のどの違和感ありませんか?
初期には、ほとんど自覚症状がない食道がん。
食道の付近でわずかにしみる、のどの違和感、などを覚える人もいますが、ほとんどの場合自覚症状がなく、のどの通過障害をを自覚した時にはすでに進行していることが少なくありません。
発症年代別では、40代後半から増え始め、50代で急増し、70代でピークに達します。
食道がんの直接の原因は不明ですが、食道の粘膜を刺激し、炎症を起こすような生活習慣を持つ人は、食道がんのリスクが高いとされています。
特に、喫煙と飲酒の習慣は、リスクを高める要因です。
最近、よく聞かれる「逆流性食道炎(胃食道逆流症)」も、食道がんのリスクの1つです。
逆流性食道炎の症状は、のどの違和感、胸焼け、ゲップ、お腹の張り、胃もたれ、胃の痛み、1週間以上続く咳などです。逆流性食道炎も、早期の食道がんも、職場で行われている胃バリウムの検査では、なかなか見つけることはできません。
逆流性食道炎により治療中の方はもちろんですが、自覚症状が軽度なため治療をしていない方も、1年に1度の胃カメラでの検査が、早期発見にはとても有効です。
がんの検査
日本人の死亡原因の第1位はがんで、統計によると約30%の人が、がんで亡くなっています。
また、一生のうちにがんにかかる確率は男性54%、女性41%で、男女とも約2人に1人は生涯で一度はがんにかかる可能性があるということになります。
内訳を見ると、男性は胃癌・大腸癌・肺癌が多く、女性は乳癌・大腸癌・胃癌にかかる人が多くなっています。
一昔前は、がん=死の病でしたが、治療の進歩により、早く見つければ治すことができる病気になってきています。
がんを早く見つけるためには、がん検診を受けることが大事です。
40歳以上の全ての人は、胃癌・大腸癌・肺癌の検診を1年に1回、受けることが推奨されており、20歳以上の女性は2年に1回子宮癌検診を、40歳以上の女性は2年に1回乳癌検診を受けることが推奨されています。
このような検診は、公的補助が出る場合もありますが、それとは別に、ある種のがんでは、血液検査で、がんになるリスクを推測することも出来るようになってきています。
たとえば胃癌では、ピロリ菌に感染しているかどうかと、胃が長期的に炎症を起こしているかどうかを血液で調べることで、胃癌になる可能性がどのくらいかを調べる、ABC検診が注目されてきています。
また、蛋白(たんぱく)質の元になるアミノ酸という物質の種類を組み合わせて調べることで、がんにかかっている危険度を、数種類のがんについて調べることも出来るようになってきています。
ただし、これらの検査はあくまでもがんにかかる危険性がどのくらいあるかを調べるもので、結果がよかったからといって、絶対がんにはかからないということではないということを理解しておくことが大事です。
また、人によっては検査が出来ない場合もあるので、検査を行っている病院に問い合わせてみてください。
胃がんになりやすい人って?
漠然と「胃がんになったらどうしよう」と考えたことはありませんか?
最近、どの程度胃がんになりやすいかを検査できるようになりました。
胃がんリスク検診=ABC検診といいます(健康保険は対象外)。
現在、群馬県全域・東京都の一部の区で実地されています。
血液を調べて,胃がんの原因といわれるピロリ菌に感染しているかどうかと、胃の老化をペプシノーゲンⅠ・Ⅱという物質で検査します。
A群:ピロリ菌もいない・胃の老化もない状態。この場合ほとんど胃がんの発生がありません。
B群:ピロリ菌がいるけれど、胃の老化は始まっていない。この場合1000人に1人の割合で胃がんの発生があるといわれます。
C群:ピロリ菌がいて、胃が老化しているものでは、400人に1人。
D群:ピロリ菌が住めないくらい胃の老化が進んでいるものでは80人に1人と言われています。
この検診で胃がんリスクを考え、A群の方は5年に1度程度、B群は3年、C群は2~1年、D群は毎年胃カメラでの精密検査が推奨されています。
この検診結果から分かるように、基本的にピロリ菌に感染しているならば、まず除菌することが勧められます。
ただし、除菌治療は胃潰瘍や十二指腸潰瘍など健康保険で賄(まかな)えるものは限られており、自費で行われる方が多いのも事実です。
また、この検診でA群と診断されても実はピロリ菌に感染していた方も混入することもあったり、胃がん以外の悪性腫瘍(2%前後)、ピロリ菌の感染が背景に無い胃がんがごくわずかに存在することもあります。
この検診は、今胃がんになってるかどうかの判定ではありません。
あくまでも胃がんのなりやすさであり、結果を鵜呑みにすることなく、何か症状があったり不安であれば消化器科専門医に相談してくださいね。
それはもしかして胆のうや膵臓(すいぞう)の症状ではありませんか?
みぞおちあたりの痛みや不快感は誰もが一度は経験したことのある症状だと思います。
そんな時、皆さんはどこが悪いと考えますか?
「胃の調子が悪い」と考える方が大多数だと思いますが、本当のところはどうなのでしょうか? 病院で胃カメラ検査を受けた結果、胃炎や胃潰瘍など目に見える(この場合は胃カメラで見える)病気が見つかる人もいます。
一方見た目に何も異常がない場合は、胃腸運動の機能的なアンバランスからくる「機能性胃腸症」(いわゆる神経性胃炎)という診断名になることが多くなります。
しかしみぞおちの症状の場合、ここで超音波検査(エコー)を追加して行うと胆のうや膵臓などに異常が見つかる人もいます。
そしてそのような方たちの中には「自分は胃が弱いから」と長年思いこんでいた方が意外に多いのです。 人間の体の中で胆のうは胃よりも右側、膵臓は胃よりも背中側にありますが、近接していて同じような場所に症状がでるために上記のようなことがおこります。
胃の病気の方が世間一般にはなじみが深いため、病院に行って胃カメラ検査だけを受けて「どこも異常ないですよ」と言われ、なんとなくすっきりしないままうやむやになってしまうことが多いのが実情です。 胆のう癌、膵臓癌は癌の中でも特に予後不良でいずれも近年増加傾向にあり、早期発見は大変重要です。
また胆石症や膵炎も重症例では生命の危険があるだけでなく、癌を合併する危険性が高まる疾患のため軽視は禁物です。
これらは胆のうや膵臓の代表的疾患であり他にも様々な疾患があります。 診断は超音波検査と血液検査を組み合わせて行い、異常が見つかればさらにCT・MRI検査なども行われます。
必要に応じて精密検査として超音波内視鏡やERCPと呼ばれる特殊な内視鏡検査を行ったり、同時に内視鏡的に治療まで行う場合もあります。
このように、みぞおちに症状がある場合は必ず専門医を受診して胃カメラと超音波検査の両方を受けることが大切です。
「がん何でも相談外来」では、どのような相談を受け付けていますか?
医療費や苦情、医療訴訟以外は、何でも相談に応じています 当院では2008年5月から全国でも初めての試みとなる「がん何でも相談外来」を実施しています。がんの患者さんでは、人それぞれ多岐にわたるといえます。 これまで主治医以外に相談する方法としては「セカンドオピニオン外来」や、がん診療連携拠点病院(道内は20施設)などの「相談支援センター」が、主にその窓口を担っています。 しかしセカンドオピニオンでは、それまでの主治医との関係から、紹介状や検査資料などの貸し出しをなかなか言い出せない患者さんも多くいます。
ちょっと疑問に思うことがあるのだけども、主治医との関係が良好である場合などでは、紹介状の手紙をわざわざ書いてもらうことを遠慮して言い出せない患者さんが現実には多くいます。
そうした患者さんが、少しでも気軽に相談できる窓口として開設したのが、この相談外来の目的です。 また、無料の各相談支援センターでも、対応しているのは看護師やソーシャルワーカーのため、個別の症状に対する専門治療の回答は難しいというのが現状です。
実際に患者さんが、こういう手術をした、どれどれの抗がん剤を飲んでいるが、ほかにどんな治療が考えられるかといった質問に対して明確に答えることができないわけです。
そこで、実際に多くの症例に携わってきたがん専門医の立場から、既存の窓口では対応できない患者さんを対象に、具体的なアドバイスをしていこうというのも、「がん何でも相談外来」の役割と考えています。 これまでの相談例では、家族だけで相談に来た人もいます。
がんを患った親が遠方に住んでいるため、息子さんだけで相談に来たこともあります。
前立腺がんの患者さんで大腸や肝臓に転移したがどういう治療があるのか、比較的ゆっくりと進行するがんの治療に関して意見を聞きたい、手術と放射線治療のどちらを選択すべきか、現在行っている治療で大丈夫なのか、などの相談がありました。 また治療をやりつくした末期がんの患者さんでは、その後の日常生活をどう過ごしていくべきかという相談もあります。
たとえば、残された時間をどう有効に過ごしていくべきか、ただ一人で考えるのではなく、医師と一緒に話しながら、もう少し明確にイメージできるよう親身になってアドバイスしています。 対象は患者さんとその家族で、紹介状や資料は必要ありません。
どんなささいなことでも相談を受け付けています。
ただし、医療費や医療訴訟、医療機関に対する苦情の相談などは対象外となります。
再び子宮頸癌のワクチンを
平成23年1月から、函館市と七飯町が子宮頸癌の予防ワクチンの接種費用を助成する事となりました。 対象は平成6年4月2日から平成10年4月1日生まれで、函館市、七飯町に住民登録している女子です。 子宮頸癌はその発生機序が解明され、発症にヒトパピローマウイルス感染が関わっていることが判明し、そのワクチンができて、確実に予防できる数少ない癌の一つとなりました。
120以上の国でワクチンによる予防に取り組んでおり、日本でも公費による助成が増えてきています。
公費で助成することで平等に多くの人が接種機会を得られ、高い予防効果が得られます。
また公費すなわち税金から支払われるわけですが、その費用効果も、ある大学の試算によれば、接種に係わる費用と、接種をしないで頸癌を発症しその費用及びそのための労働損失等を比較するとかなりの額の節約になると出ています。 子宮頸癌は女性がかかる癌では乳癌に次いで発症率、死亡率の高い癌で、一年で約15,000人が発症し、約3500人が死亡しています。
近年20歳から30代前半の発症率が増加しています。 20代から30代の子宮頸癌の患者さんの約80%からこのワクチンの対象となるパピローマウイルスの16タイプか18タイプが見つかっています。
ということは、このワクチンを接種することで、頸癌になる確立が80%減らせるということです。 このウイルスは主に性交渉で感染しますが、手指、口腔、等からも感染しますので、他の性感染症のようにコンドームで予防する事はできません。
女性の80%が一度は感染すると言われています。
但し、感染しても殆どが自然に消えていきます。
まれに持続感染となり、それが異形性や癌化を起こします。 主に感染の原因は性交渉なので、11歳から14歳がワクチンの第一推奨となります。30歳代までがワクチンの対象です。
40歳以上では強い希望があればとなります。 このワクチンは接種してその1ヶ月後、6ヶ月後と3回の接種が必要で、1回約1万5千円と高額ですが、30歳代までの方には接種する事をお勧めします。
女の子の保護者の方へお伝えしておきたいこと
子宮頸(けい)がんは、30年くらい前までは50〜70歳の方が多くかかっていましたが、今では、20〜30歳台の女性で発病するガンの第1位になりました。
子宮頸がんは子宮の出口にできるガンで、そのほとんどがヒトパピローマウイルス(以下HPV)というウイルスに感染することで発病します。HPVは男女ともに多くの人が持ってるありふれたウイルスで、何度も繰り返し感染することもありますが、自然に治る一過性のものがほとんどです。
しかし、一部の人の場合、持続的に感染が続き、その後、子宮頸がんになることがあります。ほとんど自覚症状はありませんが、感染してから子宮頸がんになるまで最低でも5年はかかるので、その間に子宮頸がん検診を受けていれば初期のガンとして発見することができます。
その時に発見できれば、手術でほぼ完全に治り、妊娠・出産も可能となります。日本では残念なことに若い女性の検診の受診率はかなり低く、妊娠をして初めて婦人科を受診する人が多いのが現状です。
ですから妊娠時に子宮頸がんを発見されることが多いのです。しかし、一度の検診で100%防げるわけではありません。
最低2年に1度は定期的に繰り返し検診を受けることが重要です。
また、HPVの感染そのものを予防するワクチンも開発されました。
子宮頸がんは、ガンの中で唯一ワクチンによって予防可能なガンになったのです。このワクチンは、10歳から50歳までの間に接種するのが理想的ですが、HPV感染前の早い時期に接種されることをお勧めします。またワクチン接種により、少なくても20年間は予防効果が続くだろうと言われています。
現在、平成23年1月1日〜3月31日の期間に中学1年〜高校1年生を対象にそれぞれの自治体からワクチンの接種費用の助成があり、内科・婦人科・小児科で無料でワクチンの接種を受けることができます。子宮頸がんは、検診とワクチンの両方で100%近く無くなる病気と考えられています。
正しい知識を持つことでお子さんの大切な命を守ることができます。今晩は母娘で話し合われてみてはいかがでしょうか。
大腸がん ― 治すために早期発見
近年、大腸がんが増加しています。平成15年がん死亡統計では、肺がん、胃がんに次ぎ第3位で、男性では4位、女性で1位となっています。
大腸がんの増加は高脂肪食を多く食べる機会が増えた事に一因があります。
大腸は約1.7mの結腸と直腸に分かれていますが、がん発生率は6対4で結腸に多く、また特に下部のS状結腸に多く見られます。
初期は無症状ですが、進行すると腹痛、便秘、下痢、下血、腸閉塞(へいそく)などの症状が見られます。肛門出血の多くは痔核(じかく)ですが、12%に悪性腫瘍(しゅよう)などが見られます。
がんは「早期発見が大切である」と皆さんはご存知かと思います。
大腸がんは手術で治る率が非常に高いがんです。肛門出血があった時は「痔」と思わず、積極的に診察、検査を受ける事をお勧めします。また早期発見のため、年一回は医療機関などで検診する事もお勧めします。
増え続ける大腸がん
食生活の欧米化とともに増加した病気に【大腸がん】があります。
近い将来、消化器がんの中では最も多いと考えられています。初期には他のがんと同様にほとんど症状はありませんが、進行すると、下痢・便秘等の排便異常や血便が出現し、更に大きくなると、腸閉塞(へいそく)になることもあります。初期の症状が出現しづらいため、大腸がんの転移した肺がんや肝臓がんが、原因となった大腸がんよりも先に発見されることもあります。
診断は、最近では「大腸カメラ」で発見されることが非常に多くなりました。以前は、おしりからバリウムを注入しながらレントゲンを撮る「注腸バリウム検査」で診断しましたが、便とポリープの区別が難しく、また早期の大腸がんの発見が困難なため次第に大腸の検査は「大腸カメラ」に取って代わりつつあります。「大腸カメラ」の普及は、検査手技の技術の向上とも関係していて、以前は全大腸を短時間でかつ苦痛なく検査するにはかなりの熟練が必要でしたが、現在では下剤の内服後、短時間(二十分程度)で苦痛の少ない検査が十分可能になったことも大きく影響しています。
治療は、早期がんのうちに発見できれば「大腸カメラ」でがんの存在する粘膜を切除するだけで治癒可能です。ある程度進行すると、手術が必要になります。とはいっても以前のように大きな傷から腸を切除する手術の頻度は減少し、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使用した手術が多くなっています。腹腔鏡の手術はお腹に開けた数個の小さい傷からカメラ等を挿入し手術をする方法で、以前と比較すると術後の痛みも軽減し、回復も早いことが特徴です。もし肝臓や肺に転移していても手術によって治癒する可能性もあります。
いずれにしても、体に負担のかからない治療を受けるためには、早期発見がとても重要です。血便は痔が原因と誤解して放置している方、下痢の方、便秘の方、また無症状でも五十歳以上の方は恥ずかしがらずに、是非一度は「大腸カメラ検査」を受けてみることをお勧め致します。
欧米で増加する『下部食道腺(せん)ガン』
日本において最も多いと言われてきた胃がんは、近年発生率が低下しています。代わって増加しているのが、乳がん・大腸がん・肺がんです。これらのがんの特徴は、欧米に多かったがんが、少し遅れて日本でも増加してきたことです。
最近、欧米で増加し、注目されているのが、胃に近い食道の下部にできる、『下部食道腺がん』です。
がんにはいろいろな種類がありますが、消化器のがんは大きく分けると、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんと腺がんの二つに分類されます。
扁平上皮がんとは、皮膚や口腔・食道などを被う粘膜である扁平上皮組織から発生するがんであり、特に食道がんでは、日本人の約九割を占めると言われています。
一方、腺がんは、胃がん・大腸がんに多く、食道がんには少ないと言われてきました。しかし、現在、欧米では食道がんの約半数を腺がんが占めると言われている程、増加しています。食道腺がんの特徴は、国際医学会では、白人・インテリ・高い生活水準の人が多いとされています。日本の生活様式の欧米化のため、下部食道腺がんは、今後日本でも増加する可能性があり、注意しなければなりません。
では、どのような事に気をつけるとよいのでしょうか?
食道腺がんは、逆流性食道炎の一部から発生してくるのではないかとも言われています。逆流性食道炎の症状である、胸焼け・げっぷ・食べ物のつかえ感・すっぱいものが上がってくる・声枯れ・長く続くのどの痛み・せき・胸痛などの症状がある方は、是非専門医による胃カメラ検査をお勧めします。
現在、胸焼けを抑えるお薬(逆流性食道炎)で症状が改善している方も安心はできません。 他のがんと同様に、下部食道腺がんの早期発見・早期治療に勝るものはありません。
最近では、胃カメラ検査も苦痛なく受けられるように技術が徐々に進歩してきています。定期的な胃カメラ検査こそが食道がんの早期発見につながります。