昼間は大丈夫なのだけど夜が近い
泌尿器科診療をしていると毎日必ず耳にするフレーズです。夜のトイレの話です。
泌尿器科患者さんの受診理由で最も多いのが夜間頻尿です。夜間頻尿にはいくつか原因がありますが半数以上の患者さんに夜間多尿がみられます。夜間多尿とは、夜間につくられる尿量が増える病態です。言い換えれば昼間に効率よく尿をつくることができない病態ともいえます。
主な原因の一つとしてふくらはぎの筋力低下が挙げられます。ふくらはぎは第2の心臓といわれ、その動きで下肢の静脈やリンパの流れを生み出します。筋力低下を来せば流れは停滞して下半身にたまりやすくなり、その分だけ日中の尿量が減少します。
そしてもう一つ、食塩摂取も大きく関わっています。余分な塩分は水分と一緒に尿として排出されますが、夜間多尿では塩分排せつが低下しているため食塩摂取が多いほど日中の尿量が減少します。 昼間に十分な尿をつくれないまま夜眠りに就くと、下半身にたまった水分が上半身へ戻り腎臓を経て尿量が増えます。
また、上半身の体液量が急に増えることで、それを是正するために脳や心臓から利尿ホルモンが分泌されて夜間の尿量がより急速に増えることになります。
では、これを改善させるにはどうしたら良いか。まずは下肢筋力低下を補うため筋肉を積極的に動かすことが必要です。
かかとを上げ下げする体操が効果的です。1分間に20~30回のリズムで上げ下げします。立って行うのが難しい方は椅子に座ったままでも効果があります。
併せて行うのが塩分制限。目安は1日食塩6g未満。食品表示を参考にしながら少しずつ塩分を減らしましょう。
ただし、下肢のむくみや頻尿は夜間多尿と関連しない場合もあります。持病のある方や症状が改善しない場合には、主治医やかかりつけ医に相談してください。
尿潜血が陽性となったらどうしたらよいか
健康診断や内科検診で、尿に血が混じっていないか尿潜血の検査を受けることがあると思います。実際に検査の結果が陽性となったらどうすれば良いのでしょうか。
尿潜血とは、尿の中に血が潜んでいる状態であり肉眼で見ることはできません。しかし、目で見えないからといって決して安心もできません。尿に血液が混じっているということは、尿の通り道のどこかで血が出ているということであり、そこで異常が起きている恐れがあるのです。
尿潜血の原因としては、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症、腎臓結石、尿管結石などの尿路結石症、腎臓がんや膀胱がんなどの悪性腫瘍、糸球体腎炎などがあります。
膀胱炎では排尿痛や残尿感、尿管結石では強い腰背部痛を自覚することもありますが、無症状で気が付かないこともあります。
ただし、尿潜血が出たからといって必ず病気だというわけでもありません。実際に尿潜血のため泌尿器科を受診された患者さんが検査の結果、明らかな異常を認めないことの方が多いくらいです。さらに激しい運動の後や女性であれば生理や痔によっても陽性となることがあります。
それゆえ、尿潜血が陽性だったとしてもすぐに慌てふためく必要はありません。しかし、病気の可能性も否定はできないので必ず医療機関を受診するようにしましょう。
足がむくむようになったら
足のむくみは、食事で摂った水分や塩分の一部が尿として排出されず下半身にたまってしまう状態です。
原因のひとつは腎臓からの塩分排泄の低下です。塩分は体内で水と一緒に移動します。塩分排泄が低下すると腎臓で作られる尿の量も減少してむくみます。
それに下肢の筋力低下が加わり足のむくみになります。ふくらはぎは第2の心臓とも言われ下半身の血液循環を担います。筋力低下により下半身の水分を上半身へ押し上げることができないので足がむくむのです。
足がむくむようになったら行うべき対処法
塩分の排泄が低下しているので、塩分の摂取を少なくすることでむくみの改善が期待されます。1日食塩量は成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満、高血圧や腎臓病など持病のある方では、6g未満が推奨されています。調味料や食品に表示されている「食塩相当量」を確認する習慣をつけて適正な制限を目指しましょう。
下肢の血液循環を良くするために踵を上げ下げする体操(カーフレイズ)もおすすめです。朝から夕方までまめに行うようにするとむくみが解消することがあります。弾性ストッキングを起床時から夕方まで装着したり、夕食前に下肢を挙上して30分くらい横になるのも効果的ですが、持病によっては禁止されることもあるので、かかりつけ医へ相談しましょう。
足がむくむようになったら注意すること
動脈硬化が潜んでいるかもしれません。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞、狭心症、腎臓病の原因となることがあります。動脈硬化以外の病気でむくみが生じることもあります。日中に尿が作られない分だけ夜間の尿量が増えて夜間頻尿になることも。
むくみや夜間頻尿が続いている方は、かかりつけ医などへの相談が必要です。
泌尿器科と夜間頻尿と腎臓病とふくらはぎ
泌尿器科には、夜間頻尿で困っている患者さんが毎日来院されます。
泌尿器科には、腎臓病や透析の患者さんも毎日来院されます。
ご存じの通り泌尿器科は、排尿の異常や腎臓の異常を治療します。しかし今回ご紹介したいのは、ふくらはぎのお話です。実は夜間頻尿も腎臓病もふくらはぎに治療のヒントがあるのです。
人の体には第2の心臓と呼ばれる部位があります。それがふくらはぎです。体の中を流れる血液は、心臓のポンプの力で全身に送られます。しかし心臓から遠い下半身ではその力もおよばず、ここでは第2の心臓ふくらはぎの収縮力が活躍します。この働きが弱い人やふくらはぎをあまり動かさない人では、下半身の循環が悪くなります。
夜間頻尿の原因として最も多く見られるものに夜間多尿症があります。日中に十分な尿を作ることができず夜間の尿量が増える病態です。第2の心臓が十分働かず摂取した水分が下半身にたまり日中は尿を作らず、夜になり寝るとたまった水分が上半身へ戻り今度は尿を多く作ってしまいます。
腎臓病においても末梢の血流障害により様々な合併症を引き起こすことがあります。どちらの病態もふくらはぎを動かし末梢循環を改善することが治療としてとても役立つのです。
ふくらはぎの運動としては、自宅で簡単にできる踵上げ体操(カーフレイズ)がおすすめです。どこか安定したところにつかまり立ったままゆっくり踵を上げ下げします。1分間に20~30回くらいのリズムで、はじめは短い時間から始めてみましょう。立って行うのが難しい方は椅子に座ったまま行っても効果があります。これを1日2~3セット行います。塩分摂取を控えて行えばさらに効果的です。ただし持病のある方は、主治医やかかりつけ医に相談して行ってください。
第2の心臓と夜間頻尿の関係
人の体には第2の心臓と呼ばれる部位があります。それはふくらはぎ。
体の中を流れる血液は、心臓のポンプの力で全身に送り届けられます。しかし、心臓から遠い下半身ではその力もおよばず、ここでは第2の心臓であるふくらはぎの収縮力が活躍します。この働きが弱い人やふくらはぎをあまり動かさない人では、下半身の循環が悪くなり足がむくみやすくなります。
夜間頻尿の原因として最も多く見られるものに夜間多尿症があります。日中に十分な尿を作ることができず夜間の尿量が増える病態です。第2の心臓が十分働かず摂取した水分が下半身にたまり日中は尿を作らず、夜になり寝るとたまった水分が上半身へ戻り今度は尿を多く作ってしまいます。
第2の心臓ケアで夜間頻尿の対策
薬局で市販されている弾性ストッキングを朝起きてから夕方まで履き続ける。圧迫の効果で下肢に水分がたまりにくくなり夜間頻尿対策となります。
足を高くして横になる。足の下に柔らかいものを敷き足先が10~15cmくらい上がるようにして寝転がる。夕方に30分くらいが目安。睡眠リズムを崩さぬよう、この時は眠らないこと。
塩分を取り過ぎないようにする。塩分は水分を引き寄せることでむくみを悪化させます。
自宅でできる簡単な体操、カーフレイズ。踵を上げ下げする運動です。どこか安定したところにつかまり立ったままゆっくり踵を上げ下げします。1分間に20~30回くらいのリズムで、はじめは短い時間から始めてみましょう。立って行うのが難しい方は椅子に座ったまま行っても効果があります。
下肢のむくみや頻尿は、第2の心臓と関連のないものもあります。持病のある方や症状が改善しない場合は、主治医やかかりつけ医に相談して下さい。
寒くなるとトイレが近くなる原因とその対策
体が寒さを感じると体内では、寒さに対応するために様々な反応が起こります。
尿量増加
寒さにより交感神経が刺激されると末梢の血管は収縮します。体温が奪われるのを防ぐ反応です。しかしその結果、体の中心では血液量が増えて腎臓でつくられる尿量が増えます。末消血管が収縮すると汗や水蒸気となって出て行く水分も減るため、さらに尿量が増えます。夏と比べると1日数百ミリリットル以上増えることもあります。
尿意増大
膀胱には尿がたまった時に尿意を感じる神経があります。また、それとは別に膀胱や前立腺が病気の時に異常を感じる神経があります。寒さは後者の神経を刺激することで尿意を引き起こすことが知られており、膀胱の中にあまり尿がたまっていなくても寒いと尿意を頻繁に感じるようになります。
ではどのような対策をとったらよいのでしょう。まず尿量を減らすために末梢血管を拡張させるような運動をしてみましょう。毎日つま先立ちをくり返すことでも末梢血流の改善が期待されます。利尿作用のあるカフェインの入った飲み物を控えるのも効果的です。
尿意を抑えるには、やはり寒さそのものへの対策も必要でしょう。食事はなるべく温かいものをとる。温かいお風呂につかる。暖かい服装を選ぶ。
時には本当の病気により頻尿が引き起こされることもあるので、対策をしても改善しない場合や寒さに関係なく頻尿が続く時には、医療機関への相談がすすめられます。
夜のトイレ、年のせいだとあきらめていませんか?
毎日たくさんの方が夜間頻尿を主訴に泌尿器科外来を受診されています。しかし受診されているのは困っている方の一部に過ぎません。残る多くの人達は年のせいだとあきらめていたり泌尿器科受診に抵抗を感じてためらっていたりする現状があります。
最近では、夜間頻尿は原因を正しく調べることで症状を改善させることができるようになってきました。また医学や医療技術の進歩とともに診断に必要な検査もより簡単で侵襲の少ないものになってきています。
夜間頻尿で受診された場合、まずは問診により原因や病態を分類します。膀胱など下部尿路の異常なのか、腎臓機能など上部尿路が関わっているものなのかは問診内容から推測することができます。診断を確定させるために検査が必要となることもあります。主に行うのは腹部超音波やCТ撮影による画像評価です。他には腎臓機能を調べるために採尿検査や採血検査を行う場合もあります。これらの検査とは別に排尿日記をつけてもらい頻尿の種類を分類して、それぞれの場合にあった治療方法が選択できるような工夫もしています。
夜間頻尿は眠りを妨げる以外に体の健康状態にも悪影響を与えることが知られています。現在は原因や症状に合わせた様々な薬が治療に使えるようになりました。また頻尿の原因によっては普段の排尿習慣を少し変化させたり、飲み物や塩分管理、足のむくみを抑える運動や靴下を利用したりすることで症状をやわらげることもできます。
夜のトイレは年のせいだとあきらめないで、気軽にいつでも医療機関へご相談ください。
夜間頻尿と塩分の関係
最近の研究で、夜寝ている間に作られる尿量と一日に取った塩分量が大きく関係していることが分かってきました。余分な塩分は高血圧やむくみを生じさせ、それが夜間の尿量を増やすことにつながります。昼間はそれほどではないけど夜の頻尿で困っているという方は、塩分摂取を減らすことで夜間頻尿を改善させることができるかもしれません。
日本では一日の塩分摂取は、男性8g未満、女性7g未満、高血圧症や腎機能障害のある方は6g未満が目安とされます。薄味に感じても含まれている塩分が多い食品はたくさんあります。本やインターネットなどで正しい知識を身につけ食事内容を見直すことで正しい塩分管理が可能となります。ただし高齢者は、塩分を制限したために食欲が低下し十分な栄養が取れず体調を崩してしまう場合があります。無理のない範囲で調整することも大切です。
取りすぎてしまった塩分を積極的に排泄させる方法もあります。イモ類や緑黄色野菜、ナッツ類などカリウムを比較的多く含む食材を料理に加えると塩分排泄効果があることが知られています。ただし腎臓機能の悪い方はカリウム摂取により不整脈など重篤な合併症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。多くの場合余分な塩分は水分とともに下半身にたまることが多いため、下肢のマッサージや運動、下半身浴などによるむくみの解消も夜間頻尿対策として効果が期待されます。
終わりに。腎臓機能障害のある方や加齢により塩分排泄が減少している方では、効率の良い塩分制限ができないことがあります。塩分制限を実施しても夜間頻尿が改善しない場合には医療機関への受診が勧められます。
また、塩分とは関連のない夜間頻尿も存在します。夜間、トイレに何度か起きるけど一回の排尿量が少ない場合は、ぼうこう機能など下部尿路の異常や睡眠障害など泌尿器以外の異常も考えなくてはなりません。この場合もやはり医療機関への受診が勧められるでしょう。
塩分を減らして夜のトイレを減らしましょう
ご存じでしょうか。食事などで摂取する塩分を今より減らすことができれば夜間のトイレの回数を減らすことが可能なのです。
最近の医学研究により食事で一日に取った塩分量が夜間寝ている間に作られる尿量と大きく関係していることが分かってきました。適度な塩分摂取は体液の濃度や血圧を維持し体内の循環動態を安定化させる効果があります。しかしながら過剰に摂取してしまうと逆に循環動態は不安定となり高血圧やむくみの原因になります。そして夜間に作られる尿量をも増やしてしまうのです。
普段から塩分の取りすぎには注意をしているのに夜間頻尿で困っているという人も診察中にはよく見かけます。その主な原因は次の三つです。
①自分では塩分を控えていると思っているのに実際には過剰摂取している場合。食事や調味料にどれだけの塩分が含まれているかを知らず、自分の味覚のみで判断している方は注意が必要です。漬け物、汁物、煮物、干物、練り物など、薄味に感じても含まれている塩分が多い食品はたくさんあります。本やインターネットサイトなどで正しい知識を身に付けて食事内容を見直すことで塩分摂取を減らすことが可能です。ちなみに日本では1日の塩分摂取量は、男性で8g未満、女性で7g未満、高血圧症や腎機能障害のある方では6g未満が目安とされています。
②塩分排泄能力が低下している場合。体内の余分な塩分の9割以上は腎臓から排泄されます。しかし、腎臓機能障害のある方や加齢により塩分排泄が減少している方は、効率の良い塩分制限ができないことがあります。このような方は一層の塩分制限も必要ですが余分な塩分の排泄を促す方法や治療の検討も必要になることがあります。正しい知識をもとに塩分制限を実施しても夜間頻尿が改善しない場合には医療機関への受診がすすめられます。
③塩分とは関連のない夜間頻尿も存在します。夜間、トイレに何度か起きるけど1回の排尿量が少ない場合は、膀胱機能など下部尿路の異常や睡眠障害など泌尿器以外の異常の可能性も考えなくてはなりません。この場合もやはり医療機関への受診がすすめられるでしょう。
「普段から塩分は取らないようにしています」そう言っていた患者さんの詳しい食事内容を確認したところ1日塩分摂取量は約12gでした。大好きな煮物、練り物による塩分過剰であることが分かりました。
正しい塩分の知識を身に付けるだけでも夜間頻尿は改善される可能性があります。
頻尿や尿もれを減らす方法
トイレが近い。
急にもよおして我慢ができない。
尿意を感じてからトイレまで間に合わない。
これは過活動膀胱(ぼうこう)と呼ばれる状態です。
緊張した時やトイレの心配をした時にすぐにしたくなってしまう。
あるいはそうならないよう常に早めにトイレへ行ってしまう。
これは習慣性・心因性頻尿と呼ばれる状態です。
これらの頻尿や尿もれは膀胱訓練により改善される可能性があります。
膀胱訓練とは
トイレに行きたくなっても我慢をする訓練です。
最初のうちは毎回5分くらいをめどに我慢することを心掛けます。
5分の我慢ができないこともありますが、その場合はその時できる時間で我慢を繰り返しましょう。
尿意が強い場合は尿道やお尻の穴を締めるよう力を入れたり、服の上から尿道出口を手で押さえるようにしながら慌てずゆっくり深呼吸をすると尿意がおさまり我慢がしやすくなることがあります。
5分の我慢が容易にできるようになれば、その後の膀胱制御はより確実なものになるでしょう。
あとは無理をしないで少しずつ10分、15分と時間を延ばしていきます。
毎日繰り返し実行することで、やがて尿意は弱くなりトイレの心配もなくなります。
膀胱訓練の治療効果を高めるためには生活習慣の改善も必要になります。
まだもよおしてもいないのに念のためにトイレへ行く習慣はなるべく控えましょう。
少ない尿量で排尿を繰り返すと次第に尿意は強くなり、もっと少ない尿量でもトイレに行きたくなってしまいます。
膀胱訓練は過活動膀胱診療ガイドラインなどでも高く評価されている優れた治療方法です。
ただし、頻尿や尿もれを来す病気には膀胱炎や膀胱がん、尿路結石症など膀胱訓練が不向きなものもあります。
血尿や排尿痛、腹痛など頻尿以外の症状を伴っている場合は、まず医療機関へ相談しましょう。
また、膀胱訓練によっても全く効果が得られない場合は、薬物療法の検討や他の病気の可能性がないか評価する必要があります。
このような場合にも医療機関への受診がすすめられます。