舌下免疫療法 ~ダニによる通年性アレルギー性鼻炎の方へ~
舌下免疫療法の対象としてダニによるアレルギー性鼻炎が追加になりました。
免疫療法とは原因物質(アレルゲン)を投与していくことにより、アレルゲンに暴露された場合に起こる症状を緩和する治療法です。
対象は12歳以上の方です。
アレルゲン錠剤を舌下に1分間含み、その後服用するという方法で行います。
初回は病院で、以後は毎日1日1回ご自身で行います。
2週間かけて徐々に増量していき維持量になったら3年以上継続することが必要です。
この治療法の注意点は
①アナフィラキシーショック等の強いアレルギー反応が起こる危険性がある。
②治療医は関連学会の講習を修了している者で副作用発症時に迅速に対応できる医療施設、あるいは対応できる医療施設と連携している医療施設でなければならないことです。
興味がある方は耳鼻咽喉科にお尋ね下さい。
「喉頭癌(こうとうがん)〜後悔しないために〜」
喉頭癌の初期症状で最も多いのは嗄声(させい=しわがれ声)で改善しない場合はためらわずに耳鼻咽喉科を受診すべきです。
喉頭癌のほとんどは扁平上皮癌で放射線療法が一般的に行われます。
早期癌であれば、放射線療法のみで80~90%で治癒が望めます(※)。
進行癌になってしまうと放射線療法、抗癌剤、手術を組み合わせて治療計画を立てます。
手術で喉頭全摘出術を行った場合、喉頭を全て取るので声は失われます。
喉頭癌になってしまうと治療のために2~3カ月の入院が必要となり、失声という機能障害を残す可能性があり、やはり予防が大切です。
北海道は喫煙率が男女ともに高い地域です。
喉頭癌患者の90%以上が喫煙者(※)ですので、発癌の危険性を低めるためにぜひとも禁煙をおすすめします。
(※)国立がんセンター発行「がんの冊子 喉頭がん」より
発熱~生体防御の大事な武器~
以前は発熱したら薬で下げるというのが一般的でしたが、最近では安易に熱を下げない方が良いとされています。
なぜなら発熱自体が体を守る大事な武器だからです。
人間の体にウイルスや細菌が侵入すると免疫細胞が発熱を促す物質を出して発熱が起こります。
体温を高くすることで病原体の活動を弱め、免疫を担当する細胞が活発に活動できるようになります。
ここで、薬で熱を下げすぎてしまうと防御反応がうまく働かなくなりますので感染症が長びく結果を招くことになります。
体温計の数値で機械的に熱を下げることは最も良くない方法です。
熱冷ましは患者さんの状態を見てぎりぎりまで使わないのが賢い方法です。
比較的元気な方の発熱は高熱であっても心配要りません。
ただし、発熱時は脱水状態になりがちですので小まめに水分補給をするように心掛けて下さい。
乗り物酔い
行楽シーズンになりましたね。
旅行に出かける方も多いのではないでしょうか。
でも、乗り物酔いになってしまうとせっかくの旅行も台無しですね。
古代ローマ帝国の皇帝シーザーや映画「アラビアのロレンス」のモデルとなったトーマス・エドワード・ロレンスも乗り物酔いに悩まされていたそうです。
では、乗り物酔いはどうして起こるのでしょうか。
私たちは普段の動作やさまざまな乗り物からの感覚情報を経験として脳に記憶しています。
乗り物に乗ったとき、入ってくる感覚情報がこれまでの経験や記憶のパターンから予測される感覚情報と一致しないと情報処理に混乱が起こり乗り物酔いが引き起こされると考えられています。
従って経験パターンが豊富なほど乗り物酔いが起こりにくくなると言えます。
普段からできるだけ多彩な身体の回転運動や振動運動を体験し、感覚情報のパターンを記憶させておくことが乗り物酔いの予防につながります。
しかし、すべての乗り物に適応できる運動や訓練を行うことは難しいので具体的には以下の様な予防対策をしていただくとよいと思います。
出発前:
①前日に十分な睡眠をとる。
②軽く食事をとり空腹を避ける。脂肪分の多い食事を控える。
③乗る前に排便を済ませる。
④体を圧迫する様な衣服を避け、ネクタイやベルトをゆるめる。
⑤酔いやすい人は乗車30分前に酔い止めを服用する。
移動中:
①揺れの少ない座席を選ぶ。
②後ろ向きの座席を避けて進行方向が見える前の方の座席に座る。
③遠くの景色を眺めるようにする。
④読書やスマートフォンの操作を避ける。
⑤寝るように心掛ける。
舌下免疫療法 〜新たなアレルギー性鼻炎の治療法〜
アレルギー性鼻炎の新しい治療法として舌下免疫療法が保険適用になりました。これは、原因物質を投与していくことにより、アレルゲンに暴露された場合に起こる症状を緩和する治療法で、対象はスギ花粉症の12歳以上の方です。アレルゲン抽出液を舌下に滴下するという方法で行い、初回は病院で、以後は毎日1日1回ご自身で行います。2週間かけて徐々に増量していき維持量になったら3年以上継続することが必要です。
この治療法の注意点は、
①治療の開始時期は花粉非飛散期に限られる。
②アナフィラキシーショックなどの強いアレルギー反応が起こる危険性がある。
③治療医は関連学会の講習を修了している者で副作用発症時に迅速に対応できる医療施設、あるいは対応できる医療施設と連携している医療施設でなければならない。
などです。
興味がある方は耳鼻咽喉科にお尋ねください。
鼻出血 ~落ち着いて対処しましょう
鼻出血の患者さまが増えてきました。
耳鼻咽喉科医にとって冬は鼻出血の季節なのです。
特に高齢者の患者さまが増えてきます。
空気の乾燥による鼻粘膜の炎症と寒暖差による血圧の乱高下が原因と思われます。
お子さんの場合は急性鼻炎やアレルギー性鼻炎など鼻の病気が原因となっていることが多いです。
出血すると慌ててしまいがちですが正しい知識を持って適切に対応しましょう。
まず、これからお話しする処置を行って30分以内に止まる鼻出血は心配が要らないと言うことです。
多くの鼻出血は鼻中隔という鼻の仕切りの前方部の毛細血管から出ていますのでティッシュなどをしっかり詰めて鼻の前の柔らかい部分をつまむことで直接、出血部位を押さえることが出来ます。
この状態を5~10分維持することで大抵止血されます。
ティッシュなどの異物を入れることで血液の凝固も促進されますので必ず詰めて下さい。
脳梗塞や心筋梗塞などで抗凝固剤を常用されている方はやや止血に時間がかかりますが前述の処置で十分止血されます。
出血を頻回に繰り返す場合は処方医に相談してください。
慌てると血圧が上昇し出血を助長しますのでまず落ち着くことが大事です。
止血時の姿勢は血液がノドに落ちていかない様に顔は上を向かずうつむいた状態にして下さい。
出血が多い場合は横向きに寝て口から出た血液は吐き出して安静にして下さい。
ただ、鼻出血の中でも鼻腔の奥から出血し主に口から血液が出てくる場合や1回の出血量が多く医療機関を受診した時には止血していて出血部位がはっきりせず間欠的に出血を繰り返す場合は入院をして頂いて止血処置を行う必要がありますので総合病院の耳鼻咽喉科の受診をお勧め致します。
歯肉出血、関節内出血、皮下出血など他の部位の出血を伴うものは止血凝固機能に異常がある全身疾患の症状である場合もありますので注意が必要です。
耳垢(じこう、みみあか)のはなし
耳垢には乾性耳垢と湿性耳垢の2種類があり日本人の約80%が乾性耳垢です。
遺伝的には湿性耳垢が優性ですので両親のどちらかが湿性だとお子さんも湿性となります。
耳垢には虫などの侵入や細菌感染から外耳道の皮膚を守る働きがあります。
正常な外耳道であれば耳垢は新陳代謝に伴い自然に外へ向かって押し出されて排出されるので、耳掃除をするのであれば2週間に一度程度、見える範囲で除去すれば十分です。
耳掃除がお好きな方は多いですが習慣的な耳掃除は外耳道炎の引き金になり痒み、痛みやかえって耳垢が多くなる原因となりますので控えめにした方がいいと思います。
小児は新陳代謝が早く、外耳道が狭いので成人に比べ耳垢がたまりやすい傾向があります。
安全に耳掃除が出来ないと思われたら遠慮なく耳鼻咽喉科を受診してもかまいません。
咽頭癌〜女性患者の増加が懸念されます〜
我が国の三大死因は癌、心疾患、脳血管疾患ですが癌は最多の30%を占めます。
癌は怖い病気ですが、十分な知識を持ち対処すれば根治も可能な病気です。
頭頸部癌は全癌の約5%を占めます。
癌患者数は300万人を超えると推定されていますので、約15万人の患者さんがいることになります。
頭頸部癌には舌癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、上顎癌、唾液腺癌、甲状腺癌などがあります。
今回は頭頸部癌の中でも早期発見で十分治癒が望める喉頭癌についてお話しします。
1年間に喉頭癌で亡くなられる患者数は約1,000人で、男女比は9:1で男性に圧倒的に多い癌です。
発癌の大きな要因は、喫煙で非喫煙者に対し喫煙者は100倍、喉頭癌になりやすいと言われています。
喉頭癌患者さんの平均的な喫煙歴は1日30本以上、30~40年です。
禁煙区域の拡大、分煙環境の整備が進み全体の喫煙率は低下傾向ですが、それは主に男性の喫煙率の低下で女性の喫煙率は増加傾向がうかがわれますので、今後,女性患者の増加は懸念されます。
道南はまだ喫煙率が男女ともに率が男女ともに高い地域ですので、喉頭癌に十分な知識を持つことは重要です。
喉頭癌の初期症状で最も多いのは声のかすれで改善しない場合は、ためらわず耳鼻咽喉科を受診すべきです。
喉頭癌のほとんどは扁平上皮癌という癌で放射線がよく効きます。
早期癌であれば放射線療法のみで80~90%で治癒が望めますし、声のかすれも改善します。
放置した場合には、最終的には呼吸困難に陥ります。
進行癌になってしまうと放射線療法のみでは治癒は望めなくなりますので、抗癌剤による化学療法や手術をさらに追加し組み合わせて治療をすることになります。
手術は喉頭全摘出術、永久気管孔造設術を基本的に行いますので、声は失われます。
進行癌になっても頭頸部癌の中では最も治療成績はよいのですが、癌になってしまうと治療のために2~3ヶ月の入院を強いられ、声を失うという機能障害を残す可能性があるわけですから、やはり予防が大切です。
禁煙したその日から発癌の危険性は低下しますので、是非とも禁煙をおすすめします。
耳鳴り~仲良く付き合いましょう
2001年に行った厚生労働省による国民生活基礎調査では、慢性的に耳鳴りを感じている人は全体の26.8%で、4人に1人は耳鳴りに悩まされていることになります。
一般的に耳鳴りは難聴を伴っていることが多いので、聴力検査は必ず行う必要があります。
薬物療法ではビタミンB12製剤、代謝賦活剤、微小循環改善剤や漢方薬を処方します。
新しい治療法としてTRT(耳鳴再訓練療法)がありますが、音響療法とカウンセリングからなる治療法です。
耳鳴りを消失させるのが目的ではなく、耳鳴りに慣れてもらうことで耳鳴りに対する苦痛を軽減させる治療法です。
しかし、治療器具を実費負担(4万円前後)していただく必要があるため、普及していないのが現状です。
①致死的な症状ではないこと、
②感じる音の大きさ・高さが変化することは体調の変化によってよく起こることで心配はないこと、
③他の病気の前兆であることは多くはないということなどを理解していただくことも重要です。
アレルギー性鼻炎 〜正しくつきあいましょう。
アレルギー性鼻炎は発作的に繰り返すくしゃみ、鼻水、鼻づまりを主な症状とする鼻炎です。
しかし、残念ながら風邪と考えている方や風邪と診断されて治療されている方がおり残念に思っています。
アレルギー性鼻炎は大きく通年性アレルギー性鼻炎(以下通年性)と季節性アレルギー性鼻炎(以下季節性)に分かれますが通年性の原因はダニ、ハウスダスト、カビ、季節性の原因のほとんどは花粉でいわゆる花粉症です。
ダニ、ハウスダスト、カビは布団に多く存在しますので通年で夜寝てから朝方にかけて症状があれば通年性を疑います。
また,花粉は春先、秋口に多く飛びますのでその時期に症状があれば花粉症の疑いがあります。
確定診断には鼻汁中の好酸球の存在を確認し、血液検査で血清IgE検査を調べ原因に対する反応を確認します。
治療には
①原因の回避、除去
②減感作療法
③薬物療法など代表的な治療法です。
原因の回避、除去は当然として基本となる治療はやはり内服薬、点鼻薬による薬物療法です。
花粉症の治療で花粉が飛び始める2週間前から薬物療法を始めると症状が出てから始めるより症状が軽くすみます。
通年性は原因が消えることがありませんから原則的には薬物療法を続けることが必要になります。
残念ながらアレルギーは治癒する病気ではありませんので上手に薬を使用して症状を緩和することが重要です。
鼻は空気中のゴミを取り除き加湿加温して肺に空気を送るという重要な役割がありますのでアレルギー性鼻炎を放置するとその重要な機能が失われてしまいますので風邪を引きやすくなったり蓄膿症(=副鼻腔炎)や中耳炎、嗅覚障害を誘発したり鼻血が出やすくなる、喘息発作が起こりやすくなるなど様々な病気の引き金となります。
アレルギー性鼻炎をお持ちの方は基礎的な病気として安定させることは重要と言えます。
特に小児では特に蓄膿症、中耳炎の予防し治療するためには押さえておくべき病気です。