飛蚊症(ひぶんしょう)
飛蚊症とは、目の前にごみのような浮遊物が見える状態です。蚊が飛んでいるように見えるのでこの名前がつきました。視線を動かすと一緒についてきて光の加減で白く、又は黒くも見えます。
この浮遊物は目の中の硝子体(しょうしたい)の濁りで、その影が網膜に映って見えるためにこのような現象が起こります。
飛蚊症の多くは老化や近視のために起こります。
60歳位になると多少あっても不思議はありません。うっとうしい感じがあっても取り除くことはできませんし、ほとんどの場合は心配ありません。
しかし、数が突然増えたり、急に色が濃くなったり、又は光が走るような症状を伴う場合は硝子体出血や網膜剥離(もうまくはくり)の初期症状である可能性があります。このような場合は急いで眼科を受診し、眼底検査を受けて下さい。
早く見つけたい糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
日本人の中途失明者で最も多いのが糖尿病網膜症で、厚生労働省の調査では毎年3000名以上の方がこの病気で失明しています。
糖尿病網膜症は人により差はありますが、糖尿病になって5~10年過ぎる頃から視力低下などの症状が現れます。やっかいなのは糖尿病網膜症がかなり進行するまで自覚症状がほとんど無いことです。しかし、自覚症状が無くても高血糖の状態をそのまま放置しておくと網膜の病変は確実に悪化していきます。
働き盛りの方が、自覚症状が無いまま病気を放置し、気づいたときには失明寸前ということもあるため、糖尿病の3大合併症(腎症、神経症、網膜症)の中でも特に恐ろしいとされています。
糖尿病と診断された方は放置せず、早期からの血糖コントロールと定期的な眼科検診を是非受診して下さい。
近視が手術で治るって本当ですか?
最新のレーザー技術(レーシック)で、目に大きなストレスを与えることなく、近視、乱視を矯正する事ができます。
レーシックとは、目の中のレンズに当たる角膜を、フラップ(蓋=ふた)を作ってからエキシマレーザーで削ることにより、角膜表面をほとんど痛めることなく、その形状を変えて近視や乱視を矯正する手術です。
手術時間は片眼10分程度で入院の必要はありません。翌日にはほとんどの方が良い視力に回復され、その後の視力の安定性は良好です。
この手術の出現により多くの方がコンタクトレンズや眼鏡を使用することなく、楽に生活を送れるようになりました。
米国では2000年に100万件以上のレーシック手術が行われました。我が国においても2000年にエキシマレーザー手術装置が厚生省の認可を受けて以来、着実にレーシック手術が増加しております。
加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)に対する新しい治療法について
加齢黄斑変性症は欧米諸国では高齢者の主な失明原因となっています。一方我が国においては、食生活や生活様式の変化と共に、この病気が増加しており、高齢化社会では主要失明原因になると危惧(ぐ)されています。
この病気は、網膜の裏打ちをしている脈絡膜から新生血管が生じ、その弱い血管からの出血、浸出、それらが吸収された後の繊維性瘢痕(はんこん)により網脈絡膜が非可逆性に変性して視力が低下してしまいます。この新生血管の治療に各種の試みがなされてきましたが、有効性と安全性の観点から満足すべき水準とはなっておりませんでした。
そこで新たに出現したのが光線力学的療法(PDT)です。この治療法は光感受性物質を注射してから特定の波長のレーザー光を照射し光化学反応を生じさせ、レーザー照射部位の血管を破壊する治療法です。PDTの適応と照射には厳密な条件が設定されていますが、加齢黄斑変性症に対する新しい治療法として期待されています。
緑内障の治療について
緑内障は目の圧力が高い状態が慢性的に持続して網膜の神経線維が障害され、視野が徐々に狭くなっていき、放置すると最後には失明の危険がある病気です。最近の疫学調査では、実に40歳以上の日本人の17人に1人は緑内障であるという結果が報告され、予想以上に高い罹(り)病率が話題となりました。
さらに日本では、目の圧力が正常なのに網膜の神経線維が障害されていく、正常眼圧緑内障というタイプが多いことも判明し、単に目の圧力に頼った診断のみでは見落とされることが多いことも判明し、問題となりました。正確な診断には視野、視神経および網膜の神経線維を詳細に観察して、病気の兆候を見つけることがとても重要です。
治療は規則正しい点眼薬の使用から始めます。早期に発見して早期に治療を開始すれば点眼治療と月に一度の診察のみで、一生を送ることができます。40歳を過ぎたら眼科専門医の検診をぜひ受けましょう。
白内障の自覚症状と対策
白内障は目の中の水晶体が濁ってくる病気です
昔は手術に伴う合併症の問題もあり、手術を先延ばしにして物が見えないくらいに視力が低下してから手術を行う、という考えが一般的でした。
しかし、現在では患者さんの職業や生活状態に応じて、いつでも手術ができるようになっています。眼内レンズも健康保険の適応になっていますから、さらに治療が受けやすくなりました。
白内障の自覚症状
白内障のほとんどは両目に起こってきますが、左右の程度に違いがある場合も少なくありません。ただ、両目では互いに見えにくい部分を補ってしまうので、チェックする時は片目を閉じて行いましょう。
■視力低下
少しずつ細かい文字が見えにくくなります。老眼と異なり眼鏡をかけても良く見えません。
■まぶしい
光りが水晶体で乱反射するため、明るいところに出るととても眩しく感じます。照明が煌いて見えたり、夜に車を運転すると対向車のライトが気になることがあります。
■かすみ目
濁りが中心部に及ぶと、目の前に霧がかかったようにぼやけて見えます。進行するといっそうぼやけてきます。
■物が二重三重に見える
核とその周辺の屈折率に違いが出てくるため、片目で見ていて物が二つにも三つにも見えたりします。ただし、両目で見て二つに見える場合は外眼筋まひも考えられます。
■明るいところで見えにくい
光の乱反射や眩しさによって、明るいのに見えにくくなります。また明るいと瞳が縮まるため、水晶体の真ん中の白内障では余計見えづらくなります。
■暗いところで見えにくい
水晶体が濁るため光の入る量が減り、暗いところではより見えづらくなります。
■一時的に近くが見えやすくなる
核の濁りが強くなり屈折率が高まると遠くは見えにくいのですが、近くが見えやすくなる場合があります。老眼の人では老眼が良くなったと誤解する人もいます。これは一時的なもので、そのうち全体に見えにくくなります。
対策
自覚症状があったらまず眼科を受診してください。白内障かどうか、他の病気がないかどうか、当面の対策はどうしたらよいかなどを専門医に相談しましょう。