外用剤は正しく塗りましょう
日常の診療で外用剤の塗り方をできるだけ説明するよう心掛けていますが、うまく伝わっていないことがあります。
今回は、外用法で注意する点について説明します。
①回数:指導された回数を守りましょう。多く外用すれば薬の副作用が、少なければ効果が出ないことがあります。
②部位:場所によって薬の吸収が違います。顔、高齢者、乳幼児の皮膚は薄く、薬の副作用が出やすいので、他の場所に処方された薬を塗ってはいけません。
③量:薬の副作用をおそれて薄く塗れば、効果が出にくくなります。
④用途:処方された薬を、他の発疹に塗ったり、他の人にあげてはいけません。薬によっては効果がないばかりか、発疹が悪化してしまうこともあります。
どんな薬も、もろ刃の剣です。副作用が出ないよう上手に使って、早く治しましょう。
マダニ(ダニ)感染症
夏、野山に出掛ける機会が増えますが、マダニに刺されることで発症するマダニ刺症を帽子や肌の露出がない着衣で予防することが大切です。
日本のマダニ感染症は、抗菌薬が効く細菌感染と、治療法が確立していない重篤なウィルス感染があります。
道南地域のイヌにダニ媒介脳炎ウィルス分布が判明しています。
全てのマダニが病原体を有するわけではありませんが、注意は必要です。
刺された直後はダニの唾液の麻酔作用で気付かず吸血で虫体が大きくなり炎症も併発し気付きます。
好発部は主に頭頸部です。
1日以上経過後は分泌するセメント物質で固着し皮膚ごと虫体の切除が必要ですので、皮膚科や外科を受診してください。
3週間程度で、発熱、発疹、関節痛などの症状出現時は医療機関を受診してください。
詳細は、「マダニ対策、今できること」で検索し、国立感染症研究所ホームページを参照してください。
化膿した粉瘤(ふんりゅう)の治療
粉瘤というのは、皮膚の下にお粥(かゆ)のようなあかが貯まった袋ができる良性の皮膚腫瘍です。
体中どこでもできますが、多いのは顔、背中、お尻、脚のつけ根などです。
化膿していなければ、コロコロとした丸い塊が触れるだけで痛みもありません。
皮膚の表面に小さな穴があると、押すとそこから悪臭のある内容物が出てくる事もあります。
化膿していなければこの小さな穴と、中の袋を取って縫合すると再発はしません。
でも、化膿してしまうと、中に膿(うみ)がたまって急に大きくなって赤く腫れてきます。
さらに痛みも出てきます。
そして、痛みが出てから来院される方が多いようです。
しかし、こうなると化膿して膿がたまっていますから、中の袋を取ることはできません。
そこで、局所麻酔をして、皮膚を切開し、中の膿を出すだけになります。
切開は皮膚の表面の小さな穴がはっきりしていれば、その穴を含めて皮膚を一部切除して穴を開けておきます。
そうする事によって膿が中にたまらず、きちんと外に出てくれます。
そして、粉瘤の袋が残っていれば可能な限り取り除きます。
これを残すといつまでもジクジクして、治りが悪くなったりします。
縫合はできません。
そして、週2~3回程度時々通院しながら炎症が治まって小さくなるのを待ちます。
消毒しなくて良くなるのには、大きさにもよりますが、10日から2週間位です。
元になる小さな穴が残っていると、再発してくる事も考えられます。
また、炎症が治まらないうちに切開した入り口が閉じてしまうと、中で肉芽腫といってくすぶった状態が続き、炎症を繰り返す事もあります。
ですから、粉瘤は化膿しないうちに取ってしまう方が、簡単で早く治る方法なのです。
ニキビができた時のメーク法
素顔だと周囲の目がストレスになって、むしろニキビが悪化してしまうことがあります。
今回は、ニキビメークのコツについて説明します。
1.メーク前に:十分に保湿をすると、化粧崩れがしにくくなります。
2.ベースメーク:ファンデーションやコンシーラーを厚く塗るのは、毛穴がふさがるので避けましょう。
黄色系の油分の少ない固形パウダーファンデーションやルースパウダーがお勧めです。
こすらないように優しく塗りましょう。
気になるニキビ痕だけコンシーラーでカバーし、ファンデーションは薄めに塗ると自然に仕上がります。
3.ポイントメーク:アイラインやマスカラで目元のメイクを際立たせ、視線をそらすと、意外とニキビは目立ちません。
やや太めのナチュラルな眉もおすすめです。
4.道具は:1週間に1~2回洗い、劣化したら新しいものに交換しましょう。
新しいニキビの外用剤が、承認になりました
以前紹介した、過酸化ベンゾイル(BPO)と抗生剤が一緒になった外用剤が、8月に承認されました。
BPOは、白・黒ニキビの原因である毛穴の詰まりを取るとともに、抗生剤とは違う場所で、ニキビ菌を殺菌し、炎症細胞から出てくる活性酸素を抑えることで、赤ニキビを治療します。
つまり、赤ニキビに対しては、ダブルで働きかけます。
この薬は、1日1回外用なので、ほとんどの方が毎日外用してくれます。
しかし、乾燥・かゆみ・赤みなどの副作用が出ることがありますので、数週間は注意が必要です。
また、色が抜けることがありますので、他に薬がつかないようにしなければいけません。
来年1月に、新しい抗生剤の外用剤が承認される予定で、ニキビを治療する武器がまた増えます。
市販薬で良くならない時には、早目に皮膚科専門医を受診することをお勧めします。
ピアスのトラブル
最近はピアスをする方が増えています。
それに伴って、ピアスのトラブルも増えているようです。
よく見られるピアスのトラブルを挙げてみます。
①炎症
ピアスのトラブルで多いのが炎症です。
原因は、ピアスホールの中を傷つけて化膿することが多いようです。
軽度ですと、きちんと消毒すれば治まりますが、ひどくなればピアスを一度外さないと治らないこともあります。
また、耳の軟骨部分にピアスを開ける人もいます。
軟骨部分は炎症を起こすと耳介(じかい)が変形したりすることもあります。
ですから、特に軟骨部分のピアスで炎症を起こしたときは早めの処置が必要です。
②ピアスの皮下埋入
ピアスホールに炎症を起こして、腫れが悪化すると、ピアスや留め金が皮膚の中に埋まってしまったりすることもあります。
完全に埋まってしまうと局所麻酔をして、切開して取り出さなくてはならないこともあります。
③ピアスホールが裂ける
ピアスホールが完成してからも、重いピアスを続けていると徐々にピアスホールが裂けてきて、ついに耳たぶの下まで裂けてしまうこともあります。
その場合には手術によって縫合しなければなりません。
④ピアスケロイド
これは体質にもよるのですが、ピアスの穴がふさがったあとにケロイドになって、硬く盛り上がってきて徐々に大きくなってくることがあります。
ピアスケロイドといいますが、大きなものは手術によって切除します。
再発することも多く、術後の内服や、圧迫が必要となります。
新しいニキビの外用薬が承認されました
日本はニキビ治療の後進国と呼ばれていましたが、少しずついろいろな薬が承認され、今年4月に、欧米では1960年代より使用され標準治療になっている、過酸化ベンゾイル製剤(BPO)が加わりました。
BPOは、ピーリング効果で毛穴の詰まりを取り、ニキビの始まりである白ニキビ、黒ニキビを治療し、ニキビ菌が嫌いな酸素を発生させることで、ニキビ菌が増えてしまった赤ニキビを改善します。
近日中には、少し濃度が高いBPOと抗生剤が一緒になった外用剤も承認予定で、よりニキビへの効果が期待できます。
しかし、副作用として、赤み、乾燥、刺激感が出ることがありますので、肌の状態を診て使用できるかどうかを判断します。
ただ、ニキビ痕には効果がありませんので、ニキビ痕になる前の赤・白・黒ニキビの段階で、皮膚科専門医を受診してください。
みずむし
みずむしは白癬菌というカビが皮膚に寄生することによりおこる感染症です。
この菌は高温多湿の環境で活発になるため足に感染することが多いのです。
『足の裏や指の間の皮がジクジクしてめくれてくる』、『カサカサして皮が厚くなる』、『爪が変色してくる』などが代表的な症状です。
かゆみは無いこともあり、また上記の症状があってもみずむし以外の皮膚病であることもあり、診断は顕微鏡検査で行います。
白癬菌自体の感染力は強くはありませんが、みずむしの人が素足で使用したスリッパや浴室の足ふきマット、カーペットなどは感染源となります。
スリッパは共用しない、マットやカーペットはこまめに取り替えたり掃除機をかけるなど、感染を広げない注意が必要です。足以外にも手や股、体や頭にみずむしがでることもあります。
近年では女性のみずむしも増加しています。
温泉やスポーツクラブに行ったり、ブーツを履いたりなど、ライフスタイルを反映してのことと推察します。
みずむしは放置すると傷口から雑菌が入り足が腫れてしまったり、爪みずむしの場合では歩きにくくなったりなど生活に支障がでることが少なくありません。
治療は足の皮膚には塗り薬、爪に病変がある場合は飲み薬を併用する方法が一般的です。
また肝機能に異常があるなど、飲み薬が使えない方には従来よりも効果の高い、爪みずむし用の新しい塗り薬を使うこともあります。
感染するかどうかは白癬菌に対する免疫力の違いによるもので、みずむしイコール不潔ということではありませんので恥ずかしがる必要はありません。
もし、みずむしだったとしたら放っておいてもよいことはありません。
疑わしい症状のある方はお早めに検査、治療を受けられることをお勧めします。
爪水虫の塗り薬
これまで、爪水虫に対して効果的な塗り薬がなかったため、もっぱら内服薬が使用されてきました。
しかし内服薬は、まれにではありますが、肝機能障害が出ることがあるため、高齢者や多数の薬を内服している方には処方しにくい薬でした。
先月発売された新しい塗り薬は、爪への透過性が良く、爪の中や下にまで浸透して効果を発揮するため、これまでの塗り薬よりも効果が期待でき、主な副作用も、塗った部分の皮膚炎、刺激感などで、内服よりも手軽に使用できます。
また、ハケと一体型の容器なので、塗りやすいと好評です。
使用前に爪水虫と診断することが必要ですので、爪を少し削って、顕微鏡で水虫(カビ)の有無を確認します。
外用期間は約1年間と内服よりも長いので、内服と外用のどちらがご自身に合っているのか、医師と相談するのが良いと思います。
イボのはなし
皮膚科の診療をしているとイボに悩まされている方が多く来院されます。
皆さんの身近にもいらっしゃいませんか?
イボには他の部分や他の人にうつるウィルス性のイボと、年齢や紫外線の影響でだんだんに増えてくる種類のイボがあります。
イボは医学用語では疣贅(ゆうぜい)といい、ウィルス性のイボには手足の関節部分や末端によくできる盛り上がっていて少し硬いイボ(尋常性疣贅)や直径1~2ミリの子供に多くでき、潰すと白い塊がでてくるミズイボ(伝染性軟属腫)、手の甲や顔面に多発する扁平性疣贅などがあります。
これらは公衆浴場やプールなど、多くの方が行き交う所で感染します。
治療には古くからある漢方薬のハトムギまたはヨクイニンなどが用いられますが、イボが増え続けるときや薬を服用しても治りにくいときは皮膚科を受診してください。
尋常性疣贅や扁平性疣贅では少し痛みはありますが液体窒素(ー196℃)で凍結させる方法が一般的です。
通常一度では治りませんが、1週間から10日に1度位通院して治療すると段々に改善します。
足の裏など硬いところにできるイボは治りにくく、皮膚を柔らかくする専用の絆創膏を併用する場合もあります。
またミズイボは免疫が出来ると自然によくなるので、それまで待つ方もいますが、ご希望の方は専用の器具を使い内容を圧出します。
小さなお子様など、治療が苦手な方には痛み止めテープを使用してから行うこともあります。
ただ、全部取り除いたとしても、その時点で完治ではなく、免疫ができるまでは繰り返すことが多いです。
免疫が出来るまでは待たないといけません。
ウィルス性のイボは痛みや痒みがなく、命にかかわる病気でもありませんが、放置すると増えてきたり他人にうつったりします。
またウオノメやタコと間違えてほじくったりすると、広がってきたり、傷口から皮膚表面にいる細菌が入って二次感染をおこす心配もありますのでご注意ください。