果はありますが、毛穴への効果には時間がかかりますし、ニキビ跡のクレーターのような陥没への効果は満足の頂けるとことではありません。 毛穴の治療としてメソローラーはメソセラピーの原理(薬液を皮下や皮内に注入する治療法)でビタミンC,ヒアルロン酸、皮膚成長因子(EGF)を細かな針が付いたローラーで皮膚表皮に注入する方法で皮膚表面の毛穴、小じわに有効な方法です。
この方法の特徴は表面麻酔を使用するため痛みが少なく、2~3日赤みがあり、化粧がしづらいかもしれませんが、1~2週間程度から皮膚の張り、柔らかさ、美白効果が実感できます。 ニキビ跡のクレーターのような陥没はメソローラーと共にピンポイントのピーリングを行うことで、良好な効果が認められるようになってきました。
この治療法ではピンポイントの患部にかさぶたが生じますので施術後7~10日間部分的に化粧が出来ないなどの制約がありますが、クレーターのような陥没が改善され化粧がしやすくなります。 これらの治療方法はそれぞれに特徴があります。
専門医に十分説明を受けた上で治療方法を選択してください。
脳梗塞(のうこうそく)予防に禁煙を
今年、法律の改定で、禁煙が保険診療の対象となりました。何故、今、「禁煙」なのでしょうか?
脳梗塞と喫煙の関係から考えてみます。
欧米では、喫煙により脳梗塞の危険が二倍以上に増えると言われています。日本の研究では、脳梗塞をラクナ梗塞(小さな梗塞のことで、無症状の場合に“隠れ脳梗塞”とテレビでは呼んでいるようです)、アテローム血栓性梗塞(主に太い動脈にコレステロールが溜まって発生します)、心原性塞栓症(しんげんせいそくせんしょう―不整脈などの心臓病が原因の脳梗塞)の三つのタイプ別に発症率を調べたところ、ラクナ梗塞でのみリスクの上昇が明らかでした。
喫煙は動脈硬化を進行させ、血液粘度も上昇させる(いわゆる、“血がドロドロになる”)ために、脳梗塞を生じやすくすると考えられています。細い血管が詰まって生じるラクナ梗塞との関係が深いことから、喫煙によるリスクの上昇は血液粘度の上昇などの影響が大きいと考えられています。
ところが、血液粘度は禁煙により改善することが可能なのです。
欧米の研究によると、脳卒中のリスクは禁煙後二年以内に急速に低下し、五年以内に非喫煙者と同じレベルになるといわれています。最近、コレステロールなどによる動脈硬化は、薬を長期に服用することで、ある程度改善するといわれていますが、禁煙は薬の要らない、即効性のある脳梗塞の予防手段なのです。
医療費を削減したい政府にとって、格好の方法だということがお分かりでしょう。禁煙は政府にだけ都合がいいのではありません。愛煙家にとっても、お金がかからず(むしろ日々のタバコ代が浮きます)、健康になれる絶好の方法なのです。
昔、喫煙を注意された高校生の父親が、呼び出した教師がタバコを吸うのを見て、「いい大人がタバコを吸うなんて○○じゃないの。タバコなんてものは、子供がいたずらするもので、大人になったら止めるものだ」と言うコントがありました。
皆さんはどう思いますか?
(○に当てはまる文字はご自分でお考え下さい)
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)について
「掌蹠膿疱症」という病気をご存知でしょうか? 最近、ある芸能人がこの病気にかかったという話が、テレビや雑誌で取り上げられていましたので、この病名を耳にされた方も多いのではないでしょうか?
さてその症状は、手のひらと足の裏に、菌の関与がない、膿をもったブツブツ(無菌性膿疱=むきんせいのうほう)が出て、皮膚が赤くなったり(紅斑=こうはん)、皮が剥けたり(鱗屑・落屑=りんせつ・らくせつ)するというものです。そしてこれらの症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的な経過をたどります。手のひらを「手掌(しゅしょう)」、足の裏を「足蹠(そくせき)」と呼ぶことからこの病名がついています。
この病気の原因は、はっきりとわかっていません。再発を繰り返す扁桃炎(へんとうえん)や虫歯・歯周炎、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などの細菌感染との関連や金属アレルギーとの関連が指摘されていますが、現段階では確実とは言えません。しかし、扁桃腺の摘出や歯科金属の除去・変換といった歯科治療などで、症状が改善する方がいらっしゃるのも事実です。
一般的な治療は、外用療法になります。ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬を使用します。時として内服治療を行う場合もあります。エトレチナートやシクロスポリンという薬を使用したり、ミノサイクリンという抗菌薬を服用したりすることもありますが、副作用の心配があり、その使用にあたっては慎重に検討する必要があります。ビチオンというビタミン剤や漢方薬の内服が有効な場合もあります。また病変部に紫外線のA波を照射する治療方法(PUVA=プーバ)もあり、良好な治療成績を挙げています。
「掌蹠膿疱症」は、水虫や手荒れと間違えられることがあります。治りづらい症状がある場合、一度皮膚科を受診してみてはかがでしょうか。
軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)
軟性線維腫というのは、ポリープ状に皮膚が隆起している良性の皮膚腫瘍です。
30歳代以降にできてきます。原因は摩擦や日光など皮膚の老化によります。
首、ワキ、そけい部(脚の付け根)、大腿の内側など比較的やわらかい部分にできることが多いものです。
初めは小さな皮膚の突起ですが、徐々に大きくなってポリープ状で茎のある、やわらかい皮膚の腫瘤(しゅりゅう)になってきます。
スキンタグといって、頚部(けいぶ)やワキに小さいイボのようなものが多数できることもあります。
肥満した方や中年以降の方に多く見られ、皮膚の老化と考えられています。これも軟性線維腫の一種です。
大きくなってくるとくびれができて、皮膚にぶら下がったような形になってくることもあります。
やわらかい良性の皮膚腫瘍で、悪性化することもありませんから、そのまま様子を見ていても良いのですが、ゆっくりとですが大きくなってきます。
引っかけて出血するなど、邪魔になる場合は治療が必要です。
治療は小さいものでは、ハサミで切ったり、焼いて取ったりすることもできます。
大きいものは、くびれた部分の根元の皮膚を含めて切除します。
そうすると縫合が必要になりますが、きれいに取れます。
肺動脈塞栓症(はいどうみゃくそくせんしょう)をご存知ですか?
肺動脈塞栓症(PE)とは、心臓から肺に血液を送る肺動脈に突然血栓がつまることで、血液の流れが遮断されるために肺での酸素交換ができなくなる病気です。
血液が流れなくなることから血圧が下がってしまい、とても危険な状態になることもある病気と言えます。
その原因の多くは、足のふくらはぎの静脈にできる血栓が急激に肺に流れ込むことによっておきるといわれています。
血栓は長時間の旅行で同じ姿勢をとり続けたときや、手術で数日歩けない場合、更には災害などで長時間身動きが取れない場合におこりやすいといわれています。
血栓ができた時点では症状はでないのですが、一旦動き出したときにその血栓が肺動脈に流れ込み、呼吸困難感や胸痛、めまいや眼前暗黒感が出現するのです。
PEは症状が急におこることから、急性心筋梗塞や解離性大動脈瘤なども考えて診断にあたらなければいけません。
治療は血栓を溶かす薬の静脈内投与が良く効くとされており、診断がつきしだい直ちに投与されます。
血圧が不安定な場合は手術で肺動脈内の血栓を取り除くこともあります。
軽症のものでは内服による抗凝固療法だけで済む場合もあるようです。
この病気は治療と同時に、2回目の塞栓症に対する予防も大切です。
予防方法として2つの方法があります。
ひとつは足の静脈に血栓ができないようにすること、そしてもうひとつは血栓が肺に流れ込まないようにすることです。血栓ができないようにするためには、長時間同じ姿勢をつづけないようにすること、できれば足の指を定期的に動かしたり、数時間おきに歩くこと、また水分補給も重要です。
一方、肺に血栓が流れこまないようにするために下大動脈フィルターが使われることもあります。
これは腎静脈のすぐ下のところにフィルターを留置する方法で、確実に血栓の流出を食い止めますが、長期間おくとめづまりすることが問題となりそうです。
以上簡単に肺動脈塞栓症について解説しましたが、突然、息が苦しくなる病気の一つとして皆さんのご記憶にとどめていただければ幸いです。
私、納豆食べてもいいですか?
「先生、私は納豆が大好きなのに一生食べられないのですか?」と、Aさんは不満そうに聞いてきました。
どうやら診察前の待合室で「あなたも血液をさらさらにする薬をのんでいるんだから、納豆はダメよ」と世話好きな友人から言われたとのことでした。
このAさんのように血液をさらさらにする薬=抗血栓症薬をのんでいる人で、食事内容の事で悩んでいたり、また誤解をしている人は決して少なくないようです。
現代の医療において抗血栓症薬は最も有用な薬剤の一つであり、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾病の治療や予防に欠かすことのできない薬剤となっています。
抗血栓症薬には大きく二種類あり、抗凝固薬と抗血小板薬とがあります。
抗凝固薬の代表的なものにはワルファリンがありますが、それを服用している人が、ビタミンKの豊富な食材、たとえば納豆、青汁、クロレラ、海草、濃い緑色の緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草など)を食べてしまうと、服用したワルファリンの血液中濃度を低下させ薬効を減弱させてしまいます。
このことを心配しすぎて全ての野菜をほとんど食べなくなる人がいますが、それではかえって健康によくありません。普通の野菜は問題ありませんし、緑黄色野菜でも量を控えめに食べるのであれば大丈夫です。
しかし、納豆は腸内でビタミンKを産生する働きがあリ少量でも影響は大きいので食べてはいけません。
もう一方の抗血小板薬にはいくつかの種類があります。最も代表的なものにアスピリンがありますが、その他の抗血小板薬も近年有効性が証明されるようになりたくさんの人に処方されています。
これらの抗血小板薬の作用はビタミンKに影響されないので、納豆や緑黄色野菜などをたくさん食べても全く問題ありません。
このように「血液をさらさらにする薬」には、大きく二種類があり、基礎疾患の違いによって有効な方の薬が選択されます。
Aさんのように、何を食べてはいけないのか悩んでいる人は、自主判断せずに主治医の先生に一度聞いてみることが大事です。
遠近両用コンタクトレンズと老眼
眼科の診療は、ほとんどが顕微鏡をのぞきながらの診察になりますが、涙目の検査をするときなど、肉眼で患者さんにすごく近づいて行うことがあります。50歳を超えると、そのように近づいて検査する時、患者さんの目を見るのが辛くなってきてしまいました。老眼の始まりです。
近視用のコンタクトレンズをしている方で老眼になってくると面倒くさくなってきてやめてしまう方も多く見受けられます。
しかし、最近では「遠近両用コンタクトレンズ(以下CL)」という物があり、遠くから近くまではっきり見ることができるようになってきました。
はたして遠近両用CLの仕組みはどうなっているのでしょうか?
遠近両用CLはあの小さいコンタクトレンズの中に、遠くが見える度数と近くが見える度数が同心円状に並んでいます。そして、遠くにピントの合う光と近くにピントの合う光の二つの光が常時目に入ってくるのですが、遠くを見ようと思った時・近くを見ようと思った時、それぞれに目的の光情報を頭の中でピックアップして、いらない光情報を半分カットしています。それ故、逆にピントの合っていない光情報も、常に目の中に入っているためちょっとにじんだように感じられてしまいます。ですからレンズの大きな普通の眼鏡に比べて全てがすっきりというわけにもいかないのが実情です。それでも数日するとその見え方にも慣れてきて違和感が次第に消えていきます。
自分も初めて遠近両用CLに替えてみたときには、近くの文字がぐっと見やすくなり、診察の時も患者さんの目がよく見えるようになりました。
最近はゴルフをするのにスコアカードが見えない、老眼鏡をかけるのはファッション的に格好悪いので遠近両用CLを希望しますというような、50歳になってCLを初めて使う方も増えています。
手のしびれについて
「手のしびれ」の原因は様々ありますが、整形外科で多いものとしては肘部管(ちゅうぶかん)症候群と手根管(しゅこんかん)症候群の2つの疾患があります。
肘部管症候群は多くの場合、変形性肘関節症と合併し、肘の内側を通る尺骨(しゃっこつ)神経が圧迫されて発症します。症状は環指(かんし=薬指)、小指のしびれと握力の低下、手指の繊細な動きの障害などで、徐々に進行します。日常生活に支障が出る場合には神経の圧迫を除去する手術が必要です。
手根管症候群は手仕事をする女性に多く、母指、示指、中指のしびれを主症状とします。手関節の掌側で正中神経が圧迫されることが原因です。急性期には疼痛(とうつう)を伴い、神経の圧迫部位を刺激すると指先に放散痛も生じます。
再発をくり返す場合には、掌側手根靭帯を切除し、正中神経の除圧手術を行ないます。









