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婦人科の出血

産科婦人科2008/08/13

 婦人科を受診する方の三分の一は出血を訴えて来院します。出血のトラブルは新生児から老年にいたるすべての女性に起きることです。出血のトラブルには、月経の異常と不正出血があります。

 月経とは一定の周期をもって反復する子宮内膜よりの出血であり、二十五~三十八日の周期で三~七日持続する。と定義されています。

 月経の異常として―

(1)初めての月経が十歳前に来る早発月経。十五歳以後に来る遅発月経。特に十八歳になっても来ないものを、原発性無月経といいます。甲状腺の異常。副腎の異常。卵巣のホルモン産生腫瘍。性器の奇形を疑います。
(2)周期の異常では二十四日以内で来る頻発月経。三十九日以上九十日以内で来る希発月経。
(3)量の異常として少ない過少月経。多すぎる過多月経。
(4)持続日数が二日以内の過短月経。八日以上続く過長月経―などがあります。

 基礎体温をつける。カレンダーに月経の始まった日、終わった日、量が「多かった、少なかった」痛み等をつけるようにしておくと診断の助けになります。

 不正出血とは生理的な出血「月経、分娩、産褥(さんじょく)」以外の病的な出血をいいます。
(1)器質的原因によるもの。すなわち頸管ポリープ。子宮膣部ビラン。内膜ポリープ。慢性内膜炎。炎症性疾患。子宮ガン。子宮筋腫。卵巣、卵管の腫瘍。出血性素因によるもの。外傷性のもの―等による出血。
(2)妊娠に伴う出血。切迫流産。進行流産。子宮外妊娠。胞状奇胎。早産。前置胎盤。弛緩(しかん)出血など。
(3)機能性出血。子宮出血のうち、月経、妊娠、器質的疾患によると考えられるものを除いたものをいいます。

 どの年代にも、また、無排卵性、排卵性いずれの場合でも起こります。ホルモンの乱れによる内膜の増殖、萎縮、不規則な内膜の剥脱(はくだつ)などが原因です。

 いずれの場合も、数カ月前からの月経がいつあったか、状態はどうだったか、月経以外の出血はいつあったのか、量などをメモして婦人科を受診してください。


Text by 松浦 敏章(  「」掲載)

『おりもの』の話

産科婦人科2008/08/13

 最近、おりものが多い。臭いがする。外陰部がかゆい、痛い。と訴えて来られる方が増えています。また一方で、診察しておりものが多いなあと思っても、全然気にしない方もいらっしゃいます。おりものの感じ方は、個人差が多いようです。おりものとは、外陰、膣、子宮頚管、子宮腔、卵管などからの分泌物、浸出液をいいます。

 増える原因により、生理的おりものと病的おりものにわけられます。生理的おりものの原因には、ホルモンによるもの、排卵、妊娠、卵胞ホルモン製剤の投与、子宮膣部びらん、萎縮性膣炎(閉経による卵胞ホルモンの減少による)などがあり、病的おりものには、炎症性のものと、腫瘍性のものがあります。炎症によるものは、性感染症=トリコモナス症、尖圭コンジローマ、淋病、クラミジア感染症、性器ヘルペス、など。性感染症以外の炎症によるものとして、細菌性膣炎、カンジダ症、頚管炎、子宮内膜炎、卵管炎、バルトリン線炎、などが原因となります。

 腫瘍性のものには、子宮頚癌、子宮体癌、外陰癌、など悪性腫瘍、頚管ポリープ、子宮筋腫があります。規則的に月経がきている成熟期の女性では、膣は主に卵胞ホルモンの働きで、酸性に保たれて、細菌の増殖を抑えています。これを膣の自浄作用といいます。小児期や、閉経期以後には、卵胞ホルモンの分泌が不十分なため、膣の自浄作用は低下しており、膣炎を起こしやすくなっています。成熟期の女性では、慢性の頚管炎などによる粘液の増量、精液、月経血、過度の膣洗浄などで自浄作用が低下します。おりものが多いときに、生理的なものか、病的なものかを判断するには、色は白い、膿のように黄色い、透明で水のよう、血液が混じる、臭う、他には、かゆい、痛い、下腹痛、腰痛がある、などを聞いて検査をすすめます。

 小児期のおりものの異常の多くは、外陰、膣の炎症に伴っておき、外陰の不潔、下着の刺激、外傷、膣内異物などが原因となります。更年期から閉経期老年期の女性に起きるおりものの異常は、ほとんどが卵胞ホルモンの分泌低下による性器の萎縮性変化によるものですが、子宮頚癌、子宮体癌によることもあり検査が必要です。


Text by 松浦 敏章(  「」掲載)

若いときから卵巣を大切にする

産科婦人科2008/08/13

 思春期を迎えると、脳にある性腺が働きはじめ、卵巣から女性ホルモンが分泌されるようになり、月経が始まります。そして、元気な赤ちゃんを授かるためには、卵巣がきちんと働いて、卵子を十分に成熟させないといけません。卵子は赤ちゃんの基だからです。

 ところが、やせ願望から無理なダイエットをすると、卵巣に届く栄養や酸素量が減り、卵巣は老化してしまいます。極端な場合には、数カ月のダイエットで卵巣年齢が五十代まで老化してしまうことさえあります。

 ダイエットだけではありません。喫煙も卵巣の働きを低下させます。タバコに含まれる有害物質が卵子の成熟を妨げるのです。冷えも厳禁です。冷えは漢方では「淤血(おけつ)」といって、体内の血液循環が滞ることをいいます。冷えが強いと卵巣への血行が悪くなり、卵巣のエイジング(老化)を加速させてしまいます。

 さらにいえば、性体験にも注意が必要です。パートナーからクラミジア感染症を移されると、女性は自覚症状がほとんどないために、感染に気づかないまま卵管に感染が広がり、不妊症の原因になります。

 「妊娠したい」と思ったときに妊娠できるためには、若いころから卵巣を大切にする生活習慣を心がけることです。とくに以下のことに十分に注意したいものです。

  • 健康な体の基本は食事です。栄養バランスのよい食事を一日三食、きちんと食べましょう。自己流のダイエットはいけません。
  • 薄着でおなかを冷やすのはいけません。卵巣と子宮がある下腹部は温めることです。
  • シャワーを控え、湯船への入浴で体を温めます。とくに寒い冬の朝にシャワーを浴びたり、シャンプーをするのは控えることです。
  • タバコはやめましょう。家族の喫煙も間接喫煙によって、女性の卵巣機能を低下させます。家族みんなで禁煙したいものです。
  • 性体験のある女性は、ぜひ、婦人科で定期健診を受け、健康を確かめましょう。

Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

不妊症の半数は男性側に原因があります。夫も必ず検査を受けましょう

産科婦人科2008/08/13

 不妊原因のほとんどは女性側にある、検査も治療も女性が主役と考えるのは、大きな間違いです。不妊原因の男女比についてはさまざまなデータがありますが、一般的には、男女のどちらかに原因のあるケースがそれぞれ四割、一割は男女双方に原因があり、夫婦のどちらにもはっきりとした原因が見つからない原因不明不妊が一割といわれています。

 つまり、不妊で悩む夫婦の約半数は男性側に原因があるわけですから、検査はもちろんのこと、治療の過程でも、夫が不妊症を理解し、積極的に治療に取り組む必要があります。

 男性不妊の基本検査は精液検査です。専用容器に採取した精液を顕微鏡で観察して、精子の数、運動率、正常形態精子の割合などを調べます。ただし、精液の性情は過労やストレスなどの影響を受けやすいので、通常、精液検査は何度か行います。

 夫が検査に消極的だったり、仕事などで時間的に無理な場合には、女性がフーナーテストを受けると、ある程度判断できます。フーナーテストは、性生活をもったあとで女性の体内に精子がどのぐらいいるかを調べる検査で、子宮頸管(しきゅうけいかん)や子宮内に一定数の元気な精子がいれば、心配はありません。しかし、精子がほとんどいない場合には、必ず精液検査を受けないといけません。

 ただし、フーナーテストに問題があっても、精液検査は正常というケースもあります。この場合には、女性側の原因が考えられます。頸管粘液不全(けいかんねんえきふぜん)といって、ホルモンのアンバランスにより頸管粘液の性情がよくない場合や、抗精子抗体といって、夫の精子を不動化してしまう抗体がある場合があります。

 男性不妊とわかれば、人工授精および顕微授精で治療します。とくに、顕微鏡下で卵子に精子を注入して受精卵を作る顕微授精は、重症の男性不妊にも非常に有効な治療法です。

 一日も早く赤ちゃんを授かる第一歩は、夫の積極的な協力にあるといえるでしょう。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

卵巣をアンチエイジングし、妊娠しやすい体へ

産科婦人科2008/08/13

 不妊治療は日々進んでいます。昨日まで妊娠は難しいとされていたご夫婦にも、明日は赤ちゃんを授かる可能性があります。

 しかし、女性の場合、年齢が高くなると赤ちゃんのもとである卵子の質が低下し、高度生殖医療の力を借りても妊娠しにくくなる心配があります。卵子を排卵する卵巣の働きは三十代半ばから低下しはじめます。遅く結婚した女性ほど、できるだけ早く治療を受けたほうがいいわけです。

 あわせて、できるだけ卵巣のアンチエイジ 不妊治療は日々進んでいます。昨日まで妊娠は難しいとされていたご夫婦にも、明日は赤ちゃんを授かる可能性があります。

 しかし、女性の場合、年齢が高くなると赤ちゃんのもとである卵子の質が低下し、高度生殖医療の力を借りても妊娠しにくくなる心配があります。卵子を排卵する卵巣の働きは三十代半ばから低下しはじめます。遅く結婚した女性ほど、できるだけ早く治療を受けたほうがいいわけです。

 あわせて、できるだけ卵巣のアンチエイジ巣に大きなダメージを与えます。実年齢は二十代なのに卵巣年齢は五十代になることもあります。むやみなダイエットは厳禁です。

 タバコも卵巣にダメージを与えます。卵子の質が悪くなる、体外受精の妊娠成功率が低くなるなど、タバコの害を示す研究データはたくさんあります。

 赤ちゃんが欲しい人はまず禁煙することです(ご主人も!)。

 冷え性も卵巣の働きを弱めます。シャワーをやめて湯船につかる、足湯で体を温める(四十二度のお湯に二十分間)、運動で血行をよくする、胃腸を冷やす冷たい飲料はやめて温かい飲料を飲む、ストレスを解消して自律神経の働きを整える、などを心がけましょう。

 40歳を過ぎたなら、胃カメラの検査を受けておくことが、胃ガンの予防、早期発見につながるのです。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

不妊治療ではカウンセリング療法が有効なケースがあります

産科婦人科2008/08/13

 お子さんができにくい不妊症の女性は、強い精神的ストレスを抱えがちです。赤ちゃんに恵まれないのが最大の悩みであり、ストレスですが、さらに追い討ちをかけるのが周囲のプレッシャーです。

 同じ年頃の女友達が次々妊娠した、自分より後に結婚した妹夫婦にコウノトリがやってきた、義妹も妊娠して姑が「あなたのところはまだ?」と聞いてくる・・・。

 困ったことにこのような悩みやストレスは、女性の体をより妊娠しにくい体にしてしまいます。女性の卵子と男性の精子が出会い、受精するのが妊娠の第一歩ですが、その卵子を排卵させるホルモンの働きを乱し、排卵障害を進行させるからです。何故なら、排卵をコントロールするホルモンの中枢は精神的ストレスの受け皿のすぐ隣にあって、心の悩みやストレスの影響を受けやすいのです。

 こうした排卵障害にはホルモン療法と合わせたカウンセリング療法が有効です。主治医に心の悩みを吐き出し、受け入れてもらうと心が軽くなり、ホルモン環境も整うことが多いのです。テレビに赤ちゃんが映るとポロポロ涙ぐむ、月経がきて今度も妊娠できなかったとわかるとヒステリーが起きる、赤ちゃんのいる友人夫婦は顔も見たくないなど、心の症状がある場合は、ぜひ早めにカウンセリング療法を受けるようにお勧めします。

 男性も精神的ストレスの影響を受け、性欲減退によるセックスレスや心因性のED(勃起障害)などが起こってきます。とくに、仕事や職場の人間関係などで強いストレスを感じている男性の場合は、これらの症状に悩まされがちです。赤ちゃんを作る最初の段階でつまずいてしまうのは困りものですが、治療にはカウンセリング療法と併せて、EDの治療薬(バイアグラ)の服用が有効です。

 最近は、心の問題を重視してカウンセリング療法を積極的に行う不妊治療施設が増えています。積極的に相談するといいでしょう。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

不妊治療には『急いで受診』と『適切な治療法の選択』が大切です

産科婦人科2008/08/13

 赤ちゃんが欲しいけれどなかなか妊娠できず、「不妊症?」と疑いつつも、不妊外来への受診をためらう方も多いものです。

 しかし、女性には年齢の壁があります。不妊治療の進歩は目覚ましく四十代での妊娠も珍しくありませんが、一歳でも若く治療を受けるほど良い結果を得られるのも事実です。「時は金なり」の言葉がありますが、赤ちゃんを望む女性にとって「時は赤ちゃんなり」です。「急いで受診」することが大切です。

 不妊治療を受け始めると、すぐに妊娠できると期待するのが人情というものです。実際、適切な治療法を選択した場合、たった一回の治療で妊娠する方も少なくありません。但し、それにはいくつかの条件があります。

詳細な検査
適切な治療法を選択するには不妊原因の特定が前提です。子宮卵管造影検査・超音波検査・ホルモン検査など、不妊原因を詳細に調べる検査が必要です。

男性因子の検査
不妊原因の約半数は男性側にあります。精液検査は必須です。

高度な治療法
 体外受精・顕微授精など生殖補助医療に実績のある専門医であれば、排卵障害の治療やタイミング療法、人工授精などの一般療法についても実績が豊富です。

 つまり、一日も早い妊娠を実現する第一歩は、不妊治療に詳しい専門医を主治医にもち、「適切な治療法を選択」してもらうことといえるでしょう。

 体外受精や顕微授精と聞くと不妊治療のなかでも特殊な治療法と考えがちですが、現在、日本で生まれる赤ちゃんの約二%は体外受精・顕微授精・凍結胚移植(とうけつはいいしょく)で命を授かっています。また、これまで妊娠は難しいとされていた原因不明の不妊症(機能性不妊)や程度の高い男性不妊も、これらの治療法によって妊娠が可能になっています。

 十分に情報を収集し、自分たち夫婦に合う主治医と出会っていただきたいと思います。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

不育症は赤ちゃんができない大きな原因のひとつ

産科婦人科2008/08/13

 不育症は、妊娠はできても胎児が発育することができず、妊娠初期に流産してしまうものです。「私は妊娠するから不妊症ではない」と考える方もいるでしょう。確かに不妊症ではありませんが、元気な産声を上げる赤ちゃんが授からないという点では同じです。せっかく妊娠して、赤ちゃんを抱けると期待がふくらむ中で流産してしまうのですから、心身ともに強いショックを受ける方も少なくありません。中には、二度、三度、流産を繰り返す方もいます。

 不育症の原因は大きく
 (1)内分泌異常
 (2)子宮内腔の異常
 (3)夫婦の染色体異常
 (4)母体の免疫異常
 (5)母体の血液凝固異常
 (6)原因不明

の六つに分類されます。

 中でも最近とくに目立つのは、母体の免疫異常によるものです。

 急速な経済成長を遂げた日本では、生活習慣、とくに食生活や住環境などが大きく変化しました。加えて、環境汚染や日常生活における精神面のストレスなどは増える一方です。これらが私たちの体に影響しないはずはありません。本来、体を守る免疫システムが正常に保つことができなくなると、自己免疫と異物に対する免疫機能が異常に活発になり、ナチュラルキラー細胞が活性化されます。この結果、子宮内の胎児を攻撃し、流産してしまうとも考えられます。

 不育症の治療は、原因により困難な場合もありますが、流産の予防措置等をすることで、元気な赤ちゃんを授かることができるようになってきました。

 不妊治療の現場にいる医師として、不妊症同様に不育症も増加する傾向があると感じます。不育症は広い意味の不妊症に入ります。流産を経験された方は、早めに不妊症専門医による検査を受けたほうがよいでしょう。

 出産経験のある方もその後の体質変化などで不育症になることもあります。心配なら一度検査を受けてみるとよいでしょう。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

二人目以降の赤ちゃんができない場合も不妊治療の対象になります

産科婦人科2008/08/13

 「不妊」は、赤ちゃんが一人も授からない状態と思われがちですが、二人目以降の赤ちゃんがなかなかできない場合も、「続発性不妊」といって、不妊治療の対象となります。
 続発性不妊の場合、ひとりお子さんが授かっていることで、「自分たち夫婦は不妊ではないので、いつかできるだろう」と様子をみるうちに二年、三年と時間が経ってしまうことがあります。しかし、次のお子さんを望み二年経っても妊娠しない場合には、何か不妊の原因が隠れている場合が多いものです。

続発性不妊の原因

ご夫婦によって原因はさまざまですが、次のようなことが考えられます。

●女性側

内分泌・体質の変化による排卵障害

排卵を司るホルモンの分泌は精神的・肉体的ストレスと深く関係しており、子育てによるストレスが関係している場合があります。また、三十代とくに三十五歳以上の方の場合には、年齢的に卵巣機能が低下して、排卵がうまくいっていない場合があります。

卵管や子宮の原因

出産時の子宮・卵管の炎症などにより、卵管の通過障害(卵管因子)が起きたり、子宮内膜の条件が悪くなっていることがあります。あるいは、不妊の原因になる子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症が進行している場合もあります。

●男性側

精子数の減少

男性の場合、仕事などでの過労や精神的・肉体的ストレスで精子数が減少したり、活動性が低下する場合があります。

 このように、ご夫婦ともに年齢が高くなるほど、赤ちゃんができにくくなる心配があります。二人目以降の赤ちゃんを望んでから一~二年経っても妊娠しない場合には、早めに不妊原因を特定して、治療を受けるに越したことはありません。ぜひ、積極的に不妊外来を受診するようにお勧めします。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

体外受精児は自然妊娠児となんら変わりはありません

産科婦人科2008/08/13

 本年度から、国は少子化に対する歯止めのひとつの策として、赤ちゃんを望み体外受精を行っている方々に、特定不妊治療費助成事業を実施することになりました。これは費用の多くかかる体外受精を行う患者さんにとっては非常に助かることでしょうし、これから、体外受精へと進んでいく患者さんが増加していくことが予想できるでしょう。しかし、体外受精に対する知識を得る場が多くはないため、多くの方々の体外受精に対する理解は不十分であると思われます。特に、体外受精で生まれる赤ちゃんは奇形が多いのではないかと考えている方は少なくありません。

 体外受精は、簡単に言うと、妻の卵巣から卵子を体外にとり出し、培養液の中で夫の精子と受精させ、その受精卵を妻の子宮に戻し妊娠を試みる方法です。この過程は、体内で行われる自然受精・妊娠と変わりありません。ただ、受精と受精卵の最初の発育が体外で行われるため、体外受精と呼ばれます。

 昔はこの受精卵を試験管内で培養したため、この方法で誕生した赤ちゃんは「試験管ベビー」と言われました。1978年イギリスで初めて体外受精が成功して以来、この技術は、一般的な治療法として世界的に普及しています。日本では1983年に体外受精第1号の赤ちゃんが誕生しました。 現在、全国で年間5万組以上のカップルがこれによる治療を受けており、1年に1万人程の赤ちゃん(新生児の約1%)が誕生しています。日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会による生殖医療に関する報告において、平成7~9年の統計では体外受精児の奇形発生率は自然妊娠児と差はありません。更に、6~13歳までの追跡調査を行った研究でも、児の予後に一般の児と差がないことが明らかになっています。イギリス等の諸外国でも同様の研究結果が出ています。

 体外受精を現在、またこれから行う予定のある方々へ、「体外受精で誕生した赤ちゃんは自然妊娠児となんら変わりありません」ということを提言したいと思います。


Text by 美馬産婦人科 美馬 博史(  「」掲載)

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