タバコとニコチン中毒
まだ肌寒い北海道ですが、ようやく行楽シーズンになりました。
出かける機会も多くなりますが、たばこを吸う人にとっては喫煙場所を探すのも一苦労でしょう。
また、タバコの害について目にする機会も増え、肩身の狭い思いをすることもあるのではないでしょうか。
北海道は男女とも喫煙率が高いことが知られていますが、当院に受診する患者さんもかなりの率で喫煙者がいます。
特に若い女性でタバコを常習的に吸っている方が多いことは驚きます。
ほとんどは一日10本以下くらいで、いつでもやめられる、と皆さん思っているようです。
でも、そう思いながら、だらだらと何年も吸い続けていませんか?
そして、吸うのをやめたらすぐに体は元に戻る、と思っていませんか?
一度体に蓄えられたタバコの害は、タバコをやめたらすぐに元に戻るというものではなく何年も体に蓄積され、場合によっては取り返しのつかない事になることもあります。
やめられるのならやめたいけど、吸わないと逆にストレスがたまってしまう、とみなさん思っているようですが、そもそもタバコを吸わないとイライラするのはニコチン中毒が関係しています。
タバコを吸っている人は多かれ少なかれニコチン依存症の状態になっています。
長時間タバコを吸わないでいて体の中のニコチン量が減ると、一定の量になるまでニコチンを補充しないとイライラが続くことになります。
これは麻薬の中毒症状と同じですが、実はニコチンは麻薬よりも中毒になりやすいといわれています。
現在ある禁煙用の薬は、何れもニコチンの中毒症状を何とかしようという薬です。
ニコチンパッチやニコチンガムは、別のルートからニコチンを体内に補充することで、ニコチン中毒によるイライラを緩和する方法です。
また、数年前に発売された禁煙補助薬は、ニコチンを含まずに、たばこを吸いたいという気持ちを抑えたり、禁煙によるニコチンの離脱症状(イライラなど)を軽減する薬です。
やめたいけどやめられない…という方は一度禁煙外来をしている医療機関で相談してみてはどうでしょうか。
三大疾病(がん、脳卒中、心筋こうそく)の予防は難しい?
がんの予防法としてもっとも有効なことは、禁煙です。
喫煙によってがんになる危険度が2倍から100倍に増え、禁煙により減ることがわかっています。いちど禁煙に失敗した方も、あきらめずに再挑戦し続けることが重要です。
脳卒中(脳こうそく、脳出血)、心血管病(心筋こうそくや狭心症)の主な原因として、血管が硬く、詰まりやすく変化してしまう「動脈硬化」があります。動脈硬化は年齢とともに進むものですが、それをさらに早めてしまうのが悪玉コレステロール、高血圧、高血糖、それに喫煙です。
健診で悪玉コレステロールや血圧が高いとわかった場合、症状がなくても時間を割いて内科・循環器科を受診しましょう。高血糖や尿糖を指摘された方は糖尿病になる前の境界型(予備群)の段階からの対処が必要です。食事と運動、病状によっては積極的にくすりを使いこれらの「危険因子」を排除することで、全身に起こる「血管の病気」をようやく予防することができるのです。
禁煙について
平成18年2月に「ニコチン依存症管理料」が新設され、禁煙治療が保険適応されました。
- タバコ依存症スクリーニングテストで5点以上
- 1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上
- 直ちに禁煙することを希望している
などの条件を全て満たした方が対象となります。
喫煙が肺癌や咽頭癌等の癌、また心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の原因になることはよく知られています。
また副流煙の方が主流煙よりも有害物質を多く含んでいるため喫煙している人ばかりではなく側に居る人にも害をもたらすこともよく知られています。
タバコは嗜好品でありストレス解消手段という側面もあると思われますが、禁煙を希望する方々も多いことと思います。
一度禁煙治療を実施している医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
なぜ、たばこをやめるのは大変か?
4月から禁煙指導に健康保険が適用になり、禁煙希望で受診される方も増えていますが、なぜ、たばこをやめるのがそんなに大変なのかご存知でしょうか?
「たばこは大人の嗜好(しこう)品」などと言われていますが、同じ嗜好品のお酒と比べても、朝起きてすぐお酒を飲む人は滅多にいないでしょうし、仮にいれば「アルコール中毒」と言われます。でも喫煙者は「朝起きてまず一服」という方が沢山いるのです。
そうなんです。喫煙者は「ニコチン中毒」なので禁煙が難しいのです。ニコチン中毒の人が自力で禁煙しようとする時に、最も犯しやすい間違いが「いっぺんにはやめられないから少しずつ減らす」という方法です。 効率よく禁煙するためには禁煙指導をしている医療機関にご相談ください。
ちなみに「たばこは嗜好品」ではなく「たばこは死向品」なんですよ。
予防と早期発見
病気は予防することができればそれに越したことはありません。高血圧や糖尿病など生活習慣病と呼ばれる疾患(しっかん)の多くは食事療法や適度な運動を行うことによって予防したり発症を遅らせたりすることができます。また最近増えている慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)や肺がんは禁煙することにより予防することができます。
ガンについては食生活の欧米化に伴い乳ガン、大腸ガンが増えています。日本食にすればこれらのガンは予防することが可能かもしれませんが、逆に胃ガンが増えるとも言われています。
大切なことは40歳を過ぎたら定期的にガン検診を受けることです。生活習慣病にしてもガンにしても早期発見、早期治療により生活の質を落とすことなく楽しい生活を送ることができますので、ご自分のかかりつけ医を決めて気軽に健康についての相談をしましょう。