男性の性 30
今回も、勃起障害治療薬であるPDE5阻害薬についてです。
中年以降の男性であれば程度の差はあれ年齢を重ねるにつれて、おしっこの勢いが弱くなり回数が多くなってきたと、誰でも感じていることだと思います。
同様に、加齢とともに勃起時の陰茎の硬さや持続時間、勃起回数なども低下していると感じていることだと思います。
男性は女性と異なり、排尿時の尿の通り道と射精時の精液の通り道がほぼ一致していて、どちらも尿道を通って体外に排出されます。
つまり、陰茎と尿道は男性にとって、体内で不要になった老廃物を尿として排出する器官と子供を作るための生殖器官を兼ねていることになります。
PDE5阻害薬は、陰茎の海綿体血流を増加させて勃起障害を改善するひじょうに有効性が高い薬ですが、陰茎の尿道海綿体を通る尿道やその奥にある前立腺、さらに奥の膀胱の血流も改善することが判ってきました。
中年以降の男性の排尿障害は、これまで前立腺肥大症といって、加齢とともに腫大した前立腺が尿道を圧迫するために生じると考えられてきましたが、近年ではそれだけではなく、膀胱・尿道の血流障害も排尿障害の重要な原因と考えられるようになりました。
PDE5阻害薬の一つであるタダラフィルを投与すると、血管が拡張することによって、膀胱・前立腺・尿道での血流や酸素供給量が増加し、尿道抵抗を軽減し、膀胱の過伸展を改善することが明らかになり、さらに膀胱の神経の抑制作用により頻尿や尿意切迫などの症状も改善することが判りました。
これらの知見により、米国では2004年、欧州では2006年から男性の排尿障害に対する治療薬として治験が開始され、1日1回5mgの投与による有効性と安全性が確認され、米国では2011年10月から、欧州では2012年10月から、男性の排尿障害に対しても適応が承認されました。
日本を含むアジア人患者を対象とした比較試験も2008年から開始され有効性と安全性が確認されたため、日本では今年の4月から保険適応が承認されました。
現在、タダラフィルは、勃起障害治療薬としては従来通り10mg錠と20mg錠の保険適応外の『シアリス』として、排尿障害治療薬としては保険適応の5mg錠『ザルティア』として発売されています。
5mg錠ザルティアも、硝酸薬との併用禁忌など注意事項は他のPDE5阻害薬と同じです。
どちらも医師による処方が必要です。
困っていませんか? 夜間頻尿
夜中に何度もトイレに起きてしまう。
間に合わず漏れてしまう。
このような症状でお困りの方も多いと思います。
夜間頻尿は前立腺肥大症や過活動膀胱など泌尿器系の病気だけではなく、内科や循環器科など全身的な要素が関連した病態であることが分かってきました。
最近では苦痛を伴わない簡単な検査のみで診断や治療を行うことが可能となってきています。
夜間頻尿は大きく3つの型に分けられます。
①1日を通して尿量が多い型
②夜間の尿量が多い型
③1回の排尿量が少ない型
治療はこの点に着目し、問診や排尿日記をつけてもらうことで診断を行い、採血検査や超音波検査の結果にもとづいてそれぞれの状態に応じて行われます。
実際には内服薬といくつかの生活指導や行動療法を組み合わせた治療を行います。
内服薬としては、夜間に作られる尿量を減少させたり1回にためられる尿量を減少させたり1回にためられる尿量を増やす効果のあるものが主に使われます。
内服薬以外では、排尿を我慢する膀胱訓練や弾性ストッキングによる足のむくみ治療も夜間頻尿改善に効果があることが分かってきており、これらの治療を組み合わせることで、より確実な夜間頻尿治療が行えるよう工夫しております。
その結果、当院で治療を受けた方のうち約9割で夜間頻尿回数が減少し、平均するとひと晩に2回程度排尿回数を減らすことができました。
さらにその後も観察を続け調整を加えることでそれ以上の効果が得られた方も少なくありません。
夜間頻尿は睡眠をさまたげるだけではなく、体調不良や様々な病気を引き起こす原因となることも報告されています。
最近になり症状が気になり始めた方、以前から症状があったのに検査が不安でつい受診ができなかった方は、1度専門医にご相談されることをお勧めします。
夜間頻尿について
泌尿器科を受診される患者さんの中で夜におしっこに起きることで悩まれている方は実に多いです。
しかも長年我慢されている方も多いのが特徴です。
夜間頻尿とは、夜眠りについたあと排尿のために1回以上起きなければならないという悩みがあり、そのことで日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
夜間頻尿は年齢を重ねるごとに増加し、夜間の排尿回数も増え著しく生活の質を低下させます。
夜間頻尿は前立腺肥大症が原因の男性の病気だと思われがちですが、女性の患者さんも多く、男女差はほとんどありません。
夜間頻尿は慢性的な睡眠不足を引き起こします。
そのため、日中の眠気で日常生活に多大な支障をきたします。
また、夜に暗い中トイレに行く回数が増えることは、転倒による怪我や骨折の危険が増えます。
これらは寝たきりの原因になることもあります。
原因は多岐にわたっております。
本来尿は日中に多く作られますが、年齢とともに、心臓や腎臓の働きが低下すると、夜間に尿量が多くなってしまいます。
また、尿量を減らす抗利尿ホルモンの分泌リズムが変化し日中に尿が少なくなり、その分夜間に尿量が多くなることも原因のひとつです。
水分摂取も適度な量であれば問題ありません。
しかし過剰摂取することにより、一日の尿量自体も多くなりその分夜間の尿量も増えます。
バランスを考えた水分摂取をおすすめします。
睡眠障害で、目が覚めるからトイレに行くという方も多く存在します。
睡眠障害の原因も不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群(脚を中心に強いかゆみや痛みなど虫が這うような不快感が起こり、じっとしていられなくなる病気)など多岐にわたります。
夜間頻尿という症状は多くの原因もしくはその組み合わせで生まれた結果で、実はかなり複雑な疾患なのです。
悪くなってきた腎臓の働きを長持ちさせるには?
腎臓の機能が正常か、どのくらい悪いかを示す指標のひとつに血清クレアチニン値というものがあります。
おおよそ1.0mg/dlまでが正常で、2.0mg/dlを超えるほど悪化した場合、残念ながら急性の病気を除いて回復は難しいです。
次第に悪化していって、末期腎不全になると透析療法が必要ですが、もっとも多い療法である血液透析の場合、週3回、1回につき4時間ほどの治療を強いられます。
病気の進行をすこしでも抑え、透析開始を遅らせるということが、非常に重要です。
禁煙、肥満の改善などの生活改善。
減塩、タンパク制限、カロリーについての食事療法。
厳重な血圧管理、高脂血症、貧血の管理などについての薬物療法。
この3本柱に対して、医師や栄養士とよく相談しながら、できる範囲での自己管理を気長に継続していきましょう。
男性の性(29)
前3回は、勃起機能改善薬であるバイアグラ・レビトラ・シアリスといったいわゆるPDE5阻害薬について、使用方法や注意点などを中心にお話しました。
これらの薬はひじょうに有効性が高く、また副作用もほとんどなくとても良い薬で、医師の注意事項をきちんと守れば重大な合併症を引き起こすことはほとんどないと言えますが、中にはこれらの薬が無効であったり、狭心症や心筋梗塞の既往があり硝酸薬や類似の薬を投与されていて、これらの薬が使えない患者さんもいます。
また、現在、硝酸薬や類似薬を投与されていなくても、狭心症や心筋梗塞の既往があると今後投与される可能性が高いため、これらの薬を使うことをためらう患者さんもいます。
また他にも、重度の高血圧・低血圧、重度肝障害、網膜色素変性など、これらの薬が使えない患者さんもいます。
そういう患者さんには、海綿体注射という治療法があります。
1982年に塩酸パパべリンという薬を陰茎海綿体に注射することによって勃起が誘発されることが報告され実際にも使われましたが、これは海綿体が線維化したり持続勃起症の頻度が高かったりで使いにくい薬でした。
その3年後、プロスタクランジンE1という薬が勃起誘発に有効なことが日本人(東邦大学医学部泌尿器科前教授石井先生)により、世界で最初に報告され、副作用も少なく勃起の誘発も確実なことから、PDE5阻害薬無効例や禁忌例に世界各国で使用されています。
陰茎海綿体に、つまりペニスに直接注射をする、というとかなり痛くて危険と思われるかもしれませんが、実際はとても細く短い針で一瞬で注射が終わるようなキットがありますので、ほとんど痛みもなく医師の指導通りに行えば危険もほとんどないのですが、現在日本では医師がEDの検査のために行う以外は承認されていません。
海外では自己注射が一般的で、患者さんは性交の15分くらい前に自分で陰茎海綿体に薬を注射しています。
特定の病院(大学病院など)では、研究として病院の倫理委員会を通して、医師と患者さんの自己責任という形で、この治療を行っています。
日本性機能学会ではもう2001年からこの治療を認可してもらうよう厚労省と折衝していますが、残念ながら日本人が発見した治療薬が日本ではまだ承認されていない状況が続いています。
男性の性(28)
勃起機能改善薬(ED治療薬)についてのお話の第3回です。
前回は現在日本で認可されている、バイアグラ・レビトラ・シアリス(PDE5阻害薬)は狭心症などで処方されるニトログリセリンなどの硝酸剤とは絶対に併用してはならない、場合によっては血圧が急激に低下して死亡することもある、自分が狭心症であることも硝酸剤を服用していることも知らない患者さんも多くいる、というようなお話をしました。
今回は、狭心症と診断されたこともなく、もちろん硝酸剤等も服薬していない人でも注意しなければならない点についてお話します。
狭心症ではなくても、現代人は程度に差はあれ、なんらかの病気を抱えていますが、特に高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、腎機能低下、のある人は、いつでも狭心症の発作を起こす可能性があると言えます。
性行為は本来は生殖が目的なので生理的な行動ですが、人類は生殖目的以外の性行為もいつからかは知りませんが(『汝、姦淫するなかれ』と十戒~旧約聖書にあるのでずいぶん昔からだと思いますが)するようになり、生殖以外の目的にはいろいろありますが、お互いの快楽の追求、というのがもっとも多いと思います。
快楽の追求というのは歯止めが効きにくいものなので、場合によっては心臓に過剰な負荷となり性交中に狭心症や心筋梗塞の発作を起こすことも考えられます。
この場合、医療機関を受診して(あるいは搬送されて)、PDE5阻害薬を使用していたことを担当医に伝えることが出来ればいいのですが、意識がなかったり朦朧としていたりで、そのことが伝わらないと、担当医は狭心症発作の診断で硝酸剤を投与し、悲劇的な結果になることも予想されます。
硝酸剤は飲み薬や舌下薬だけでなく貼り薬やスプレー・注射薬など多種あり意識がなくても投与可能です。
こういった事故を防ぐためには、性交の相手にPDE5阻害薬を服用していることを伝えておくことが必要です。
血尿について
今回も身近な話題について書いてみたいと思います。
血尿には、ご自分で見てはっきりと赤いことが分かる肉眼的血尿と、見た目は正常ですが検診や病院の検査でたまたま指摘される顕微鏡的血尿の2種類があります。
肉眼的血尿の色調は、出血の場所や程度により様々です。
鮮やかな赤、赤ワインのような赤、どす黒い赤、茶色など。
高熱時や水分摂取の少ない時の濃い黄色尿や薬剤による着色尿は血尿ではありません。
いずれの血尿も何らかの病気が潜んでいるサインを示していることがあります。
一番注意が必要なのは、痛みや頻尿などの自覚症状がない肉眼的血尿です。
膀胱などの腫瘍によることが多く、いったん血尿が出ても自然に止まるため、病気が治ったと思い、そのまま放置する方もいます。
その間に病気は進行するので、難しい手術や治療が必要になってしまいます。
たまたま尿検査をした時に、潜血反応が陽性で、2次検査を受けるように勧められることもあります。
慢性腎臓病、腎炎などの内科的疾患や膀胱や腎臓の腫瘍の初期症状のこともありますので、どんな血尿の場合でも、ご自分の判断だけでなく、一度はお近くの専門医の受診をお勧めします。
男性の性(27)
勃起機能改善薬(ED治療薬)として世界で最も頻用されているPDE5阻害薬は、現在本邦ではバイアグラ・レビトラ・シアリスの3種が使用可能であると、前回までに書きました。
3種の薬剤とも、特に持病のない人が服用する場合は、ほとんど副作用のない良い薬ですが、安全かつ効果的に利用するためには注意する点もいくつかあります。
まずこれらの薬は、自然な勃起を促す薬で、服用すれば必ず勃起するわけではなく、勃起するためには性的刺激と興奮が必要です。
服用しても性的刺激がなければ勃起しません。
服用後約1時間後から、性的刺激を受け性的興奮すると勃起し、性的刺激・興奮が終了すると勃起は収まります(きわめて稀ですが勃起が4時間以上続き収まらない場合~持続勃起症~は不可逆的なEDとなってしまうことがあるので直ちに医師に連絡することが必要です)。
頭痛や顔のほてり、視覚障害(色が変化して見える)等の症状が現れることもありますがほとんどが軽度で一過性です。
最も重要な注意点は、狭心症などで硝酸剤(ニトログリセリンなど)を服用している人は絶対にこれらの5PDE阻害薬を服用してはいけないことです。
急激に血圧が下がって場合によっては死に至ることもあります。
日本では医師が処方する際にこの重要な注意点を強調するので事故は少ないと思われますが、医師の処方箋なしで購入できる国や直輸入で購入した人、他人から譲り受けた人、などで死亡事故が報告されています。
硝酸剤には飲み薬だけでなく、舌下錠、貼り薬、吸入薬、塗り薬、スプレー薬、注射薬などもあり、また、薬の名前に硝酸とかニトログリセリンとか書いていないものも多数あります。
医師によっては患者さんに、病名も硝酸剤ということも伝えずに投与していることがあり、自分が狭心症で硝酸剤を服用していることを知らない患者さんも多くいますので注意が必要です。
硝酸剤に関連した注意点はもう一つあります。(続く)
男性の性(26)
前回の続きです。ED治療薬として現在最も多く使用されているPDE5阻害薬は、いずれも服用すれば必ず勃起するという訳ではなく、性欲がある人が服用後、性的刺激を受けた場合に勃起する薬です。
高度の動脈硬化や糖尿病、手術で神経が損傷した場合など無効な場合も有りますが、現在ではED治療薬の第一選択薬と言えます。
元々、狭心症治療薬として開発されたPDE5阻害薬は、狭心症への効果はほとんど認められませんでしたが、偶然、被治験者に勃起機能改善効果があることが判明したためED治療薬として製品化されたものです。
バイアグラが一番最初に発売されたため最も有名ですが、空腹時だと服用後1時間程度で効果が現われるものが食後だと2時間以上かかることもあり、この点が改善されて発売されたのがレビトラです。
ただ、レビトラも高脂肪食の後ではやはり吸収が遅れることと、バイアグラ・レビトラともに作用時間が5時間程度と短く、性交可能時間にやや制限がある薬でした。
医師は処方する時、性交のパートナーにこの種の薬剤を服用していることを告げるように指導していますので、パートナーと相談して性交時間を決めれば問題はないのですが、そう理屈どおりに行かない性交の場合も男女間には有るので、時と人と場合によっては使いにくい薬でした。
そこで、もっと長い作用時間の薬を、ということで開発されたのがシアリスです。次回はシアリスとこれらの薬の使用時の注意点をお話します。
泌尿器科とは?
ひにょうきか・・・未だに馴染みのないかたも多いと思います。
「ひ」は秘密の”秘”ではなく、分泌の”泌”です。
「し尿器科」も間違いです。
シモの方、あるいは性病専門?
そうではありません。
腎臓、尿管、膀胱、前立腺など尿に関するすべての臓器に関する専門科です。
また、受診してみたいのにどんな診察や検査をするのか、よくわからず不安だ。
陰部をだしたり恥ずかしいと尻込みしているかたも多いかと思います。
症状によりますが、局部そのものを露出しないと診察できない場合は、とても少ないです。
多くの場合は、一般的な採尿と腹部エコー検査で大丈夫です。
泌尿器科医は聴診器のかわりにエコーを多用することで、多くの情報を得ることができます。
肛門から指をつっこむような羞恥心を抱く診察も、ぼくはめったなことでは必要ないと考えます。
恥ずかしいことも苦痛もありませんので、もっとお気軽に泌尿器科医へ相談してみてください。