糖尿病の方は歯周病対策を
歯周病は成人の9割が罹患する身近な慢性病ですが、一方で糖尿病も増加傾向を示す慢性病です。
我が国の「糖尿病が強く疑われる人」の数は890万人(2007年)、「糖尿病の可能性を否定できない人」の数は1320万人(2007年)です。
これを合わせますと、2210万人となり、今後さらに増加すると見積もられています。2002年の調査ではこの合計が1620万人でしたので約400万人増えたことになります。
歯周病と糖尿病の関係は従来から、①糖尿病になると歯周病が悪化する、②歯周病が悪化すると血糖値コントロールがうまくいかない、と言われていました。
加えて最近の仮説では、③歯周病が悪化すると歯が失われ、咬めなくなり、糖尿病の食事療法がうまくいかなくて糖尿病の悪化を招くことが示されています。
ところで、糖尿病の数値を示すHbA1c値は過去1~2カ月の血糖の状態を示し、糖尿病治療の基準のひとつになります。
HbA1c値は2012年4月より従来の日本の基準であるHbA1c(JDS値)からHbA1c(国際標準値)に変更されました。
この国際標準値は海外で使用されるNGSP値に相当し、JDS値より0.4%高くなります。
つまり、「糖尿病が強く疑われる」のは従来の「6.1%以上」から「6.5%以上」となりました。
このHbA1c値は、歯周病が重症化すると上昇すると言われています。
けれども、こういった歯周病の方の治療をすると、0.5%程度のHbA1c値の減少が期待できるという報告もあります。
歯周病治療を行うことで歯の寿命を延ばせるだけでなく、糖尿病を改善する一助になり得ると言えます。
この歯、キレイにしたいんです
「先生、保険外でも良いので、この歯きれいにしたいんです。」
女子高生の患者さんが親御さんの許可を得たらしく、治療の終わり間際にそう言ってきました。
「そうだね。じゃあセラミックで被せてきれいにしましょう。」
「はい。お願いします。」
彼女は上の前歯一本の根を消毒している所です。
その歯の表面は以前治療した詰め物が黄ばんでいて、見た目の悪さを気にしていました。
この歯を治す場合、保険では、銀歯の表面に白いプラスチックを貼り付けた被せ物になります。
それは入れた当初はそれなりにきれいですが、時間と共にツヤが失われ、徐々に黄ばんでくる欠点があります。
保険外では、セラミックと金属を組み合わせた冠、或いはセラミックのみの冠があります。
セラミックは透明感があり、とてもきれいで年数が経ってもほとんど変色しません。
金属を使わない場合、本物の歯と光の透過性が似てくるので、より自然な仕上がりになります。
又、彼女の様に詰め物が広範囲に及ぶとか虫歯が大きい時は冠を被せる為の土台を作る必要がありますが、それもセラミック冠では素材を変えます。
白いプラスチックを使い光の透過性を良くします。
上の前歯は見た目の印象に大きく影響します。
黄ばんだ歯では自信を持って話したり笑ったりできないでしょう。
その部位のかみ合わせが緊密すぎる時には金属を使う必要がありますが、そうでなければセラミック冠が一番理想的な治し方と言えます。
よりきれいにしたい方にはおすすめです。
子供の虫歯予防
子供の歯を守るのも大事な親の役目ですね。
ではどのような点に気を付ければ良いでしょうか?
まずは幼い頃から歯磨きの習慣をつけることです。
子供のうちに虫歯予防の習慣を付けると大人になってからも健康な歯を長く保てます。
小さいうちは必ず仕上げ磨きをしてあげて下さい。
また、フッ素を塗ることによって歯質を強化したり、歯科医院専売の100%のキシリトールガムを食べ続けるとお口の中の細菌の種類が変わり、虫歯になりにくくなります。
この時季はアイスやジュースの摂取量が増えると思いますが、だらだら食べる事が一番虫歯の原因になりますので注意が必要です。
定期的に歯科医院を訪れると初期の虫歯の発見だけでなく、親子の虫歯予防の意識は高まりますので虫歯がなくても行ってみてはいかがでしょうか。
ノンクラスプデンチャーについて
審美性に対する要求は、年齢、性別に関係なく、入れ歯を使用していると気付かれたくないという思いは多かれ少なかれ持っていると思います。
今日は“ノンクラスプデンチャー”についてお話ししてみようと思います。“ノンクラスプデンチャー”という言葉は全く耳慣れない言葉だと思いますが、ひと言で表現すれば、金具(クラスプと言います)のない部分入れ歯のことを言います。
金具がないので見た目にも入れ歯とはわかりにくく審美性に優れており、インプラントのように手術を必要とはせず、年齢や患者さんの全身状態にかかわらず作製する事ができます。
日本国内で薬事認可を受けている“ノンクラスプデンチャー”は4種類ありますが、当院では金属床(特にチタンという金属アレルギーが少ないと言われている金属、人工関節やインプラントにも使われています)と併用を考えて作製している“ノンクラスプデンチャー”(商品名はスマートデンチャー)について少し説明いたします。
床(歯ぐきにあたる部分)は、ペットボトルの材料(ポリエチレンテレフタレート:略してペット)を使用しています。
この材料の特徴としては、柔らかいため弾力があり破折がしにくく、そのため厚みも薄くできて違和感が少ないという点にあり、ペットボトルにも使用されているので安全性についても問題ありません。
保険での入れ歯では設計にも制限がありますが、今述べた材料を使い、適切な設計をし実際に使っていただいている患者さんを見ると見た目もさることながら(審美的にも美しく)よく食事ができているように思います。
保険がきかない入れ歯ですが、こういう付加価値をもった入れ歯もありますという紹介でした。
なお、最近では国外生産で安価なものも出回ってると聞きます。
もしこのような入れ歯を希望するのなら安全な国産製品で作ってもらってください。
ホワイトニングについて
皆さんは自信を持って歯を見せて笑えますか?
毎日の歯磨きで予防できないものの一つが歯の黄ばみや着色です。
コーヒーやワイン、お茶などに含まれる色素が歯に沈着し、蓄積されていくと普段のお手入れでは落ちなくなってしまうのです。
そのような色素を取り除き、歯を白く明るい色にするのがホワイトニングです。
ホワイトニングには色々な種類があります。
1.ホームホワイトニング
ご自宅で行います。専用のマウスピースを作製し、専用のジェルを付け2〜6時間程はめて頂きます。期間は1ヶ月が目安です。時間はかかりますが、後戻りしづらく綺麗な白さになります。
2.オフィスホワイトニング
歯科医院で行います。専用の薬剤を歯の表面に塗布し、専用のライトを当てて行います。1時間程度で通院回数は1〜3回が目安です。短期間で終わりますが、後戻りしやすく、白さにも限界があります。
3.デュアルホワイトニング
ホームホワイトニングとオフィスホワイトニングを併用して行います。結婚式が近いなど短期間で白くしたい方にお勧めです。
4.ウォーキングブリーチ
神経を取って歯が黒ずんだ場合に行います。歯の中に直接薬剤を入れて漂白します。1週間に1回薬を交換し、1ヶ月が目安です。他のホワイトニングと併用する場合もあります。
歯が白くなると、どの方も笑顔が綺麗になります。
そのため自分に自信が持てるようになり、内面的にも明るくなります。
いつも笑顔でいるとキラー細胞という細菌やがん細胞を殺す免疫細胞が増えるという研究結果もあります。
またホワイトニングすることにより、歯への意識が高まり、虫歯や歯周病の予防にもつながります。
定期的にクリーニングすると白さも長持ちしますので、興味のある方はお近くの歯科医院に相談してみて下さい。
セラミックについて
芸能人やモデルのようにさわやかで清潔感と印象を良くする白い歯にあこがれる人は多いと思います。
今回はセラミック治療についてお話します。
セラミック治療のセラミック(陶材)とは詰め物やかぶせものに使われる歯科材料の名前です。
セラミックには金属が含まれていないので、光の透過性が天然の歯とほとんど変わらず人工の歯という違和感がありません。
セラミック治療には色々な種類があります。
- 歯を全体的に削りその上にセラミックをかぶせることで、歯並びや、かみ合わせと見た目を美しく変える方法
- 歯の一部にセラミックを詰める方法で虫歯治療後などの金属の詰め物が気になる方や、虫歯治療をした部分を詰める場合に用いる方法
- 歯の表面を一層削ってセラミックをはりつけて白くする方法
などです。
また金属アレルギーの方にも向いています。
アトピーや皮膚アレルギーには歯科で使用する金属が影響している可能性もあると考えられます。
その対策としてすでに入っている金属をはずしてセラミックに変える方法があります。
このことからセラミック治療は見た目をきれいにするだけでなく「お口の中を健康にする」ことも目的としています。
保険の治療では奥歯は銀歯、前歯は銀歯にプラスチックを張り合わせた冠になっています。
プラスチックは入れたとき最初は白いですが、プラスチックのため細菌が繁殖したり、お茶・コーヒーなどの色素でだんだんと色が黄ばんできたり、割れてしまうことがあります。
セラミック治療は保険外治療のため保険治療のプラスチックより数倍料金がかかるので、料金をとるか美しさをとるか悩みどころであると思います。
一度歯科医院にて相談を受けてみてから選択することをお勧めします。
ビスフォスフォネート系薬剤を服用しての注意点~顎骨壊死について~
医科で処方されますビスフォスフォネート系薬剤は、悪性腫瘍(癌)の骨への転移、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨粗鬆症に用いられています。
近年、これが顎骨壊死に関わっているとの報告が相次いでいます。
この顎骨壊死はビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様にまれに起こり、顎の骨が部分的に腐った状態になり、口の中の細菌が感染します。
その場合、
①口の中の痛みや腫れ、膿が続いている
②歯茎に白い硬いものを感じる
③歯がグラグラする
④下唇のあたりがしびれる
などの症状が現れます。
こういったビスフォスフォネート系薬剤による骨壊死は顎の骨以外では見られなく、特に下の顎に起こりやすいと言われています。
口の中の粘膜は傷つきやすく、口の中の細菌が顎の骨に感染する可能性が他の骨に比べ高いためだと考えられています。
また、ビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様が抜歯などの口の中の外科治療をした場合も顎骨壊死が生じる原因に挙げられています。
ビスフォスフォネート系薬剤は、悪性腫瘍、骨粗鬆症の治療に非常に有用です。
こういった顎骨壊死のリスクがあるので、服用されている患者様はかかりつけの歯科医にあらかじめ伝えておくことが必要です。
そして、どうしても抜歯などの治療が必要であれば、ビスフォスフォネート系薬剤を処方している医師と薬剤師と歯科医が連携を取った上で治療を進めてもらった方が良いでしょう。
先ほども述べましたとおり、この顎骨壊死は頻度としてはまれに起こるものですが、ビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様はそのリスクを減らすためにも、口の中を清潔に保ち、定期的な歯科クリニックでの口腔清掃をすることをお勧めします。
歯の浮く話
皆さんの中には疲れたりすると歯が浮いてくる方もいらっしゃると思います。
これは歯の根の部分と骨の間に歯根膜という緩衝材の役割をする膜があります。 歯が浮いたり噛むと痛いという症状は、歯根膜の毛細血管がうっ血して炎症を起こしている場合が多いようです。
歯根膜は周りを骨で囲まれているので、腫れると歯を持ち上げるので歯が浮いてしまうのです。
疲れた時には血行障害を起こしやすいので歯の浮く原因になります。
また、硬い物を食べた時や歯を食いしばる様な運動をした時などにも浮くことがありますが、一過性のものであればあまり心配はいりません。 しかし、虫歯や歯周病が原因で浮いている場合は、菌の活動が活発になって症状を悪化させる場合もありますので、長引いたり、頻繁におこるようであれば、かかりつけの歯科医に相談してみて下さい。
金属床義歯について
今回は金属床義歯についてお話ししたいと思います。
まず、総入れ歯を例にお話しを進めて行きたいと思います。
総入れ歯の場合、金属を使う部分は上顎の場合は天井部分(口蓋/こうがい)に、下顎の場合は内側の舌のさわる部分を金属にするのが一般的な設計です。
ここを金属にする利点としては①強度的に保険で作るレジン床(樹脂)義歯より優れているので薄くできる(保険の入れ歯の3分の1程度の薄さで作ることも可能です)。
そのため舌の運動に違和感をもったり、発音機能に障害を感じるような患者さんにとっては良好な結果が得られることもあります。②舌触りも良好で、金属特有の熱伝導性により熱い、冷たいなどの温度感覚に優れ、食事時の味覚にも良い影響がみられる。③レジンに比べ適合性が良好である。また、部分入れ歯を金属床義歯にすると④たわみ難いので残っている歯と歯茎に優しい。⑤症状や個人の希望に応じて自由な設計ができるなどが挙げられます。また最近では、部分入れ歯で金属床を使っている場合で、疾患により歯を失った場合でもレーザー溶接技術により修理することもできるようになりました。
一方金属床としての欠点もあるのも確かで①金合金を使った場合には、保険の義歯に比べ重量が大きくなることがある。
ただし、入れ歯としての適合が良ければ日常ほとんど気にならないものと思われます。②顎の骨が痩せて歯ぐきが変化した場合に裏打ちなどの修理が難しい。
ただし、最近では接着技術も飛躍的に向上したためレジンの追加修理もほとんどレジンの入れ歯と同様にできるようになってきました。③入れ歯を作るのに高い技術を要するため費用がかかり高価になる。最後に入れ歯のお手入れについてひと言。①流水下で入れ歯ブラシを使って清浄する。②必要に応じ入れ歯の洗浄剤を使う。③歯磨き粉は入れ歯を傷つけるため使用しない。④寝るときは基本的には外し水中保管をする。より長く入れ歯を使っていただくため上記のことを守り、定期的にかかりつけ医にチェックしてもらう必要があります。
入れ歯ってどう?
「この間、歯医者に行ったら抜歯しなければならなくて、その後はいよいよ入れ歯だと言われた」 初めて入れ歯を入れることになった方は不安を持たれ、「ついに入れ歯か」とひとつの人生の節目のように捉える方もいらっしゃいます。
そして、入れ歯を入れることで大きく変わることは咬合力が以前と比べ、格段に落ちてしまうことです。 上下とも入れ歯を入れていない方の咬合力が、男性で53.86kg、女性で41.06kgです。
1本歯を抜いてその両隣りに歯があるケースで入れ歯を入れた場合の咬合力は男性で23.57kg、女性で17.28kgとなり、かなり落ちてしまうことがわかります[山崎(1960)]。
さらに、上下の総入れ歯では男性8.76kg、女性で6.44kgとなり、およそ6分の1の咬合力となってしまいます。
歯が無くなっても入れ歯があるから大丈夫とはなかなか安心できません。 かといって、抜くべき歯を抜かないでそのまま放置しておくのも考えものです。
特に、歯周病になっている歯が周囲の骨を吸収することが多いわけですが、それが長引けば歯を抜いた後の骨の山(顎堤といいます)が小さくなり、入れ歯が安定しにくい症状も出てくることもあります。 また、歯の無いところを放置すると食べにくいだけでなく、発音が上手にできなかったり、見た目が悪かったりと問題があります。
多くの場合、咬み合わせが乱れてくるわけです。 大切なのはそういったところまで歯を放置しないことと定期的なケアが必要だと思います。
ただ、現在では入れ歯だけでなくインプラント(人工歯根)による治療がありますので、今まで以上に患者様にご満足いただけるのではないかと思います。