まぶたが腫れました
瞼(まぶた)が腫れましたと眼科を訪れる患者さんは非常に多くいます。
一番多いのはやはりものもらいでしょう。
瞼の縁には脂肪の分泌腺がいっぱい並んでいてそこが炎症を起こして赤く腫れて痛みを伴います。
これを霰粒腫(さんりゅうしゅ)または麦粒腫(ばくりゅうしゅ)といいますが、特に函館では〈めっぱ〉といい、関西地方では〈めばちこ〉というようです。
腫れ始めて2〜3日のうちにお薬を使うとお薬だけで引く場合もありますが数日たってしまったものは切開して膿を出さないと引かない状態になってしまいます。
一度炎症を起こしたけれど引いてきたので放っておいたところ内側(赤目の方)にでこぼこした物が飛び出してくることもありますが、これは霰粒腫性の肉芽(にくげ)といい、痛みが無くてもお薬では引かないので切除が必要になります。
突然瞼全体が腫れて痛みや赤みが無く、少しぷくぷくした腫れ方をQuinke浮腫(クインケふしゅ)といいます。
血管からの水分が異常に漏れ出すのが原因で抗アレルギー剤を使うと引いてきます。
朝瞼が腫れたけれど昼から少し引いてきたという方に意外と多いのが、いつもより枕が低かっただけということもあります。
足のすねも腫れているという時には内科的な病気がないかも調べてみる必要があります。
両上瞼の目頭寄りがぽこっと腫れている方も多くありますが、これは年齢的なことが多くあります。脂肪の付き方でそう見えることが多いのですが、黄色く平坦なものは仮性黄色腫というものもあります。
1〜2mmの小さい白いつぶつぶが瞼にいっぱい出来ている方があります。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)といってケラチンという白いラードのようなものがたまっています。
一見ものもらいのように腫れていて切った物を検査に出してみると腫瘍、特に高齢者の場合悪性腫瘍ということもありますので、あまり放っておかずにまず眼科で診てもらいましょう。
眼科の疾患について
- 白内障
白内障とは水晶体の濁る状態です。
水晶体は瞳孔のすぐ後にあるので、濁りが強くなると瞳孔が白くなるので、「白そこひ」ともよばれています。
視力が低下し、かすんでみえることが特徴です。
原因は不明ですが、若い方にもみられます。
60歳では約半数の方が多少なりとも白内障にかかっていると言われています。 - 緑内障
「あおぞこひ」ともよばれます。基本的には眼が硬くなる病気です。
すなわち眼圧の上昇する病気です。
眼圧は21mmHgまでが正常です。
房水という透明な水が眼内を還流していますが、この水が眼外に排出されにくくなることで眼圧上昇がおこります。
その結果視神経が圧迫されて、次第に視神経の機能が低下して視力や視野といった機能を失います。
眼圧が高くないにもかかわらず、視神経がこのように萎縮をきたす正常眼圧緑内障もかなりの頻度でみられることも分かってきました。
その場合、眼圧値そのものより、視神経周囲の血液循環障害によることが原因とされ、注目を集めている病気のひとつです。 - 糖尿病眼症
眼症の代表は糖尿病網膜症、白内障、眼筋麻痺です。
年齢、罹病期間、血糖の状態、腎合併などが加味されると多彩な所見がみられます。
糖尿病でみられる黒目の表面、角膜の上皮障害は、末梢神経障害が基盤になって生じると考えられており、糖尿病に罹患したため生じた知覚低下が原因です。
また、神経症状として複視や眼瞼下垂症状で受診し、眼科で初めて糖尿病の存在を知ることも少なくありません。
水晶体に糖が蓄積すると白内障が進行します。
他にも網膜剥離、高血圧網膜症、流行性角結膜炎、季節性アレルギー結膜炎、春季カタル、結膜結石、結膜下出血、近視、老視などがあります。
白目が黒目に入ってくる 〜翼状片
白目(結膜:けつまく)が三角形の形をして目頭側から黒目(角膜:かくまく)の中に入ってくる病気があります。それを翼状片(よくじょうへん)と言います。
大きくなってくると充血しやすくなるために目立ってきます。
放っておくと角膜の中央部まで伸びてくるため瞳孔(どうこう)を覆ってしまい、ものが見えなくなってしまいますから、大きくなったらやはり切り取らなければなりません。
でも、伸びてくるスピードはとっても遅いため、角膜に入り始めてから中心部に達するには10年以上かかるでしょう。
点眼液で多少充血を押さえることはできても、伸びることを完全に押さえることはできません。
角膜は本来透明でなければならないのですが、切り取った部分は多少なり白く濁りが残ることもありますし変形して乱視が出ることがあるため、なるべくなら瞳孔に達しないうちに切り取ることが必要です。
一般的に角膜のふちと中心部の中間くらいまで大きくなると充血も強くなり目立ってくるので、手術することが多いようです。
手術は翼状片を切り取ったところに正常な結膜を寄せてきて縫いつける手術をするのですが、手術したあとまた再発する場合も数%はあります。
手術のあとはしばらくの間はゴロゴロして一時的に充血が強くなります。
翼状片のように白目(結膜)と黒目(角膜)の境目に何かが出来ていて充血する病気があります。
よく見ると結膜に少し盛り上がったところが出来て、そこを中心に充血しています。
それを瞼裂斑(けんれつはん)、充血して結膜炎を起こした状態を瞼裂斑炎(けんれつはんえん)と言います。この瞼裂斑は翼状片の初期のようにも見えますが、角膜の中には入ってくることはありません。
そのほか黒目の縁に出来る角膜潰瘍(かくまくかいよう)も白く見えることがあるので、黒目の縁に異常を感じるようでしたら、眼科を受診してみてください。
間違ったコンタクトレンズの使い方
最近は多種多様なコンタクトレンズ(CL)が発売され、装用開始する年齢も若くなってきました。
CLはメガネに比べて視界も広く、見た目も自然で大変便利な物ですが、使い方を間違うと大変重症な感染をおこし、失明につながる怖い一面もあります。
以下のNG項目をチェックして安全に装用しましょう。
- NG①:装用時間は適当、使い捨てタイプも期限を守らず使っている
1日10時間位で外しましょう。
CLに覆われている角膜は、酸素不足になりやすいのです。
ましてや期限を過ぎたCLは汚れがいっぱい!
汚れが原因で角膜に傷がついたり、アレルギー性結膜炎になったり、病気になることばかりです。 - NG②:外れたハードCLは、ちょっとなめて目に入れる
口内には色々な雑菌が存在しています。
それを目に入れてしまうことになり、感染のもとです。 - NG③:外すのが面倒でつけっぱなしで寝ている
角膜の酸素不足が続くと角膜がはげたりします。
本当に痛いです。
その傷から感染すると重症な眼内炎となり、急激な視力低下を引き起こします。
失明の危険性もあります。絶対にやめましょう! - NG④:外してすぐにケースに入れている
洗った清潔な手で、ケースの保存液も取替え、CLもよく洗ってからケースにいれます。
つける時に洗うのではなく、外した時に洗うのです。
外した時に洗わないとケースの中は細菌だらけ。細菌まみれの液に浸されたCLをつけていることになります。 - NG⑤:使い捨てコンタクトはもっぱらネットで購入している
CLは心臓に埋め込むペースメーカーと同じ「高度管理医療機器」です。
CL購入時には毎回必ず医師の診察後の処方が必要とされています。
眼鏡との大きな違いは直接目の表面に触れるので色々な危険性も伴います。
眼科医の診察を定期的に受け、自分の目の形、サイズ、度数など適したものを選んでもらって下さい。
眼科にも行っておいで ~眼に出る全身の病気~
眼科は文字通り「眼を診る」所ですが、「全身の病気の一部として」眼を診ることも多いです。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病により網膜(カメラのフィルム)の血管が詰まると、出血や浮腫(むくみ)などのせいで視力が下がります。
脳腫瘍や脳梗塞など脳の病気のせいで物が二重に見えたり、視野が暗く欠ける方々がおられます。
アトピー性皮膚炎に伴う結膜炎や白内障、緑内障はあまり知られていないようですが、青少年の未来に大きく関わることがあります。
膠原病(リウマチなど)の方は眼が乾燥してつらい思いをしがちですが、ご年齢のせいと思って我慢していたという話はよく聞きます。
かかりつけのお医者さんに相談したら、きっと「眼科にも行っておいで」と言ってもらえると思いますよ。
春の検診で視力の用紙をもらったら
新学期を迎え、我々眼科医も学校健診のため小・中学校を訪れます。
視力検査を含め、目の病気が疑われれば専門医を受診するようにと、健診の結果用紙を子供達は学校から頂いてきます。
その中で特に注意しなければならないのが小学校一年生の視力検査の結果でしょう。
小学校一年生にとって視力という検査は初めての経験で、やり方も良く理解出来ないかも知れません。
そのため検査結果が眼科で測る時より悪くなることもあります。
しかしながらこの年齢で結果が悪い場合、遠視のお子さんも多く見受けられます。
そして、遠視の場合、弱視(じゃくし)や斜視(しゃし)を伴っている場合があり、この一年生の時期を逃すと後でメガネをかけたとしても視力が回復出来なくなってしまうこともある、目にとってラストチャンスの時期だとも言えます。
簡単に言うと、近視は少なくとも近くを見ている時にはきちんとピントがあった画像が目にはいるので弱視になることはありません。
それに対し強い遠視の場合は近くも遠くもピントがあわず、常にぼやけてしまいます。
いつもはっきりしない画像しか見えていないため視機能(ものを見る力)が発達することができなくなります。
そのため放置するとメガネで矯正しても視力がでない弱視になってしまったり、また、斜視を来すこともあります。
小学生の視力低下にまれに見られるのが心因性視力障害です。
お友達がすてきな眼鏡をかけている。
「自分もメガネがほしいなぁ」と言うように強く思うだけで視力が出なくなってしまう場合もありますし、お友達とけんかをして「学校に行きたくないなぁ」、などという気持ちが目に表れてしまうこともあります。
そういう場合にはご両親はもちろん学校の先生ともよく話し合うことが必要なことがあります。
健康診断で視力の結果が悪いときには放置せず、必ず専門医の精密検査を受けましょう。
飛蚊症(ひぶんしょう)
実際は何も無いのに、視界のなかにふわふわ邪魔なものがみえる症状が飛蚊症です。
細かなゴミのようだったり、点やひも、又はうすい雲の様だったりと、形はさまざまです。
飛蚊症のほとんどは、40~60才代に多くみられる後部硝子体剥離という治療の不要な加齢現象です。
悪化しませんが無くなることもなく、付き合っていかなければなりません。
しかしまれに、網膜剥離(緊急に手術しないと失明する)の前段階である網膜裂孔や、適切な治療を要するぶどう膜炎、硝子体出血などの危険性があるため、精密眼底検査を受けて確認しておくことが必要です。
精密眼底検査では、散瞳剤を点眼して瞳孔をひろげます。
散瞳効果は点眼後3~4時間持続し、その間眩しく感じたり、焦点があわずものがみづらくなりますから、細かい作業や運転をしないでよい準備をしたほうがいいでしょう。
今日からあなたも正しいレンズケアを
コンタクトレンズによる眼障害を防ぐための正しいレンズケアを、現在、最も普及している2週間交換タイプのレンズと、洗浄すすぎ、消毒、保存を一剤でできるMPS(マルチパーパスソリューション)をとりあげ、今一度再確認しましょう。
微生物はどこにいるのか?
レンズケアの最大の目的は、眼に微生物をいれないことにあります。
微生物はあなたの手や指、レンズや保存ケース、ケア用品、水道水にひそんでいます。
手指の洗浄
レンズを着脱する前に必ず手を洗います。
石鹸をよく泡立てて、手の平や甲だけでなく、指の間、指先、手首までしっかり洗いましょう。
その後、ペーパータオルや清潔なタオルでふきとって下さい。
こすり洗い
はずしたレンズには汚れや微生物が付着しています。
十分な量のMPSですすいだ後、レンズを約20回、やさしくこすり洗いして下さい。
MPSの消毒効果はこすり洗いなしでは不十分です。
すすぎ
こすり洗いしたレンズは、MPSですすいでからケースに保管します。
MPSをたっぷり使うことが重要です。
ケース管理
レンズを取りだしたケースは流水(水道水)ですすぎ、さらにケース内を指でこすり洗いした後、自然乾燥させます。
ケースは1.5ヶ月毎、理想的には1ヶ月毎に新しいものに替えるのが安全です。
装用前のすすぎ
ケースから取り出したレンズをそのまま装用してはいけません。
レンズ装用直前にMPSでしっかりすすいで下さい。
ケース内でレンズが汚染されていた場合、この装用直前のすすぎが重要になりますから、念入りにすすぐことが大事です。
また、レンズの汚れで最も多いのは化粧品です。
レンズの装用は化粧する前です!
MPSの管理
MPSは開封後徐々に消毒効果が低下していきます。
MPS内から微生物が検出された報告がありますから、MPSは開封後長くても1.5ヶ月以内に使い切るように。
つぎ足しでの使用は大変危険です。絶対にしてはいけません。
定期検査
トラブルを最小限に抑えるために、眼科での定期検査は必須です。
コンタクトレンズを安全に使用するためには正しいレンズケアと3ヵ月毎の定期検査を受けましょう。
イントラレーシックを賢く受けるために
今回は、イントラレーシックを受ける時に知っておいて欲しいポイントがあるので、その辺のことをご紹介していきましょう。
まずは、イントラレーシックがどんなものなのかですが、これについては何度か原稿を書いていますので簡単に説明すると、コンピューター制御のフェムトセカンドレーザーを用いてフラップを作る方法で行なったレーシックのことを言います。
メリットは、従来のレーシックより視力矯正率が高くなり、目標の視力までの回復が早く、合併症がおこりづらくなったことなどがあげられております。
このフェムトセカンドレーザーというのは特に最近その進歩が著しく、飛躍的に可能性が広がっており、眼科領域では角膜移植・白内障手術にも応用されております。
そのほかではガラスやダイヤモンドの加工などにも応用されているそうです。
次に、治療を受けるにあたり良いポイントだけではなく、良くないこともしっかり把握しておきたいものです。
まず、ひとつめにドライアイの症状が出る可能性があげられます。
次にハロー・グレアです。ハローとは街灯などの光源周辺にボワァ~と滲んだような光の輪が見える現象で、グレアとは照明の光がギラギラ見える現象を言います。
これらの症状は時間の経過とともに数ヶ月で改善されます。
この外にもまれですが不正乱視やフラップのトラブルなどが起こる場合もあります。
そして最後に、賢く受けていただくために一番重要となるコストが気になるところでしょう。
しかし、ここでご紹介しておきたいのは手術料金ではなく生命保険や医療保険の利用です。
自費診療であるレーシックを受ける場合でも手術給付金というお金がもらえることがあります。
最近ではレーシック手術に対して保険が下りる会社が減ってきていると聞きますが、それでも出ている方がいることも確かです。
保険加入している方は適用出来るか確認してみるのが良いでしょう。
場合によっては手術代分の給付金が出たというケースもあるそうですよ。
そのほかに、医療費控除でも該当になる方がいらっしゃると聞きますので、そちらも確認してみるのも良いかも知れませんね!
より安全に、より負担が少なく治療を受けられればそれに越したことはありませんからね。
さぁ~これを読んだ賢いあなたならイントラレーシック、どうなさいますか?
緑内障について
緑内障は、視神経の障害が進行し、視野が欠けていく目の病気ですが、様々なタイプがあります。
その一つが、突然発症して急激に視神経障害が進行する急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)です。
目を循環している水の通り道が完全に塞がれ、眼圧が急に普段の何倍にも増して、頭痛、眼痛、吐き気、嘔吐、霧視(霧がかかったように見える)、虹視症(光の周りに輪が見える)、視力低下、視野狭窄を生じます。
遠視の中~高齢女性に起きやすいと言われており、薬物や暗所が誘因となることもあります。
この発作が起きた場合には視神経が障害される前に早く治療を行うことが重要です。
強い頭痛を生じる病気には目の病気だけでなく、様々な病気が潜んでいますが、急いで治療が必要な病気も含まれますので、おかしいなと思ったら我慢せず、早めに病院を受診しましょう。